顔巣学園の平凡な超常   作:アカシックレコード

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作者の一言:今日はかにかまさんの作品『閻魔大王だって休みたい』とのコラボ編です!この話以外の話でもコラボ予定ですので、お楽しみに!!

『閻魔大王だって休みたい』URL
http://novel.syosetu.org/14140/


第14話:祭の朝(教師陣の場合)

顔巣学園・教員室・・・・

 

学園に通う生徒達がいよいよ始まる夏祭に思いを馳せたり、何故か夏祭当日なのに午前授業がある事に対してぐーたらと不満を垂れている頃、顔巣学園に勤務する教師陣の朝も始まった。

夏祭に出店する店の最終チェックをする者。

コーヒー片手に売り上げ予想を付ける者。

校庭に設置された野外ステージの音響機材の反応をチェックする者。

顔巣学園の朝は教室だけでなく、職員室にも活気が溢れている。

そんな中、職員室の片隅で、

 

「早く取れよ、伊藤ー」

 

「これで負けたら駅前のケーキ屋のイチゴショートおごれよな」

 

「分かってるっすよ・・・よっと・・・ぬぁおぅ!!??」

 

「いしししっ、ハマったな」

 

「伊藤ってホントに弱えーのな」

 

「くっそー!!また負けたぁぁ!!」

 

・・・冴えない男が幼女二人と何故かババ抜きで遊んでいた。

ちなみに今しがた伊藤と呼ばれたのは右頬の刃物傷が特徴的な男で、名は伊藤カイジ。

顔巣学園の現代社会教諭だ。

 

「もう一回だけ!もう一回だけチャンスを・・・!!」

 

「やなこったー、一度した約束は絶対だぜー」

 

「そーそー。やり直しが効かないのも人生だぞ」

 

「うわぁぁぁ!給料がぁ!!俺の全財産がぁぁぁ!!!」

 

・・・そして全力でカイジのライフラインを切断しにかかっているのは、片方が赤いロングヘアに白衣姿の少女---邪神つるぎ---、もう片方が赤銅色の髪をサイドテールにまとめた少女---道楽宴---だ。

この二人、一見すると子供のような外見だが、これでも立派な一教師である。

ちなみに何故彼女達が子供っぽいのかと言えば。

これは所謂合法ロリと言う奴で、二人の実際年齢はおばさ・・・

 

「「あーかーしーっーくー、それ以上言ったらどうなるかなぁ〜?」」

 

あ、はい、すいません、二人揃って名状しがたいバールのようなものを投げないで下さい・・・

・・・あれ?こんなやりとり前にもあったよね?

 

「まぁ、伊藤よ、こんなもんはお前が地下帝国にいた時に比べたらよっぽどマシだろ?」

 

と、名状しがたい(中略)を机の下に直しながらつるぎ。

 

「や、確かにそうっすよ!?でもあそこのケーキ高いし、俺なんかまだ初任給で9万円しか貰ってないんすよ!?」

 

「9万もありゃ、ケーキの一つや二つ余裕だろ?」

 

「俺の生活費は無視ですか!?」

 

「あー、もう、うっせーな」

 

と、ここで宴がいつの間に咥えた煙草を燻らせながら言う。

 

「負けは負け!あんたが最初に私らの出した条件を飲んだんじゃねえか」

 

「はぁ!?だってあれはつるぎ先生がいきなりバール突きつけて『よぉ、ババ抜くか、死ぬか選べ』なんて言って脅すから・・・」

 

カイジは必死に弁解する。

確かにいきなりバールで生か死か脅されるのもねぇ。

 

「はいはい、言い訳するヒマあったらさっさと行って来ーい!あと私はイチゴショートなー」

 

「あ、私はモンブラン!」

 

しかし、つるぎと宴はそんなカイジの弁解もまともに聞き入れず、それどころか自分の分のケーキを図々しく頼んだ。

 

「くっそー!!今に見てろ!!」

 

哀れにも初任給の半分を削られる事が確定したカイジは職員室から出て行った。

その時、カイジの背中には、負け犬に相応しい情けないオーラが滲んでいたそうな。

 

「なぁ、つるぎー」

 

カイジの去った後、トランプを片付けながら、宴がつるぎに話しかける。

 

「ん、何ー?」

 

「あいつって、ホントに帝愛の地下帝国から生還して来たのか?」

 

と、宴は『帝愛』と言う名を出した。

ちなみに帝愛とは、帝愛グループという金融業を主とする巨大コンツェルンの事だ。

巨大企業なだけに、頻繁にTVCMを放送しているが、その経営にはやや不透明な部分もあり、帝愛直営の地下労働施設や裏カジノなど、黒い噂が飛び交う事もしばしばである。

 

「・・・多分な。でもこう言っちゃ何だが、あいつ弱すぎるよな?」

 

「ついに帝愛のジジィもボケたか・・・」

 

「まぁ、あのじーさんもトシだしな・・・後は黒崎辺りが引き継ぐんじゃねえか?」

 

・・・もっとも、宴もつるぎも、帝愛の裏事情について何故か知っているようだが。

 

 

一方その頃・・・・

 

「ぶぇーっくしょい!!」

 

場所は敢えて伏すが、都内のどこかで、噂の的である老人が大きなくしゃみをしていた・・・

 

 

場所は戻って、顔巣学園・教員室・・・・

 

「にしても、夏祭だってのに何の準備もしてねーな、あたしら」

 

つるぎはゴム製のつっかけを履いた足を自分のデスクに載せながら伸びをした。

 

「そんなもん生徒が健気に準備してるのを上から見とけばいいんだよ。教師の特権ってヤツさ」

 

と、宴は咥えていた煙草・・・のように見えたが、実はペロペロキャンディーをそこにあった皿に載せる。

 

「・・・てか、何でペロペロキャンディーなのに煙が立ってんだよ?」

 

「あぁ、私の舌力はすげぇからな。キャンディー舐めてる摩擦力で自然に着火しちまうんだ」

 

どこぞの銀髪天然パーマ教師のような事を言いながらデスクの上のパソコンをいじる宴。

画面には黒を基調としたカラーのSNSサイト・ダラーズの個別チャットルームが表示され、そこではネットの住人達が、好き勝手にトークを繰り広げていた。

もっとも、このチャットルームは、学園の関係者向けにメンバー設定が固定されているため、話される内容も学園関連のものばかりなのだが。

 

 

チャットルーム・・・・

 

くろの

今年も夏祭だなー

 

きょーすけ

だな

 

バキュラ

何だかんだで今年も開催されたっすね

 

くろの

そう言えば今年のゲストは誰が来んだろーな?

 

JACK.A

初日のゲストはPOLYSICSだって言ってましたね

 

JACK.A

最終日の方はまだ分からんらしいっすけど

 

くろの

ほぉほぉ。

 

バキュラ

つかPOLYSICSのメンバーにココの卒業生いましたっけ?

 

きょーすけ

ギター担当がこの学園の高等部OBらしいです

 

JACK.A

OBで他に有名なアーティストとかいたかな?

 

きょーすけ

俺が聞いたことあるのはFACTくらいっすわ

 

 

宴さんが入室されました

 

 

おいーす

 

JACK.A

あ、宴さんばんわー

 

バキュラ

ちょ、JACKさん今昼w

 

JACK.A

あ、間違えた

 

JACK.A

ちわーす

 

おうおうー

 

お前ら準備せんで良いのかー?

 

今日から夏祭だろ?

 

バキュラ

ウチのクラスは昨日に全部終わらせたっす

 

くろの

俺らもあらかたは終わったっすね

 

JACK.A

さっきまでアホな厨房とクラスメイトが教室でケンカしてましたがね(汗)

 

にしてもお前ら

 

今から最終日のゲストが気になるとか結構ミーハーなのな

 

JACK.A

いや、別にそーでもないですけどね

 

きょーすけ

宴さんは誰が来ると思いますか?

 

ラスベガスじゃないのか?

 

くろの

ラスベガス?

 

JACK.A

あ、Fear,and Loathing in Las Vegasっすか?

 

バキュラ

名前長っ!

 

あー、お前ら生徒の中で噂にはなってると思ってたんだがな・・・

 

JACK.A

バキュラさんラスベガス知らないんすか?

 

バキュラ

いや、最近よく名前は聞くんすけどね

 

きょーすけ

俺も大体そんな感じですね

 

きょーすけ

妹がハマってるゲームの主題歌か何からしくて

 

きょーすけ

昨日の夜もネトゲやりながら『ラスベガスきたー!!』とか何とか叫んでましたし

 

JACK.A

あ、それシスカリっすよね

 

くろの

確かラスボス戦の挿入歌担当してたな

 

JACK.A

つか、ラスベガスって顔巣学園(ココ)の卒業生だったんですね?

 

まぁ、在籍してたのは関西の方だけどな

 

 

同刻、顔巣学園校長室・・・・

 

「ふむ・・・」

 

黒いシャツにジーンズ姿のアバンギャルドな校長・ルシフェルは自前のノートパソコンを前にネットで交わされる会話を見ながら、優雅にアイスコーヒーを飲んでいた。

 

「皆、一様に夏祭を楽しみにしているようだな」

 

良い事だ、とルシフェルは微笑した。

本来は天界に生きる存在である彼にとって、人間界で一つの学園の長をするという事は、ある意味ではかなり危険な行為だ。

かつての地上、人間の言葉を借りれば創世記において、楽園の外つまり現在で言う人間界では魑魅魍魎共が跋扈し、人間はともかく天界の者であろうが、生活するにはまさに命懸けの混沌の世界だった。

しかし、アダムとイヴはそれを乗り越え、人間という種の繁栄を築き上げた。

無論、外部からの知られざる協力・助言もあった上ではあるが、結果として人間はここまで進化したのだ。

そしてルシフェルは、過去・現在・未来にかけて、それらを見守り続けていた。

彼自身にとって、人間とは自らの愛すべき子供のような存在と言っていいだろう。

ルシフェルはアイスコーヒーを啜りながら、ゆっくりと伸びをした。

すると、ジーンズのポケットに入れていた携帯がブルブルと震え、ルシフェルに着信が来た事を伝える。

 

「む、誰だ?」

 

ルシフェルはポケットから携帯を取り出すと、画面を確認する。

 

「あぁ、ヤマシロか・・・」

 

ルシフェルは友人だろうか、そのヤマシロと言う人物に電話を掛けた。

6回目のコール音の後、

 

『よぉ、ルシフェル』

 

と、若い男の声が電話の向こうから聞こえてくる。

 

「あぁ、久しぶりだな、ヤマシロ」

 

『そっちはどうだ?うまい事やってるか?』

 

「あぁ・・・まぁまぁと言った所だろうな。お前はどうだ?」

 

『俺は毎日大変だぜ・・・この間も死神が人間界に出現したとかで色々と慌ただしかったしな。とりあえずは今やっと落ち着いたとこだ』

 

と、ヤマシロは声に疲れを滲ませながら言う。

会話の中に死神という単語が出て来るあたり、ルシフェル同様に人智を超えた関係の友人なのだろう。

 

「閻魔大王に、休みは無いというわけだな?」

 

『おうよ・・・いい加減に休みてぇよ』

 

そうか、とルシフェルは携帯を肩と耳に挟みながらネットを見る。

ネット上にはこの数分の間に今年の夏祭のゲストにまつわるスレッドが乱立していた。

 

「・・・そう言えば、麻稚君はFear,and Loathing in Las Vegasのファンだったな・・・」

 

と、ルシフェルはヤマシロ以外のもう一人の友人の名を呟いた。

 

「そうだ、ヤマシロ。今から暇か?」

 

と、突然ルシフェルは友人を遊びに誘うような口調で尋ねる。

 

『え?まぁ、暇っちゃ暇だけど』

 

「ならウチの学園の夏祭に来ないか?」

 

ルシフェルは人差し指を立ててそう提案した。

 

『お、おい、ちょっと待てルシフェル。確かに今俺は暇だがな、地上へ行けるほどじゃないぞ?』

 

と、何やら若干慌てるヤマシロ。

しかし当のルシフェルは

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

と、呑気なものだ。

 

『・・・あのなぁ、天界の奴らと違って俺らが地上に行くのがどんだけ大変なのか知ってるのか?特に俺は死者の魂を裁く役目を負ってるから殊更難しいんだぞ?』

 

ヤマシロは半ば呆れ気味に言った。

突然だが、ヤマシロは閻魔大王である。

閻魔大王とは言わずもがな、死者の魂を裁くのが仕事である。

人間風に言ってみれば、裁判長のようなものなのだ。

そんな重役が旅行へ行くのだから、当然、地上へ出るための手続きもかなりややこしく、目的地に着くまでには何も出来ないほどに疲弊しきっているのはざらにある事だ。

 

「そうか・・・確かにそうだな」

 

そう言いながら、ルシフェルは顎に手をやりながら少し考えた。

数分経って、ルシフェルはやっと良い案が出たらしく、こう言った。

 

「よし、分かった。イエスに頼んでみようか」

 

『っておい!?そんな簡単に頼めるのかよ!?相手は主なる神だぞ?』

 

「あぁ、大丈夫だ。私は彼の一番弟子である上に、そもそも彼自身も今地上でバカンス中なんでな」

 

と、ルシフェルはノートパソコンをいじり、とあるブログのホームページを開く。

ホームページ上部には『いえっさのドラマンダラ』とある。

 

「彼なら煩わしい手続きをパス出来るはずだ。今彼にメールを送ったから・・・まぁ、今日中には何とかなるだろう」

 

『そうなのか・・・?まぁ、分かった。イエス様によろしく伝えてくれ』

 

「ああ、そうしておこう」

 

そう言うと、ルシフェルは電話を切った。

 

「さてと・・・む?」

 

携帯をポケットにしまい、ノートパソコンに目を向けたルシフェルは、新着メールが一通来ているのを見つける。

何の気無しにメールボックスを開き、内容を見た瞬間、

 

「・・・な、何だ、これは・・・」

 

驚きのあまり、ルシフェルは手に持っていたアイスコーヒーのカップを取り落とした。

メールボックスに届いていたそのメールにはおどろおどろしい形相のピエロの画像と共に・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『夏祭を彩る血の華が咲くだろう』

 

とあった。

後にこれが夏祭を大きく揺るがす波紋となる事を、ルシフェルは瞬時に悟った。

 

「・・・うむ、先手は打っておいた方が良さそうだな」

 

ルシフェルは静かにそう呟くと、ノートパソコンの電源を落とした。

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