リゼさん、ヒョウさんの電話番号持ってて、しかもリゼさん側から電話をかける仲なんですか
梅雨も明け、夏の面影がどんどん濃くなっていく七月上旬。日々上昇する気温に比例するかのように、うちの店――「カニーシェン・アイス」も日に日に客足が増えてきていた。
というか増えすぎていた。この店にレジが一台しかないのも関係しているのかもしれないが、店の前に行列が出来ている。炎天下の中わざわざ並んでまでうちのアイスを買いに来てくれるのはありがたいが、しかしそのせいで非常に忙しい。
ああ、春は店番をしながら惰眠を貪れるほど暇で退屈で無意義な時間を過ごせていたというのに。まあだからといって客足が全く無くなってもそれはそれで困るんだけど。
それに、なんだかんだ言って俺はただ親の仕事を手伝っているだけなので、五時になったら自由時間になる。今は四時半なので、残り三十分。残り三十分で、俺は飽きれるほど暇で平和で無意義な自由時間に浸ることが出来る。そう思うと俄然やる気が出てきた。営業スマイルにも力がこもる。
「はい~、いらっしゃいませ~。ご注文は何にしますか~?」
「ええと、それじゃあこの、木苺のジェラートを……」
その時。胸ポケットが、突然鳴り出した。
ぷるるるるるるるる。
「……木苺のジェラートですね。ちょっとお待ちください」
矢継ぎ早にお客さんに言い、俺は席を外した。
「悪い、母さん。電話なんで席を外す」
ついでに、一緒に接客対応していた母さんにも一言入れて。
店の奥の、扉に「STAFF ONLY」と書かれた部屋に入る。俺は胸ポケットから、小気味よく揺れている携帯電話を取り出した。
種類的にはガラパゴスケータイと呼ばれるそれを開くと、画面には『脳筋』の二文字が。
「……こんな忙しいときに、一体何の用だ」
呟きながらも、俺は『通話』ボタンを押した。途端、耳元にしっとりとしたハスキーボイスが。
『ようヒョウ!お前今元気か?忙しいか?』
「いやせめてもしもしくらい言えよお前……」
開口一番、早口でそうのたまうリゼに、俺は呆れ声をぶつけた。
しかしリゼは、そんな俺のすげない態度を気にも留めず、
『私たち、これから温泉プールに行くんだけど。お前も行かないか?』
「すまんが、今日は家の手伝いがあるので」
『じゃあ終わったらでいいから。いつ終わるんだ?』
「五時だけど」
『それなら、五時二十分くらいだったら来れるよな?』
「来れない事は無いが……」
……だが、行く気はないぞ?何しろ暇で退屈で無意義な時間がなくなってしまうからな。
しかしながらそんな思いとは裏腹に、
『じゃあ五時二十分に現地集合で。水着はレンタルで借りるから、持ってこなくても構わないぞ』
いつの間にか俺が参加すること前提で話が進んでいる。俺はリゼに、温泉プールなぞ行く気はさらさらないことを伝えようとした。が。
「おいリゼ、俺は参加するとは言ってな
『じゃあなヒョウ。ちゃんと来いよ?』
言葉を被せられた挙句、リゼは電話を切りやがった。耳元に規則正しく響く無常な着信終了音を聞きながら、俺は苦々しく呟いた。
「……あいつめ、俺の意見は完全無視かよ」
ごちうさとは一切関係ない話になりますが、魔法科高校の劣等性が二期すっとばして劇場アニメ化するそうですね。取り合えずおめでとうございます。
個人的にはそれと同時に発表されたエロマンガ先生のアニメの方が気になるけれど。