一匙のお姫様物語   作:とりるんぱ

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ヒョウくんは多分アサシンの適正があると思います(何のだ)。

今回は後書きのスペースに三人称視点での今回の話のとある場面を乗せてみました。下書きとかなにも用意してないので即興の文章です。出来はお察しください。


リゼの使用人、それっぽくいうならリゼのサーバント。

所々にレリーフが刻まれた重厚で高級そうなドアを傷つけないように、しかしよく聞こえるようにノックする。中から「どうぞ」の声。そのまま入ろうとして、はて。俺は立ち止まった。

 

このまま入るのは普通すぎる。折角執事服を着ているわけだから、少し「らしい」台詞でも言ってみたい。

ちょっと考えてから、俺は言った。

 

「いかがなされましたでしょうか、お嬢様」

 

がらがらがら。部屋の中からそんな音が聞こえてきた。

 

一体どうしたと思いドアを開けると、恐らくソファーから転がり落ちたのだろう、仰向けに床に寝転がる奇妙な格好のリゼがいた。

 

リゼは俺が部屋に入ってきたことに気づくと、上半身をがばっと起こし、俺を物珍しそうな顔で見つめて

 

「どういう風の吹き回しだ?」

 

と訊いてきた。俺は答える。

 

「こういう服を着ているのにいつも通りの対応っていうのも変な気がしてな」

 

「別に気にしなくていいのに」

 

「そういうわけにもいかないよ。リゼが捻挫した一因は俺にもあるわけだし、こういう形で返さないと」

 

まあ、だからと言って幼馴染みに仕える身になるというのは、一日だけとはいえ凄い微妙な気分だけどな!心の中で付け加える。

 

「そうだったな。ヒョウは昔からそういうやつだった」

 

リゼは苦笑した。

 

「悪戯ばっかりする癖に、責任感だけは人一倍。人に迷惑をかけたときは、手土産を持って謝りに行ってたな」

 

「昔の話は止めてくれ。恥ずかしくて死にそうになる」

 

昔話を始めようとするリゼに、俺はげんなりとした顔で言った。

 

「そんなに恥ずかしがることもないだろうに。ヒョウのそういうところは私、カッコいいと思うぞ」

 

「そ、そうなのか!?」

 

「まあ長い付き合いだし。ヒョウはそれ以上にカッコ悪い所が多いのも知ってるけどな」

 

「やかましい」

 

吐き捨てるように言い、顔を隠すようにそっぽを向いた。リゼはクスクスと笑う。

 

「……なんだよ」

 

「いや?別に、なーんにも?」

 

……何にもないというわりには、クスクス笑いが止まらないというのはどういうことなのだろう。ちょっと失礼ではなかろうか。

 

憮然とした表情でそっぽを向き続ける俺と、それを見ながら静かに笑うリゼ。

 

俺がその空間に耐えきれなくなってきたとき、

 

「~~!?」

 

ココアの叫び声が聞こえてきた。

 

「おや、ココアも来たみたいだな。ちょっと応接してくるわ」

 

早口でそうリゼに言い、逃げるようにその部屋を後にした。

 

 

 

 

 

「人を見かけで判断してしまった!接客業失格だよおぉぉぉぉ!」

 

リゼの部屋を出ると、すぐにココアを発見した。隣にはチノもいる。

 

ココアは何か滅茶苦茶なことをのたまっているが、まあココアの言っていることが意味不明であることはいつものことである。俺は頭を抱え込んだココアとそれを冷めた目で見ているチノに話しかけた。

 

「やあチノ、ココア」

 

「あれ?ヒョウくん?」

 

ココアがこちらを向いた。「何でここにいるの?」という文字が滲み出ているような表情をしている。

 

一方のチノはというと、俺の服を端から端まで舐め回すように検分し、

 

「執事さんです」

 

と言った。ココアもそれに合わせて言う。

 

「ヒョウくん、ここでも働いてたんだ~」

 

「ああ。一日だけだが」

 

そう返すと、何故かココア達は固まった。理由は全くわからないが、何故かココア達は固まった。

 

理由は分からないが。

 

「それよりお前ら、リゼのお見舞いに来たんだろ?リゼの部屋の場所はわかるのか?」

 

ふるふると首を横に振るココアとチノ。

 

「それなら俺が案内するよ。この城、来慣れてない人には迷いやすいからな」

 

そう言って俺は踵を返す。

 

「んじゃ、俺についてきてどうぞ」

 

そのまま数歩歩き出す。しかしチノとココアの足音が聞こえてこない。不思議に思い後ろを振り返ると、未だに固まったままのチノとココアが、微動だにせず突っ立っていた。

 

「チノー?ココアー?」

 

あきれ声で二人を呼ぶ。何でお前らはそんなに動かない。石像にでもなるつもりなのか?

 

そう疑い始めたとき、ようやく二人は動き出した。石像になる気はさらさらなかったようだ。えがったえがった。

 

チノとココアが俺のすぐ後ろまで追い付いてきた。俺は、

 

「よし、じゃあ改めて、リゼの部屋まで案内するぞ」

 

そう言って、二人を先導して歩き始めた。




~Girls Side~





「人を見かけで判断してしまった!接客業失格だよおぉぉぉぉ!」

ココアはそう叫びました。一見すると意味不明なことを宣っているように聞こえますが、これにはちゃんとした理由があるのです。

ココアとチノは今日、捻挫でバイトをお休みしているリゼの家にお見舞いに来ました。勿論、「リゼちゃんの家に来てみたかったから」という個人的な意見もありましたが。

そして、いざ行ってみたリゼの家は、それはそれは立派なお城のような豪邸でした。こんな豪華な家なのですから、メイドさんがいるかもしれない。入り口でお迎えされたらどうしましょう。ココア達がそう思ってしまうのも無理はないことでした。

入り口でココア達を出迎えてくれたのは、坊主頭にサングラスを掛けた大柄の男性でした。まるで総会屋のようなその出で立ちに、ココア達は震え上がります。

「私が囮になるから、チノちゃんは先に行って!このお見舞い用のメロンパン絶対にリゼちゃんに渡すんだよ!」

そう言ってココアは大男達に特攻しました。特攻といっても自分達の素性を説明するだけなのですが、年頃の女の子にとって見るからに危険そうな人と対話するというのはそれこそ命を投げうつ覚悟が必要なのです。

ココアが自分達の素性を説明したところ、大男達は、

「お嬢の友達ですかい」

「ですかいですかい」

すごく紳士的に接してくれました。





「ここで働いているのはああいう方たちなんですね」

入り口での出来事を思いだし、そう感嘆するチノの横で、ココアは叫びます。

「人を見かけで判断してしまった!接客業失格だよおぉぉぉぉ!」

「やあチノ、ココア」

そんなココアに、またもや一人の男が現れます。といっても今度は坊主頭でも、サングラスをつけているわけでもありません。
それどころか、ココア達がよく知っている人物でした。

「あれ?ヒョウくん?」

ココアは本来そこにいるはずのない男の名前を呼びます。ここはリゼの家です。何故彼がここにいるのでしょう。

首をかしげるココアをよそに、チノは彼の格好を舐め回すように検分します。

ヒョウは年期の入った執事服に身を包み、蝶ネクタイを付けています。どう考えてもこれではまるで、

「執事さんです」

チノは呟きました。その横で、ようやくココアは得心がいったかのように

「ヒョウくん、ここでも働いてたんだ~~」

と言いました。と、同時にあれ?と思いました。

(一体、リゼちゃんとヒョウくんはどういう関係なんだろう……?)

リゼとヒョウが幼馴染みだというのは先日リゼ本人から聞きました。しかし、ヒョウが執事服を着てリゼの屋敷で働いているとあっては、これはもう普通の幼馴染みとは思えません。

脳内で?マークが浮かび上がるココア。そんなココアに、ヒョウは、

「ああ。一日だけだが」

(じゃあなんで一日だけなの!?)

ココアの脳内で?マークの核爆発が起きました。

色々衝撃的な事実を教えられ、固まるココア。チノも同じように固まっていました。

そんな二人にヒョウは話しかけます。

「それよりお前ら、リゼのお見舞いに来たんだろ?リゼの部屋の場所はわかるのか?」

ふるふると首を横に降りました。本当なら「わからないよ」とか、そんなことを声に出して言いたかったのですが、あいにくさっきのことで頭がショートして喋ることが出来ません。

「そんなら俺が案内するよ。この城、来慣れてない人は迷いやすいからな」

ココアがそんな状態だとは夢にも思っていないヒョウは、お気楽にそう言いました。

ココアは混乱しました。

(来慣れてない人は迷いやすい!?じゃあヒョウくんは来慣れてるの!?)

脳内では?マークがビッグバンを起こしています。完全に固まったココアはしばらくの間そこに石像のように立ち尽くすのでした。
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