兄アート・オンライン凍結   作:ピリの唄

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サブタイトルがネタバレ。

この次の話から時間が跳ぶよ。


そして2000文字を突破!
長くなりました。どうぞ(*・ω・)つ
ついでに活動報告で質問募集してます。


16クリア

「そういえばライト。君はどっち」

 

どっちとは何のことだろうか。思い当たることがない。そんな風に考えたのがわかったのかリサ(さん付けはいらないと言われた)は言葉を付け足す。

 

「こんなところにいるけど初心者なの?」

「はい」

「……バカなの?」

 

最後の言葉、小さな声でしたけど聞こえてますよ。俺でもそう思うけど。

 

「自殺には付き合えない。私は死にたくないから」

「大丈夫。俺は死ぬつもりはありません。生きて帰ります」

「……なら何故初心者があんなところにいたの」

「事故です」

 

呆れたような目で見られた。

 

「……森の秘薬クエをしてるでしょ?素材はあるの?」

 

呆れたような目のままで話を続けるリサ。恐らく持ってないと思っているのだろう。しかし、花付きを倒している(破裂音が聞こえたときに狩っていた相手が花付きだ)ため、アイテム欄にはクエストの目的である《リトルネペントの胚珠》がある。

 

「持ってる」

 

驚くかな?

 

「…なら早くクリアしてきなさい」

 

リサを驚かせることは出来なかった。クール過ぎるぞ、この人。

 

 

Saidリサ

 

『ライトって本当に初心者なの?』その言葉を口に出さないようにするのは結構難しかった。初心者がこんなに早く胚珠ゲットだぜ!なんてあり得ないよ。本当に訳がわからないよ。

 

見た感じは年下。そして自称初心者。しかし、短期間でネペントを狩りまくり、胚珠も手に入れている。これはまたやっかいな拾い物をしてしまったようだ。先ほどはバカなの?と呟いてしまったがその言葉が正しいのかもわからない。

まあ、多分私よりもレベルが上なのよねー、こいつ。年下に守られるのは何か嫌だ。私のレベル上げもあわせて一時的なパーティを組むのは問題ないだろうし。

 

「……クエストの報告くらい一人で出きるよね?」

 

というか一人しかダメなんだけど。

 

「大丈夫ですよ。それじゃ、行ってきます」

「終わったらメールして」

 

メールというかは別として連絡さえもらえれば教えたり出きるだろう。それまではレベル上げに行きますか。リサ、行きまーす!

 

 

Saidライト

 

「終わったらメールして」

 

そう言ってリサは森の中へと静かに入っていった。どうやら待っている間は狩りをしているつもりなのだろう。

 

俺は村の奥にある民家に並んだ。前に一人並んでいるので時間がかかるかもしれない。俺は並んでいる間にリトルネペントの群れから抜け出した(助けてもらったけれども)時に上がったレベルによるステータスを割り振る。敏捷寄りだが筋力にも振る。デスゲームでなければ特化型も良かったが、防御が弱くなったり、動きが遅くなったりするので一応はバランス型にする予定だ。逃げれるように敏捷寄りの。

そんな風に考えながら割り振っていると前にいたプレイヤーが民家から出てきた。いつの間に入っていたのだろうか。武器が新しくなっていないので受けたのかな。

 

ライトは後ろに誰も並んでいないことを確認しながら民家の中へと入っていった。少しは遅くなっても誰も文句を言わないだろう。

ドアを開けて中に入ると、相も変わらずかまどで何かを煮ていたおかみさんが振り向いた。頭上にはクエスト進行中を示す金色の《!》マークが浮かんでいる。

 

「とってきました」

 

そう言って腰のポーチから、《リトルネペントの胚珠》を取り出して渡す。

おかみさんは、一気に二十歳ほど若返って見えるほどに顔を輝かせて胚珠を受け取った。お礼の言葉が連射されると同時に、視界の左の方でクエストログが進行する。

胚珠をそっと鍋に入れるおかみさん改め若奥さんは、部屋の端に置かれた大きなチェストに歩み寄り、蓋を開けた。中から、古びてはいるが、壊れた初期装備とは段違いの存在感を放つ赤鞘の長剣をしずしずと取り出す。そして俺の前に戻ってくると、再度の礼とともに、剣を両手で差し出した。

言葉を出せないままに俺はそれを受け取った。右手に、ずしりとした重さが伝わる。壊れてしまった相棒の一・五倍くらいの重さを感じる。

視界中央にクエスト達成のメッセージが浮かび、ボーナス経験値が加算され、レベルが4になった。

俺は新たな剣を装備すると、近くの椅子にどさっと座り込んだ。後ろに並んでいる人はいなかったし、生き残るために頑張り疲れた。

だから俺はぼんやりと休憩をしていた。すると俺の視線の先で、若奥さんは棚から木製のカップを取り出すと、鍋の中身をおたまでそっと注いだ。

湯気の立つカップを剣より大事に持って奥のドアに歩いていく。

ふと覗きこむとベッドに年の頃七、八歳と思しき少女が横たわっていた。

ゆっくりと起き上がった少女と目が合う。名前は《Agatha》とある。アガサ、だろう。

カップを飲み、少し顔に赤みが増しているように見える。

 

「ありがとう、お兄ちゃん」

 

 

 

 

俺は昔にこんな光景を見たことがある。

和人は直葉の風邪が移り、直葉もまだ寝込んでいた。父親は相変わらず海外赴任中、母親はいたがどうしても会社に行かなければならないということで、俺が二人の看病をしたのだ。そんなときにいきなり二人が生姜湯を飲みたいと言い出したのだ。直葉は「カズお兄ちゃんは作ってくれた」等と生意気なことを言い、和人も調子に乗ったのか「ナオお兄ちゃんなら作れるよな」とも言った。

 

二人分を作って持っていった時に、二人が俺を見て――

 

視界が滲む。

口を押さえてこの世界の真実を理解する。宿屋でも理解したつもりだった。

でも、父親に母親に、カズにスグに会いたい。会いたくても会えない。

 

座ったまま顔を隠し涙が見られないようにする。

 

「………どうしたの、お兄ちゃん?大丈夫?」

 

そんな優しい声はライトの涙が止まるまでかけられていた。




この世界で生きることがどういうことなのかをようやく理解したライト。
もう、戻れない。
彼は理性だけではなく、感情でもそれを理解した。
しかし絶望することなく彼は強くなっていく。
そんななか荒れる攻略会議のなかで、彼はついに弟の姿を見つける。


ついに星なき夜のアリア編に突入
終わりの見えないこの世界を俺たちは生き続ける。
次回タイトル、攻略会議


真面目っぽく次回予告
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