顔巣学園の平凡な超常   作:アカシックレコード

3 / 21
「人生で重要なのは、生きることであって、生きた結果ではない。」・・・ゲーテ

「イーノック、そんな装備で大丈夫か?」・・・ルシフェル

「大丈夫だ、問題ない」・・・イーノック

「何言ってるんですか」・・・氷川京多



第2話:校長ってなんか太ってるイメージあるよね

校長室である。

校長室と聞いて、読者諸君は普通の学校にあるような普通の校長室を思い浮かべるかもしれない。

部屋の中央には応接用のテーブルとソファ、窓を背負う位置に校長専用のデスクがでんとある、何というか、ぶっちゃけて言えば、非常に辛気臭く、つまらないものを連想するかもしれない。

と、ここで「だからどーした?」と聞く奴が居るだろう。

確かに上に挙げた例は、常識的で、良識的すぎるごくごく普通の学校の場合である。

まあ、ここいらで言いたいことをまとめて言うなら・・・・・顔巣学園の校長室は、異次元にあったりするんだよね。

当然、異次元にあるわけだから、おおよそ普通の校長室とは乖離した空間なワケで・・・

まず、その校長室には天井が無かった。

天井が無いってことは、壁も無いってこと。

・・・と、ここまで書くと、まるで「校長室は面倒くさいから省いたお、テヘッ☆」と言っている様に聞こえるだろうが、決してそうではない。

どちらかと言えば、めっちゃくちゃ高い塔の頂上、という表現が正しいだろう。

その『めっちゃくちゃ高い塔の頂上』には転落防止のためなのかどうかは知らないが、柵が設けられており、そこから下を見下ろすと、まあ、言わずもがなだがごっさ高いわけである。

で、そんなごっさ高い場所には学園と異次元にある校長室(?)を繋ぐ扉に前述の普通の校長室にあるようなデスクが置いてあり・・・・そのデスクには男が座っていた。

紅い瞳に精悍な顔立ち。

背丈はすらりと高く、オールバックにした髪に黒いカッターシャツを着崩し、ジーンズを履いたその姿はどこかアバンギャルドな雰囲気を醸し出しており、往年のファッションモデルを髣髴とさせる。

 

「ああ・・・うむ・・・・そうだな・・・・」

 

男はスマートフォン片手に何やら雑談している。

まあ、ここまで来たら、聡明な読者諸君は理解できたであろう。

彼がこの顔巣学園の7代目学園長・大天使ルシフェルだということに。

 

「・・・ああ・・・ああ・・・分かった・・・」

 

ルシフェルはスマートフォンの通話モードを切り、デスクの上に置いてあったコーヒーの入った紙カップを自らの口に運ぶ。

 

「何じゃ~?またデウスと会話しておったのか~?」

 

と、ここでルシフェルの後ろから妙な喋り方の女の子の声が聞こえる。

 

「ああ、まあな・・・」

 

ルシフェルはコーヒーを啜りながら答える。

 

「それで?デウスは何か言っておったかのう?」

 

「特に何も言っていなかったよ・・・聞かれたのは近況と生徒の様子ぐらいだ」

 

「ぐぬぬ・・・デウスの奴め・・・ワシを左遷しておいてぬけぬけと・・・」

 

「まあ、デウスはかなり気まぐれなお方だからな・・・」

 

そう言いながらルシフェルは後ろを振り返る。

そこではルシフェルの小間使い・・・のアルバイトをしている少女―――ムルムルがPSPを弄っている。

紫色の髪を、ツインテールともつかない微妙な髪型で結わえ、その小さい身体に不釣合いな無駄にでかいブーツを履いて、腰には何故かラッパを下げている・・・ある意味、ルシフェル校長以上にアバンギャルドな風体である。

 

「・・・まあ、彼も私と同じく忙しいんだろうな、色々と」

 

「・・・それをお主が言うか・・・?」

 

ムルムルはルシフェルのスマートフォンを見て言う。

 

「お主はいつもケータイで雑談をしているようにしか見えぬのじゃが?」

 

「まあ、それも仕事の一つだ」

 

ムルムルの指摘にルシフェルは笑いながら答える。

 

「というか、ムルムル、お前も毎日毎日モンハンしかやっていない気がするんだが?」

 

今度は逆にルシフェルがムルムルに指摘する。

 

「今日はグランツーリスモじゃ」

 

と、ムルムルはルシフェルにPSPの画面を見せる。

画面の中では至る箇所にムルムルの顔がペイントされた、所謂痛車がサーキットを駆け抜けている。

 

「・・・お前、結構ナルシストだな・・・」

 

「まあ、本編ではほとんど出番が無かったからのう」

 

と、ここでムルムルがメタ発言。

まあ、基本的に誰も気にしないから良いんだけどね。

 

コンコン・・・

 

校長室(?)に扉をノックする音が響く。

どうやら来客のようだ。

 

「ああ、入っても良いぞ」

 

ルシフェルが答える。

ガチャリ、という音と共に扉が開き、校長室(?)に男が入る。

入ってきた男は金髪のロン毛で上半身裸にジーンズを履いた、あまりにもと言えば、あまりにも変態的なビジュアルの青年だった。

 

「おお、イーノックか、何の用じゃ?」

 

ムルムルは彼をイーノックと呼んだ。

そう、彼は顔巣学園の体育教師・イーノックだ。

決して変質者ではない。

最近、女子生徒(特に中等部、初等部)の間で彼がセクハラをしていると噂になっていたりするが、決して変質者ではない。

決して変質者ではない。

大事なことなので二回言いましたよ。

さて、その変質・・・じゃない、イーノックはルシフェルを真っ直ぐと見据えて、こう言った。

 

「一番良い装備を頼む」

 

「・・・よし分かった」

 

するとルシフェルはイーノックの言わんとする意図を読み取ったのか、右手を天に掲げ、指鳴らしをした。

パチン、と乾いた、しかし凛とした音が空間に響き渡る。

刹那、床から白い液体が湧き出し、イーノックの身体にまとわりつく。

白い液体はやがて硬質化していき、数秒も経たぬうちに上半身裸でジーンズ姿だった変態的ビジュアルは白い鎧を纏った神秘的ビジュアルへと変貌を遂げていた。

 

「今回の標的はアザゼルか・・・苦しい戦いになるが、大丈夫か?」

 

ルシフェルがデスクの書類を見ながら問う。

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

イーノックはわずかに含み笑いをすると、塔の端に立ち、

 

「・・・・っ!!」

 

助走をつけて塔から飛び降りた。

 

「頑張るのじゃー」

 

ムルムルが塔から下を見下ろし、落ちてゆくイーノックに叫ぶ。

イーノックは自由落下を続け、最終的に姿が見えなくなった。

 

「さて、ワシは遊びに行くとするかのう・・・」

 

ムルムルはPSPをブーツの中にしまい込みながら言う。

 

「ああ・・・構わないが、あまり遅くなるなよ?」

 

「分かっておる」

 

言いながらムルムルは紫色の煙と共に何処かへと消えた。

 

「全く・・・いつもいつも気楽な奴だな・・・・」

 

ルシフェルはデスクに置いてある飲みかけのコーヒーを飲み干しながら呟く。

 

「・・・うん、私も少し空けるとしようか・・・・・」

 

パチッ、という凛とした音が空間に響き渡る。

次の瞬間、校長室(?)からルシフェルの姿がかき消えた。

代わりにルシフェルが先ほどまで座っていたデスクにはこんなメッセージが残されていた。

 

『Cras noli superbire. Quod in una die, quoniam adhuc nescio. Utique, scio. Multi etiam venire ad Kyota post quasi 30 minutis abessemus et nunc, et quid haec essent dicere inviso tenorem. Quia ego archangelorum. Accidit mihi heri, et fortasse vos guys res cras.』

(明日の事を誇るなかれ。一日のうちに何が起こるのか、お前はまだ知らないからだ。無論、私は知っている。今から約30分後に京多が来ることも、この文面を見て何とツッコむかも。何故なら私は大天使。私にはつい昨日の出来事だが、君たちにとっては多分、明日の出来事だ。)

 

 

―――30分後・・・

 

 

「失礼しまーす・・・」

 

そんで30分後。

メッセージに書いてある通りに氷川京多は校長室にやってきたのである。

 

「あれ、誰もいない・・・・?」

 

京多は抱えていた書類の束をデスクの上にでん、と置いた。

今日の終礼時に担任である佐藤田中から持っていってくれと頼まれたものであった。

 

「ふう・・・佐藤先生も人遣いが荒いなぁ・・・・」

 

京多はデスクに寄りかかりながら、独りごちる。

と、ここで京多はデスクの上の二つ折りになったメモ用紙に気がつく。

 

「・・・?何だこれ・・・・」

 

メモ用紙を手に取り、それを広げる。

中にはラテン語で聖書の一部分とルシフェルのメッセージが書かれていたのだが・・・・

京多にはラテン語など分かるはず無いワケで・・・・

 

「・・・・日本語で書けよ」

 

溜息交じりのつっこみを入れる京多。

すると、メモ用紙の下のほうに小さい字で何やら書かれているのが目に入る。

 

『P.S あ、そうそう、京多よ。購買でジョージアのブラックを買っておいてくれ』

 

「いや、パシリかよ!!つか、何でそこだけ日本語なワケ!!??」

 

そのままメモ用紙を破りまくる京多であった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。