一匙のお姫様物語   作:とりるんぱ

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作中時間が一気に飛びました。
具体化に言うと、前回が単行本でいうと3巻の話なのに対して今回は6巻の話です。
つまり現時点では単行本未収録の話と言うことになってしまうので、単行本派の人はネタバレ注意です。


番外編 なんとなく、彼と彼女はミライを想う。
作中時間が跳躍してる?いつものことだよ


その日の放課後、その教室は緊迫した雰囲気に包まれていた。

 

原因は窓際の席に座る一人の女子生徒である。

 

細身、長身、そして何がとは言わないが圧倒的なボリューム。端正な顔立ちに、2つ結びにまとめた紫髪。スポーツ万能で成績優秀な、我が校のアイドル。

 

ついでに、俺の幼なじみ。

 

彼女、天々座理世は、しかし、いつもとは裏腹に、今は近寄りがたいオーラを発していた。

机に広げられた手元のプリントを、まるで親の仇と相対しているかのように憎々しく睨み付けているのである。

そのプリントには、『進路希望調査』なる文字が書かれていた。

 

「……はぁ~」

 

不意に、リゼが溜息を吐いた。次いで、右手に力を込める。

右手に握られていたシャープペンシルが悲鳴を挙げるかのように、ぎい、と嫌な音を立てた。

 

そんな彼女を見かねて、俺は話しかけた。

「紙を睨み付けても、シャーペンを握り締めても、進路は浮かんでこないぞ~」

 

リゼは目付きを和らげると、俺の方に向き直った。

 

「そう言われても、思い付かないものは思い付かないんだよ」

 

そうして、自信満々に言い放った。

 

俺はこいつ開き直りやがったなと思ったが口には出さず、代わりに肩を竦めた。

 

「思い付かないって言われてもねえ。大体進路希望調査なんて大層な名前ついてるけど、その実聞いてることは『貴方は将来何になりたいですか?』ってことだろ。つまりは将来の夢ってことで、だからそんなに悩むものでも」

 

「その将来の夢ってのが思い付かないんだよ」

 

リゼが俺の台詞を遮って言った。

俺はきょとんとした。

 

「思い付かないって、お前、小中学生の頃はメルヘンでファンタジーなものに憧れてたじゃないか。中学の時の職業インタビューも花屋に言ってたし、今回もそういうのでいいんじゃーー」

 

そのとき、リゼが拳を固く握りしめるのが見えた。

顔には、百獣の王ですらも泣いて逃げ出しそうな殺気だった表情が浮かんでいた。

 

「ーーいいわけないよねごめんなさい」

 

「よろしい」

 

リゼは満足そうに頷いた。

 

「でも、本当に将来の夢とかないのか?それでなくても、リゼはてっきり軍事関係を希望するものと思ってたけど」

 

話の軌道修正を兼ねて、俺は尋ねる。リゼは微妙な面持ちになった。

 

「確かにそういう仕事もいいとは思うんだけど……」

 

「けど?」

 

「……親父と同じ職業につくのは、ちょっと、こう、なんというか」

 

…なるほど。取り敢えず、リゼの親父さんにはこの話は聞かせちゃいけないな。

 

俺が苦笑していると、リゼは、

 

「そういえば、ヒョウの将来の夢ってなんなんだ?」

 

と訊いてきた。

 

俺は眉をひそめる。

 

「……いきなりなんだ?」

 

「いや、私に訊いてきたんだしこっちも聞き返そうかなって」

 

「あ、そう。まあ別に隠してるわけでもないし言うけど。

 

……さっきも言ったけど、進路って要は将来の夢ってことだろ?

だったら夢はでっかく持ちたいじゃん?」

 

「うんうん」リゼは相槌をうった。

 

俺は、平生より少しだけ大きい声で、胸を張って答えた。

 

「という訳で、俺の将来の夢は石油王だ」

 

「おい」

 

「ちなみに第二希望は不動産王だぜ」

「第一希望とさほど違いがないじゃないか!」

 

「それは違うぞリゼ」突っ込むリゼに、俺は真顔で返す。

 

「不動産王よか石油王のが稼げる」

 

リゼは頭を抱えた。

 

「……まさかとは思うが、それ、進路希望調査票に書いてないよな?」

 

「書いたに決まってるじゃないか。何のための将来の夢だと思ってんだ」

 

再び、真顔で返す。

 

「……………………………………」

 

リゼはたっぷり3秒以上も絶句した。そして、それから。

 

「バカじゃないか?」

 

まるでゴミでも見るような目で俺を見つめてきた。




6巻の話と書いたけど、正確にはその話で出てきた設定をを元にしたオリジナル作品なんだよね。もうわけわかめ。
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