ウルトラブライブ! 9人の少女と光の勇者達   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です。
初めましての方は初めまして、知ってる人はこんにちは。

今回は以前に放送されたウルトラマンエックスに出てきたネクサスに刺激を受けて、僕が好きな作品の一つである、ラブライブ!とのクロスオーバーを書いてみました。

まあ、前置きはこのくらいにして、お楽しみください!
どうぞ!


輝く絆 希と絆の巨人

彼女は孤独の中にいた。

 

まわりがワイワイと賑わう中、彼女だけは一人本を読み、夕方になって学校が終わり、放課後になるまで本を読んで過ごす。

そして、クラスメイトがいなくなるのを見計らって一人で帰る支度をして夕焼け空の下、帰路に着く。

 

まわりに友達はいない。

話し相手もいない。

一人ぼっちの帰り道。

 

別に寂しいと思うことはなかった、慣れていたから。

親の仕事の都合で様々なところを転々とすることが多く、友達を作れる余裕はなかったし、そもそも友達になれるきっかけを作るタイミングを完全に遅れていたから。

まわりのみんなは既に話の会う友達を作り、和気藹々と話や遊びに花を咲かせる。

新たにクラスに加わった転校生のことなんて見向きもせずに…。

 

別にそれが寂しいとか辛いとかは思わなかった。

別に作ったとしてもどうせまたすぐに別のところに引っ越すんだ。

作った所でまた離れるのなら別に一人でも構わない。

 

帰宅した後も彼女は一人だった。

両親は共働きで家にいないのは珍しくない。

普通なら大抵の子どもは寂しいと感じるのかもしれないが、これに関しても彼女は慣れていた。

 

引っ越してきたマンションの玄関に申し訳程度に置かれている鉢植えを持ち上げて、その下に隠してある鍵を使って帰宅、薄暗い部屋にただいまを告げて、一人で用意されていた食事を食べて、風呂に入り、眠る。

 

寂しいからと言って親に泣きつくことはなかった。

二人とも忙しいのだし、わがままを言っても困らせるだけだとわかっていたから。

別に一人でも生活には困ることもないし怖いこともない。

 

ただ、たまにひどく日常が空虚に感じることがあった。

 

まわりの風景がくすみ、輝きを失っていることに、彼女は気づいていた。

しかし、それを見て見ぬ振りをしていたのだ。

 

自覚してしまった瞬間、自分はどうにかなってしまいそうだったから…。

 

泣いても、叫んでも、問いかけても、誰も答えてはくれない。

そんな孤独の中で泣き喚いても……世界に自分は助けを求めてはくれないだろう。

 

だから少女は孤独の中に慣れている、“ふり”をしていた。

 

 

高校生になり、彼女達と出会うその時までは…。

 

 

出会ったのは自分の席の前にいた一人のクラスメイトだった。

高校生活のスタートにおいて最も重要な第一印象をアピールする自己紹介で彼女は単に名前を言って、よろしくと言っただけだった、とても無愛想で誰も寄せ付けないような雰囲気を放ちながら席に座った彼女を見て、少女は今までにない感情を抱いた。

 

不器用で、自分に必死で、素直になれない。

 

まるで、自分のように…。

 

親近感とは少し違うと思う。

放っておけなかったのだ。

自分と似た彼女、経緯は違えど彼女もまた自分と似たような心境を持っているのかもしれない、彼女の姿を気付けば追いかけていた。

 

ホームルームが終わり、教室を出て行く彼女の姿を慌てて追いかける。

廊下を出て差し掛かった階段を降りて行く彼女の姿を見つけて、少女は咄嗟に声をかけた。

 

「あの!」

 

声に反応してか、目の前にいた彼女が振り向いた。

ポニーテールにした金髪を揺らして振り向いた彼女は日本人には珍しい碧眼を自分に向けてくる。

 

「あなたはクラスの……なにかよう?」

 

「あの……わ……わたし…」

 

思えばこのように積極的に声を掛けることなんて今までなかった。

故に少女はどう返答すればいいのか迷っていた。

なんの接点もない自分が彼女に言えること、そんなものはすぐには思いつかない。

 

なにせ初めて、ここで、偶然という不確定要素が重なってようやく出会うことができたのだ、そんな人物になにを話せばいいのかなんてわかるはずがない。

 

……いや、それで当然だ。

 

何においても始めては不安でどうすればいいのかなんて当たり前のことだ。

わからないから迷ってるんじゃない、自分は今不安だからわからない“ふり”をしているのだ。

 

もう、ふりをするのはやめよう。

 

 

 

この出会いはきっと、“運命”だ。

 

 

 

この運命を手に取るためにできること、それは自分から前に進むこと。

 

この運命を大切にしたい。

 

だから、最初は単純でいいのだ。

 

自分の理想とする形、そこから始まる友人の作り方…。

 

 

「………“うち”、“東條 希”!」

 

 

聞いただけで使ったことのない関西弁を使ったのは、単に親しみやすいかな、と感じただけだ。

でも、それでいい。

単純な初めましてでいいのだ。

 

 

 

彼女が結ぶ“絆”は、ここから始まることとなったのだから。

 

 

 

やがて、その“絆”は9人の少女達を繋ぎ合わせ、掛け替えのない仲間達と希は巡り会うこととなっていった。

 

 

 

 

 

 

「μ's!! ミュージック、スタート!!」

 

 

 

 

 

 

“音ノ木坂学院”、スクールアイドル、“μ's”。

 

彼女の、掛け替えのない。

大切な、奇跡の仲間達。

 

前に踏み出すことで得た彼女達との絆、やがてそれは希にとって掛け替えのない大切な宝物をくれた。

 

 

だが、彼女のであった運命というのはこれだけに終わらなかった。

 

 

 

これは、本来めぐり合うことのなかった女神の名を持つ9人の少女達と、光をその身に宿し、戦い続けてきた光の巨人達との出会いの物語。

 

 

 

 

 

 

~ウルトラブライブ! 9人の少女と光の勇者達~

 

「輝く絆 東條 希と銀色の巨人」

 

 

 

 

 

 

「そういえば、希は知ってる?」

 

帰り道、隣で並んで歩いていた友人、絢瀬 絵里がそう聞いてきた。

 

「知ってるって、なんかあったん?」

 

一年の頃からの友人として一緒にいる絵里の問いかけに応えるのは通常よりも下に結んだツインテールと少し特徴的な関西弁を話す少女、東條 希である。

首を傾げる希に絵里は人差し指を立ててそれがなんなのかを説明する。

 

「この前の流星群のことよ、ほら、うちでも話題になっていた」

 

「………あー、穂乃果ちゃんも言ってた9つの流れ星のこと?」

 

今から数日前、ここ音ノ木坂を中心にこの辺り一帯で突然の流星群が確認されたのだ。

 

ニュースにもそんなことは知らされてなかった、原因不明の唐突な流星群。

しかも、どういうことかそれらの流れ星は9つとも違う色を放っていたのだ。

一つはオレンジ、一つは銀色、一つは青、一つは金色など、色とりどりの不思議な光の尾を引きながら、その不思議な流れ星はそれぞれバラバラの方向に落ちていった。

 

その不思議な流れ星の噂は翌日、音ノ木坂学院でも話題となり、自分達が所属するスクールアイドル、μ's内でもその話題で持ちきりとなった。

どうやら絵里はそのことを言っているらしい。

 

「そう、そのことなんだけど…なんでも、普通の流れ星とはちょっと違うみたいってことが最近わかったらしいの」

 

「違うって、なにがなん?」

 

「通常の流れ星は宇宙のチリが大気圏に触れて摩擦熱を起こして発光しながら降下してくる現象なんだけど、どうにもその時の流れ星は9つとも大気圏よりも低い高度から発生したらしいの」

 

博識な面を持つ絵里の何気ないうんちく混じりの説明に希はふーんと相槌を打つ。

 

確かに普通なら大気圏に入らずして発光することはない流れ星が大気圏よりも下で光ということはありえないだろう。

それこそ、宇宙人かUFOなどの不可思議な存在でもない限り。

 

「へ~、それはまたかなりスピリチュアルな話やね、めっちゃおもしろそうやん」

 

「………」

 

「? えりち、どないしたん?」

 

普段と変わらない会話のはずなのに、なぜか絵里は腑に落ちないような反応を見せている。

なにかまずいことでも言ったのだろうかと思った希だが、そんな発言があったようには到底思えない。

 

すると絵里は逆に不思議そうな表情を浮かべた。

 

「いや、希ならこういう話、誰よりも一番好きそうなのに…知らないなんて珍しいなって思ったから…」

 

「え、そう?」

 

「だって希ならこういう不思議な話すぐにでも飛びつきそうだもの、スピリチュアルやね、って」

 

希の口癖を真似しながらそう言った絵里に希は一緒動揺した様子を見せたのち慌てて苦笑いを浮かべる。

 

「…あぁ、ちょっとその話はね、まだ知らんかったんよ」

 

「え、なんで? 希ならこの辺り一帯をしらみつぶしにしてでも調べかねないと思ったのだけれど…」

 

「いや、ほら、最初に話を振って来た穂乃果ちゃんも最近あんまりそのことについて話さなくなったし、うちももうええかなって思ってん」

 

「ふーん…」

 

あまり納得がいったという表情ではないが、彼女の言い分に渋々と相槌を打つ絵里。

しかし、彼女にはわかっていた、希の表情がいつもと違うというとこに…

 

「…ねぇ、希、あなたやっぱりなにかあったんじゃ」

 

「あー、そうや! うち今日も巫女さんしなくちゃあかんかったんや、えりちごめん、先行くね?」

 

「あ、ちょっと!」

 

絵里が聞こうとした矢先、希はそう言葉をはぐらかして足早にその場を立ち去ってしまった。

走り去っていく彼女の後ろ姿を眺めるしかない絵里は彼女のことを心配した表情を浮かべることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、東條 希はとある場所にいた。

 

赤く焼けたような空…。

 

立ち込める黒い煙…。

 

ひび割れたコンクリートの壁…。

 

崩れ落ちた周囲の建物…。

 

燃え盛る、“見慣れた街並み”…。

 

そこは彼女が高校からの三年間を過ごしてきた場所、彼女の暮らす音ノ木坂の街だった。

それがどういうわけかこんなに荒れ果て、炎に焼かれ、破壊し尽くされていた。

 

あまりにも理解できないこの異様な事態に希は半ばパニック状態で辺りを見回し、一心不乱に走り出した。

 

なんでこんなことになったのか…。

 

どうして自分はここにいるのか…。

 

どこに行けばいいのか…。

 

問いかけを自分の中に浮かべても、帰ってくる返答はない…。

荒れ果てた街を夢中になって走り続けていると、やがて希はある場所にたどり着いた。

 

彼女が“大切な人達”とであった場所…。

希の通う高校、音ノ木坂学園。

しかし、ここもいつもの様相をガラリと変えてしまっていた。

街並みと同じように壁が崩れ落ち、炎が所々で燃え上がっている。

 

その光景を目の当たりにした希は愕然とし、無意識のうちに足元をふらつかせてしまう。

混乱する彼女の思考はこんなことを認めたくなくて正常な働きを行わない、もうどうしたらいいかわからず彼女がその場に疼くまろうとした時だった…。

 

 

 

ーーーギャォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

 

 

 

空を引き裂くかのような轟音、いや雄叫びという方がいいだろうか…。

突如として聞こえてきたその声に希は驚き、目を閉じて耳を塞いだ。

 

この世の物とは思えないようなその轟音を聞いた希は恐る恐る目を開くと…。

 

「…なに…これ……」

 

彼女の目の前には、見たこともない三首の怪物が立っていた。

 

 

顔の半分を焼きただらせたかのような犬の顔をした双頭を両肩に持ち、体の中央には恐ろしい牙をずらりと並べた巨大な口…。

三つの首を持つ地獄の番犬、“ケルベロス”……それを思わせるような凶悪な外見をした巨大な怪物が希の前に突如として現れた。

 

 

現実ではあり得ない、見たこともないその怪物を目の当たりにした希はその衝撃に呆気にとられ、その場でその怪物のことを見上げることしかできなかった…。

 

故に、気づくのに遅れてしまった…。

 

その怪物の足元に希の大切な8人の友人がいることに……。

 

 

 

「みんな………危ない!!」

 

 

 

咄嗟に彼女達の元に走り出そうとした希、しかし怪物は鋭い爪を持つ腕を振り上げ、彼女達に襲いかかる。

 

 

 

「だめ…だめぇぇええええええ!!」

 

 

 

 

必死に希がてを伸ばす…。

 

だが、もう届かない…。

 

次の瞬間、希の目の前にいた友人達に怪物の爪が振り下ろされた…。

 

 

 

そして、ギラリと光る爪が希の友人達を引き裂くのと……この時に希の目の前に“謎の石像”現れ、それに彼女の手が触れたのは同時だった……。

 

 

 

 

 

 

 

「っ!! ……はぁ……はぁ……はぁ」

 

閉じていた瞼を見開き、彼女が体をバネのように跳ね上げた時、希はここが住み慣れた自身の部屋であることに気づいた。

 

息を荒くし、早まる動悸を感じながら希が辺りを見回す。

そして、先程まで見た光景と違うことに気づいた希は理解した。

 

「………夢?」

 

なんという夢見の悪い夢なのだろう…。

希は頭を抱えながらため息をつき、同時に安心感を抱いた。

あんなこと現実で起きるはずがない……起きてはならないことだ。

 

「……シャワー、浴びよ」

 

気づくと、身体中にびっしょりと汗をかいていた。

今日は平日の最終日、学校まではまだ時間があるしシャワーを浴びてから用意をしようと考えた希はベッドから起きて風呂場へと向かった。

 

部屋を出て廊下を歩き、風呂場へと辿りついた希は着ていた寝間着とその下に身につけていた下着を脱いでいった。

高校三年生となって成長してるとはいえ、それでも平均よりも上はあるであろう胸と腰周り。

豊かな肉体に一糸纏わぬ姿となった希は脱衣所から風呂場へと移動し、シャワーの前に立って蛇口をひねる。

 

適度に調整された水滴がシャワーから流れ始め、体を伝う。

体に貼り付くような感覚を覚える汗をお湯で流す。

 

「…最近多いな…あぁいう夢」

 

その際に彼女はふと先程見た夢のことを思い出していた。

 

実はあの夢、見たのは今日が初めてではない。

ここ最近、似たような夢を何回も見るのだ、何度も何度も似た夢を繰り返し見続けて、そして見る度によりはっきりと、まるで現実のような感覚を覚えるのだ。

そのおかげで最近はこの夢のことばかりが気になって他のことに気が向かなくなっていた。

昨日、絵里から彼女が好きそうですぐに調べてそうな話を振られたのに反応が薄かったのはそのためである。

 

そんな何度も繰り返し見続けている悪夢、これ自体も相当気になるが……その中でも気になる物があったのを希は忘れなかった。

 

 

「……最後のあの石像……」

 

 

夢の最後に必ず現れる、謎の石像。

 

特徴的な形をしたあの石像。

あの悪夢の最後に現れる石像に触れた時、一瞬、ほんの一瞬だがまるで何かに包まれるような感覚と目の前が光で包まれるような感じを覚えた。

 

あの石像はなぜ毎回最後に現れるのか…。

 

あの石像はなんの意味を持っているのか…。

 

希の中であの石像はあの夢の中でとても重要な役割をになっているのではないかと感じていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…希、どうかしたのですか?」

 

「うん? ちょっとな~…」

 

その日シャワーを浴びたのちに学校へと登校した希は一通りの授業を終えたのち希は屋上に来ていた。

 

放課後、この時間は彼女の“スクールアイドル”としての時間なのだ。

 

 

音ノ木坂学院スクールアイドル、“μ's”

 

 

時代の進行による生徒減少にともない、学院を廃校から救うためにこの学院の二年生“高坂 穂乃果”を中心にして結成された、スクールアイドルである。

 

現在、スクールアイドルの祭典である“第一回ラブライブ”への活動を落ち着け、スクールアイドルとしての活動に専念してる彼女達はこの放課後はアイドルとしての練習に当てているのだ。

 

ダンス、歌、そして基礎体力などスクールアイドルとして必要な能力をこの時間に向上させる。

その間の休憩時間、希が何かしているのに気づいたμ'sのメンバーの一人、腰までさらりと伸びた綺麗な黒髪が特徴的な所謂、大和撫子というイメージが強い少女、2年の“園田 海未”が、彼女に問いかけて来た。

 

海未が見つめる視線の先には数枚のカードが並べられている。

 

「もしかして、占いですか?」

 

「うん、ちょっと気になることがあってね、迷った時はカードが教えてくれるんよ」

 

「希の占い、相当当たりますからね…」

 

実は希には昔から周りのみんなとはちょっと違う特殊な何かを持っていたのだ。

 

一般的には、霊感、とかいう類に属するらしいが希自身その能力を悪く思ったことはない。

むしろそれをある方法に割り振ることで役立てて来たくらいだ。

 

カードによる占い、これは彼女の得意分野の一つなのだ。

 

カードの出すお告げが偶然か、はたまた希の能力なのかは知らないがとにかく希の占いはよく的中するのだ。

 

彼女が始めようとする占いをちょうど見た海未も興味津々にその様子を見守る。

 

「まずは……」

 

そして、希が一枚目のカードをめくる。

そして、出てきた絵柄に希は眉をしかめた。

 

「……“闇”……」

 

なんとも不吉な結果、それを聞いた海未もほんの少し不安そうな顔をする。

 

「……次は……“恐怖”…?」

 

二回続けて嫌な結果…。

これには流石に希も表情を強張らせる…。

 

「あ、あの…希、これは何を占っているのですか?」

 

恐る恐ると言った様子で海未が問いかける、すると希は何処か不安そうな目をした後しばらく言葉を詰まらせ…。

 

「あー、別に対したことやないよ? うちのご近所さんが最近不運続きやからなにかなって気になっただけ」

 

「あ……あぁ、そうなんですか……」

 

 

嘘だ……。

 

 

希が占っていたもの、それは自分が今朝見た夢のことについてだった…。

あの夢がいったいなにを指し示しているのか、彼女は知るために試しに占ってみたのだ。

 

そして、出た結果が先程の“闇”と“恐怖”…。

 

 

 

(……なにか、嫌なものが来るの……?)

 

 

 

その結果に希は、今まで以上の不安を感じるのだった。

 

「海未ちゃん、希ちゃん! 休憩時間そろそろ終わるにゃ~!」

 

猫のような言葉使いが特徴的な短髪で活発的なイメージを持つ少女、同じくメンバーの“星空 凛”が二人のことを呼んだ。

 

その声に気づいた海未がなにかを考えているような希に声をかける。

 

「あ、はい、すぐに! 希、ほら今は練習に集中しましょう?」

 

優しげな笑みを浮かべて手を差し伸べる海未、その手を一瞥した希はしばし間を開けてから、その手のひらに自分の手を重ねた。

 

「うん…そうやね」

 

しかし、何時もの彼女らしからぬ不安そうな顔に海未は心配そうな顔を浮かべる。

 

「……あの、やっぱり無理しなくてもいいですよ? たまには休むのも……」

 

「大丈夫やって、なんやったら海未ちゃんのその小ぶりな膨らみ、わしわしして証明したろか? 今ならいつも以上のテクニックを出せる自信があるで~?」

 

「け、結構です! 大丈夫なら早くしてください!」

 

「うふふ…♪ はーい」

 

今はただの夢のことでこんなに不安になってても仕方ない。

自分には友達がいる、かけがえのない、仲間達が…。

自分がこんなに不安な顔をしてどうする…。

今はみんなとの練習に専念しよう、そしてまた、みんなで楽しい時間を過ごそう…。

 

そんなことを考えながら希はその手を引かれ、練習へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………』

 

 

彼女を見つめる“小さな人形”に気づくことなく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後、希はいつもの神社の巫女としてのお手伝いをすることにしていた。

神社という場所は不思議と希は好きだった。

透き通った空気に神秘的な感覚に溢れたこの場所、ここにいると妙に心が安らぐ気がした。

いつものように希は境内の階段を竹箒で掃く。

 

「今日もいい感じやね」

 

巫女服に身を包んだ希は竹箒で掃除した階段を見つめて満足気な笑みを浮かべる。

 

「…と、そろそろ帰らないと…晩ご飯なんにしよう…」

 

気付けば空は夕暮れから夜の闇へと姿を変えようとしていた。

そろそろ帰らないと暗くなってしまう、夜の街は何かと物騒だったりするから、早く帰るに越したことはない。

帰りに晩ご飯の献立を気にしつつ彼女が神社に戻って着替えようとする。

 

 

 

 

 

ーーー……ーっ!

 

 

「………え?」

 

 

 

 

その時、一瞬だが希は何かを聞いた。

何処かで声が聞こえた。

僅かにだが確かに人の声がした。

普段なら気にも留めないほどの僅かな声だっただろう。

しかし、この時の希はこの声がどうにも気になってしまった。

 

 

その声にただ事ではない何かを感じたから……。

 

 

「………」

 

 

しばらく声が聞こえた方を見つめた希は意を決して、その方角へと足を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

巫女服のまま歩き続けること数分、希は神社の近くにある森へと入り込んだ。

この辺りは街の自然保護団体によって保たれた僅かな自然が残されており、車も通ることができるちょっとしたドライブスポットである。

 

その雑木林を進んで行くと…。

 

 

ーーー……ぁさん! ……さん!!

 

 

 

さっきよりも声がはっきりと聞こえた。

この声はどうやら子どもの声のようだ。

よく聞くとなにやら切羽詰まったただならぬ声、それを聞いた希はすぐに駆け出して声がした方へと駆けつけた。

 

 

 

そして、そこで彼女は信じられない光景を目の当たりにする…。

 

 

 

 

「あっ!」

 

 

そこには家族と思われる三人の人物がいた。

だが、親と思われる男女の二人がどういうわけか大きくボディを凹ませた車の下敷きとなっている。

そして、その車の前に小学生くらいの男の子がいた。

 

「お父さん!! お母さん!! しっかりしてよ、ねぇ!! 起きてよ!」

 

必死に親に声をかける子ども、だが親は車の下敷きになっているせいか身動きを取れないらしい…。

それを目にした希は無意識のうちにその家族の元へと走った。

 

「大丈夫ですか!? しっかりしてください!」

 

声をかけるが反応は薄い、しかも僅かに鉄の匂いがする。

どこかはわからないがもしかしたら出血しているのかもしれない…。

急いで助けを呼ばないと…。

 

「僕、ちょっとお姉ちゃん助けを呼んでくるから待っといて!」

 

子どもにそう言って希が助けを呼ぼうとする。

だが、子どもはどういうわけか希の巫女服の裾を掴んで首を必死に左右に振った。

 

 

 

「だめ! 行っちゃダメ!」

 

「だめって……このままだとお父さんもお母さんも大変なことになるよ!? 大丈夫、すぐ戻ってくるから…」

 

「だめ!! お姉ちゃん、“食べられちゃう”!!」

 

「………え?」

 

 

 

どういう意味なのか、希はすぐには理解出来なかった。

いったいこの子どもは何を伝えようとしているのか、希は困惑した表情を浮かべる。

 

 

 

「……逃げ……るん…だ…」

 

 

 

そんな時、希の耳に掠れた声が聞こえて来た。

その声は車の下敷きになった子どもの父親の声だった。

どうやら、まだ意識が残っていたようだ。

希は反射的に男性の元に駆け寄ろうとするが…。

 

「早く……その子を……! でないと……また、あの……“怪物”が!!」

 

「っ!」

 

男性が口にしたその言葉に、希は足を止めた。

 

“怪物”、その単語を聞いた時、彼女の脳裏にある光景が浮かび上がった。

 

それは、あの夢に出て来た……三首の怪物だった。

 

「今のって……」

 

そして、

 

 

 

 

ーーーギャォォォォォォォオオオオオオオオオオオ!!

 

 

 

 

 

同時に、周囲を揺らすほどのとてつもない騒音が鳴り響いた。

まるですぐそばに雷が落ちたかのような衝撃と鼓膜を破らんばかりの轟音に希は耳を塞いだ。

 

そして、同時に感じた……。

 

この音は聞き覚えがあると……。

 

そのすぐ後、希はすぐにあるもの異変を感じ取った。

地面が僅かに揺れるような感覚…。

 

それは徐々に大きくなり、こちらへと近づいて来ているような感覚を覚えた。

 

そして、その音がすぐ近くまで迫った時、希はふと上を見上げた。

 

 

 

「………なに、これ………」

 

 

 

そこには、“奴”がいた。

 

 

 

彼女が何度も見た悪夢の中に出てきた、あの“怪物”…。

 

 

醜悪な火傷を負った犬の顔のような双頭を両肩に持ち、巨大な肉体にギラリと光る爪を持つ両腕と、丸太以上に太い両足…。

 

そして、“ずらりと並ぶ血に濡れた牙”を持つ体。

 

 

 

ケルベロスを思わせる、巨大な三首の怪物が彼女とそばにいる子どものことを見下ろしていた。

 

「うそ……なんで……なんで……? だって、あれは夢……」

 

突然目の前に現れた怪物を前に困惑を隠せない希、身を僅かに震わせながらじっと怪物のことを見上げる。

 

その時、希の脳裏にあることが浮かび上がった。

 

 

 

「……恐怖と……闇……」

 

 

 

今日の放課後に行った占いで出た二つの言葉。

今目の前にいるこの怪物は、まさにその二つの言葉を体現したかのように、この時の希は思えた。

 

「怪獣……!」

 

「あっ……」

 

ふと、希は子どもの小さな声で気がついた。

 

今、怪物の両肩にある犬の瞳が怪物を見て怯える子どもとその家族へと向けられていることに……。

 

「だめ、早く逃げて!」

 

「でも、お父さん達が……!」

 

子どもは両親のことを心配して子どもは逃げる様子を見せない。

このままではあの怪物に真っ先に狙われてしまう。

しかし、親を見捨てることが出来ない子どもを連れて無理やり逃げるのはあまりにも残酷すぎる…。

 

希の中で迷いが生まれる。

 

だが、迷うばかりで時間は待ってくれなかった。

 

再び地を割るかのような轟音が鳴り響いた、またあの怪物が咆哮をあげたのだ。

そして、ギラリと光る爪をかざして希のそばにいる子どもへと狙いを定める。

 

 

 

「だめ……だめ……!」

 

 

 

希の脳裏に夢で見た光景が蘇る…。

 

 

友達の肉を引き裂き、血で目の前を染められる…。

あの、悪夢が……。

 

このままでは、この家族も怪物の餌食となってしまうだろう…。

 

あの怪物の口元を血で濡らすことになった、誰かのように…。

 

そんなこと……。

 

自分はなにも出来ないのか…。

 

夢の時のように、なにも出来ずただ手を伸ばすことしか出来ないのか…。

 

 

 

 

「だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええ!!」

 

 

 

 

怪物の爪が振り下ろされたその瞬間、希は無我夢中で叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

だが、いつまで経っても血の飛び散るような感覚も巻き添えによる痛みも来なかった。

 

 

 

 

 

「……?」

 

どういうわけか、希がうっすらと目を開ける…。

 

 

 

すると、そこには……

 

 

 

「………これは?」

 

 

 

青白い光が彼女の視界いっぱいに広がっていた、その光は彼女と子どもを守るように円形に広がって、怪物の爪を済んでのところで押しとどめていた。

 

希が周りをぐるりと見回すように視線を巡らせる。

すると、この光のおかげで子どもも親も無事ではあるがあまりのことに気を失ったようだった。

 

この光はいったいなんなのか……希が疑問を感じていると……。

 

 

 

『………諦めるな』

 

「っ!」

 

 

 

突然、目の前に何かが現れた。

 

それは……神秘的な姿をした“人形”だった。

 

銀色の人型の小さな人形、それが光の中で空中に浮かび上がるようにして希の前に現れたのだ。

しかも、どういうわけかその人形は希に対して話しかけているように思えた。

 

『……この力を、君に……』

 

人形から再び声が聞こえた、そして次の瞬間、その人形が光に包まれた。

眩い光が彼女の目の前に広がり、次の瞬間、その人形は形を別の物へと変えたのだ。

 

まるで小刀のようなサイズの何か、白の色合いに赤の宝玉が埋め込まれたかのような物、それはまるで心臓のような鼓動のリズムを刻みながら輝いている。

 

「………」

 

希はそれを見て、無意識のうちにその白い小刀を手にした。

その瞬間、不思議な感覚に希は包まれた。

まるで太陽の日差しような暖かさと安心感…。

 

………そうだ、これは……。

 

その感覚に希は理解した…。

 

そして、感じた……“可能性”を……。

 

 

 

「闇を打ち消す……“光”……」

 

 

 

それを理解した時、希はその白い小刀を腰に構え、思い切り引き抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーギャオオオオオオオ!!

 

 

 

恐ろしい声を上げる怪物、三首を持つ地獄の番犬を思わせる怪物の目の前に突然、眩い真紅の光が広がった。

その光に動揺を見せる怪物、そして、その光が徐々に弱まり始めた時、怪物の体についた巨大な顎に強烈な衝撃が走った。

 

一撃を受けて、堪らず吹き飛び倒れこんだ怪物。

唸り声をあげながらふらりと立ち上がり、光が現れた方を睨む……。

 

 

 

すると、そこには……“光の巨人”がいた。

 

 

 

光り輝く銀色の体、胸に輝く赤いY字の水晶、そして銀色の顔に光り輝く乳白色の目…。

神秘的な雰囲気を見に纏ったその巨人は赤い光の中から姿を現し、籠手のような物を装備した両腕を動かし、右腕を握り拳にして前に、左腕を開いて後ろに引くような構えをとった。

 

 

 

「シュア!」

 

 

 

突如として現れた銀色の巨人、三首の怪物はその姿を見た瞬間に再び顎を大きく開いて威嚇すらかのように叫んだ。

しかし、巨人は怪物を前にして身構えたまま動揺するような様子を見せない。

 

「……ヘアッ!」

 

巨人は威嚇する怪物に向けて走り出すと、勢いを載せてそのまま大きく跳躍した。

地響きと共にその巨体を大きく上昇させた巨人は右足を思い切り引き、間合いが詰まった瞬間を見計らってその足を前へと突き出した。

 

巨人の飛び蹴りが怪物に直撃する。

 

怪物が大きく体を揺らして後退し、巨人は着地すると同時にさらに追い打ちをかけようと怪物に接近し怪物へと掴みかかった。

 

だが怪物も抵抗を見せる。

爪を持つ右腕を大きく振るい、巨人を打ち据えて振り払う。

反撃を受けて横に押し返された巨人、そこに怪物が追い打ちをかけようと体当たりを繰り出す。

 

怪物の攻撃を受けて後ろに大きく吹き飛んだ巨人、地面を転がりながら倒れた巨人に怪物はさらにもう一撃を与えようと両肩の犬の双頭の顎を開いた。

そして、そこから灼熱の業火を何発か打ち出した。

 

しかし、巨人はすぐにその攻撃に対応してみせた。

受け身を取り、怪物の火炎を回避する。

 

「ヘェッ!」

 

体制をすぐに立て直した巨人はそのまま両腕を交差させて右腕を前へと勢い良く突き出した。

すると、右腕から光の刃が飛び、怪物の体に直撃し、怪物の体を穿った。

光の刃のエネルギーが火花となり、怪物の体を再び揺らす。

 

巨人の反撃を受けた怪物は怒りを燃やしたのか、今まで以上の強烈な咆哮を上げた。

そして怪物は大きく身を屈めると怪物は巨人に向けて走り出した。

対抗して、巨人も立ち上がりこちらに向かってくる怪物に立ち向かった。

 

二体の巨体の間合いがどんどん縮み、その距離が0になった時森の中に轟音と衝撃が響き渡った。

 

「オオォォ…!」

 

互いに掴み合い、互いを押し返そうとする怪物と巨人、どちらも一歩も譲らずに押し続ける。

地面が抉れ、森が揺れる、その戦いは壮絶を極め、どちらも譲らなかった。

互いに押しあい、互角の状態となった怪物と巨人。

 

その均衡を破ったのは……。

 

 

 

「デアァ!」

 

 

 

巨人だった。

 

 

渾身の力を込めて、怪物の首を持ち、巨人は三首の怪物を地面へと叩き伏せた。

大きな地響きとともに怪物の巨体が地面に倒れ伏し、巨人はすぐさま後ろへと飛んで大きく距離を開けた。

 

そして、この隙を突き、巨人は右腕を腰に、左手をその上へと翳した。

平行に並んだ両手の間から青白い光のスパークが走る。

両手のエネルギーを最大まで貯めるようにスパークを輝かせた巨人は、次の瞬間その腕十字に交差させる。

 

「デアァァァァァァァァ!!」

 

その瞬間、オレンジ色に輝く光の閃光が空中を走り抜けて行った!

 

光の光線はまっすぐに怪物へと駆け抜けて行き……。

 

 

 

ーーーガァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!

 

 

 

怪物の体に直撃し、今まで以上の大きな光のスパークが三首の怪物の体を包み込んだ!

 

断末魔の叫びを上げた怪物は次の瞬間、辺りを揺るがす程の爆発を起こした。

立ち上る爆炎、そして煙…。

その様子を戦いに勝利した巨人が静かに見つめていた…。

 

そして、しばらくして……。

巨人はまるで霞のようにその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はあ……はあ……はあ……!」

 

人気の無い森の中で希は大きく体を揺らして、その場に座り込んでいた。

汗を流し、酷く披露した様子の彼女はぼうっとした目を空へと向けている。

そして、その目を今度は手元へと向けた。

 

彼女の手に握られているのは、先ほど彼女を光で包み込んだ白い小刀があった。

そして、その小刀が再び光に包まれて先程の巨人と瓜二つの人形へと姿を変えた。

その人形を見た時、彼女は再確認した……。

 

 

今自分はこの人形と同じ姿をした巨人に変身して、あの怪物と戦ったのだと…。

 

 

「………あなたは、いったい………あっ」

 

 

人形へと希が声をかけようとしたその時、彼女が着ていた巫女服の胸元から何かが落ちた。

それは彼女が占いによく使うカードだった。

 

どうやら乱れて大きく開いてしまったため仕舞っていた巫女服の間から落ちたようだ。

 

「………っ!」

 

そして、地面に落ちたカードを見た時、希はハッと目を見開いた。

 

散らばった数枚のカード、その中で二枚、二枚だけが裏返って絵柄を見せていたのだ。

その絵柄を見て、希は……“運命”を感じた。

 

 

 

「……“光”……そして……“絆”……」

 

 

 

 

夢を占った時とは対比となる、全く逆の意味を込めた二つのカード。

 

それを見た希は右手に握った人形へと視線を移した。

彼女はこのカードを見て、感じた……この人形の、あの巨人の、自分を導いたあの光の巨人の名前を……。

 

 

 

その名は……

 

 

 

 

「……“ウルトラマン”………“ネクサス”……それが、君の名前……なんやね」

 

 

 

 

 

これが、“一人目の出会い”…。

 

 

μ'sのメンバー、東條 希。

そして、絆の巨人、ウルトラマンネクサスの出会いだった…。




いかがでしたか?
気まぐれ更新なので次の更新はいつになるかわかりませんが、気に入ってくれた方はお楽しみに…。

それでは…
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