「バカとはなんだよ」俺は口唇を尖らせた。
「想像を絶する金持ちになりたいというはっきりした夢だぞ。これのどこがバカだというのかね」
「ああ。やっぱりバカだな。全てがバカだ」
何故そこまで悪くいうのだろう。夢見るだけなら自由だというのに。
これは全国民に与えられてしかるべき、地に足のつかない夢を見る権利の侵害ではないか。
リゼは盛大な溜め息を吐いた。
「あー……。私もお前みたいな頭がぱっぱらぱーなやつだったらこうして進路になんか悩んでないんだろうけどな」
……何やらひどいことをぼやきながら。
「酷いな。俺の頭はぱっぱらぱーじゃない。ぱらっぱっぱっぱーだ」
「てめえの頭はハッピーセットかよ……って、そうだな。ハッピーセットだった。すまない、自明のことを聞いてしまったな。本当にすまない」
「ひどくない?」
いくらなんでも、暴言が過ぎると思うんだけど。
俺の訴えは、しかし耳に届いていなかったのかリゼは華麗に無視して、おもむろに立ち上がった。
「よし、他の人に聞くか」
「……は?」
俺が尋ねると、リゼは口元に薄く笑みを浮かべた。
笑みは笑みでも、それは明らかに嘲笑だった。
「お前が全く参考にならなかったからな。他の人に聞きに行くんだよ」
「……そもそも、参考にするという時点で間違ってないか?」
「うるさいな。ほら、行くぞ」
リゼは俺の腕をがっしりと掴み、というか握り締めた。
当然、俺は困惑した。 「……は?なんで?」
「いや、当然だろう。そんな地に足のつかない、つかなすぎて成層圏を突破したまである夢を書いて、承認されるわけないじゃないか」
「承認されなくてもいいだろう。夢見るだけなら自由だ」
「よし、分かったから行くぞ」
俺を掴んだまま、ぐいっと引きずり始めるリゼ。
とても力が強い。ガンダムかと勘違いするくらいだ。むしろガンダムであると確信するまである。
ガンダムに生身の人間が勝てるわけもなく。俺はそのまま、リゼに引きずられていった。
~○~
「というわけで、進路を教えてくれ」
「いきなり何なんだい?」
所変わって吹き矢部部室。絶賛部活動中だというのにでかでかと土足で入り込み、あまつさえプライバシーを侵害することおびただしい質問をされ、流石の部長サマも苦笑を浮かべていた。
「進路だなんて、数多い乙女の秘密の中でも最高級のトップシークレットだよ?それを聞きたいだなんて……」
どころか、ちょっと怒っているようだった。
眉根を寄せて頬をちょっとだけ膨らませる部長。
まずい。流石に無礼すぎたか。
謝ろうと頭を下げようとした俺の前で、部長は突然口角を吊り上げた。
「これは勝負に勝ってからじゃないと教える気になれないなぁ~」
そう言って、リゼと俺にに吹き矢セット一式を渡してくる。ただ単純に、難癖つけて勝負したかっただけのようだ。
リゼは吹き矢を受けとると、ウエスタンにおけるガンマンの拳銃のように手中で回転させ、それから発射口を部長に向けた。
「いいだろう。その勝負、受けてたつ!」
リゼさん、超ノリノリだった。
「お、やる気だね~」
そんなリゼに、部長は微笑んだ。
そして、それから。
「……で?君は?」
俺の方に顔を向けて、訊いてきた。
「もちろんやるよ。むしろやらないわけがあるだろうか、いやない(反語)」
心の中で、リゼがそう決めたのなら俺が逆らう理由もないし、と付け加える。
部長は、
「えぇ~~……」
何故だか、失望感が渦巻いた表情をしていた。
例えるなら、昔から尊敬していた作家様が、案外ロクでなしのだと分かったときのような表情のような。
俺としてもどうしてそんな表情をされるのか分からない。
困惑したままリゼの方を見ると、リゼは額に手を当て、処置なしと言うかのように溜め息をついていた。
少々むっとしていると、リゼは吹き矢を一本渡してきた。
何のつもりだろう。渡された吹き矢をしげしげと眺めていると、リゼは。
何も言わないで、先程の、ガンマンめいた吹き矢捌きを披露した。
嗚呼、そういうことか。
俺は何も言わず、吹き矢を握りしめると。
それを天井に向かって放り投げた。
吹き矢は回転しながら天井につくかつかないかのところまで上昇すると、一瞬だけ時間が止まったかのようにそこに静止し。
直後、体操選手のように回転しながら自由落下を始めた。俺の右手に向かって、吸い付くように、一直線に。
吹き矢をキャッチしてから、さっきのリゼよろしく発射口を部長に向ける。
「俺も、この勝負、受けて立つ!」
部長は嬉しそうに口角を吊り上げた。
「望むところだよ!」
某氏がひさしぶりにごちうさを書いたことにより釣られて更新しました。
まああちらとはお気に入り数も評価も天と地ほどあるんですけどね!!!!!(自暴自棄)