Fallout3 Another person of him 作:L1mp
「遅くなってごめん。父さん」
言われた通り、父のオフィスに戻ってきた。父は遅れた事に少し疑問を浮かべていた。
「どうした?残されたのか?」
「いや、姉さんに手を出したブッチ達を倒したら過剰にやり過ぎた事で、監督官に説教を喰らった」
「なるほど。そうゆう事か、だからポールとブッチが運ばれてきたのか」
そう言うと、父は、首に掛けている聴診器を机の上に置き、コンピューターを少し弄る。
「フランシス。扉を閉めてくれないか。誰にも聞かれたくない」
「分かった。けど、そんなに神経質になる話?」
扉のスイッチを押す。油圧式のトビラは音を立てて閉じた。
「フランシス。取り敢えず、座ってくれ」
デスクに対面する様に、置かれている椅子に座る。
「で、こんな神経質になって話す話はどんなのなの?」
父がこんなにも神経質になる話などはかなり興味深い。
「そうだな……何処から話そうとしようか?」
父は少し考えてから、その口を開いた。
「フランシス、大変、ショックだと思うが、お前は私の子じゃない……」
父の口から放たれたその言葉は、どんな出来事よりも衝撃的だった。
「父さん……それってタチの悪い冗談じゃ……ないよね?」
父の辛辣な表情からも読み取れるが、何よりも父の言葉が今、一番の信頼がある。
「冗談なんかじゃ、ない。本当だ。お前は拾い子なんだ。ここVaultの地下原子炉階層で見つかった」
つまり、姉さんや父さんとの血の繋がりはない?
「それじゃ……他に親がいるでしょ?父さんじゃない、実の親が」
これもまた、辛辣な表情で言う。
「いないんだ。お前には、このVaultには親がいない」
「すまない、こんな話などしなければ良かったんだが、そろそろ動き出すときなんだ……」
親がいない、原子炉階層で見つかった?じゃ、俺は誰の子だ?
「本当にすまない。もう私の事を、父親だなんて思わなくてもいい」
……。父の事を。
「父さん、少し、考えさせて……」
父の声が震えながらも言った。
「すまない、本当にすまない」
恐らく、目の焦点や意識がハッキリとしてないだろう。それほどショックなのだ。
父さんの子じゃない。姉さんとも血縁関係はない。なら、この十六年間、騙されて生きてきた?姉さんは知っているのか?
俺の足取りは定まらなく、いつの間にか、原子炉階層へと向かっていた。
「ここで、見つかった?」
原子炉が稼働する中で、何処となく懐かしさを感じる。
「ん?誰だ?」
人が居たのか。
「なんだ、ジェームズの子か……」
居たのは技術屋のスタンリー。スパナで原子炉の調整をしていたのだ。
「スタンリーさん。俺は、父さんの子じゃないんだ……」
うっかり喋ってしまう。しかし、その口からの言葉を止められない。
「ジェームズは話したのか……」
その口ぶりはまるで知っているかの様な、いや、確実に、知っていた。
「知ってたんですか?」
原子炉の調整を止め、スパナをベルトに止める。
「もちろんだ。なんたって俺が見つけたんだ」
「貴方が?俺を見つけたんですか?ここで?」
スタンリーは、記憶を探るかの様に、話し始めた。
「ああ、そうだ。俺は、まだ一歳になってない布にくるまって眠っていたお前を見つけたんだ。丁度、今の様に作業してる時」
「そこで、ジェームズに相談したんだ。彼は君の健康状態を診ると、なんと、じぶんが引き取る、なんて言ったんだ」
「そこで、理由を聞いたら、亡き妻、つまり、カレンちゃんの母親に雰囲気が似ている、という事だ」
「そんな事が、姉さんと父さんに……」
「そうだ。だけど一つ言わせてもらってもいいか?」
「なんでしょう?」
腰に左手を当てて、右手で禿げている頭を掻きながらスタンリーは言う。
「別に血の繋がり、とかは関係ないんじゃないか?君にはあの二人との十六年間の思い出がある。こう、偉そうに言えないが、多分、関係ないと思う、ぞ」
「スタンリーさん……」
確かに、そうだ。あの人は、拾い子の俺を家族として引き取ってくれた。そして、育ててくれた。我が子の様に。姉さんと同様に……。
「ありがとうございます、スタンリーさん。何か吹っ切れた感じです」
照れくさくなっているのだろうか、まだ残っている髪の部分をスタンリーさんは掻く。
「別に良いって事よ。それに、君を見てる限り、カレンちゃんを家族としての別の感情で見てないかい?」
「いえ?多分、それは無いと思います」
「そうなのか」
スタンリーさんに、お辞儀をして、父のオフィスに早足で向かった。
父さんのオフィスの扉の前まで来た。しかし、扉は閉じられているが、中からの微かに聞こえる声で、父さんと姉さんが中に居る事がわかる。
「そんな……フランとの血の繋がりがない……?」
「そうなんだ、娘よ。彼は、拾い子で、俺が引き取ったんだ」
「父さん。冗談じゃないでしょ?エイプルフールは終わっているよ……」
声が震えている。俺と同じなのだろう。
泣きそうだ。
「残念だが、冗談でも、嘘でもない。本当の事なんだ」
「そう……なの……」
「カレン。勘違いしないでくれ、騙していた訳じゃない。まだ話すのには早いかと思って話せなかったんだ」
「そう……分かってる……」
ここで、扉のスイッチを押す。
油圧式の扉が開いて、中が見えた。
姉さんは涙を流し、驚き、父さんも同様、驚いている。
「ごめんね、姉さん。こんな事だったんだ」
「フランシス、お前が謝る事じゃない。俺だ、俺が一番、謝るべきなんだ」
また、扉のスイッチを押して、扉を閉める。
「父さん。気にしないで。姉さんと父さんは家族だよ。血の繋がりなんて関係ない」
「フラン……」
「姉さん、泣かないで。折角の可愛い顔が台無しだよ。大丈夫、居なくなったり、なんてしないから」
「うん……分かった……」
姉さんをなだめて、父さんと話す。
「スタンリーさんから聞いた。姉さんは母を父さんは妻を亡くしたって」
「ああ、そうだ」
つい、涙が零れてしまう。
「どうして……もっと早く、言ってくれなかったんだ……」
「本当に申し訳ない。お前には、話すのはまだ早いと思ったんだ……」
「分かった……、そして、一つ、約束してくれ。俺たちの前から居なくなったりしない、と。俺は、親がいないっていうのは違う。父さんがいる」
「そして、姉さんには父さんしか親がいない。決して、いなくならないでくれ」
「わ、分かった……。約束する……」
しかし、その言葉を言った父の顔は、守れない、という感情を物語った顔だった。