ウルトラブライブ! 9人の少女と光の勇者達   作:白宇宙

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前回の!ウルトラブライブ!

真姫「ウルトラμ'sとして新しいスタートを切った私たち、だけどなんだか絵里が責任を感じてか焦り気味に…そんな絵里を穂乃果が心配していると、また新しい怪獣が! 怪獣は穂乃果と絵里が力を合わせてなんとかしてくれたけど、あのローブのやつ…本当になんなの? けど、絵里は穂乃果のおかげで何だか吹っ切れたみたいだから結果オーライかしら? ……そんな中、学校に見覚えのない人の影が……」


VDF!

それはいつものように音ノ木坂学園の教室で穂乃果達が1日を学業に専念させている時だった。

普段なら授業が終わり、少しの休憩を挟んで次の授業に移るということを繰り返し、放課後は屋上でスクールアイドルとしての活動を始める、そんな流れだった。

しかし、今日……この日だけは違った。

いつものように過ごす中、お昼を迎えたことによる昼休みのことだった。

 

 

「今日のお昼は〜……限定品のパン! あぁ、ここにくる途中のコンビニを除いてよかったよ〜、最後の一個だったんだ〜」

 

「相変わらずですね、穂乃果のパン好きも……今に始まった事ではありませんがちゃんと栄養のバランスを考えて食事をしないと後が大変ですよ?」

 

「もう、海未ちゃんは気にしすぎなんだから、この後練習で動くし大丈夫! それに今日は絵里ちゃんの柔軟運動と筋トレなんだし、ちゃんと食べとかないと……そのための限定唐揚げからしマヨミックスなんだから!」

 

「絶対太りますよその組み合わせは!!」

 

意気揚々とカバンの中にしまっていたパンの袋を取り出して目を輝かせる穂乃果、和菓子屋の娘故のパン好きなのだがスクールアイドルとしてカロリーというのも気をつけて欲しいのが海未の願いでもあった。

しかし、そんなことはつゆ知らず。

穂乃果はいつもの薄い食パンで具材を包み込んだメジャーなこのシリーズのパン、その限定品の封を切ろうと手をかける。

 

「………あれ? ところで海未ちゃん、ことりちゃんは?」

 

いつもなら穂乃果は海未とことりの3人で食事をするのが定番になっていた。

しかし、今日はどういうことかいつもならいるはずのことりがそばにいないことに今気づいたのだ。

 

「あ、そう言えば……先ほど理事長に呼ばれてから帰ってきてませんね」

 

「まさかことりちゃんの身になにか!?」

 

「大袈裟です、恐らくは理事長直々からことりへの話ではないでしょうか……μ's関係のものだと思いますけど」

 

音ノ木坂学園理事長、ことりの実の母である彼女から学園でことりに直接話したいことというのも珍しい気もするが……。

海未はそんなことを思いながら、なにやら変な反応を見せる穂乃果を一瞥する。

 

μ'sの活躍、ラブライブに出場することを決意し活動してから得た実績によってこの学園は最初の危機から脱することはできた。

ラブライブ本戦への出場こそ叶わなかったものの、本来の目的を果たした今、μ'sのこれからはどうなるのか、それを穂乃果は考えているのか……そんなことをふと考えていると……。

 

 

 

ーーーピンポンパンポーン♪

 

 

 

ーーー二年、高坂 穂乃果さん、園田 海未さん、至急理事長室に来てください。

 

 

 

「………あれ?」

 

「今度は、私たちですか……」

 

校内放送がかかり、ことりに続いて自分たちも呼ばれた。

これは恐らく十中八九、先ほどことりが呼ばれたのはμ's関係なのは間違いなさそうだ。

だから自分たちも呼ばれたのだろう、そう感じた海未はだとしたらあまり待たせるわけにはいかないと判断し、パンを片手にキョトンとしている穂乃果へと目を向ける。

 

「とりあえずことりがなぜ呼ばれたのかも気になりますし、理事長に会いに行きましょう」

 

「………パン食べてからじゃダメかな?」

 

「………40秒で支度しなさい」

 

「海未ちゃん!? さすがに無理だよ!? それにそのセリフ聞いたことあるよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早々に支度を済ませ、穂乃果と海未は理事長室の前にきていた。

この学園にある多くの扉の中でも特に存在感を放つ特別な扉、そうここがこの音ノ木坂学園の理事長が仕事に励む部屋、理事長室だ。

理事長にしてことりの母親という、なんとも学生にとっては遠いようで知人としては近しいような不思議な人物、彼女には幾度となくお世話になったことを穂乃果はしみじみと感じている……。

実際、理事長の後ろ盾と提案がなければここまで来れなかったかもしれない……そう考えるとある意味では理事長もμ'sにとっては重要な存在に他ならない。

 

「よぉし………高坂です!」

 

一呼吸を置いて理事長室のドアをノックし、ハキハキとした声を出しながらそう告げる。

 

『どうぞ』

 

程なくしていつもの落ち着いた声と共に返答が帰ってきたのを聞き、穂乃果は理事長室のドアノブに手をかけて扉を開けると中に足を踏み入れる。

 

「失礼しまー…………」

 

「………どうしたのですか、穂乃果? 早く中に………」

 

ここまでは良かった………ここまではごく普通の動作であり、いつもなら荘厳な風格ある理事長室の風景とその奥にある机に座る理事長の姿があるはずだった。

だからこそ視界に飛び込んできた光景に驚き、二人は硬直してしまった。

 

…………そこにいたのは…………。

 

 

 

「…………予定より40秒の遅刻だな、何をしている、自体は一刻を争うぞ」

 

 

 

きっちりとした女性用のスーツに身を包んだ、長い黒髪にキリッとした目が特徴的な見たことも知り合った記憶もない、そう、まさに「誰この人?」という反応をせざるを得ない初対面の人物が腕時計を片手に、理事長室の椅子に座って言い知れぬ風格を放ちながらこちらを出迎えたのだ。

鋭さを感じさせるつり目ぎみの目尻の女性は部屋に入ってきた穂乃果と海未をじっと見つめながら椅子から立ち上がる。

 

「学生とはいえ甘えるな、この先場合によっては一分一秒が先のことを左右することになるかもしれない……もっと早い行動を心がけるように」

 

「は、はい!? すみませんでした!」

 

「………って、そうではないでしょう! それよりも………あなたはいったい、なぜ理事長の机に?」

 

女性から放たれる言い知れぬ威圧感に押されるあまり、反射的に敬礼をしながら返答した穂乃果だが、すぐさま海未が重要なのは今はそこではないことに気づく。

 

そう、二人はこの女性のことを知らないのだ。

学校関係者というようには見えないし、なにより初めて会ったのだ、そんな人物がこの学園の1番の重要人物が座る椅子に堂々と座ってるのは普通ではないだろう。

海未は女性にそう問いかけるが、女性は前に出て穂乃果と海未のすぐ目の前まで来ると、かなり大人っぽさを感じさせる凛々しいその顔をぐいっと二人の目前に近づけた。

 

その行動に反射的に二人は顔を硬らせる、一見すれば美女と言える女性にこんなに顔を接近されては同じ女性であってもどきりとするものだ。

ましてや自分たちは女子校の現役女子高生、蝶よ花よと青春時代を謳歌しながらもこれといって男性との関わりがない、無垢な年頃と環境にいるため、尚更とも言える。

 

そんな二人を遠慮なしにまじまじと見つめる女性はしばらくその鋭く、例えるなら鷹を思わせるような目を向け続け、にっと口元に笑みを浮かべた。

 

「ふっ、やはり適任だな……」

 

「な、なにが……ですか?」

 

「適任……?というか、あの、質問に……」

 

「やはり見込んだだけのことはある、ここまでわざわざ足を運んだ甲斐があるというものだ」

 

((人の話を聞いてない!?))

 

こちらの意思は何処へやら、自分で話を進める女性に二人は心のうちで同じことを思った。

女性はくるりと黒髪をなびかせながら背を向けると窓際まで移動し壁にもたれかかると女性用スーツではあるがズボンを履いた足を交差させるように組み、凛々しくもどこか楽しそうな笑みを浮かべた。

 

 

 

「二年生、高坂 穂乃果、および園田 海未、両名……お前たち……いやお前たちにμ'sに匿名を与える」

 

「「は、はい!?」」

 

 

 

一般人では到底出せない威圧感、それに押されて二人は反射的に返事を返す。

それを見た女性は再び鋭い目を向け……

 

 

 

「スクールアイドル、μ's! お前たちを国家特殊防衛機動部隊 “VDF”結成セレモニーでの、ライブを任命する!!」

 

 

 

「………………ほえ?」

 

 

 

 

そして、与えられたその匿名というのを聞いた時……穂乃果は間の抜けた声を出して、首をかしげるしかなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、待っておいてとはいっていたけども……勝手に話を進めてとは言ってなかったはずよ?」

 

「む? だが私は目的の対象に接触できたのだ、話は早い方がいいだろう、無駄な労力はなるべく避けたいんでな」

 

「はぁ……全く変わらないわね、目的のことになるとなりふり構わないんだから」

 

「そういうお前は落ち着きがさらに強くなったな、ちゃんと動けるときに動けなければややこしいことになるぞ、今回の音ノ木坂廃校の件のようにな」

 

「わたしだってちゃんと動いてました! あまりそういう意地悪なことは言わないでくれる? 本当、昔と変わらないんだから……」

 

仲睦まじいといえば聞こえはいいが、それは見慣れた人物同士での会話を目にしたとき……だが今回のこの光景に関しては違和感と言えるだろう。

 

今、穂乃果たちが見ているのは先ほど自分と海未に向けて謎の匿名を与えてきたスーツの女性と自分たちμ'sのメンバー、南 ことりの母でありこの学園のトップである理事長が自分たちからしてみれば関係性が見えない仲の良さを見せながら話している光景だった。

 

 

あの後、少し時間をおいて理事長が部屋に戻って来て、遅れてさらにことりがμ'sの他のメンバーを引き連れて部屋に入って来た。

そして、その時点でこの二人はなにやら仲良さげに話をし始めた。

どうにも関係性がわからないが、二人のやりとりは旧知の仲ゆえに見せる何かを感じさせた。

 

「………ねえ、ことりちゃん、あの人誰なの? 理事長さんと仲良いみたいだけど」

 

「えっと……実は私もさっき会ったばかりでよくは知らないんだけど、お母さんのお友達みたい……同級生の」

 

「理事長の同級生……ということはもしかして、この学院のOBということですか?」

 

「それがなぜ今ここに? それよりも穂乃果、あなたさっきこの人からなにか言われたみたいだけど……」

 

「うん………なんだか………ライブを任命されちゃった」

 

理事長と親しく話す女性にμ'sの面々がひそひそと話しながら考察をしていく、その中で絵里の質問に穂乃果は先ほどのことを思い出しながら答えた。

 

ライブを任命された、というのはあながち間違ってはない表現だ。

あの言い方はお願いというよりもそれに近い、彼女の放つ威圧感のようなものはそう感じさせるものだった。

 

「まったく………あ、ごめんなさいみなさん、わたしたちだけで勝手に盛り上がって」

 

「い、いえいえ!? お構いなく!? ……えっと、ところでその人は……」

 

μ'sの面々が取り残され気味になってることに気づいたのか理事長はそういうと穂乃果の問いかけに微笑みを浮かべながら隣の女性に手を向けた。

 

 

 

「こちらの方は“綾小路 蘭華”……かつてわたしと一緒にこの学院でともに過ごしたわたしの友人、そして……“防衛省職員”なの」

 

 

 

『ぼ、防衛省!?』

 

 

 

あまりにも衝撃的な女性、綾小路 蘭華というらしい彼女のプロフィールを聞いて9人は揃って声をあげて驚いた。

 

「………って、どういうお仕事?」

 

しかし、驚いたものの穂乃果はあまり理解していないようだった……。

驚いたがその発言を聞いた残りの8人はそれを聞いてがくっ、と軽く体制を崩した。

 

「あ、あのね、穂乃果……防衛省っていうのは要するにこの国を守るためのお仕事、警察とは違う、自衛隊とかを主に管理している職業のことよ………」

 

「へぇ………え! じゃあ、この人は自衛隊の人ってことなの!?」

 

「突き詰めるとその自衛隊の中でも偉い人ってことやね」

 

絵里と希の説明を聞いて目の前にいる彼女の正体をようやく理解した穂乃果、先程から感じていた言い表せない威圧感はそれ故のものだったのかと思いながら興味深そうに蓮香を見つめる

 

だが、それを理解したからこそ湧き上がる疑問も新たに生まれる

 

「………けど、なんでそんな人がわざわざこの学校に来たわけ?」

 

真姫が投げかけた疑問ももっともだ。

防衛省とは国の安全を守るために動く組織、そんな人物がこの女子校の、それもスクールアイドルである自分たちになぜわざわざ会いに来たのか……。

 

「実はね、先ほど彼女が穂乃果さんと海未さんの2人に言ったんだけど……あなた達にVDF結成セレモニーのイベントに参加してもらいたいの、そこでライブをしてほしいらしくて…」

 

「そのぶいでぃーえふって凛たちはわからないにゃ」

 

「うん、聞いたこともないし……あの、それって何かの略称なんですか?」

 

“VDF”聞きなれないアルファベットの並びに首をかしげる凛と花陽の2人、その疑問に答えるように理事長の隣で腕を組んでいた蘭華が前に出た

 

 

 

「正式名称 国家防衛特殊機動部隊 Valkyrie Defense Force、通称VDF………今回防衛省が発足した日本独自の新たな防衛組織だ……“怪獣専門のな”」

 

 

 

その組織の正式名称、そしてそれがなにから守るために発足されたのかを知った瞬間、穂乃果達は反射的に息を飲むのんだ

怪獣専門という、あまりにも大きな任務を追った組織というのもあるがなによりも……自分たちの状況的にも驚かずにはいられなかったからだ

 

彼女達はウルトラマン達と力を合わせている、それ故に怪獣とは無縁というわけではないからだ。

 

「………もしかして、この前ニュースでやっていた怪獣専門の防衛機関って………」

 

「察しが早いな……お前は三年生の絢瀬 絵里だな? そう、お前のいう通りそれが我々だ、そして私はそこで隊長をしている」

 

「た、隊長!? 隊長って、あれですよね、リーダー的な…」

 

「その通りだ、まあ、まだこれからの予定なのだがな」

 

しかも、彼女はその部隊の隊長だった。

彼女達の中に妙な緊張が走る……もしかして、自分たちとウルトラマン達の関係性がバレてしまったのでは?

その一抹の不安を感じた9人は警戒心を強める。

 

「………どうした? 表情が硬いぞ?」

 

さすがにそれは表に出ていたのか蘭華によって見破られてしまったようだ。

 

もし彼女達の不安が的中していたら厄介なことになりかねない…なんとか取り繕わなければ……。

そう誰しもが感じていた中、前にではのは……。

 

 

 

「……なんで、にこ達を……選んだんですか?」

 

「にこちゃん……!」

 

 

 

μ'sの活動拠点である、アイドル研究部の部長である…にこだった。

全員の先頭に立って恐る恐ると問いかける………すると、それに対して蘭華は口元に微笑みを浮かべたあと………

 

「それはな…………」

 

「………それは?」

 

「……………それはな」

 

「「「それは………?」」」

 

「……………それはな……………」

 

『それは……!?』

 

 

 

 

 

 

 

「……………ファンだからだ」

 

 

 

 

 

 

 

帰ってきたのはあまりにも予想外の返答だった。

 

メンバー全員が集まった理事長室、話の根源である蘭華と部屋の主人である理事長を除くμ'sの九人は………驚きのあまり、沈黙せざるを得なかった……。

 

そして、その沈黙から約30秒……

 

 

 

『ええぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?』

 

 

 

学校どころか音ノ木坂全体に響くような驚きの声がこだましたのは言うまでもない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

要するに要件をまとめるとこうだ。

今回、日本を中心に現在頻発し始めた巨大生物、怪獣への対抗策として防衛省及び自衛隊の派生組織として新たな“対怪獣対策防衛組織”が結成された。

 

それが“VDF”、正式名称“Valkyrie Defense Force”ということだ。

 

なぜ戦乙女、ヴァルキリーの名をつけたのかはわからないが隊長が女性ということもあってそうなったのかもしれないということにしておくとしよう。

 

ともかく、今回日本ではそのような組織を新たに設立することとなった。

しかし、一般人からしてみたら馴染みのない組織であり、同時に自国防衛という目的とは別に怪獣への対抗策として作られた組織は馴染みがないというか、あまりどうと言われてもこれといった印象を得ることはできない。

 

そこで一般人の信頼を得るためにVDF設立セレモニーを開催し、そこで自分たちの存在を報せようということ………。

 

そのための足がかりに………。

 

 

 

「私たちμ'sを宣伝のダシにするってわけ……?」

 

 

 

アイドル研究部の部室、長机をいくつか繋げた状態で座り、聞いた話を纏めている中で真姫がそう言い切った。

その発言に他のメンバーはどこか苦々しいというか、あまり好感触な印象を受けない顔を浮かべる。

 

というのも、そう言い切った真姫の表情がいつになく不機嫌という感じのものだからだ。

心なしかいつもの彼女のつり目とその中央の瞳に鋭利な鋭さを感じる気がする。

 

「……真姫ちゃんがなぜか怒ってるにゃ」

 

「怒ってない」

 

「そう言いながら耳を引っ張るのは怒ってるっていうにゃ〜〜〜!?痛い痛い痛い!!」

 

近場にいた凛の耳を引っ張りながら怒ってることを否定する真姫だが、凛の言う通りこの反応は完全にそうとしか見えない…。

 

「……真姫、あなたがそこまで怒るのって……」

 

「だから怒ってない、気に入らないのよ、こういうの」

 

絵里の言葉にそう返答し、凛の耳を離した彼女はいつもの癖で自身の髪を指でいじりながら不機嫌そのままに呟く。

 

「私たちはあくまでこの学校のため、それにいい結果は出せなかったけどラブライブを目指して練習してきたんでしょ……宣伝のために利用するようなやり方が気にくわないの」

 

「うーん………まあ、確かにあなたの言い分も分からなくもないけど………」

 

実際、真姫の言うことはある意味では芯をついている。

自分たちスクールアイドルは学校を代表して活動するスクールアイドルであり、このような場に出るために結成された存在ではない。

このステージはμ'sにはあまり関わりのないステージと言えるだろう。

 

「しかし、国を代表する組織のセレモニーで私たちが出たということはスクールアイドルとしての宣伝効果にも期待はできるかも……しれません……たぶん」

 

「花陽の言う通り、何かを広めるためには限られた場でなく範囲を拡大した広めるのも1つの手と言えるのは確かです……以前にことりのバイト先でライブの告知をしたのもその結果の1つですしね」

 

「けどそれとこれとは違うでしょ!」

 

そういってさらに強い剣幕で言い放つ真姫に花陽は反射的にびくっ、と怯え、海未は困り顔を浮かべた。

 

「………穂乃果はどう思う? このこと、受けた方がいいと思うかしら」

 

「うぇ? ………うーん………学校の宣伝をしてくれるって蘭華さんは言ってくれたから、その点ではいいとは思うけど……それよりも」

 

みかねた絵里が穂乃果に話を振ると穂乃果はふと鞄に手を伸ばし、その中に手を突っ込むとガサゴソと何かを漁り始めた。

何を出そうとしてるのか全員の視線が彼女に集中する……そして、しばしの間を明けてから彼女が鞄からあるものを取り出した。

 

 

「パン先に食べていい? お腹すいちゃって……」

 

 

ーーーずてっ

 

 

穂乃果を除く全員がずっこける音がシンクロした気がした。

 

「あんたねぇ……!」

 

「あはは、ごめんごめん、だって食べようとする前に呼び出されたんだもん……あむ、んー……! いやぁ、今日もパンがうまい!」

 

「相変わらず図太いねぇ、穂乃果ちゃんは……でも、逆にそのくらいがええんかもしれんよ?」

 

にこが穂乃果の言動に眉をひそめると、希が突然そう告げた。

すると、今度は希が自身の鞄を机の上に置いてチャックを開ける。

それを合図にしたようにそこから今は彼女の力となっているウルトラマン、人形となっているネクサスがふわふわと浮かびながら出て来た。

 

「たぶん、うちらはスクールアイドルとしてではなく、今後ウルトラμ'sとしての関係性をVDFと持つことになるかもしれんとうちは思う」

 

「どう言うこと?」

 

『俺達は…………人間と協力し、今まで戦って来た』

 

首をかしげることりにネクサスが静かに答える。

するとそれにつられるように穂乃果の鞄が空いたためかメビウスも同じように出てくると机の上に着地した。

 

『僕達ウルトラマンはどの世界においても地球人と力を合わせて困難に立ち向かってきたことがたくさんあります……僕も、かつて大切な仲間と共に……戦いました』

 

何かに想いを馳せるようにそう語り始めたメビウス、ついでそれぞれのメンバーの鞄の中から各ウルトラマンが出てくるとそれに同意するような反応を見せた。

 

『私たちの世界では同じように怪獣への対策を目的とする組織が存在した……私の世界では“チームEYSE”、そして“SRC”という組織が人間と怪獣との共存や地球への脅威に向き合っていた』

 

『俺たちもだ、異常現象、怪獣被害への対策として“GUTS”が作られ、その後継組織として“スーパーGUTS”が作られた、VDFと同じチームをずっと前にな』

 

『そして、人類への危機に共に立ち向かった………この世界もその方向へと向かいつつある、僕達だけでは人類も不安なんだろう』

 

それぞれの世界にも怪獣への対策を目的とした組織が存在することを知った彼女達だが、ここでティガが何気なく呟いた言葉に疑問を抱く。

 

「う、ウルトラマンさんたちがいるのに……ですか?」

 

『………私たち、だからだ………花陽』

 

花陽の問いかけに対してコスモスがそう返答する。

 

『君達以外の地球人からしてみれば私たちも怪獣と同じ脅威になり得る存在……未知の存在だ、必ずしも味方とは言い切れない以上、不安を抱く者もいる』

 

『………だからこそ、人類自身も立ち向かう術を得なければならなかった………病原菌に対抗するために人間の体内で抗体が作られるのと同じだ』

 

「そんな! コスモスさんたちは悪い人たちじゃないです!」

 

「そうにゃ! みんなのために戦ってくれたにゃ!」

 

『しかし、凛……全ての地球人が私達の事情を知っている訳ではない』

 

コスモスとアグルの言葉に抗議する花陽と凛だがマックスがそれをなだめるように告げた。

 

『それに彼女達のような組織は今後のことを考えても存在していた方がいいこともある、私達は無敵の戦士ではない……だからこそ……人間も頑張らなければいけない時もある』

 

まとめる様にそういったティガの言葉にどこか納得のいかない様子を見せる面々ではあったがその場は治った。

彼女達はウルトラマンが自分たちの味方であることを知っている、だからこそ不安要素になり得るかもという事実を真っ向から否定できてしまう……それ故のジレンマなのだろう。

信じれる存在なのに、信じることができない……それが何よりも歯がゆいから……。

 

メンバーが沈黙する中、ふとここでみかねた様ににこが立ち上がるとその場で腕組みして短くため息をついた。

 

「しょうがないわねぇ………とにかく、なんであれ今は目先のことよ! せっかくのステージを用意してもらったんだもの、全員手は抜かずちゃんとパフォーマンスするわよ!」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!!」

 

にこの発言にすかさず真姫が食い下がった、それに対してにこは真姫に訝しげな目を向ける。

 

「なによ、まさか新曲の楽譜無くしたとかいうんじゃないわよね?」

 

「ちゃんとあるわよ! ってそうじゃなくて! なんでやる方向になってるの! ただ体良く利用されてるみたいなものなのに!」

 

「そんなこと? そんなの決まってるじゃない」

 

なにを今更とでもいいたげな仕草を見せたにこはじっと、まっすぐに真姫を見つめながら次の瞬間、言い放った。

 

 

 

「………ファンからのお願いだからよ」

 

 

 

………ただ、それだけを………。

 

 

 

「………うぇ?」

 

この返答にさすがに困惑を隠せない真姫、だがにこはそんなの御構い無しと言いたげに言葉を続ける。

 

「いい? にこたちは確かにスクールアイドルなの、アイドルはまずファンを楽しませるもの! それができなくちゃ意味がないの!!」

 

びしぃ! と勢いよく指をさして言い放ったにこに真姫は戸惑いながらも食い下がろうと目つきを再び鋭くさせる。

 

「意味わかんない! だいたいそれが本当かどうかもわからないのに、こんな申し出を受けるの? にこちゃんは勢いで判断する前にちゃんと考えてから物を言った方がいいんじゃないの!?」

 

「はぁ!? ちゃんとにこだって考えてるわよ! 真姫ちゃんこそ細かいことを考えすぎなのよ! そんな石頭で疑り深いから目がつり上がったのよ! 少しは頭を柔らかくしなさい!」

 

「なんでそうなるのよ! つり目は生まれつき!! それに少なくともにこちゃんよりは頭は柔らかいわよ!」

 

「なっ!? それってにこがバカって言いたい訳!? そうよね! そういう意味よね! そう受け取るにこ!!」

 

「ふ、2人とも落ち着いて!?」

 

「真姫ちゃんとにこちゃんが喧嘩したらキリがないにゃ〜!」

 

終わりのなさそうな口喧嘩が勃発し、話の方向性があらぬところに向かって行く中、立ち上がって距離を詰め合いながら睨み合うにこと真姫を絵里と凛が慌てて下がらせる。

なぜこの2人はここまで仲が悪いのか……アイドル活動において積極性の強いにこと積極性が強くなく利己的に物事を進める真姫、正反対の2人は反発しあい、視線の火花を散らし合う。

 

『………なんだか、似たようなのを前に………“GUYS”でもみたことあるような………確かことわざでもありましたよね?』

 

『………そうだね、こういうのは………』

 

2人の様子を見て呟くメビウスにガイアが同意してあることわざを呟く……。

 

 

 

『………喧嘩するほど仲がいい、かな?』

 

「「仲良くない!! 」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

波乱の緊急会議から、数日後の放課後……結局あの後は部長のにこの判断により、VDFの申し出を受けることになり、μ'sは当日に向けて練習を開始した。

しかし、その間真姫はあまり納得のいかない様子ではあったが一応は練習に参加した、しかしその間どことなくだがにこと真姫の間には妙なわだかまりのようなものができてしまっていた。

 

その日の放課後、練習を終えて荷支度を整えた真姫だったが……

 

(あ、屋上に忘れ物しちゃった……)

 

荷物を整理していた時に愛用の水筒を屋上に置いてきたことに気付き、凛と花陽に先に行くように促して自分は屋上に向かい、それを回収してから校門へと向かった。

 

そんな時だった………。

 

 

 

「「…………あ」」

 

 

 

偶然、本当にばったりと、校門の前でその問題の相手、にこと遭遇してしまったのだ。

ここしばらく妙な緊張感を持ってしまった2人ゆえに互いにどこか警戒しながら視線をそれぞれ向けあう。

 

「………なんでこっち見てるのよ」

 

「そっちこそ見てるでしょ……」

 

「そっちが見るから見るんだってば……」

 

「ほら! やっぱり見てるじゃない!」

 

目を合わせるだけでこれだ、視線だけで簡単な口喧嘩ができてしまう。

よほど彼女との相性が悪いのかと思えてしまう…。

 

しばらく睨み合ったあと真姫はとりあえずスルーしようとして校門に向かう。

すると、どういうわけかにこもそのあとをついてきた。

 

「………なんでついてくるの?」

 

「あんたこそなんでついてくるの?」

 

「こっちが帰り道だから……」

 

「にこもこっちから帰るの……」

 

ただでさえあの口喧嘩の後空気が気まずいのになぜ同じ方向に帰り道が被るのか……軽くため息をつきながら真姫はもう気にしないでいようと歩を進め続けた。

 

それにしても、前々からなぜこうも自分たちは反発しあうのか……。

年も少し離れてて、性格も全然違う、自分はよく大人っぽいと言われて彼女はよく子供っぽいと言われる。

考え方も正反対、相性は悪いはずなのに……なぜかよく関わってしまう。

 

実際に今にしてもそうだ、偶然かそうでないのかは定かではないとしてこうして一緒の道を歩いている。

 

……結局、自分たちはどのような関係性なのだろうか……。

 

ふと真姫はこの時、そう思った。

 

「ねえ、ちょっと」

 

突然にこが真姫に声をかけた。

また何か口喧嘩のきっかけになるようなことを吹っかけるのかと思い、真姫が彼女の方を振り返ろうとすると……。

 

「危ないわよ」

 

「うぇ? ……うぇぇぇぇぇ!?」

 

何を言っているのかと思った矢先、自分の目の前を高速で二輪車が横切って言った。

考え事に老け込むあまり、左右への注意が怠った、校門前の車道に危うく出てしまうところだった。

驚いたあまり、その場で尻餅をついてしまった真姫は軽く腰をさすりながら息を整える。

 

「いたた………もう、なんなのよ」

 

「………しょうがないわねぇ………はい」

 

「………え?」

 

すると、見かねたにこが真姫に手を差し伸べてきた。

その行為に戸惑う彼女だったが、それに対してにこは首を傾げた。

 

「なによ、ほらはやく掴みなさいって」

 

「べ、別にそんなことされる理由……!」

 

「人が折角心配してるのにその態度? どっちでもいいけどさっさと立ちなさいよ、パンツ見えてるわよ」

 

「うぇぇぇぇええええええええ!?」

 

それを聞くや否や顔を赤くして慌てて足を閉じてスカートを抑える、そんな彼女を見かねてかにこはため息をつくとしゃがみこんで真姫と同じ目線になる。

 

「ほら、いいからはやく立つ!」

 

「あっ………ちょ………うぅ」

 

有無を言わさず真姫の手を取り、にこは彼女を引っ張って立ち上がらせた。

そして、さりげなくその際に制服にできたシワやちょっとした汚れを手でぱんぱんと払う

 

(……にこちゃん、意外と面倒見いいのかな)

 

細かなところまで意識を回らせる彼女の行動に真姫はふとそう感じた。

 

「あ、ここも……まあ、尻餅ついたから仕方ないわね」

 

「うぇぇえ!? ちょ、そ、そこはいいから!?」

 

危うくお尻の方にも手が伸びそうになったところで慌てて自分でそれをはたいた真姫は落ちていた鞄を拾い上げるといそいそと肩にかける。

そして、ふと視線をにこの方に向けると……。

 

 

 

「…………あ、ありがとう」

 

 

 

その言葉ににこはあっけにとられたような顔をしばらく浮かべた後、なんの前触れもなく小さく笑いをこぼした。

 

「………くふっ!」

 

「な!? なんで笑うの!」

 

「ち、違う違う! あんたって真姫ちゃん意外と律儀なとこあるなーって、あんなに喧嘩したのにありがとうって素直にいうから」

 

「い、言うわよそのくらい! 人を天邪鬼みたいに………実質、危なかったし………逆に言わない方が失礼って……思っただけ……それだけ」

 

強がってそうは言うものの、なんだか照れを隠しきれてない。

自分のことながらも真姫はそう感じてしまった。

 

子供っぽい見た目と思考をしてるくせになぜかこの時見せたにこの姿は、冷静な年上っぽさを感じさせる。

逆に自分はこの時子供っぽく強がってることがいくつかあった。

まるでさっきまで感じていたお互いの印象が真逆になったように………。

 

(………本当は………似てるのかも………どのか)

 

そう感じながら真姫はまだ照れから感じる顔の暑さをごまかそうと目をそらし、そのまま歩き始める。

すると、またその後をにこがついてくる。

 

「………まだついてくるの?」

 

「夕方だし、1人じゃ危ないでしょ? ついでだから近くまで一緒に行ってあげるにこ」

 

あれだけ言いっあったのにそんな気も回してくる……にこも意外に冷静な思考を持っているのか、ふとそんなことを思った真姫は視線前に戻しながら……あることを呟いた。

 

 

「………私たちってなんなんだろ」

 

「………なにが?」

 

 

それを聞いていたにこは横で歩きながら返してきた。

 

「まるで正反対と思ってたら、どこか似てるかなーって……なんとなく感じたり……ほんと、どうしたいんだろうなって思ったの……」

 

「なによ、いきなり………うーん、まあ、それはにこも気になるかも」

 

「……にこちゃんも?」

 

「当たり前よ、だって………」

 

にこはそう言うと真姫の数歩前に出て唐突に彼女の方に振り返ると、右手をいつものあの形にするとひたいの方に当てるようにして笑顔を見せた。

 

 

 

「真姫ちゃんも、にこと同じμ'sのメンバー! ただの仲良しかライバルか、気になるのは当たり前にこ!」

 

 

 

仲良しか、ライバルか、その笑顔はどこか強気でなんとなく仲良しな相手にむけるやうな笑顔のような、それでいて負けないぞと言いたげな笑顔のような印象を感じる。

 

「………同じメンバーなのに?」

 

「同じだからこそ、一番身近なライバルはすぐ近くにあるし、一番の仲良しもすぐ近くにあるものでしょ? 今はそれがわからないから……つまりは………えっと………そういうこと!」

 

「なにがよ………」

 

不思議な返答を返してきたにこに真姫はじと、と目を細めてみせるが……なんとなく今、何かを言おうとして隠したのは見て取れた。

 

言いたいことはあるけど本音はまだ言えないってことなのだろうか…。

 

そんなことをされたら……余計に気になってしまう……。

 

「………何か言いたいことでもあるの?」

 

「別にー? なんでもないにこー」

 

「誤魔化さないで! ちゃんと教えてくれないと気になるじゃない!」

 

「だったら、あんたももっとにこに近づくことね!」

 

「うぇ?」

 

先ほど見てる見てないで揉めた後に出てきたその言葉に真姫は意味を汲み取ることができずに動揺する。

 

すると、それを見てにこはまた会議の時のように真姫をまっすぐ見つめながら……告げた。

 

「にこはスクールアイドルとしてμ'sの中でも誰にも負けないくらいファンを笑顔にできるアイドルになりたいの、あんたも同じスクールアイドルなら同じくらいにファンを笑顔にできるようにならないと、置いてっちゃうわよ?」

 

………誰よりも、ファンを笑顔に………。

 

その言葉に真姫はにこの中にある1つの真意を、見た気がした。

彼女は何よりもアイドルにこだわっている……そして、あの時もファンのことを思って提案を受けた。

 

……ファンを笑顔にしたいから。

 

利用されてるだけかもしれないという、ファンという人を疑った自分とは違って……。

 

「確かに気に入らないことはあるのもわかる、けどステージに立ってみんなを笑顔にできるならにこは全力を尽くすわ……なんて言われてもね」

 

「………意味わかんない………けど」

 

 

 

 

 

ーーー…………すごい。

 

 

 

 

 

その言葉は口にはせず、真姫は本音を隠した。

にこが本音を隠したように、自分も……これでおあいこだと、子供っぽくは感じながらもちょっとお返しをして見たのだ。

 

「……けど、なによ? 言いなさいよ」

 

「………言わない、仲良しかライバルかわからないんでしょ?」

 

「あぁ〜〜! なんかそれずるい〜! ちょっと! 隠し事はなしにこ! あ! ちょっと! 先に行かないでよ! こっち来なさい! ねぇ!!」

 

今のやりとりはにこが自分との間にできたわだかまりを面倒なことになる前に取り去るため仕掛けた“罠”なのかもしれない。

味方みたい、それとも敵か、曖昧な表現ではあるが………わからなかった自分とにこの関係性を、真姫はなんとなく理解したような気がした。

 

 

今回の申し出は気に入らない、それでも………。

 

 

負けたくないから、本気を出す。

 

 

この時、そう思った真姫は……それから数日、本番のステージに向けての練習に力を入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セレモニー当日、VDFの拠点となる基地という場所になんとも重厚な車に乗せられて連れてこられたμ's達はその装いに素直に驚いていた。

 

目の前にあるのはダムのような巨大な壁を持つ建造物、そこらの高層ビルや一度見たA-RISEの拠点であるUTX高校とはまた違った迫力を感じさせる。

 

「うわぁ……すごい」

 

「いつの間にこんなの作ってたんだろうね……」

 

「これが怪獣を相手にする防衛組織の拠点………」

 

「VDF作戦司令基地 “天宮”にようこそ、待っていたぞ、μ's諸君」

 

その基地の大きさに圧倒される中、ことの始まりの人物、蘭華がメンバー達の元に現れた。

以前に見たスーツ姿ではなく、この組織の専用の制服なのか、レザー質な白と青を基調とした衣服を纏っており、左胸にはVDFを象徴する翼を携えた剣を思わせるシンボルマークが輝いている。

 

「蘭華さん! 今日は、あの、よろしくお願いします!」

 

「こちらこそ、よろしく頼む……この天宮の初披露にふさわしい晴れ舞台を君達に託させてもらう」

 

「……あの、天宮ってこの建物の名前ですか?」

 

「ああ、そうだ、組織の名前は英語でまとめてはいるがここは日本、故にそれらしい名前をつけた……戦乙女の拠点となる場所、といったところか」

 

結構なロマンチストなのかと思わせる発言に質問した絵里は少し意外性を感じながらも、周囲に目を向ける。

よく見ると遠くの方では既にこのセレモニーを一目見ようと大勢の人たちが集まっているのが見えた。

 

「………君たちの輝かしい舞台を観るために集まってきた人たちだ、私も楽しみにしている………頑張ってくれ」

 

「………はい!」

 

微笑みながらそう告げた蘭華に穂乃果は元気の良い挨拶を返す。

そんな中、真姫はふとセレモニーの会場へと向かっていく人達の方に目を向ける中……何かに気づいた。

 

 

「………っ!」

 

 

会場へと向かう人物の人混みの中にちらりと……見覚えのあるローブが目に飛び込んできたのだ。

 

まさか、そう思った彼女は今とっさに近くにいたにこに声をかける。

 

「にこちゃん………ちょっと」

 

「なに? これからなのよ、今からやっぱりやめないは聞かないわよ?」

 

「違うわよ! ………例のローブのやつかもしれないのが、一瞬………」

 

「え………」

 

彼女の言葉ににこはすぐさま表情を変えた、そんな時だった………。

 

 

 

 

 

 

ーーー………ビー!ビー!ビー!ビー!

 

 

 

 

 

突然けたたましいサイレンの音が鳴り響き始めたのだ。

この警報にその場にいた全員、セレモニーに参加しようとしていた人々は困惑し始める。

 

 

 

ーーースクランブル! スクランブル! VDFに出動要請! 繰り返す、VDFに出動要請!

 

 

 

広い範囲に聞こえるサイレンと放送を聞き、彼女達を迎え入れに現れた蘭華は表情を変えると耳元に既に装着されていた小型イヤホンのような物に手を当てた。

 

「こちら綾小路、司令室、なにがあった」

 

『ポイント A_012に怪獣を確認しました、クラスA相当、こちらに向かって進行してきています!』

 

「っ! 天宮に向かって……」

 

イヤホンから流れてきたその言葉に蘭華は表情を硬らせる。

だが、すぐに表情を落ち着いたものへと変えて自身の役目を全うするべく行動を開始する。

 

「………よし、セレモニーに参加する民間人を中に避難させると共に迎撃に出る、“雷電”の発進準備急がせろ!」

 

『ガッチャー!』

 

素早く指示を飛ばした蘭華はイヤホンから手を離す、そしてμ'sの面々の方に向き直る。

 

「君達も中に、ここに怪獣が向かってきている、早く避難を!」

 

「え!? な、なにか、私たちにできることは……!」

 

「悪いが君達を危険な目には合わせたくはない……1人のファンとして安全は確保させよう……彼女達を中に避難させろ! 私も向かう!」

 

「ガッチャー!」

 

近場にいた隊員と思われる人物に指示を出し、蘭華は走り出すと天宮の方へと向かっていった。

穂乃果はその後ろ姿をじっと見つめる。

 

「………あれ?」

 

するとふと、ことりがあることに気づいた。

 

「にこちゃんと真姫ちゃんがいない!」

 

「…………え!?」

 

彼女の言う通り、いつのまにか先ほどまでいたはずのにこと真姫の姿がないのだ。

周囲を見回しても近くに姿は見えない、いったいこんな時にどこにいったのかと穂乃果が思っていると……。

 

『………穂乃果さん、大丈夫です』

 

(メビウスさん……?)

 

ふと荷物の中に入れていたメビウスから頭の中に直接届かせる形でそう告げられた。

 

『2人は……やるべきことをしに向かいました』

 

(………あ)

 

その言葉の意味を穂乃果は理解した。

よく見ると遠くの方で2人並んで走る後ろ姿が見える………彼女達は真っ先に為すべきことを果たすために向かったようだ。

 

 

「………よし、私たちもやれることをやろう!」

 

「やれることって……なにをですか?」

 

「なんでもだよ! ここに来てくれた人たちを不安させないように、私たちでできることをやろう! ……2人が頑張ってるから!」

 

 

穂乃果のその言葉に残されたメンバー達は互いの顔を見つめあった後、力強く頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天宮から数十キロ離れた地点、そこでは恐ろしい光景が広がっていた。

街中を二匹の怪獣が揃って突き進んでいるのだ、建物を破壊し、邪魔なものを蹴散らしながらまっすぐに人が集まっている天宮の方角へと……。

 

片方は頭に鋭いツノを持ち、屈強な四肢を持った巨大な恐竜じみた爬虫類を思わせる姿を持つ怪獣……“凶暴怪獣 アーストロン”だ。

 

対してその隣で同じように街を突き進んでいくのは、両手にハサミを持ち土色の大きな体に凶悪な目を持つのは、“岩石怪獣 サドラ”。

 

同時に二体の怪獣が現れ、天宮へと真っ直ぐに向かう。

まるで何かの目的を果たそうとするかのように……。

 

だが、その進行を阻む者たちが現れた。

アーストロンが何かの音に気づいて、それが聞こえる方、空へと目を向ける。

すると、進行方向の空に3つの細身のシルエットを持つ影が高速でこちらに向かってくるのが見えた。

空を切り裂くジェットエンジンの音、それによって発生する飛行機雲の尾を引きながらまっすぐにこちらに向かってくるのは……まぎれもない、飛行機だ……だがそれはただの飛行機ではない………。

 

この怪獣たちを相手取るために作られた、専用の“戦闘機”だ。

 

 

 

「目標を視認! これより迎撃行動に移る! 演習と思うな、私達の手に多くの人の命がかかっている………行くぞ! 私達人間の底力を見せてやれ!!」

 

『ガッチャー!!』

 

 

 

激震するコックピットの中で対怪獣用として開発された特殊戦闘機、“雷電”の操縦桿を握る蘭華は左右についてくる部下に激励を飛ばし、操縦桿を握る力を強めた。

雷電は自衛隊が所有する戦闘機を元にさらに性能を向上させ、怪獣に有効打を与える装備を搭載した最新鋭機である。

だがそのために相当な操縦の癖があり、慣れるのには訓練を必要とする。

体に負荷をかけるGを全身で感じながら、目標を攻撃射程内に収めた蘭華はスピードを落とし、左右の同型機とともにタイミングを合わせる。

 

ターゲットを絞るスコープが自身の被るヘルメットのバイザーに直接表示され、それが標的を絞った瞬間に操縦桿のボタンを押し込む。

 

 

途端に機体下部に装備されていた二門の銃口が火を吹いた。

マシンガンのように連射されるのは威力を高めるために実弾ではなくレーザー兵器を使用した、特殊兵装バルカンだ。

怪獣の体に浴びせかけ、直撃したそれらの攻撃は火花をあげて怪獣の動きを怯ませる、ダメージを与えられたようだ。

 

続けて他の二機も攻撃を開始し、怪獣たちを攻撃していく。

けたたましい銃撃音と怪獣の咆哮が街に響き渡る。

 

ーーー行ける、この兵装なら戦える。

 

蘭華はコックピットの中でそう感じた。

再度怪獣に攻撃を仕掛けようと方向転換してはバルカンを連射する。

 

しかし、向こうもただやられる存在ではなかった。

 

受け続ける攻撃に怯みながらも怪獣の片方がいきなり叫びを上げると、異変が起きた。

なんと、体から霧のようなものを出してあっという間にあたりを包み込んでしまったのだ。

サドラの持つ特殊な能力だ、これではどこにいるのか見分けがつかない、下手に攻撃すれば街を破壊してしまう。

苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる蘭華は周囲を旋回しながら様子を見る………すると。

 

「っ! 回避!!」

 

霧の中で怪しく光る何かを見た瞬間、ついて来ていた二機に指示を飛ばした。

すぐさま回避行動をとる三機、そこに向けて霧の中から燃え盛る炎が飛び出して来たのだ。

霧に隠れて反撃をして来たのだ、間一髪のところで回避することができたが……このままではこちらは下手に動くことはできない。

 

「……厄介な」

 

こうしている間にも霧は広がっている、これに紛れて怪獣が天宮に向かえば大変なことになる……何か打開策はないかと蘭華が思考を巡らせていたその時……!

 

『隊長!!』

 

「っ!」

 

気づいた時、すぐそこにまで炎が向かって来ていた。

まずい、このままでは直撃する……だが今更回避はできない、蘭華が息を飲んだ………次の瞬間!

 

 

 

「ジュワ!!」

 

 

 

赤い光が目の前に広がり、迫っていた炎を霧散させた。

何事かと蘭華が一瞬、その光に目を眩ませるが……次に目を開けるとそこには……。

 

「…………例の、巨人………ウルトラマンか」

 

銀色と赤色の体を持つ巨人が自分の前に現れて腕を交差した体制で炎を遮っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

間一髪のところで戦闘機に直撃しかけた炎を防いだウルトラマンガイア、腕をクロスさせて霧の中から出てくる炎を防いでいる。

 

「デュゥゥ………!デア!!」

 

腕に力を込め、それを思い切り振り払うと受けていた炎を弾き返す。

火の粉となって弾けた炎、ガイアは背後にいた戦闘機が無事なのを確認すると小さく頷いて霧の中へと再度目を向けた。

霧はかなり濃く、この中に飛び込むのは不利な状況に陥るのと変わらない………だからこそ、対策の手を打ってある。

 

「よし、ダイナ!」

 

「おぉ! 後は任せとけ!!」

 

上空へと合図を送るとそれに答えるように空へと待機していたウルトラマンダイナが答える、するとダイナは両手の拳を握るとそれを自身の胸のカラータイマーに添えるように腕を交差させる。

 

「フゥゥゥゥゥゥン! デェァァァァァ!」

 

気合いとともにその腕を左右に広げると、額にある“ダイナクリスタル”が銀河系を思わせる光を発し、その体を包む。

そして、次の瞬間赤、青、銀の体を持つダイナの体が青と銀色の姿へと変わった。

 

ダイナはティガと同じように相手に合わせて姿を変えるタイプチェンジ能力を秘めている、この姿だからこそ発揮できる能力、それは……。

 

 

「フッ! ………デアッ!!」

 

 

額の前で腕を交差させ、意識を集中させて指先を霧へと向ける。

すると、霧の中に突風が巻き起こり、あっという間に霧を吹き飛ばしてしまったのだ!

 

それはまさに、“超能力”のなせる技……。

 

 

これこそがウルトラマンダイナ、“ミラクルタイプ”の真骨頂である!

 

 

身を隠す霧を剥がされ、姿を露わにさらたアーストロンとサドラは動揺した様子を見せている。

地上に降り立ったダイナはガイアと共に相手を見据え、身構える。

 

『ここで食い止めるわよ、にこちゃん!』

 

『みんなの笑顔を作るのがアイドル、けど今はみんなの笑顔を守るにこ!』

 

ガイアとダイナの中に意識を宿した真姫とにこ、それを感じ取った2人はちらりと互いを見合わせる。

 

「………なんやかんやで」

 

「息ぴったりだな……へへっ、負けてらんねぇな! 行くぜ!」

 

「あぁ!」

 

こちらも互いの息を合わせ、ガイアとダイナは目前の敵に向かって走り出す!

 

ダイナはサドラに、ガイアはアーストロンを相手取り、それぞれ繰り出される攻撃に素早く対処して反撃を繰り出して行く。

サドラのハサミを振り下ろした一撃をダイナは左腕で払い、横腹に蹴りを打ち込み。

アーストロンの体当たりをガイアは横に動いて回避し、背中に向けて手刀を放つ。

 

2大怪獣と2人のウルトラマン、一進一退の攻防が繰り広げられる。

 

しかし、怪獣側も反撃に移る。

鋭いハサミを光らせてサドラがダイナの腕を挟み込む。

一瞬の隙を突かれたダイナは腕をハサミで挟まれ、その腕を締め上げられる。

 

「ウァァァ!?」

 

「っ!グァァァァァァ!」

 

それを見て一瞬意識をダイナへと向けたガイアの隙をついてアーストロンが力強く腕を振り下ろしてガイアを打ち据える。

そこへアーストロンが倒れたガイアをのしかかるように押さえつけて何度も腕による攻撃を繰り返す。

 

一瞬の隙を突かれ、怪獣に反撃を許してしまった2人、ダメージを受け続ける今の状態は非常にまずい…。

 

だが、そこに!

 

 

 

「各機! 2人のウルトラマンを援護! 借りを返すぞ!」

 

 

 

周囲を旋回していた3機がウルトラマンを攻撃し続ける怪獣たちに向けて攻撃したのだ。

サドラの頭を横合いから、アーストロンの背後から、搭載されたレーザーバルカンを浴びせかけ続ける。

予想外の攻撃を受けて、たまらず二体の怪獣は攻撃の手を緩めた瞬間、ダイナとガイアはそれぞれ距離を取り、体制を立て直す。

 

2人が自分たちを助けてくれた3機に目を向けると、先頭を飛ぶ機体のコクピットに座る蘭華が自分たちに向けてサムズアップをしてるのが見えた。

 

 

ーーー今だ

 

 

それを伝えるかのように……。

 

その意思を感じ取ったダイナとガイアはこのチャンスを逃さず、一気に勝負をかける!

ダイナとガイアはタイミングを合わせて走り出すと同時に飛び上がり、そのまま急降下しながら飛び蹴りを叩き込む。

あまりの衝撃に倒れこんだ二体、そして同時に着地した2人は頷きあうと、ガイアは前に出てしゃがみこみ、ダイナはその後ろに立つ。

 

立ち上がったアーストロンとサドラは互いに先に行け、お前が行けというかのような動きを見せた後、サドラによって前に突き出されたアーストロンが炎をヤケクソ気味に放つが……。

 

『させない! 止めるわよ、ガイア!』

 

「あぁ! デュア!!」

 

左手を握って垂直に立て、そこに右手を交差させるようにあてがうとそのまま上に半円を描くように左から右に、赤い光の尾を引きながら動かして……。

 

 

 

「『クァンタムストリーム!』」

 

 

 

左腕を垂直に立ててL字を組むと、そこから灼熱の光線を放った!

迫り来るアーストロンの炎をガイアの光線、“クァンタムストリーム”が相殺する!

 

そして、完全に相殺され動揺したところに後ろに控えていたダイナがトドメを打つべく構えた。

 

『邪魔をする奴は、宇宙の果てまで吹っ飛ばすわよ! ダイナ!』

 

「おっしゃあ!! 任せとけ!!」

 

両腕を額の前で交差させ、光のエネルギーが渦を巻くようにダイナの右腕に集まり、それを腰だめに構え………。

 

 

 

「『レボリウムウェーブ!!』」

 

 

 

そのまま溜め込んだ右腕のエネルギーを前へと放ち、それを二体の怪獣の“背後”へと炸裂させる。

強烈なエネルギーがその空間を湾曲させ、それが小さなものではあるが……ブラックホールを作り出し、次の瞬間二体の怪獣をその中に引きずり込んだ!

 

ウルトラマンダイナ、ミラクルタイプの必殺光線、“レボリウムウェーブ”が決め手となり天宮に進行する2大怪獣は消滅した。

 

それを確認したダイナとガイアは援護してくれた機体へと顔を向け……ダイナがお礼を込めてのサムズアップを返した。

 

 

 

「………助けられたのはこっちだ……これより帰投する!」

 

 

 

 

それを見届けた蘭華の指示により、三機はそのまま基地へと戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー、みなさん! いろいろと大変なこともありましたが……今日は集まってくれてありがとうございます!」

 

多くの観客たちを前にステージに立つ穂乃果が挨拶をする。

光り輝くライトを浴び、前線基地 天宮の前に設営されたステージから来てくれた全ての人への感謝の言葉を告げる。

 

その後、騒動はあったものの無事にセレモニーは開催された。

怪獣がこちらに向かってきている間、残されたメンバーは避難に戸惑う人々を誘導したり、落ち着けるように呼びかけたりした。

その甲斐もあり、パニックが起こることもなく大きな被害も起きなかった。

 

無事に開催されたセレモニー、最後の大トリを務めることになった彼女たちは華やかな衣装に身を包み、スクールアイドルとしての役目を果たそうとしている。

 

「こうして滅多にないステージを与えてくれて、そしてみんなのために頑張ってくれたVDFの皆さんには感謝しています! だからこそ、私たちはそのお礼も兼ねて! みんな!」

 

 

 

 

「μ's!! ミュージック!」

 

 

 

 

 

ーーースタート!!

 

 

 

 

 

「………遅れないでよ?」

 

「誰に言ってるのよ……あんたこそ……!」

 

 

 

 

この日、μ'sが取り行ったライブ……その中でいつになく輝き、息の合っていた2人がいた。

それは見た目はまるで正反対、だけどもぴったりと合わさった……まるで“磁石”のような息の合い方だった……。

 

正反対、だと思ってたのに引かれあう。

 

不思議な磁力のようなこの2人の距離は……なんとなく、この日をきっかけにさらに縮まった………のかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりいいなぁ、隊長も最高なことをしてくれるぜ……」

 

「あぁ、本当に……一時はどうなるかと思ったけど、このために頑張れたってのもあるよな………ところで隊長は?」

 

「最前列でサイリウム振ってるって」

 

「…………さすがファンクラブ会員ナンバー1」




次回のウルトラブライブ

希「もう少しだから…」
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