現代のとある人気の無い路地裏の空間に縦一直線に切れ込みが現れた。そして、その切れ込みは段々と、横に開いていき、最終的にはかなりの幅を持った切れ込みとなった。
しばらくすると,その切れ込み……スキマの中から人物が四人現れた。大人が二人、子供が二人。男女比率は3;1である。
子供二人は、手を繋ぎながら、大人二人はその子供を見守るように後ろから着いてきて、その隙間を潜り抜けた。瞬間どういう仕組みなのか自動的に隙間が閉じられた。
「う~ん。久しぶりのシャバの空気ねぇ」
「橙。シャバって何?」
「ジュンったらそんな事も分からないの? シャバっていったらこういう都会の事でしょ!」
隙間から出てくると、橙と呼ばれた女の子は一旦手を放し、ん~っと、伸びをしながらそう言った。更に、ジュンの疑問に橙は答えるが実際の所は自身もよく分かっていなかった。
「先ずはどうしましょうか」
そんな中、紫はその場の全員に聞こえるように聞いた。
紫達の今日の予定は、現代でランチを取った後、遊園地に行くか、映画を見に行くかまだ決まっていなかったのである。
紫達は、とりあえず路地裏の薄暗い場所から、表へと出るために、今後の予定を考えながら歩き出す。
表へと出て、適当に回りながら歩いていると、藍が橙と、ジュンに話しかける。
「私と紫さまは、これからの予定について考えますから、橙とジュンくんはこれを見ながら、お昼に何を食べたいか決めておいてください」
そう言って藍が、ジュンたちに手渡したのは、ここらの辺りの事が書かれているグルメマップだった。
「もらいっ!」
「あっ」
藍が持っていたグルメマップをジュンが受取ろうとすると、隣から橙が出てきて、それを掻っ攫っていった。
藍は、それを見て、手と視線を紫に戻す。
橙は、掻っ攫ったグルメマップを目の前に広げた。見ると、和洋中、様々な店を紹介してあった。それをジュンも除きこむ。
「ジュン。今日は何にしようかしら?」
「そうだな~」
そう言って二人が見るのは、主に洋か、中のページだ。幻想卿では、もっぱら和風な料理が自然とメインになっているために洋風のものや、中華の物を食べるという事が無いからだ。勿論、その中でも紅魔館という例外もある。
そして、二人がペラペラとページをめくりながら、上の大人たちは、昼を食べた後の事について話し合っていた。
「紫さま、どうします? お昼を食べた後は?」
「う~ん。そうねぇ。私的には、遊べる遊園地の方がいいと思うけど、時間大丈夫かしら」
それを、聞いた藍は、傍にあった電気屋の映っているテレビから、今の時間の情報を得る。
「もうすぐ、正午ですから、お昼を食べたとしても1時間半ぐらいでしょうから、大丈夫なのでは?」
「そうね。遊園地で身体を動かすほうが、この子だちも喜ぶでしょうしそうしましょう。」
「ですが一応、遅くなるかもしれないという主の連絡を白玉楼にも入れておきましょう」
「お願いね」
藍は、そう言って着ている服のポケットから携帯電話を取り出した。
これは、現代にいても、幻想卿と連絡が取れるという代物だ。しかし、幻想卿から外に出ようとするものがそもそもいない為、需要は無かった。
白玉楼の電話番号のボタンを押し、耳へと押し付ける。
コールが二・三回なった所でガチャリと電話にでる音がした。
「もしもし、妖夢ですが」
「あっ、妖夢さんですか。藍です。今日もしかしたら、遅くなってしまうかもしれないので一応連絡入れておきました」
「そうですか。わざわざ連絡ありがとうございます」
「いえいえ」
「それなら、お夕飯も食べてきてしまうのですか?」
「あっ、そうですね。ちょっと紫様に聞いてみます」
藍はそう言って、受話器から顔を離すと先ほどから一人で歩いている紫にむかって尋ねる。
「紫様。今日のお夕飯もこちらで食べていきますか?」
「そうねぇ。お金もいっぱいあるし、妖夢がゆるしたらそうしようかしら」
「はい、分かりました」
藍は再び、受話器に顔をつけた。
「もしもし、妖夢さん?そちらが許してくれるのだったら、こっちで食べてきちゃうんですけど」
「分かりました。大丈夫ですよ。幽々子様の説得も私がしておきますので、どうぞ楽しんできてください」
「はい分かりました。でわでわ~」
藍は、携帯を切り紫の方を向く。その表情はどこか嬉しそうだった。
「紫様! OKだそうですよ」
「そう! じゃあ、精一杯楽しみましょうか」
「そうですね」
紫は、その顔に笑みを浮かべながら答えた。
「ねぇ、橙。僕はカレーが食べたいな」
「何言ってるの!? カレーなんて、幻想卿でも食べれるじゃない。ここは、もっとリッチなものを選ぶべきよ」
ジュンは、歩きながら橙の広げるグルメマップに大きく、プリントされているカレーに目をつけ、指で指しながら橙に提案してみるが、一言で両断された。
実は、幻想卿では和風がメインであると記述したが、洋風の物が0というわけではない。カレー等、食べ物に関すると、いくつか幻想卿内に文化として流入しているのである。
橙は、そう言ってある一つの事を思いついた。
「そう言っても、ジュン。多分こういうところのカレーは辛いわよ。あんたじゃ、多分辛くて食べられないわね」
「そうかなぁ? 僕でも食べられそうなものがあると思うけど……。ねぇ? 紫。僕が食べられそうなカレーってあるよねぇ?」
「そうね。あるとは思うけど。どのくらいの辛さがあるのか分からないから。今は、やめておいたほうが無難だと思うわ。それに、カレーだったら、妖夢に頼めば作ってくれるでしょ?」
「うん」
「なら、今回は違うものに挑戦してみるのもいいんじゃないかしら?」
「そうだね」
ジュンは、少々困った顔をして紫に尋ねる。
紫は、藍が通話していて手持ち無沙汰だったので、ジュンの質問に少し考えながら応えた。
橙は、ジュンのその質問に少し困ったような顔をする。橙自身、刺激物があまり得意ではないためだ。
紫は、橙が刺激物が嫌いであるという事を知っているために、さりげなくフォローを入れておく。
橙は、言葉にはしないが、紫のフォローに感謝した。
再びジュンは、グルメマップに目を落とした。しかし、ジュンの脳裏にとある料理が掠めた。以前現実世界に来たとき食べなかったのだが、食べたいなと思えるものが二つほどあったのだ。
「じゃあ、僕。オムライスか、ホットケーキが食べたい!」
「! ホットケーキ良いわね! 私もホットケーキが食べたいわ」
「じゃあ、ホットケーキが食べられる所にしましょうか」
「うん! ちょっとまってて、直ぐ探すから!」
そう言ってジュンと、橙はグルメマップを探し始めた。が、グルメマップに果たしてホットケーキが乗っているのだろうか?そう、紫が疑問に思ったとき、藍に話しかけられた。
「紫さま。今日お夕飯もこちらで食べていきますか?」
そう尋ねられ、紫はちょうどいい。とそう思った。
「そうねぇ。お金もいっぱいあるし、妖夢がゆるしたらそうしようかしら」
そう言うと、藍は再び携帯に顔を押し付ける。
これで、オムライスはお夕飯にしようというのが紫の考えだった。
…………
「紫! あったよ。ここ!」
そう言って、先ほどまで橙が持っていたはずのグルメマップをジュンが持ち。ホットケーキが書かれているお店を指差した。
そこは、少し軽い食事を提供する事を、主眼に置いた店であった。
もし、ここにもう一人、大人の男、または幽々子がいたのであれば、量が足りないであろうが、ここにいるのは幸い。女二人と、子供二人だった。
「どれ、ほう。紫さま。遊園地であそぶのですから、そこまでお腹を膨らませて動けなくては仕方ありませんから。私もここがいいと思います」
「そうね。途中お腹減ってもその都度買って食べれば良いし。じゃ、そこにしましょ」
「「やったぁ!」」
パチンと、乾いた音を響かせジュンと橙がハイタッチをする。
「で、場所はどこなのかしら。ちょっと見せてね」
「ん」
紫は、ジュンからグルメマップを貰う。そして、そこの店の住所が書いてあるところを探しだした。
周りを見渡し、電柱に貼り付けられている、現在地の住所を見る。
「あら、意外とここから近いじゃない。これなら、スキマを使う必要も無いわね」
そうして、4人はその場所まで歩いていく事になった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
次回の投稿は2012年8月11日0;00分です。