亡国機業は今日も平和です。   作:ジト民逆脚屋

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ヨーロッパに行こう! 後編

×月▽日 ヨーロッパ

 

夜のヨーロッパ某所をひた走る黒のワゴン車、その車内は剣呑な雰囲気に包まれていた。

 

「あー、メンドクセエ。大将、帰ろうぜ」

 

黒丸レンズのグラサン男が、気だるげな声と共に自分の前の座席を蹴りつけ蹴りつけられた座席に座る大将と呼ばれた男が口を開く。

 

「喧しい!お前、さっきからそればっかじゃねぇか」

「だってよぉ大将、結局は連中の尻拭いなんだろ?やる気出ねぇよ」

「確かにな、何で私らが連中の尻拭いなんだよ、ジンク」

「オータム、フェイゲン。これも仕事だ、『割り切れ』」

 

大将、ジンクが二人を割り切れと宥めるが、やはり納得がいかない顔をしている。

だがそれは、この二人に限った事ではなかった。車内にいるメンバーほぼ全員が同じ気持ちであった。

 

「割り切れと言われても、簡単にはいきませんよ。大将」

「そうですよ、旦那」

「お前らもか、ペイル、アヤイチ」

 

運転席に座る赤髪の白人少年ペイルと後部座席に座る黒髪の日系の女アヤイチが口を揃えて不満を吐き出し、それに辟易した様にジンクが対応する。

 

「いいか、これも仕事だ。さっきもバカ二匹に言ったが『割り切れ』、いいな」

「「へーい」」

 

納得はしていない様だが、仕方ないか。この面子はヨーロッパ支部の連中に対して良い印象を抱いていない。

今までの仕事でのミスや不祥事、奴等がやらかしたことを揉み消した事を数えたらキリがない。

先代の時代は良かった。ミスや不祥事を起こしても、自分達で処理していたし、その能力があった。

だが、今のヨーロッパ支部は違う。ISが出てきてからと言うもの、 はっきり言って無能の集まりになってしまった。否、まだ『まとも』なメンバーも残っている。あの『二人』もそうだし、今回の仕事の協同相手もその『まとも』な連中だ。

それに、今回の『仕事内容』を聞けばコイツらも納得するだろう。

 

「いいから貴方達、静かにしなさい。マドカとナイトメアが起きるでしょう」

「ん?ああ、すまん」

 

車内の最後席に座るスコールがマドカとナイトメアのアジア支部幼年組を寝かし付けながら愚痴る。

 

「まったくもう、まだホテルに着かないの?」

「「「あ?」」」

 

その瞬間、運転席に居たペイルが急ブレーキをかけ、夜の道を走るワゴン車が前のめりに止まる。

その反動で車内は一時混乱するが、直ぐに収まる。その際に、マドカとナイトメアがスコールの隣から放り出されるが、アヤイチがそれをキャッチ。オータムが身を乗り出しアヤイチの隣にある機材を退け、フェイゲンが機体の拡張領域からクッションを二つ取り出し、アヤイチがそのクッションに二人をそっとシュート。

そして、睡眠用癒しの音楽をセットしたヘッドホンで睡眠を促進、この間僅か二秒足らずである。

 

「なあ、スコール」

「何かしら?ジンク」

 

ジンクが目頭を押さえながら、スコールに問い掛ける。キチガイ共は大人しくしているが、爆発寸前だ。

ここは一つ、バカ共を刺激しないように確認をしなければならない。

 

「状況を整理しよう。俺達は仕事で、ヨーロッパ支部に向かっている」

「ええ、そうね」

「だが、移動に時間がかかる為、途中で宿を取ることにした」

「その通りよ」

 

よーしよーし、この調子でいこう。この調子なら、バカ共は大人しくしている筈だ。

 

「しかし、俺達の予約したホテルはヨーロッパのバカ共の嫌がらせにより、一時的に営業停止になっていた」

「まったくもって、腹立たしいわね」

「確かにな、それだけなら良かった」

「あら、まだ何かあったかしら?」

 

はい、本題。

 

「ここからが、本題だ。お前はその後、次のホテルを捜しに街に出た」

「ええ、そうよ。それの何が問題なのかしら?」

 

問題、だらけなんだよなぁ。

 

「その時、何故かマドカとナイトメアを連れて買い物まで始めたよな」

「そうね、だからどうしたのかしら?」

「はい、バカ共ー。せーの」

 

「「「「オメーのせいだよ!」」」」

 

「はあ?何がなのよ」

「スコールゥ、お前がホテルを捜すよりも二人の買い物をしてたのが、そもそもの原因じゃねーか!」

 

そうなのだ、本来であれば今はホテルで休みながら仕事の予定を組んでいた筈なのだ。

それをヨーロッパの無能共に邪魔され、代わりのホテルを捜さなければならないのに、何を思ったのかこの女は幼年組を連れて買い物に出ていたのだ。

シーズン的にも時間的にも、急なチェックインは自分達では少々厳しいものがあり、『ミューゼル』の名の偉大さを改めて実感し、各々が好きなように酒を呑んだり装備のチェックをしたり、関係機関に根回ししたりと過ごしていた。

そんな訳で、てっきりスコールが代わりのホテルにチェックインを済ませているかと思ったら、そこに現れたのは両手には小物類や服がギッシリ入った袋を抱えたスコールとクタクタに疲れ果てたマドカとナイトメアであった。

そして、合流しての開口一番の台詞がこれである。

 

「あら、代わりのホテルは?」

 

この台詞を聞いた瞬間、アジア支部副長ジンクは次の街への移動を決意、先程まで浴びる程酒を呑んでいた癖に更に追加で酒を呑もうとするオータムとフェイゲンを車に放り込み、アヤイチにもしもの為の食料品を買わせペイルに指事を出しつつルートの誘導をして、次の街で代わりのホテルを捜すが、ここでもヨーロッパ支部による嫌がらせを受けチェックインは不可能。

その次の街も、そのまた次の街でも陰湿な嫌がらせに逢いながら街を出た。もし、実行犯の姿が小指の先でも見えたなら、こちらのバカ共をけしかけて黒幕を引きずりだしてやったものを、口惜しや。

 

「しかし、どうします旦那。こっから先、街なんて無さそうですよ」

「はぁ、しょうがない。全員、外出ろ」

 

ジンクの指示で車外へと出るアジア支部の面々、徐に煙草を吸い出すフェイゲンとオータム、夜空を撮りだすアヤイチと機材の補佐をするペイルとマドカとナイトメアを抱き抱えたスコールに向けてジンクは言い放つ。

 

「いいかぁバカ共ぉ、よぉく聞けぇ!ここをキャンプ地とぉするっ!」

「「「えーっ!」」」

「うるせぇ!いいかぁ!これからは、飯より買い物よりも宿だ!」

 

不満を漏らすキチガイ共だが、中でもスコールは特に不満そうだ。

 

「なんだスコール?不満そうだな」

「いえ別に、今回は私が悪いもの。文句なんてないわよ」

「よし、もう一回言うぞ。ここをキャンプ地とするっ!」

「「「うぇーい」」」

 

ジンクの指示で車に積んであった簡易テント張り出すメンバーだが、テントに入るには二人溢れるということが分かり已む無くジンクとフェイゲンが車に残ることになった。

そして翌朝、この判断がある悲劇を生むことになる。




次回

とうとう明らかになる仕事内容その内容とは

「貴方方には、我がヨーロッパ支部の粛清を行って頂きたいのです」

次回
国家代表『で』遊ぼう

お楽しみに!
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