それでも彼女を愛してる   作:トクサン

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現在

― 絶対に救って見せる 

 

    例え 何を犠牲にしても

 

 

 早朝、朝早く差し込む光に気付き起床する。申し訳程度に掛けられていたタオルケットを退けて起き上がり伸びを一つ、パキパキと体中の骨を鳴らしながら意識を覚醒させる。息を大きく吸い込むと肺に新鮮な空気が行き渡り、僅かに世界が色を取り戻した。

周囲を見渡すと見慣れた部屋、障子に畳、木製の机に敷かれた布団。和室の匂いが鼻腔を満たし何となく安心感を覚える。枕元に置かれた相棒を手に取り、それから ー

「おはよう、雫」

 俺の寝床の近くに横たわる彼女に声を掛ける、だが返事は無い。

 彼女は寝坊助なのだ、朝にはとても弱い。

 そもそも返事を期待せずに行われるそれは俺の寝起きの儀式みたいなものだった、彼女の返事を待たずに立ち上がると和室を後にする。後は適当にシャワーを浴びて朝食を軽く取り、出発の準備を終えたらエントランスホールへ。

「行ってきます」

 広い空間に俺の声だけが木霊する、それも慣れたモノ。

 俺は仕事道具を手に屋敷の外へと歩き出した。

 

 

 夏の都会は非常に暑い。

 蝉が(やか)しく鳴きわめき、熱気で視界が歪んで見える。汗を掻いた首元に冷たい空気を送りながら歩く。車やバイクが使えれば良いのだが、残念ながら此処周辺でガソリンは貴重だった。故に緊急時以外は出来るだけ使わない様に気を付けている。そうでなくとも冬への備えは必要だろう、俺は背嚢を背負い直しながらアスファルトの道を行く。

「お、あれは‥‥」

 少し行くとスクランブル交差点が見えた。幾つもの自動車が乗り捨てられ、草や苔が生え始めたその中に一台だけ真新しいバンが追加されている。見慣れた光景に混じった異物、俺は心なし早歩きにバンへと近付くと中を覗き込んだ。運転席には(おびただ)しい量の血痕が残っており、後ろには段ボールが二箱程詰め込まれている。どうやら何かを運んでいる途中に襲撃を受けたらしい、積み荷が無事と言う事は恐らく()()()だろう。

「当たりだ」

 運転手が引っ張り出された跡、開けっ放しの運転席側から車内に侵入し後部座席に積まれた段ボールを物色する。中には幾つかの生活用品と食料、衣類なども入っていた。本当に運が良いと俺は笑みを浮かべる、態々(わざわざ)探す手間が省けたと。

「これは‥‥刃物か」

 もう一つの段ボールには武器の類、ホームセンターで入手したのかナイフやナタ、斧と言った刃物、釘打ち機やレンチなども入っていた。これだけあればバリケードも作れるだろう、思うにこれを運んでいた人物は何処か拠点を置いて活動していたに違いない。仲間の居る拠点へ物資を移送中、襲われたと言う感じか。

 ご愁傷さま、そう心の中で死者に告げた後、食料や生活用品をバッグの中に詰め込み、武器は持てるモノだけ持つ。ナタやナイフはホルスターがあったので腰や胴体に無理矢理括り付けて装備した。刃物は貴重だし、出来るだけ多く持っていきたい。だがレンチや折り畳みスコップ、パールなんかは持っていくことを断念。無理をして途中襲撃されたとなっては目も当てられない。一応車の状態やガソリンも確認したが、既にガソリンは空で派手に衝突した為かエンジンはぐしゃりと潰れていた、流石にもう動かせないだろう。

 来た時よりも大分重装備になった俺はバンから降り、周囲を見渡す。早朝六時に活動する人影は見えない。恐らくはその辺りの老朽化したビルや建物に避難しているのだろう、俺はその隙に屋敷へと戻るルートを走る。流石にこの状態で襲われたら拙いので、屋敷に物資を届ける事を優先した。夏の朝から全力疾走、だが生きているだけで儲けものなのだ、文句は言わないさ。

 

「ただいま」

 屋敷に戻った俺はエントランスホールに足を進める、勿論「ただいま」に答える声は無く、空しく俺の声だけが広い空間に響いた。

 調達した食料は厨房の大型冷蔵庫に、保存食は倉庫へ。武器の類は和室の近くにある管理者部屋と言う所に保管していた。生活用品はそのまま和室へ、(ふすま)を開けると俺の寝ていた布団の上で横渡る彼女が見える。どうやらまた二度寝を敢行しているらしい、流石と言うか何と言うか、この分だと本格的に目覚めるのは昼過ぎになるだろう。何となくその事に苦笑しながら、俺は背負った荷物をその場に下ろすと静かに和室を後にした。

「よっし、後は(えさ)だな」

 調達した物資の貯蔵を終えた俺は今日一番の大仕事へと取り掛かる、先程の恰好とは違い夏だと言うのに分厚いライダースーツを着こみ、その上からベストを着用する。無論普通のベストでは無い、アラミド繊維を幾重と織り重ねたNIJ規格「ⅡA」レベルの防弾ベストだ。最も薄いベストではあるが、その分軽量化され動きやすくなっている。この屋敷のSPから拝借したモノだ。ベストの下はライダースーツを着用、転倒時の怪我を軽減する様に中々丈夫な作りになっている為愛用していた。後は足のホルスターにナイフを二本、腰に自動拳銃グロックを差して準備完了、ポーチには予備のマガジンを三つ。鉄板入りのハンドグローブを装着しながら屋敷の車庫へと向かうと、其処にはいくつもの車両が鎮座している。既に使われなくなって一年近くが経過するがメンテナンスは欠かさず行っていた、車の知識など齧った程度だが、まぁやらないよりはマシだろう。

 車庫の片隅、壁に立て掛けられているバイク、二輪車には詳しく無いので名前は知らない。だがそれなりに大型でパワーがある、もしもの場合は連中を振り切れる速力を誇るので重宝していた。ハンドル握って前を向く、必要なのはたったこれだけ。それは俺が友人から教わったバイク操縦の極意だった。実際乗り捨てられた車がそこら中にある街中を四輪車で移動する場合は最悪車両を乗り捨てる覚悟が必要だ、その反面バイクなら隙間を通れるし小回りも良い。元々バイクの操縦がそれ程得意でも無かった俺が此処まで上達出来たのも、そんな出鱈目なアドバイスのお蔭だったりする。

 バイクに跨りキーを差し込む、電子ロックを解除すると徐々に収納される車庫のシャッター。後はアクセルを握れば一気に飛び出せる、その間にフルフェイスのヘルメットを被り頭部を保護、防具としてもそうだが何気頭突きなどをする際には役立つフルフェイスヘルメット。きちんと装着された事を確かめた後、俺は前屈みになりつつアクセルをゆっくりと握った。

 エンジンが回転数を上げ動き出すバイク、車庫の外に出ると真夏の太陽が容赦なく俺を照らした。流石にこの格好は熱が籠る、だが脱ぐ訳にもいかない。せめて隙間から入り込む風で涼むとしよう、大きくアクセルを握り込むと僅かに前輪が浮き上がり、それから猛スピードでバイクは前進を始めた。

 

 







 話の導入部分的な話なので、文字数少な目&展開特に無しです。
お待たせしました、天啓が下りたとか何とかいって色々お待たせしてすみません。
自分なりに「最高のヤンデレってなんだろう」と考えた時、重要なのはその周囲の環境である事に気付きました。
 ヤンデレとは普段の日常生活でも発揮されますが、その輝きが最も増すのは「世界で経った二人だけ」とか、そういうシュチュだと思ったんです。恨み辛み、嫉妬や「どいてソイツ殺せない」も良いのです、寧ろ歓迎して然るべきです、勿論この小説でも出そうと思います。
 しかしメインは「共依存し、共に墜ちていく二人を書く」にしたいと思います。
既に15000文字は書いてあるので、隙を見てぽちぽち投下したいと思います!

大好きな彼女を救うために、どんなことでもする主人公
大好きな彼に助けられ、日に日に人間的な感情を抑えられなくなるヒロイン

 私に書ける技量があるかは兎も角、楽しんで頂けると幸いです。
では、ヤンデレ!
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