「ちっ、どこなんだよ、ここ・・・」・・・・ゼスト
「私ってばまた迷子になっちゃったのかしら〜」・・・・三浦あずさ
作者の一言
またしても投稿遅くなって申し訳ありません!
今回もかにかまさんの作品『閻魔大王だって休みたい』とのコラボ回です!
『閻魔大王だって休みたい』URL
http://novel.syosetu.org/14140/
夏祭の少し前・学園都市大通り・・・・
「っあぁ〜・・・久々の地上だ〜」
「うぉ、まぶし・・・」
照りつける陽射しに顔をしかめながら人混みの中を歩いている男が二人。
一方は多少癖のある黒髪に真っ黒な瞳を持つ男、もう一方は色素の抜け落ちたような白髪に赤い瞳を持つ男だ。
「おぉ?地下暮らしの閻魔大王サマはお天道様がお嫌いかい?」
黒髪の男が白髪の男---ヤマシロ---に話しかける。
「バッカ、ちげーよ。それに、地下暮らしなのはお前も同じだろーが」
ヤマシロも黒髪の男---ゼスト---に返す。
「そいつは道理だな、兄弟。はっはっはっ」
と、ゼストは朗らかに笑った。
そう、この2人は両者とも人間ではない。
ヤマシロは地獄の番人・閻魔大王、ゼストは死を司る死神なのだ。
彼らは今、昔からの付き合いであるルシフェルの厚意で人間界にある顔巣学園の夏祭へ訪れているのである。
「・・・しっかしまぁ、しばらく見ないうちにえらく技術は進歩したんだな」
ヤマシロは大通りを行き交う車の行列を、そしてスマホや携帯片手に行き交う人々を交互に見ながら呟く。
人間界の常識が大昔で止まっているヤマシロにとって、この平成の世は実に目覚ましい進化を遂げた時代なのだろう。
「えーと、かおすがくえん、かおすがくえん……あ、ここか」
と、地図を確認しながらゼスト。
「噂にゃ聞いてたが・・・でけえ学園だなぁ、おい」
ちらりと地図に目をやり、ヤマシロは舌を巻いた。
紙面に記された規模からしてみても、その広大さがつぶさにわかる。
「こんだけ敷地が広いと、迷っちまいそうだ」
言いながら、ヤマシロはゼストに目を向けた。
「何だよ、俺がまた迷子になるってのかよ」
「ゼストの方向音痴は筋金入りだからな」
「へっ、言ってろよ兄弟。こっちも方向音痴はある程度克服したんだ」
ゼストは自信満々と言った感じで胸を張った。
「本当かねぇ・・・」
そんなゼストの姿にヤマシロは呆れたように溜息を漏らした。
で、現在・学園のどこか・・・・
「はぁ・・・はぁ・・・何とか撒いたみたいだな」
ゼストは息も絶え絶えになりながら、偶然飛び込んだ人気の無い教室の扉から外の様子を確認する。
ついさっきまでカメラや凶器を手にした群衆に追い回されていたが、どうやらあちらこちら逃げる内に引き離すことができたらしい。
「やれやれだぜ・・・おい、あんた大丈夫か?」
と、ゼストは後ろを振り返り、先刻巻き込んでしまった女性〜三浦あずさ〜の方を見やる。
彼女は先刻、白い某乳酸菌飲料を頭からひっ被ってしまったため、ゼストの着ていたアロハシャツを羽織っている。
「はい・・・何とか」
「すまねえな、あの状況じゃ巻き込まざるを得なかったんだ」
「いえいえ、そんなことはないですよ。私こそあんな所を助けていただいて、本当にありがとうございます」
柔和な笑みを浮かべるあずさに、ゼストも少し顔を綻ばせた。
それにしても、とゼストはあずさの顔を覗き込みながら続ける。
「あんた、随分と顔が広いようだが、ひょっとして有名人か何かかい?」
「はい〜、765プロの方でアイドルをさせていただいております」
「ほぅ、765プロでアイドル・・・え?」
と、突然ゼストの顔から表情が消えた。
「・・・今、765プロっつったか?あんた」
「はい・・・え?どうかなさったんですか?」
ゼストの反応にあずさは少し驚いて尋ねる。
「・・・律子ンとこのアイドルかよ」
おいおい、そりゃあねぇだろーが・・・・
ゼストは眉間を摘んだ。
「あの、ひょっとして律子さんのお知り合いでいらっしゃるんですか?」
「ん〜、まぁ、そんなとこだな・・・」
知り合いも何も、あのじゃじゃ馬のツラはもう二度と拝みたくねぇよ・・・・
そう口に出しかけた言葉を、ゼストは無理やり肚の中に抑え込んだ。
そう、秋月律子とゼストは知り合いという名の腐れ縁で結ばれたコンビである。
数年前、人間界と天地の裁判所を行き来する生活を送っていたゼストは、ある人物の魂を刈り取るべくとある学校に潜入していた。
人の命を奪うことを生業とする死神、さらに言えばゼスト自身は人間と死神のハーフなのだが、一応は”死を司る神”としての神格を持つために、持ち前の改変能力を駆使して周囲の人間達の目を誤魔化しながらターゲットとなる人物に近づいていたところを、当時高校生の秋月律子に見破られてしまったのである。
人間の中にはごく稀に神の持つ改変能力を受けつけない人物がおり、それが秋月律子だったのだ。
・・・・そんなこんなで死神であることがあっさりとバレてしまったゼストは、死神である事を隠しておいてやる代わりに律子から雑用係という名のパシリをさせられていたのである。
結局ゼストは1年もの間彼女にありとあらゆる面倒事を押し付けられた挙句、ターゲットも同業者に横取りされてしまい、色々と不憫な目に遭い続けたのだ。
「・・・今思い出しただけでも忌まわしいぜ」
「あの・・・律子さんとの間に何かあったんですか?」
「いや、何でもないよ」
ゼストはやつれた目元を擦りながら、力無く答えた。
果たしてこの死神と765プロのプロデューサーとの間に何があったのか。
それはまた、別の話。
一方その頃、顔巣学園第6グラウンド特設ステージ・客席・・・・
『竜宮小町まだか〜?』
『遅っせぇよ!!』
『早くいおりんを出せー!!!』
『あずささんはまた迷子ですかー?』
『亜美は違法!!』
『真美は合法!!』
『バカヤロー、どっちも合法だァァァ!!』
ニンジャ・コアのステージ終了後、入れ替わりで竜宮小町のライブが行われるはずが、ステージ上に全く現れないメンバーに客席は荒れに荒れていた。
皆が口々に不平不満や竜宮小町コールを叫ぶ中、
「うぅ・・・ニンジャ・コア・・・間に合わなかった・・・・」
客席の片隅、グラウンドの端っこの方。
燃えるような真っ赤な髪をポニーテールにした少女がニンジャ・コアのTシャツを握りしめてしくしく泣いていた。
「・・・いつまでめそめそしてるんですか、亜逗子」
と、青髪をショートヘアにしたメガネ少女が赤髪の少女 〜紅 亜逗子〜を宥める。
「麻稚ぃ・・・あんたにゃ分からんでしょうねぇ!あたいがどんなに人間界の素晴らしすぎるカルチャーに投資しまくっているかなんて!!!」
亜逗子は涙を滝のように流しながらメガネ少女 〜蒼 麻稚〜 に抗議する。
「あなたがこっちの世界のバンドやらアニメやらにお給金を消化しているのは知っていますが・・・たかだかライブに間に合わなかった程度でそこまでオイオイ泣くほどのことではないかと」
「泣くほどのことだよ!!あんたねぇ、今ニンジャ・コアがどんだけ人気あるのか知ってる!?1万人だよ!!??えぇ、一回のライブで1万人動員すんだよ!!!???チケットだって正規ルートだったらおいそれと買えないし、バンドマーチなんて発売開始直後に速攻売り切れ御免なんだよ!!!!????」
一気呵成に、ニンジャ・コアがいかに凄いかを力説する亜逗子。
一方の麻稚は面倒臭そうに耳をほじほじしながらそれを「はいはい」と聞き流している。
「まぁ、私は生いおりん・・・竜宮小町が拝めるなら何でも良いので」
そう言う麻稚は推しメンである水瀬伊織の名前が刺繍された法被に『いおりんLOVE』と書かれた団扇を持ってライブへの準備は万端、といった出で立ちである。
「・・・そう言えば麻稚、あんたのその格好」
「?私の勝負服に何か?」
「・・・いや、やっぱ何でもない」
亜逗子は拗ねたように大きく溜息を漏らす。
「・・・・・それはそうと、いつになったらライブが始まるのでしょうか?かれこれ15分経ちますが?」
「や、あたいが知るかよ・・・」
顔巣学園第6グラウンド特設ステージ・舞台袖・・・・
「え?協力?私が?」
伊織の言葉に赤外線ゴーグルは頷く。
「オレとRiOtが竜宮小町のRemix音源を流すから、キミはそれに合わせて歌って踊ってくれれば良いんだ」
「でも、あずさは今いないのよ?それに、音源って言ってもほとんど私だけが歌ってる曲なんて無いし・・・・」
「あぁ、もちろんそれは分かってるさ。こっちにも作戦はある」
言いながら、赤外線ゴーグルはスキーゴーグルの男 〜名前はRiOtと言うらしい〜 に目配せをした。
その一方で伊織は不安そうに毛先を弄くる。
本当に大丈夫なの・・・これ?
「ねぇねぇ、亜美は?亜美は何すればい→の?」
と、ここで1人蚊帳の外だった亜美が割り込んでくる。
そういえばいたのをすっかり忘れていたな、と赤外線ゴーグルは後ろ頭を掻いた。
「え?あぁ、ごめん忘れてたよ」
「え→!!亜美も忘れないでよぉ→!!」
存在をすっかり忘れ去られていた亜美はおかんむりだ。
まぁそうカッカしなさんな、と赤外線ゴーグルは亜美の頭を撫でた。
「んん、アミは・・・そうだな、アミはブレイクダンスとかできるか?」
「あったりまえっしょ→!アイドルなんだからそれくらいヨユーのよっちゃんだよぉ!」
言いながら亜美はその場でラビット -片手で逆立ちをする技- をしてみせる。
「よし、じゃ、アミと俺はバックダンサーをやろう」
「んっふっふ〜、ゴーグル兄ちゃんは亜美のダンスについてこれるかな〜」
『Sie verlassen sich auf die Ablaufsteuerung als DJ. Es ist in Punkten laut!』
(RiOtはDJとシーケンサを頼む。派手にブチ上げてやんな!!)
『Ayo! Es ist der Anfang der ninja Partei!』
(よっしゃ!ニンジャパーティーの始まりだぜ!)
「ちょ、ちょっと待ってよ!私はまだやるとは・・・」
と、今まで黙っていた伊織が勝手に盛り上がっている3人に突っ込む。
「それに、あずさだって行方知れずなのに・・・会場にいるお客さんは三人揃った竜宮小町を見に来てるのよ。それが一人でも欠けたら、そんなの竜宮小町とは言えないわ」
「イオリ」
と、赤外線ゴーグルは伊織のほっぺたをムニッと両側に引っ張った。
「ちょ、にゃにひゅんのよ」(ちょ、何すんのよ)
「お固いね、その考え方は実に固い」
伊織のほっぺたをムニムニやりながら、赤外線ゴーグルは愉快そうに続ける。
「まあ、確かにイオリの言うこともわかる。でもさ、変な固定観念に縛られてると身動き取れないぜ?」
「しょ、しょれはわかってるへど・・・」
伊織は声をもつれさせる。
いや、確かにこの赤外線ゴーグルの言うことはもっともだ。
しかし、だからと言って何でもすぐに実行に移すのは危険だ。
まして、メンバー不在の急場凌ぎともなれば尚更である。
今まで共演したことのないアーティストとの、それも即興コラボレーションは失敗するリスクも高い。
いや、先ほどのライブを見る限り、確かに彼らの演奏技術は非常に高い。
だが、だとしてもだ。
「もしも・・・もしも歌うパートを間違えたら?音とダンスが少しでもズレたら?お客さんは失望するし、ゴシップ記事のネタにもされかねないのよ?」
「あぁ、確かにそうだ。でも、やってみなきゃどうなるかはわからない」
言いながら赤外線ゴーグルは伊織のほっぺたから手を離し、代わりに彼女の頭に手をポン、と置いた。
「それに、君の登場を待ってる人はたくさんいる」
「私を・・・待ってる?」
「そう、何なら外の様子を見てごらん?」
言われるがままに、伊織は外の様子を伺った。
顔巣学園第6グラウンド特設ステージ・・・・
「・・・竜宮小町、出てこないねぇ」
「確かに、舞台転換にしては少し遅いな」
竜宮小町コールに沸くグラウンドの端。
唯と氷川は紙コップ片手に騒ぐ群衆を見守っていた。
「・・・あれ?京多くんいつの間に戻って来てたの?」
「うん、もう暴れるだけ暴れたからな」
そう言う氷川は大量の汗ともみくちゃにされたせいでシワだらけになったカッターシャツという格好だ。
反対に唯の方は最初こそモッシュの中に混ざろうとしていたようだったが、あまりの熱量と喧騒に圧倒されて気がつけば端っこの方に追いやられていた。
「ニンジャ・コア凄かったなぁ、久々に暴れちゃったよ」
「私は全然ついていけなかったよ・・・」
と、唯は頬をぷくーっと膨らませながら言う。
「まぁ、仕方ないよ。モッシュって時々怪我することもあるし」
「えぇ・・・あれ?そう言えばまさみちゃんと律っちゃんは?澪ちゃんもいないし」
「あぁ、あいつらならペンライト買いに行ったよ。唯も行かなくて良いのか?」
「ふっふっふー、私はもう準備してるのだー!」
言いながら、唯はサマーセーターの中からペンライトを2本取り出して見せる。
「おぉ、準備万端じゃないか」
「もちろん!何たってあの竜宮小町が学校に来るんだもん!!」
ふんすふんす!と鼻息を荒くする唯。
唯は本当に竜宮小町が好きなんだなぁ〜、と氷川がほっこりしていると。
『いぃぃぃおぉぉぉりぃぃぃんんんンンンンンン』
『うぉぉぉおおおおいおりんを早く出せぇぇぇえええ!!』
『いおりん!いおりん!いおりん!』
人集りの丁度ど真ん中、野太い大合唱とそれに混じって悲鳴が聞こえてくる。
見ると、竜宮小町のファンだろうか、ピンクの法被を着た集団が先刻のモッシュよろしく暴れているのが見えた。
「・・・なぁ、唯」
「・・・何かな?」
「あいつらさぁ、竜宮小町をスクリーモバンドか何かと勘違いしてるんじゃないか?」
「京多くん、その例えはちょっとわかんないや・・・」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「はて、何やら向こうが騒がしいですわね」
「何かいおりんいおりん言ってんな」
「・・・あの法被、もしや『いおりんをペロペロし隊』の同志・・・?」
「は?何だそれ?」
「なるほど・・・これは、私も負けてられないわ・・・!」
「ちょ麻稚!?ど、どこ行くんだよぉー!!??」
第19話に続・・・く?