ウルトラブライブ! 9人の少女と光の勇者達   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です!

今回のお話はついにμ’sのメンバー8人目、3年生のエリーチカこと絵里ちゃんが主役!

ある日、絵里はある場所でとある人物とある騒動に巻き込まれることになる、そしてその中で絵里が手にしたものとは?

それではお楽しみください、どうぞ…。


暗闇の中で蘇る光 絵里と超古代の勇者

 

 

 

その少女は妥協を許さなかった…。

 

 

 

まだ幼い頃、とあるきっかけで始めたバレエ、習い事として始めたのではなく彼女はそれに本気で取り組んでいた。

より美しく、より華麗に、より高みへと…。

やるからにはと本気で始めたバレエは彼女にとって自身の本気を注ぐ、掛け替えのないものとなった。

自分のことを見守ってくれる、大切な人の期待に応えるために……その少女はバレエに全力を注いで行った。

昔から自分はその人にとても懐いていたというのは自覚している、自分の中に4分の1の割合で流れているロシア人としての血、その大元となった自分の祖母………自分は祖母とともに過ごし、多くの時間を共にし、たくさんの思い出を作った。

 

そして、ロシアから日本へと移住して、少女はある場所へと通うことを決意した。

祖母が日本にいた時に通ったという歴史ある高校、祖母が青春時代を過ごした思い出が詰まった学校、“音ノ木坂学園”。

 

祖母から話を聞いて通うならこの高校がいいと前々から思っていた彼女、祖母が歩んだルーツを自分も歩んでみたいという興味、そして何より同じ青春時代をこの学校で過ごしたいという思い、それらを胸に少女は高校生となり、この学校に入学することにした。

 

しかし、程なくして彼女はこの学校が危機に立たされていることを知ることになった…。

 

 

生徒の減少による、学校そのものの存続の危機…。

 

 

それを聞いた少女はいても立ってもいられなくなった。

自分の祖母が過ごしたこの学校が……思い出となっているこの学校が、なくなるなんて……そんなことはさせない……させてはならないと……。

 

程なくして彼女はその危機をなんとか乗り越えるべく、この学校の生徒会へと身を置くことを決意した。

そして、やがて少女はその学園の“生徒会長”という立場に身を置くことになった、全ての生徒をまとめ上げ、手本となり、より良い学園生活を築き上げる、学校生活において重要な役割を担うことになるその立場になったことで少女はさらにこの学園のためになることに力を注ぐ決意を固めていた。

 

だが彼女が生徒会長になっても、学校の危機が改善されることはなかった……。

そんな時彼女が学校のためにと奮起し続けながらも、時は過ぎ、ついに彼女が三年生になった春のこと……それは突然訪れた。

 

 

 

“スクールアイドル”。

 

 

 

それはとある生徒が唐突に立ち上げた学校の現状を打開するためにと立ち上げた活動だった。

それを聞いた彼女は最初、乗り気ではなかった……そんなその場凌ぎで考えたような活動でどうにかなるとは思えなかったのと……何より“素人”同然の者たちが集まったパフォーマンスが結果を生むことはないと思っていたからだ。

 

子どもの頃からバレエをしていた彼女は、そのバレエに力を注いでいたからこそ、そう理解していた。

結果とは努力と練習を重ねて実力を伸ばして行った者が始めて生み出すもの……昨日今日考えたような咄嗟の思い付きで結果なんて生まれない。

仮に練習を重ねて結果を生み出せたとしても、それに有する時間を考えてもそれで間に合うとは思えなかったからだ。

 

 

 

故に提案をして来た者たちの努力が実を結ぶことはない………そう思っていたのに………。

 

 

 

彼女の考えとは裏腹に、音ノ木坂学院に誕生したスクールアイドルの人気はさらに上がって行った。

自分が彼女達に現実の厳しさを教えるために行った行動も、裏目に出てしまい日を増すごとにその注目は上がっていった…。

 

そして、同時に彼女には理解できなかった。

 

なんとかしたいという気持ちは一緒なのに、なぜ自分のやろうとしたことは実を結ばないのか……自分が胸に秘めてる思いも……そのための努力もしてきた……なのになぜ、“素人”同然のパフォーマンスにしか見えない彼女たちの方がより前に進めているのか……いったい、なにがそうさせるのか……。

 

なぜ、自分のやることは彼女達のように身を結ばないのか…自分にはやるべきことがあるのに…そのためならなんだってする覚悟もあるのに…それなのになんでうまくいかないのか…。

 

自分にはやるべきことがあるのに……成さねばならない役目があるのに……このままではそれが敵わない……祖母の思い出が詰まったこの学校を……“妹”が通いたがっているこの学校を……守ることが出来ない。

 

少女が焦りばかりを感じる中、その間にもスクールアイドルとして動き出した彼女達はどんどん先へと進んでいった、そしてそんなある日……少女は妹にこう言われた……。

 

 

 

『これがお姉ちゃんのやりたいこと?』

 

 

 

………自分のしたいこと………そんなこと言われてもすぐに少女が理解できることはなかった。

いや、理解するわけにはいかなかった………今まで自分がしてきたこと、それなのに今更こんなことを言えるはずがない。

本気で挑んだバレエ…途中で挫折した過去…だからこそ知ってる、実力がすべてなのだと…だけど、彼女達はそれでも前へと進み続けている。

 

………この時、薄々とだが少女は感じていた………一つの“可能性”を………。

 

だが、その可能性に今更自分が関われるわけがないと……少女は思っていた……思っていたのに……。

 

 

対立してた筈なのに、距離を置いていた筈なのにそれでも彼女達は自分の前に出て、自分を呼んだ、力を貸して欲しいと言った。

 

最初はすぐに音を上げると思っていた……でもそれでも彼女達は食らいついて来た、そして、その目は………真剣そのものだった。

ダンスの基礎も出来ていないのに……素人の筈なのに……その目は本気で挑んでいる心が込められた目だった。

 

………彼女達は、自分自身の意思で今やろうとしていることに全力を尽くしている………それなのに、自分は………この時、少女は自分と彼女達の大きな違いを自覚した。

だけど、それに気づいても……もう遅い……自分から大きく距離を開けてしまった……今更、その距離を埋めることなんてできない………。

 

今更本音なんて、言えるはずがない………そう、思っていたのに……。

 

 

………彼女の前に……手が、差し伸ばされた。

 

 

 

「音ノ木坂学院、生徒会長…“絢瀬 絵里”、よろしくね?」

 

 

 

あれだけ強く、厳しく当たっていたのに……その可能性の輝きに自分も迎え入れられていた。

今更無理だと思っていたのに……なんとかしなくてはいけないからしょうがない……そんな焦りの思いもなにもかも、その手を見た瞬間に消えていった。

……きっと、彼女達なら……彼女達と一緒なら出来る気がする……自分にできなかったことを……彼女達となら……。

 

 

 

「μ's!!ミュージック、スタート!!」

 

 

 

役目じゃない…責任じゃない…使命じゃない…これは自分自身の意思…今、自分はここで彼女達と共に夢へと向かって走り出すと決めたのだ。

誰の物でもない、自分の思いで……走り出す。

 

みんなと一緒に………大切な、仲間と一緒に………夢の“光”へと向かって。

 

そして、彼女が新たな可能性の道へと進み始める決心を固めてしばらくした頃……彼女の前に新たな“光”が現れた。

 

 

 

これは、本来めぐり合うことのなかった女神の名を持つ9人の少女達と、光をその身に宿し、戦い続けてきた光の巨人達との出会いの物語。

 

 

 

 

 

~ウルトラブライブ!9人の少女と光の勇者達~

 

「暗闇の中で蘇る光 絵里と超古代の勇者」

 

 

 

 

 

音ノ木坂学院、都内にある音ノ木の街に佇む歴史ある校舎、この音ノ木の歴史を街と共に歩んできた歴史ある建物の一つと言えるこの学院にて、この日もまたこの歴史ある校舎の今後の未来を左右する役目を担った少女達が今日もまた練習に励んでいた。

この音ノ木坂学院のスクールアイドルである彼女達、μ'sの練習は夕方ごろまですることが多い。

ダンスに必要となる柔軟性を養う柔軟体操とステップの練習、今までにやった曲の振り付けの見直しやフォーメーションの確認、ダンスの練習はハードだが同時にみっちりと丹念にやりこむ必要がある。

自身の力とするにはそれ相応の量と時間を有するのだ。

 

そして、今日もまた練習をこなして一日の活動が終わるころ…。

 

 

「ねえ、この辺りで目新しくて楽しめる観光スポットってないかしら?」

 

 

μ'sの活動の拠点となるアイドル研究部の部室にて荷物を纏めていた絵里が言った。

家系の影響で受け継いだ明るい金髪を後ろで結んで大きく、パッチリとした青い瞳をその場に居合わせていたメンバーに向けて、自身は音ノ木坂学院の制服へと袖を通しながら問いかける。

 

「え? 急にどうしたの絵里ちゃん、観光スポットなんて聞いて」

 

その問いかけにすぐさま返答を返したのは実質μ'sのリーダーである二年生、μ's発足のきっかけとなったメンバーの中心、穂乃果だった。

絵里問いかけに不思議そうな表情を浮かべながら彼女は制服のカッターシャツのボタンを上から止めて行く。

 

「えぇ、実はこの前に今度の休みに“亜里沙”と一緒に出かける約束をしたのだけど……行き先が浮かばなくて」

 

「亜里沙ちゃんと? ほえ~、2人でお休みにお出かけなんて本当絵里ちゃんと亜里沙ちゃん仲良いね」

 

同じ妹を持つ姉としての違いか、感心にも似た声を出しながらボタンを止め終えた穂乃果は目線を上に向けてなにかいいものがないかを考える。

 

「あ、じゃあうちに来たら? 和菓子の殿堂穂むら、おやつにおまんじゅうが出るよ♪」

 

「うふふ…それはいい提案だけど、どちらかというとそのお誘いは雪穂からのお誘いがいいんじゃないかしら、二人とも友達なわけだし」

 

「あ、そっか……確かにそっちの方がいいかも……」

 

穂乃果の妹である“高坂 雪穂”、そして絵里の妹である“絢瀬 亜里沙”の2人は同じ中学に通う同級生で友達だ。

ロシアでの暮らしが長かった亜里沙に和菓子を楽しんでもらうと言う意味合いではいいアイデアかもしれないが穂乃果の家、和菓子屋“穂むら”は当然雪穂の家でもあるため、そこにお呼ばれするなら一番親しい友達からの方が嬉しいだろうし、水入らずで楽しめるはずだ。

まあ、自分も行ってみたい気持ちもあるがそれはまた今度の機会にすることにしよう。

突っ込むなら観光スポットでもないし…。

 

「じゃあ、ベタな所でスカイツリーとどうかにゃ? 電車ならちょっとしたら行けるし」

 

「あぁ、ごめんなさい、それは日本に亜里沙が来た時にもう言っちゃったのよ…」

 

観光スポットと言う点から一年生の凛がスカートのチャックを閉めながらそう提案するがすでに大まかな観光スポットとして有名な所は回ってしまったのだ。

ぶっちゃけこんな提案をしてしまったのは行き先として新鮮味のある場所のネタがなくなりつつあると言うことも含めてのことなのだ。

 

「もっと、こう……目新しくて新鮮味がある感じのものがあればいいんだけど……」

 

「目新しさと言われても……最近そう言うのできたかにゃ?」

 

「外国暮らしが長かった亜里沙ちゃんが喜びそうな観光スポットかー……うーん……なんかあったかな~?」

 

なにかいい場所はないかと3人揃って頭を悩ませ続けていると…。

 

「……新鮮味があるって言うのとはちょっと違うけど、ちょうどええのがあるよ?」

 

不意にシャツのリボンをすでに結び終えた絵里と同学年であり、彼女と共にこの音ノ木坂学院で長い時間を共にした友人、希がそう言ってきた。

彼女の言葉に反応した絵里達は視線を同時に彼女に向けると希は鞄の中からスマホを取り出し、何度か画面をタッチするとあるサイトを絵里達に見せた。

 

それはどうやらとあるニュースサイトのようだが、その一面には一際目を引く内容が書かれていた。

 

 

 

「……発見された謎の古代遺跡の研究が終了、一般公開へ……」

 

 

 

見えやすいように大きめのタイトルで記されたその内容を絵里が復唱すると希は微笑みを浮かべながら、こくり、と頷いた。

 

「最近ちょっと噂になってる場所なんよ?」

 

「あ、そう言えば凛もちょっとテレビでみたにゃ、この前発見されたっていう遺跡、これのことだにゃ」

 

「この遺跡、私達も見れるの?」

 

「大まかな目処が立ったから博物館みたいな感じになったんやろうね、新鮮味っていうのとはちょっと違うけど目新しさなら亜里沙ちゃんにとってはええとこやない?」

 

確かに希の言うことは一理ある。

古代に作り上げられ、時間を超えて現代にその姿を復元された遺跡、新鮮味というより古ぼけたイメージがあるものの逆にその古ぼけた印象が神秘的な印象を感じる、観光スポットというほど大きな物ではないがたまにはこういう場所に足を踏み入れるのもいいかもしれない。

 

「そうね……日本独自の遺跡とするならいい場所かもしれないわ、ありがとう希」

 

「どういたしまして、他ならぬえりちやから教えてあげたんやよ? ほんまはうちが一番乗りしようかなーって思ってたんやから」

 

優しげな微笑みを浮かべながらそういう彼女、彼女との付き合いが長いからこそ分かる、なんやかんやで彼女の提案がハズレを出したことは無いのだ。

それこそ、彼女が得意とする占いのように…。

 

きっと、この提案もなにかいいことが起こるかもしれないという彼女なりの暗示……かどうかはわからないが、行ってみる価値は十分にあるだろう。

 

「でも来おつけてね、えりち……カードによるとなんやえりちに“暗闇”に難ありって出てるから」

 

こういう気遣いも含めて……彼女は本当に、自分には勿体無いくらいのいい友人だ。

 

「……ええ、気を付けるわ、いつもありがとう」

 

一枚のカードを取り出してそう忠告する友人に絵里は微笑みを浮かべながらお礼を言う。

そして、その後家に帰ったとき希の提案を亜里沙に話して、2人は次の休日その噂の古代遺跡に行くことが決定したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロシアにいた頃から妹とは仲が良かった、姉妹一緒にいろんな所に行って、たくさんの思い出を作った。

そして、それはここ……日本でも変わらない。

 

姉として絵里は妹の亜里沙にこちらでの暮らし方や楽しみ方をたくさん教えて来た。

ここ最近、μ'sに入って新たに知った楽しみもあるが……それはまた別として……単に今までそんな余裕を考えたことがなくて行く機会がなかったから知らなかっただけだし……。

 

まあ、何はともあれ自分たち姉妹にとってたまにこうして2人で居る時間はなんだか昔を思い出すようで……懐かしいような、新鮮なような……この時間は2人にとって大切な時間でもあった。

 

そして今日はその大切な時間を共に過ごす日、今日絵里は亜里沙と共に電車に揺られながら郊外にある自然が残る山間へと来ていた。

コンクリートで囲まれた都会にはない独特の自然の空気、それを体で感じながら絵里は亜里沙と共に電車を降りて乗り換えたバスから降りる。

 

「お姉ちゃん、この先なの?」

 

「ええ、らしいわね、少し歩かなきゃいけないみたいだけど大丈夫?」

 

「うん、大丈夫! ちゃんと歩きやすい靴にして来たから」

 

絵里とは違い、ブロンドに違い色合いの金髪をストレートに流した亜里沙は白のワンピースに薄いピンクの上着に身を包んでいた。

そして明るい笑顔を浮かべる妹を見守る絵里は白のシャツにライムグリーンのカーディガン、すらっとした足のラインを強調するズボン、外出用の服としてはこれが一番動きやすいものだった。

 

「それなら大丈夫そうね、じゃあ行きましょうか?」

 

「うん、希さんがオススメする遺跡ってどんなのだろう、ちょっと気になるな」

 

「希ってこういうの好きだったりするからね、彼女風に言うなら…スピリチュアルパワーに溢れてる、とかかしら?」

 

「ふふふ、もう、お姉ちゃんったら」

 

冗談交じりに希が言いそうなことを言うと亜里沙は微笑ましそうに笑う。

そして、それに釣られるようにして絵里も笑顔を浮かべる。

 

「そういえばねお姉ちゃん、最近亜里沙の学校でこういうちょっと不思議な話が流行ってるんだよ?」

 

すると亜里沙がふとそう告げた。

不思議な話、というと所謂オカルト的な話か何かだろうか?

 

「へぇ、どんな話?」

 

「いろいろあるけど……やっぱり最近はあれかなー」

 

なにやら思わせ振りに視線を上に向けた亜里沙はなにやら突然絵里に向き直ると、右腕を空へと向けて突き上げ、左手を握り顔の隣へと置いたなにかのポーズのようなものをとった。

 

 

 

「“光の巨人”だよ!」

 

「……光の……巨人?」

 

 

 

亜里沙が言ったその言葉を絵里は不思議そうに繰り返した。

それに対して亜里沙はどこか楽しそうに頷く。

 

「最近噂になってるんだよ? おっきな怪獣から人を守る正義のヒーローじゃないかって! ……まあ、まだはっきりと見た人は少ないんだけど」

 

「……そんな噂があるのね、希からは聞かなかったけれど」

 

「亜里沙、会ってみたいな~……光の巨人……」

 

最近の中学生はこういうミステリアスな話が流行ってるのだな、と感じた絵里は光の巨人に思いを馳せる亜里沙を微笑ましそうに見守る。

 

 

「……会えるといいわね、その光の巨人に」

 

「うん!」

 

 

その後も遺跡はどんな所なのだろうかとか、最近の学校の様子とか、他愛ない日常の話をしながら歩を進める。

こういう何気ない日常を共に過ごす、その時間がとても大事なことなのだ。

そんなやりとりを続けながら歩き続けることしばらく……道の両端に草木が並ぶ道を進んでいると……。

 

 

 

「………わあ」

 

「………ハラショー………」

 

 

 

やがて2人の視界にまるで突然別世界に来たかのような空間が広がっていた。

山間にひっそりと佇む石造りの大きな建物、周囲には幾つもの石造りの柱や銅像のようなものが奉られており、それらは草や蔓が絡みついているがそれも合間ってかなり深い年季が刻まれているのが分かる。

 

日本という国の、東京の近く…街並みから外れたこんな所に本当に遺跡があったなんて………絵里はとなりにいる亜里沙と同様に驚きに満ちた表情を浮かべて目の前に現れた遺跡をまじまじと見つめていた。

 

「ね、ねえ、お姉ちゃん! もっといろいろ見て回ろう! いろいろ見れるみたいだよ!」

 

「そ、そうね、この機会にいろいろと歴史について学ぶのも悪くないわ」

 

この神秘的で目を惹かれる光景に亜里沙は高揚した様子で絵里を急かす。

どうやらここに連れて来たのは当たりだったらしい、日本の古代遺跡というミステリアスな空間を亜里沙は楽しんでいるようだ。

そして、自分自身もまるで非日常に来たかのようなこの空間に若干の興奮を覚えている。

 

そう自覚した絵里が先に行った亜里沙を追いかけようと足を前に出す。

 

 

 

「………?」

 

 

 

だがその際に、絵里は不意にある人物とすれ違った。

体全身を真っ黒なローブで包み込んだ人物……なんとなしにすれ違っただけなのだが、絵里はふとその人物を目で追った。

 

(……もう夏は過ぎたけど……あんな厚着して大丈夫なのかしら……)

 

格好が特殊…というのが気になったのもある……だが、同時に彼女はその人物から感じるなにかが気になった。

それがなんなのか、うまく表現することはできないが………まあ、いいとしよう。

 

きっとなにかの気のせいだと割り切った絵里は視線を再び前へと向けるとそのまま歩を進め始めた…。

 

 

 

だが、この時絵里が感じていた違和感……それはあながち、気のせいではなかった……。

 

 

 

「………ここにいるのは………間違いなさそうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遺跡は思っていたよりも広く、中央に建てられた大きな建物をぐるりと囲むように幾つかの小さな建物が存在していた。

絵里と亜里沙の2人はまずはその周囲の建物を見回ることにして、この遺跡の散策を始めた。

新たな観光スポットとして情報が出ていることもあり遺跡内にはちらほらと自分たちと同じような観光客がいる中、絵里と亜里沙の2人は遺跡に刻まれてきた歴史という時間の記録をその目で見て行った。

 

周囲の小さな建物はもともと他の使い道があったようだが、今はそれを利用してこの遺跡で出土した物を展示するためのスペースとして再利用されているようだった。

そして、それらはどうやらなにかの儀式を行う物や、神聖な器であるとされていた物が多く、もとはこの遺跡が祭壇のような役割を担っているようにも思えた。

 

ここは昔、なにか大切な物を祀り、なにかのお願いをしていたのだろうか…そんな疑問を抱きながら絵里と亜里沙が遺跡内の散策を続け………ついに2人は最後となる遺跡の中央へと入った。

 

中央の遺跡は特段に大きな創りになっていてまるでちょっとしたピラミッドかのように上に行くに連れて形が小さくなっていて大まかな見た目としては台形になっている。

変わった形の遺跡の壁にはたくさんの彫刻が掘られており、それらがより神秘的な雰囲気を醸し出している。

 

そして、2人が中に入ると遺跡の中は設置された照明によって明るくなっているが全体的に薄暗い作りになっているのだろう、中の壁は石造りになっているため外よりも気温が低く感じる。

この大きな遺跡の中央、ここにはどんな役目があったのだろうか……疑問と好奇心を抱きながら中に入って通路と幾つかの階段を進んでいくと……。

 

「……これは……」

 

やがて2人はなにやら開けた場所に出た。

今までに見たこともないほど広いその場所は石造りの四方の壁に囲まれ、その壁に開けられた長方形の穴から日の光が差し込みここまで来るのに見た通路よりも明るい印象が見て取れた。

壁の穴から差し込む光、それが部屋に充満してそこは今まで以上に神秘的……いや、神聖な雰囲気に満ちていた。

 

「ここがこの遺跡でとても大事な役目を担っていたのね……」

 

「お姉ちゃん、ねえ、これ……見て」

 

その様子に感嘆の声を漏らしていた絵里に隣にいた亜里沙がそう言って部屋の奥を指差した。

絵里が亜里沙に導かれて目を向けると、そこには正面の壁一面に描かれた“壁画”があった。

 

「ハラショー…こんな大きな壁に絵を描くなんて…昔の人はすごいわね…」

 

「なんだかこれ、ちゃんと意味があるみたいだよ? ほら、ここに説明が書いてある」

 

亜里沙がそう言って目を向けたのは壁画の前、仕切りとして設けられた鎖のアーチの前に設置された看板に刻まれた説明文だった。

絵里は亜里沙が目を向けているその説明文に目を向け、内容を確認し始める。

 

 

 

ー かつてこの遺跡は所謂儀式のための祭壇としての役目を担っていた ー

 

 

 

ー この部屋は村に迫る災厄を遠ざけるために神への祈りを捧げる舞を踊る、所謂“踊り子”達の舞台となっている ー

 

 

 

ー 古代の神への祈りと言った神聖な儀式はその場所や文明によって大きな違いがあり、この神殿の壁画にあるような踊り子達による舞による祈りは稀に見る儀式と言える ー

 

 

 

「……神様にお願いするために昔の人はここでダンスをしてたんだね」

 

説明文に記された内容を読んで亜里沙がそう呟いた。

絵里もまたそれに同意するように首を縦に振る。

 

「……当時の人たちにとってここがステージだったのね……」

 

「μ'sのステージみたいに?」

 

「ふふっ、そうね、悪いことが起きないようにするお祈りだもの、きっと大事なステージだったのね」

 

それはまるで自分たちのように…大切な目的のために…大きな想いを胸にダンスを踊る…それは今の自分達と同じではないだろうかと絵里は既視感を感じていた。

 

自分たちが住む場所に悪いことが起きないように、想いを込めて踊りを踊る。

それはまるで音ノ木坂学院を救おうとしてスクールアイドルを始めた自分達と似ているように感じた絵里は口元に微笑みを浮かべる。

 

「…ねぇ、もしμ'sが踊り子だったら神様もすぐお願いを聞いてくれたかな?」

 

「神様が気に入ってくれるかどうかはわからないけど……」

 

ふと気になったのか亜里沙が絵里にそう問いかけると絵里は彼女にどこか自信があり気な表情を浮かべるとウィンクをして見せる。

 

「…神様にも気に入ってもらえるように、私たちも頑張るとは思うわ…みんなで」

 

どんな人でも……どんな困難でも、みんながいれば頑張れる。

みんなで前へと進むことができる……。

やらなければいけないから、そうではなく自分達の叶えたい想いのために……。

 

きっと、昔の踊り子達もそれぞれの想いを胸にこの古代のステージで踊りを踊っていたのだろう……。

 

彼女達に習って今後は自分達も頑張っていかないと……そんなことを絵里が思っていると……。

 

 

 

ー………離れて………

 

 

 

「………え?」

 

不意に絵里の頭の中に声のような物が聞こえてきた。

不意に聞こえたその声に絵里は何かとあたりをきょろきょろと見回す。

しかし、あたりに人はまばらにはいるものの、自分に向けて声をかけた様子の人の姿は見当たらない…。

 

「………あれ?」

 

すると、亜里沙が何かを見つけたのか絵里の近くに移動してその場にしゃがみ込む。

 

「お姉ちゃん、なんだろうこれ?」

 

すると亜里沙はなにやらそこに落ちていたらしい何かを拾い上げて絵里に見せた。

 

亜里沙が手に持っていたのは……人型のシルエットをした不思議な人形だった。

銀色の顔に乳白色の双眼を持つ紫と赤色の二色の体に銀色のラインを持ったその人形を亜里沙は不思議そうに見る。

 

「……落し物かな?」

 

「かもしれないわね……でも、なにかしらねこんな人形見たことないわ」

 

そう言うと絵里は亜里沙の持っていた人形になんとなしに触れて見た。

 

 

……その時だった……。

 

 

「っ!?」

 

 

突然絵里の脳裏にまるで早送りにした映像のような、まるで体験したことのない、身に覚えのない映像がフラッシュバックし始めたのだ。

 

 

 

……燃え盛る街。

 

 

……崩壊して行く建物。

 

 

……そして、その中からこちらに向かって迫り来る巨大な異形の存在……。

 

 

 

脳裏に一瞬のような、それでいて長いようにも感じる感覚だったが突然自分の中に流れてきたヴィジョンに絵里は驚きながらも一度、深く深呼吸をすると気を落ち着かせようとする。

 

今のは一体なんだったのか……戸惑う絵里がじっと亜里沙が握っている人形を見つめる。

 

 

 

すると、その時……絵里はある異変を感じ取った。

 

「……?」

 

足元から感じた僅かな振動、どこからか響いてくるかのような揺れが断続的に足元を揺らす感覚があった。

 

そして、それが徐々に大きくなって行き……絵里と亜里沙がいた遺跡全体が不意に大きく揺れた。

 

「な、なに!?」

 

「地震!? でもそれにしては短かったけど……と、とにかく亜里沙、外に行くわよ!」」

 

今の揺れに驚いてか遺跡の中にいた自分たち以外の見物客は慌てて外へと向かっていった。

それを見て絵里も亜里沙の手を握り外へと出ようとする。

 

だが、その時………。

 

「っ!」

 

不意に遺跡の壁の穴から見える外の景色で、なにかが猛スピードで横切ったことに絵里は気づいた。

壁の穴すべてを一瞬にして影で覆い尽くすほどの大きさと思われるもの……嫌な予感を感じた絵里は不安そうな表情を浮かべる亜里沙へと目を向けると……。

 

「…ちょっと待ってて…」

 

そう言って遺跡の壁の穴から外を覗き込んだ………そして、そのから見える物を目にした時、絵里は驚愕のあまり目を見開いた。

 

 

 

ークワァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!

 

 

 

空を切り裂くように飛翔する影、鳥とかそんなレベルの大きさではない、飛行機とかそんなレベルの大きさでもない……その大きさは絵里の持つ常識を遥かに超える、巨大な異形だった。

 

甲高い鳴き声を上げながら背中から生えている一対の羽を使い、空を駆け抜ける鳥のようでもありそれとは似て日なる生物。

両手に爪を持つその生物は体よりも細い印象を与える頭から光弾を放って遺跡周辺を破壊している。

 

これは一体どういうことなのか…なにが起こっているのか、この時の絵里には理解できなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………これ以上面倒ごとを増やす訳にはいかない………少々荒っぽいがやむを得まい………」

 

遺跡から少し離れた森林の中で身を隠すように佇む黒いローブに身を包んだ人物。

ローブの人物は今まさに襲撃を受けている遺跡へと目を向け、その上空を飛び回る怪獣に支持を飛ばす。

 

「………さあ、破壊しろ………“メルバ”! “奴”が目覚めるよりも前に始末しろ!」

 

そう言ってローブの人物は空を切り裂く怪獣、“超古代竜 メルバ”に指示を出す。

そして、それに反応したのかメルバは再び声を上げて頭から光弾を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先ほどから徐々に衝撃と揺れが大きくなりこちらに近づいて来ている。

恐らく先ほど穴から見た怪獣がこの辺りを襲っているという証拠なのだろう……このままではこの中も危ない。

 

危険を感じた絵里はすぐさま亜里沙と共に外に出ようと振り返るが…。

 

「お、お姉ちゃん…なに…なにが起きてるの?」

 

不安を感じたのか亜里沙がすぐ近くまで来てしまっていたのだ。

今すぐに彼女と一緒にこの場から出なければ……焦りを感じた絵里は咄嗟に彼女の手を掴む。

 

「このままじゃここも危ないわ! 亜里沙、絶対に私の手を離したらダメよ!」

 

今彼女を守れるのは自分だけだ、姉の自分がしっかりと亜里沙を守らなければ……絵里はそう言って亜里沙の手を強く握るとすぐさま外へと出ようとする。

 

「あ! お姉ちゃん!?」

 

「え………!?」

 

だが、まさにその瞬間だった……。

 

 

 

遺跡の壁にとてつもない光が差し込み、次の瞬間とてつもない爆風が自分と亜里沙を包み込んだのは………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ぅ」

 

体が重い……動かない……目を開けた時、絵里はそう感じた。

まるで鉛のように体が動かず、起き上がることができない……うっすらとした意識の中で絵里は今先ほどなにが起きたのかを思い出そうとする。

 

「……そうだ……私は亜里沙と……それに……怪獣が………」

 

しばらく自分の記憶を探っていると、やがて今先ほどなにが起きたのかを思い出した。

外からの襲撃を受け、咄嗟の爆発から身を守るために亜里沙をかばったのだ。

まわりはその影響で電気が使えなくなったのか、薄暗く視界も悪くなっている、どうやら自分は生きているようだが……これではなにが起きたのかわからない。

 

「………亜里沙………亜里沙は………?」

 

その時、絵里は自身のそばに亜里沙がいないことに気づいた。

絵里はすぐさま周囲を見回すが薄暗い視界の中ではすぐに見つけることができない。

 

「亜里沙!! 返事をして……亜里沙ぁ!!」

 

妹の名前を必死に叫ぶ絵里、だが返答は帰ってこない。

 

まさか………嫌な予感が絵里の脳裏に横切る……。

 

だが、その時。

 

 

 

「……ぅ……うぅ……」

 

 

 

不意に絵里の耳に呻き声が聞こえてきたのだ。

それにこの声には聞き覚えがあるし、近くから聞こえた。

絵里はすぐさま周りを見回してその声の主を探す、すると程なくして絵里の視界に見覚えのある人影がうっすらと暗闇の中で横たわっているのが見えた。

 

「亜里沙!!」

 

亜里沙だ、気を失っているようだが目立った外傷は見られない。

詳しく見て見ないことにはわからないがその姿を見つけることができたことに絵里は安堵の息を漏らす。

だが、安心してはいられない。

 

「っ!? ……まだ揺れてる……近くにまだいるのね」

 

遺跡全体がびりびりと揺れるような感覚を感じてあの怪獣がまだ近くにいることを感じた絵里は危険な状態に変わりないことを確認するとすぐさま妹を救おうと体を起こそうとする。

 

「うっ…ぐっ……うぅぅぅ…!」

 

しかし、いくら体に力を込めても起き上がることができないし、身動きも取れない。

どうしてなのか、絵里はここで始めて自分の状態を確認しようと視線を自分の体に向けた。

 

 

そして、彼女の目に映ったのは……自身の体の上に乗っている瓦礫だった。

どうやらあの爆発で自分は瓦礫の下に挟まれたようだ。

大きな怪我はしていないのか特に痛みは感じないし、感覚もあるが……これでは身動きが取れない。

 

「っ……せめて、亜里沙……だけでも……!」

 

この危険な状態から救い出そうと亜里沙へと手を伸ばす絵里、しかしその手は亜里沙に触れるには遠すぎる。

姿は見えるが自分と妹の間に出来た間があまりにも遠く感じる……手を伸ばしても届かないことに歯痒さを感じる絵里……。

 

そして、再び大きな揺れが遺跡を震わせる。

 

「っ! ……亜里沙! 起きて、亜里沙!!」

 

なんとか彼女を呼び起こそうと名を呼ぶが、亜里沙は目覚めない。

このままでは2人とも………絵里の中で最悪の状況を思い浮かぶ……。

 

 

 

こんなことで……こんなことで、自分だけじゃなく未来にまだまだ可能性を秘めた妹までもが終わってしまうのか……。

 

わけもわからず、なにも理解できないまま、こんな所で未来の光を絶たれるのか……。

 

そのことに絵里はとてつもない歯痒さと悲しさ、そして今までに感じたこともない悔しさを感じていた。

 

こんな所で終わりたくない……。

 

諦めたくない……。

 

まだ……まだ……掴んでいないのに……みんなと掴もうって約束した夢を、掴んでないのに……!

 

こんな……こんな終わりなんて認められない……!

 

 

 

こんなことで終わるなんて認められない………!

 

 

 

「……絶対に……絶対に助けてみせる……亜里沙……! あなたも……あなたや私が見た、夢を……!!」

 

 

 

絵里にも……亜里沙にも……まだ叶えてない夢がある……それなのにこんな所で終わる訳にはいかない……その一心の思いで絵里は亜里沙へと手を伸ばす……だが、やはりその手は届かない……。

 

すると、再び遺跡が大きく揺れ、周囲の瓦礫が揺れ、上から砂埃が落ちてきた。

 

咄嗟に絵里は身を守ろうとするが……その際に彼女の手に何かが触れた。

 

「……これは」

 

それがなんなのか、手にとって確認してみると…それは先ほど亜里沙が手にとっていた不思議な人形だった。

どうやら今の揺れで自分の近くまで来たみたいだ。

咄嗟にそれを手にとった絵里が人形を眺めていると……。

 

 

 

『………ごめん』

 

 

 

不意にまた何処からか声が聞こえてきたのだ、まるで頭に響くような感覚で聞こえてきた声に絵里は再び戸惑う。

 

『こんなことに君達を巻き込んでしまった……本当にごめん』

 

「え……え……? なに……誰なの……何処にいるの?」

 

頭に聞こえてくるその声に絵里は何処にいるのかと問いかける。

するとその時、絵里が持っていた不思議な人形が輝き始めたではないか!

 

「っ!? こ、これは……」

 

人形から溢れ出した光に咄嗟に目を覆う絵里、だがその眩い輝きを受けた時、ふと絵里の頭の中に再び声が聞こえてきた。

 

『……このままじゃ、君も……君の妹も危ない……でも、この場を切り抜ける方法はある』

 

「……この声は……もしかして、あなたなの?」

 

輝きを放つ人形を前にして、頭に響いてくる声を聞いた絵里は自分が握っている人形へと視線を向ける。

すると人形はまるで肯定するかのように再び輝きを放つ。

 

「……なら、答えて……今、あなたはこの状況をなんとか出来る方法があるって言ったわよね? それは本当なの?」

 

絵里が輝きを放つ人形にそう問いかける。

するとその瞬間、人形は一人でに動き始め、宙に浮かび上がり絵里の手を離れるとさらに眩い光を放ち始める。

 

そして、その光が治まると……絵里の前には、不思議な形をした道具が浮かんでいた。

 

白と金色で彩られたそれは持ち手と思われる部分の上に装飾が施されているものだった。

どこか神秘的な雰囲気を放っているその道具をじっと見つめる絵里、すると再び彼女の頭の中に声が聞こえくる。

 

 

『……これを使えば君と僕は一体となる……そうすれば、外にいる怪獣も君達もなんとかなるかもしれない……』

 

 

その言葉を聞きながら絵里目の前に浮遊している道具を見つめ続ける。

そして、それがゆっくりと自分の目の前に近づいて来た時、絵里はそれを右手で握りしめた。

 

 

 

『………覚悟はいいかい?』

 

 

 

頭の中に聞こえてきた問いかけに絵里はちらりと視線を亜里沙に向けてから強く頷く。

 

 

 

「……私は……未来の光を守りたい……!」

 

 

 

その言葉を絵里が言った瞬間……道具についていた装飾が左右に開き、その中から眩い光が溢れ出した………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遺跡の外ではメルバが遺跡の周辺を荒らし続け、残るはもう中央の建物だけとなっていた。

頂点の部分がわずかに崩れているが形は保っている。

あとはここを破壊すれば大方かたが着くだろう。

 

遠巻きに様子を見ていたローブの人物は早くケリを付けようと最後の指示をメルバへと出す。

 

ークワァァァァァァァァァア!!

 

甲高い鳴き声を上げるメルバ、そして背中の羽を閉じ、地上へと降り立ったメルバが遺跡を破壊しようと両手の爪を振り上げる。

 

 

 

だが、その瞬間!

 

 

 

「テャァァァァァア!!」

 

 

 

突然遺跡の中から眩い光が溢れ、その光が外へと飛び出すと遺跡を破壊しようとしていたメルバを思い切り弾き飛ばしたのだ。

弾き飛ばされたメルバはそのまま地面へと倒れ、転がる。

 

どうしたことかと動揺したローブの人物、そして遺跡から現れた光へと目を向けた時、ローブの人物は忌々しそうに手を強く握り締めた。

 

 

 

「………“ウルトラマンティガ”………!」

 

 

 

ローブの人物が見つめる視線の先で輝きを放っていた光が徐々に治まって行く。

そして、その光が治まった時……その中から姿を現したのは、“巨人”だった。

 

銀色のラインが体に走る紫と赤の体、胸に備えられた銀色のプロテクターと中央には雫を逆さまにしたかのような形をした青い輝きを放つ水晶……そして、銀色の顔に乳白色の輝きを放つ双眼……。

 

遺跡の中から姿を表した巨人は再び身を起き上がらせたメルバを前に立ちふさがる。

 

その巨人……彼の名は、“ティガ”。

 

 

 

こことは違う世界で戦い抜いて来た光の勇者の一人、“ウルトラマンティガ”だ。

 

 

 

遺跡の前に立ち、メルバを見据えていたティガはふと左手へと目線を向けると体勢を低くしてその手をゆっくりと遺跡の近くの開けた場所に下ろす、そしてその手を開くとその手の中には気を失っている亜里沙の姿があった。

 

「………ん………っ」

 

外の光を受けて気が付いたのか亜里沙が目を開ける。

そして、目をゆっくりと開いた彼女はそのまま身を持ち上げ、目の前にある光景を見て驚きの表情を浮かべた。

 

「え……光の……巨人……?」

 

噂になっていた光の巨人が今目の前にいる、そのことに驚く亜里沙がじっとティガを見つめる。

すると、彼女は何かに気づいたのか首を傾げてぽつり、とあることを呟いた…。

 

 

 

「………お姉ちゃん………?」

 

 

 

なぜかはわからない、ただ目の前にいる巨人から感じたのだ……自身の姉に似た何かを……。

 

ティガは左手を地面につけると、亜里沙はその意思を察したのかなんとか立ち上がりそこから地面へと降りる。

そして、彼女が降りたことを確認したティガは立ち上がると再びメルバへと向き直り、相対した。

 

「………テヤ!」

 

右手を手刀の形にして前に、左手を握り拳にして構えたティガにメルバが威嚇の咆哮を上げる。

しかし、ティガは物怖じする様子もなく、身構えたまま走りだした。

 

「テェア!!」

 

距離がゼロまで縮まった瞬間、ティガはメルバに向かって手刀を振り下ろし先制攻撃を仕掛けた。

ティガの手刀を受けたメルバは僅かに後退するが、すぐさま持ち直すとティガに掴みかかってくる。

 

だがティガはその攻撃を素早く見切ると両手でメルバの爪を受け止め、そのまま腹へと横蹴りを打ち込み、怯んだ所にすかさずもう一発蹴り込みを放った。

 

ティガの連続攻撃を受けて怯んだメルバ、この隙を逃すまいとティガはさらなる追い打ちをかけようとするが……。

 

ークワァァァァァァァァァアアアアア!!

 

メルバがティガの接近を察知したのか、背中の羽を広げるとそのまま空へと舞い上がった。

メルバに殴りかかろうとしたティガは目標を見失いその拳が空を切ってしまう。

そして次の瞬間、ティガの背後からとてつもない勢いでメルバが体当たりをしかけて来た。

 

「デュァ!?」

 

スピードが乗った凄まじい勢いの体当たりに堪らずティガはその身を翻しながら地面へと倒れ伏す、そこへ追い打ちをかけるようにメルバが空中で方向転換、再びティガへと向かって行く。

 

ティガはなんとか立ち上がろうとするが、その瞬間メルバの追撃が決まり、ティガはそのまま地面へと再び倒れ、さらにそこにメルバの光弾が発射されティガはメルバの素早い連続攻撃をなす術なく受けて行く。

 

周囲が爆発し、その衝撃がティガを襲う。

 

膝をついてしまったティガ、そこにさらなるメルバの追撃が迫ろうとしている。

 

だが、それよりも早く…。

 

 

 

「がんばって!!」

 

 

 

ティガの耳に声援が聞こえてきた。

 

その声に反応してティガが声のした方向へと目を向けると、そこには自分の方へと目を向けて、声援を送ってくる亜里沙の姿があった。

 

 

 

「負けないで!! がんばれ!!」

 

 

 

彼女の心からの応援、それを受けたティガは力強く頷くと…。

 

「ティア!」

 

メルバがさらなる体当たりを仕掛けてくる直前に受け身を取りその攻撃をかわしたのだ。

そして、そのまま素早く立ち上がるとティガは両腕を自身の額の前で交差させる。

 

「ウゥゥゥゥン……ハッ!!」

 

そして、その両手を下へと下ろした瞬間、ティガの姿が一瞬にした変化した。

赤と紫の二つの色合いを持っていた体が紫一色に変わったのだ、紫の体へと変身したティガはそのまま空を飛び回るメルバを見ると力強く地面を蹴り、自身も飛翔する。

 

空をジェット機さながらのスピードで空中を高速飛行し続けるメルバだが、その後ろに紫の姿となったティガが追いすがる。

そのスピードはメルバに匹敵するか、いやあるいはそれ以上にも迫る勢いだった。

 

ティガの持つ得意能力の一つ、それは相手に合わせて自身の姿を変え、戦い方を変化させることなのだ。

今のティガの姿は“スカイタイプ”と呼ばれ、スピードに優れた敵に対抗するための姿で特に空での戦いに適しているのだ。

 

スカイタイプのスピードを最大限に発揮し、メルバを追跡するティガ。

メルバの背中を捉えたまま追いすがるティガはそのままメルバへと狙いを定め、一度右手を引くと勢いをつけてメルバヘと向けて振り抜く、その瞬間その手から光の手裏剣、“ハンドスラッシュ”が放たれた。

 

「ハッ!」

 

それは寸分の狂いなくメルバへと直撃し、メルバの背中から巨大な火花が飛ぶ。

さらにそこにティガは二連続でハンドスラッシュを放つ、狙いはメルバの持つ羽だ。

そして、二つのハンドスラッシュは見事にメルバの羽へと直撃し、その羽根を貫いた。

空を飛ぶ力を失ったメルバはそのまま地面へと落下、それを追ってティガもまた地面へと降り立つと再び額の前で両腕を交差させて、元の紫と赤の姿へと戻る。

 

ティガの攻撃を受けて地面へと落下し激突してしまったメルバはよろよろとした様子で立ち上がる。

 

チャンスはここしかない……!

 

「……フッ! ハァァァァァァ…!」

 

ティガはそのまま目の前で両腕を交差させると手を開いたまま両腕を左右に大きく広げる。

すると、それに従ってティガの前で光の線が伸び、両腕に光のエネルギーが集まって行く。

 

 

 

「………ハッ!!」

 

 

 

そして、そのエネルギーが最大まで溜まった瞬間、ティガは左腕を水平に、右腕を垂直に立てて組み、L字にするとその瞬間ティガの腕から白い輝きを放つ、光の光線が打ち出された!

 

それはまっすぐにメルバへと向かって行き、メルバに寸分の狂いなく直撃する。

 

そして次の瞬間、メルバは甲高い叫び声を上げながら爆発四散、遺跡を襲撃した超古代の怪獣はウルトラマンティガの必殺光線、“ゼペリオン光線”を受けて倒されたのだった…。

 

 

 

 

 

 

戦いに勝利し、立ち尽くすティガを亜里沙が見つめる……すると、ティガはその視線に気づいたのか彼女へと目を向けると乳白色の目でじっと彼女を見つめる。

 

そして、その体が徐々に光で包まれ始め………次の瞬間、その光とともにティガの姿が消えていき、やがて光が消えると亜里沙の目の前に見間違えるはずもない大切な姉の姿が現れた。

ティガが消える際の光の中から姿を現したように現れた姉に、亜里沙はすぐに駆け寄る。

 

「お姉ちゃん!!」

 

「……亜里沙……よかった、無事で」

 

駆け寄って来た妹の姿を見て、絵里はどこか安心したような表情を浮かべる。

 

「うん……お姉ちゃんが助けてくれたし……でも、お姉ちゃん今のって……」

 

そんな彼女の姿を見ながら、亜里沙は絵里に先ほどまで起こっていたことがなんなのかを問いかける。

しかし、絵里はそれに対してわからないといいたげに首を左右に振る。

 

「……それはまだ私にもわからないわ……でも……」

 

すると、彼女は自身の右手へと目を向け、その手に握っている一つの人形を見つめる。

先ほどまで自分が変身していた姿……今、自分になにが起きたのが……そして、今なにが起ころうとしているのか……。

 

 

「………これから知って行く必要があるみたいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、そんな中遺跡から離れた森林地帯でローブの人物は苛立ちを隠せない様子でその場を後にした。

 

「……こうなったら手段は選んでられない……なんとしてでも……」

 

そういいながら歩を進めるローブの人物はそのまま森の奥へと姿を消して行った。

果たして、なにを考えているのか……いったいなにが目的なのか……謎は深まるばかり……。

 

 

 

 

これが、八人目の出会い……。

 

μ'sのメンバー、絢瀬 絵里。

 

そして、超古代の光をその身に宿す勇者、ウルトラマンティガの出会いだった…。




いかがでしたか?

わりかしポンコツというよりも賢い面が強かった気がする今回のエリチカ、いいんです、これが本来のえりちです!

そして次回、ついに残った最後の一人が…!

それではまた次回でお会いしましょう!
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