「ドーモ、アミ=サン、エグゼデス」・・・・Exe(NINJA CORE)
「ドーモ、エグゼ=サン、アミデス」・・・・双海亜美
「あらあら、亜美ちゃんドイツ語が上手ね〜♪」・・・・三浦あずさ
「いやいや、今の思いっきり日本語でしょう!?と言うか何なのよその変な挨拶!?」・・・・水瀬伊織
ステージ袖・・・・
「おぉぉぉ!すごい盛り上がってるYO→!!」
と、少女はステージ上で6人のニンジャ達が繰り広げるライブを見ながら、興奮気味に言った。
頭の左側をサイドテールに結わえ、竜宮城の官女のようなアイドルコスチュームに身を包んだ彼女の名は双海亜美。
765プロの擁するアイドルユニット・竜宮小町のメンバーだ。
「確かに中々の盛り上がりようね。でも、私達だって盛り上げにかけては負けてないわ!」
と、亜美の言葉に髪を左でワンレングスにまとめた少女が返す。
彼女は水瀬伊織。
水瀬財閥のお嬢様にして、竜宮小町のリーダーだ。
「相手は忍者だか何だか知らないけど、絶対に負けないんだから・・・!」
言いながら伊織は拳を握りしめた。
竜宮小町は765プロ内で初めて結成されたアイドルユニットであり、それだけに事務所内の期待値も高いのである。
リーダーである伊織としてはどんなに規模の小さいライブでも、それら全てを成功させたいのだ。
「おぉ!いおりんがこれ以上ないやる気をたぎらせているYO」
「私はいつでもやる気しかないわよ!亜美も軽口ばっかり叩いてる暇があるなら気合い入れ直しなさいっての!!」
「んっふっふっふ〜、了解!!」
「・・・そう言えば、亜美、あずさはどこ行ったの?」
と、伊織はここでメンバーが一人いないのに気づいた。
「どこって、さっきまで一緒に・・・」
言いつつ後ろを振り返る亜美。
しかし、そこには誰もいない。
「・・・まさか」
「・・・またこのぱてぃーん!?」
一方その頃、学園構内・・・・
「困ったわぁ、また迷子になっちゃったみたい」
多くの人で賑わう顔巣学園構内。
教室を改装した喫茶店や焼きそばなどの軽食を売る店が立ち並ぶ中、一人の女性が行くあてもなく彷徨っていた。
青に近い黒髪をショートヘアにし、どたぷーんという擬音が似合いそうな巨乳、そしてあまり危機感のなさそうな面持ちの彼女こそ、竜宮小町のメンバー・三浦あずさで間違いない。
彼女は今、亜美や伊織達とはぐれてかれこれ30分が経とうとしている。
「あともう少しで私達の出番なのに・・・どうしましょう」
と、どこか達観しているような、もしくは緊張感が感じられない風にあずさは呟いた。
ステージ袖・・・・
「や、ヤバいYO〜!ただでさえあずさお姉ちゃんは神出ちこつなのに〜!!」
「とりあえず落ち着いて亜美!あと、それを言うなら神出鬼没ね!!」
場所は戻って、ステージ袖。
突然姿を眩ましたあずさに亜美は大いに焦り、伊織がそれを宥めていた。
ステージではNINJA COREのライブも終盤に差し掛かっている。
「確かにあいつらはもうじき演奏を終えるわ。でもその後にステージ転換で機材撤収とかステージの再配置とかがあるはずだから・・・最低でも30分くらいはあずさを探す時間ができるはずよ」
「お→!その手があったか→!!いおりんあったま良い→!!!」
「とりあえずは律子に連絡してっと・・・」
と、伊織が携帯で竜宮小町のプロデューサーである秋月律子に連絡を入れようとした、その時。
「竜宮小町さん、転換入りますんで5分後にスタンバイお願いしまーす」
スタッフの無情なる宣告が聞こえてきた。
「・・・」
「あ、これ詰んだYO」
一方その頃、あずさSide・・・・
『あれ、三浦あずさじゃね?竜宮小町の』
『あ、ほんとだ、あずささんだ』
「どうも〜」
『あずささん!サイン下さい!』
「はい、どうぞ〜」
『お、俺も俺も!!』
「はいはい、慌てないでも大丈夫ですよぉ」
『あずささーん!ウチのクラス喫茶店やってるんでぜひ寄ってって下さーい!!』
「あら〜、でもごめんなさいね、今急いでいるので〜」
『ウチにも寄ってってよー!!あずささんならラーメン一杯、いや何杯でもタダにしときますよぉ!!!』
「後ほど寄ります〜」
『あずささぁぁぁん!!こっち見てぇぇぇ!!』
「うふふ」
『天使やァァァ!!この学園に天使が舞い降りたぞォォォ!!!!』
「あら、天使だなんて」
『あずささん!そのご尊顔、こっちにも!!!』
「はいはい」
で、再び学園構内。
突如として降臨した売れっ子アイドルに、構内は大パニックになっていた。
あちらこちらから黄色い声が飛び交う中、その一つ一つに丁寧に応えながら歩くあずさのその様子は、まるでどこぞのパレードのようだ。
(困ったわぁ、このままじゃライブに間に合わない・・・それに、ここはどこなのかしら・・・)
そんな彼女の思惑とは裏腹に、ファンやミーハーな学生達から祭り上げられながら歩いていると。
「きゃっ」
「うぉっ」
あちらこちらに気を取られている内に、横切って来た男にぶつかってしまう。
バランスを崩し、そのまま尻餅をつくあずさ。
しかも運悪く、男の持っていたカップの内容物を頭からひっ被ってしまった。
『あ、あずささん!?』
『そこ!どこ見て歩いてんだバカヤロー!!』
『あずささんに何しやがる!!!』
そして、すぐさま後ろの人混みから男への非難や怒号が飛んでくる。
突然の事にぶつかった男はしばらく固まっていたが、
「お、おい、大丈夫か?」
と、あずさを起こしてやろうと手を差し出す。
「え、えぇ、大丈夫です・・・あなたは?」
「いや、俺は何ともないよ・・・というか、あんた服が・・・」
「へ?・・・あらまぁ/////」
男に言われ、あずさは自分の格好に気がつく。
頭から液体を被ったせいで白のブラウスは透け、彼女の巨乳を支えるブラが見えてしまっている。
しかもどうやら液体はカル○スだったらしく、白い雫が滴るその姿は完全に18歳以下厳禁のエロティシズムを漂わせていた。
『あ、あずささんが透け透けだぁぁぁ!』
『うおおおおおおぉぉぉ!!乳やぁぁぁ!!!あずささんの乳やぁぁぁ!!!!』
『マスュオプッ!!??』ブシャァァァ
『や、ヤバい!ムッツリーニが鼻血吹いてぶっ倒れたぞ!!』
『だ、誰か救急車呼んでぇぇぇ!!??』
『シャッターチャンスktkr!!!』
『三浦あずささんのパイオツ、頂きましたぁ!!』
突然のリビドー溢れる光景に、周囲は大パニックになる。
更にどこからかシャッターを切る音も聞こえてくる。
「カメラ!?か、顔バレはヤバい!!」
カメラを向けられたその瞬間、何かやましい事でもあるのか男は慌てて顔を隠した。
『あずささん!もっとこっち向いて下さーい!!』
『そっちのチャラ男も面晒せ!!』
「クソっ!!だから写すなっての!!!」
「うぅ・・・恥ずかしいわ・・・/////」
激しいフラッシュが焚かれるその様はまるで何かの記者会見のようだ。
その閃光の渦中で男は自分の顔を隠すやら、あずさは服の透けた部分を隠すやら。
「ちっ、ラチが明かねぇな!おい、あんた!ここは一緒に逃げるぞ!!」
「・・・へ!?ちょ」
しびれを切らしたのか、男は側から聞けばあらぬ誤解を生みそうな台詞を放ち、あずさの手を引いて走り出した。
『あ、逃げたぞ!』
『か、駆け落ちだ!!』
『あずささんが攫われるぅぅ!!!』
『待てェェェェ!!!』
『あずささん!!そんなチャラそうな奴よりも俺と一緒に逃げてくださーい!!!』
『せめてあずささんの胸元をもう10枚ほど・・・』
『パイオツ揉ませろぉぉぉ!!』
『錯乱者が3名いるぞ!!異端審問会を呼べぇ!!!』
群衆もまた、唐突に逃げ出した2人を追いはじめる。
・・・一部の生徒がいけない方向へ向かっているのは笑って見逃してやってほしい。
「ったく、こんなトコロ、ヤマシロに見られでもしたら怒られるだけじゃあ済まねぇよな・・・」
成り行きで共に逃げることとなった人気アイドルの手を引きながら、男は小さく愚痴をこぼす。
・・・・ちなみにどこかで聞いた事あるような名前が出たのは気にしないでいただきたい。
ともあれ、何事も起こらないことは無いのだ。
この、顔巣学園という学園には。
ステージ袖・・・・
「どーすんのよ!これ、どーすんのよ!!」
「そんな事言ったって→!!」アタフタ
そして、場所は更に戻ってステージ袖。
伊織と亜美はとうとう窮地に追い込まれていた。
ステージではニンジャ達が丁度演奏を終えたところだ。
このままではあずさ抜きでライブを進行しなければならない。
「伊織!亜美!」
と、ステージ裏手の入り口から眼鏡を掛けた女性が現れた。
彼女は秋月律子、765プロ所属のプロデューサーにして、竜宮小町の担当責任者だ。
「律子!遅いわよぉ!」
「大通りの渋滞にハマってて動けなかったのよ・・・で!今の状況は?」
「もうニンジャ軍団のライブが終わっちゃうYO→!しかもステージ転換に5分しかかからないって言うし→!!」
「それはマズいわね・・・分かったわ、とりあえず何とかできないかスタッフに交渉してくるわね」
律子はそれだけ言うと、もう大急ぎでスタッフ本部のあるテントへと駆けて行った。
「大丈夫かなぁ・・・」
「大丈夫よ、きっと・・・」
既にギャラリーからは竜宮小町の登場を待ち望むファンからのコールが聞こえてくる。
伊織と亜美が不安そうに律子の背中を見送っていると。
「Puh, war es das beste lebende!!」
(ふぃ〜、最高のライブだったぜ!!)
「Ich jage ihm, nachdem das ganze Japan am besten ist」
(おぅ、やっぱ日本は最高だな)
演奏を終えたNINJA COREのメンバーが続々とステージ袖へ入ってくる。
彼らの着ているTシャツやタンクトップの湿り具合を見ると、激しいパフォーマンスだったことがわかる。
「Siehe es he! Es ist echtes Iori Minase!?」
(おぅ!見てみろよ、モノホンのイオリ・ミナセだぜ!?)
「Ami Futami auch! Wow, es ist Gefühl ernstlich!!」
(しかもアミ・フタミまでいるじゃねぇの!うわー、マジで感激だぜ!!)
「Es sind wir Ihr großer Anhänger!」
(オレ達、あんたらの大ファンなんだ!)
と、NINJA COREメンバーの3人が伊織と亜美に気づいたのか握手を求めてきた。
「・・・ね、ねぇねぇ、いおりん、この人たち何言ってんのか分かる?」
「へ?・・・あ、握手ね!」
差し出された手を見て、伊織は彼らに握手を求められていることを悟る。
もっとも、相手が何を言っているのかはさっぱり分からないのだが。
でもオーストリア出身なんだし、ドイツ語で返せば良いわよね。
「だんけ〜、だんけ〜」
とりあえず伊織はドイツ語でありがとう、と返しながら、握手に応じた。
竜宮小町のライブや握手会には時折外国人が来るので、この辺は手慣れたものだ。
「Woo Hoo!! Wir haben uns mit Iori Minase schließlich die Hände geschüttelt!!!」
(うぉぉ!!オレ達、遂にイオリ・ミナセと握手したぜぇぇ!!!)
「Es war gut, nach Japan zu kommen!!」
(日本来て良かったー!!)
「Domoarigato!!」
憧れの存在に握手してもらえたことで、ニンジャ達はご満悦だ。
「Oh, Das erinnert mich ist dort nicht Azusa Miura?」
(そう言えば、アズサ・ミウラがいないみたいだけど?)
と、メンバーのうちの1人、ドレッドヘアの男がそう言い出した。
「Es ist wahr, wo ist sie?」
(本当だ、彼女はどこにいるんだい?)
「え、えぇ・・・?」
「うぇ〜・・・亜美英語分かんないYO〜!」
突然のドイツ語での質問攻めに伊織と亜美は固まる。
英語ならばいざ知らず、ドイツ語なんて普段慣れ親しんでいるわけでもないのだから、理解できないのは当然だ。
「あと、亜美、英語じゃなくてドイツ語ね」
「それじゃ、なおさら何言ってんのか分かんないYO〜!!」アイエエエエ
ベラベラと意味不明な言葉を話すニンジャ達を前に、亜美はパニック状態だ。
伊織も知っているドイツ語と言えば、最低限の挨拶やバームクーヘンぐらいだ。
「仕方ないわ、こうなったら英語で・・・」
と、伊織が英語でコミュニケーションを図ろうとした、その時。
「ねぇ、ひょっとしてアズサはまた迷子になったのかい?」
NINJA COREメンバーだろうか、顔の下半分に包帯を巻き、両目を赤外線ゴーグルで隠した男が日本語で話しかけてくる。
それも、ほとんど訛りのない完全な日本語だ。
「あっハイ・・・」
突然の日本語に、伊織の声が思わず上ずる。
「君達のライブまではあとどれくらい?」
「スタッフが言うにはあと5分ちょっとしかないって言ってたYO・・・」
そう言いながら、亜美は腕時計を見る。
現在時刻は14時10分、15分までにはライブを始めなければならない。
「ふむ・・・ちょっと待ってね」
赤外線ゴーグルの男はドイツ語で舞台袖を出ようとしていたメンバーの1人、スキー用ゴーグルを掛けた男を呼ぶ。
『Neffe, RiOt?』
(おい、RiOt?)
『Was geschah?』
(おぉ、どした?)
そしてそのまま何事か議論を始めた。
当然ドイツ語で。
「うぇ〜・・・何だか怖いYOいおりん・・・」
「ドイツ語だったり、日本語だったり・・・何なのかしらねぇ」
呆れた目つきで伊織が何やら喋っている2人を見ると、いつの間にやら会場スタッフ数人まで議論に合流していた。
さて、議論を始めること約3分後。
「あの2人はいつまで喋ってんの!もうあと2分しかないのよぉ!!」
なかなか終わらない議論に伊織はイライラを募らせていた。
亜美も舞台袖で「やばいやばい」と焦っている。
「イオリ!アミ!ちょっと来てくれ」
と、赤外線ゴーグルが伊織と亜美を呼び集める。
「何よ!こっちには時間が・・・」
「落ち着けって!良いか?今スタッフに頼んで少しだけ空き枠をもらったんだ」
「え!?マジで?」
「あぁ、でその間にアズサを探すって寸法なんだが・・・問題はその間のステージをどうやって繋ぐかだ」
言いながら、赤外線ゴーグルは舞台袖の遮蔽物越しにギャラリーの方を見た。
ギャラリー達も中々始まらないライブに心なしか少し苛立ち始めているようだ。
「そうよ、時間があってもそれまで何もないんじゃお客さんは皆帰っちゃうわ・・・」
「そう、まさにその通りさ。だから・・・俺たちが時間を稼ぐ」
そこで赤外線ゴーグルは人差し指を立て、こう言った。
「そこで、だ。俺は君・・・特にイオリに協力してほしいのさ」