レストランや、ちょっと良いところ。つまりはいつもの自分らの生活と照らし合わせて、少しばかり異様な雰囲気を持つ場所に入るとき。
人はより自分を良く見せようとする。それは、古来よりあった慣わしと考えられる。「はずかし」という単語がそれだ。
これは、相手が素晴らしすぎて自分が恥ずかしいほどだ。という考えから来ており、相手が素晴らしいときに使われる語だ。
そんな古来からの考え方がここ、現代でも活用されていた。
以下に記述されるのは、そんな考えの持った可愛らしい童二人と淑女二人の雑多録である。
ジュンと橙の二人は、今見ている光景に愕然としていた。
二人の知識の中に、ホットケーキというものはいわゆるお子様向けのメニューであって、それほど、手間隙かけていないであろう。という物があった。
しかし、今軽食屋とは思えないほどの出来栄えと、オーラを携えたホットけーキが二セット二人の前に鎮座していた。
「じゅ、ジュン。私は、何か軽食屋を勘違いしていたわ。その名前から私はどうもてっきり、かるーく、作れるから軽食屋なのかと思っていたわ」
「ぼ、僕もだよ。てっきり、子供用の奴は簡単なもので作られているとばかり……けど、これは」
「「紳士と淑女のために作られたもののよう(だ)」」
ジュンと、橙の二人はともに目の前の料理に興奮していた。
その様子を紫と、藍は微笑ましく見守っている。そんな時、この軽食屋を営んでいる店主の一人が、二人の料理を運んできた。
その手に持たれているのは、どうやら、スパゲティのようで、藍は、カルボナーラ、紫はミーとスパゲティである。
「おまたせしました。カルボナーラと、ミートスパでございます。」
店主は、微笑みながら、テーブルに二つの皿を置き、ジュンたちの方をみる。
「ふふふ。私も長いこと軽食屋をやっていますけど、あぁ言われるとわっパリうれしぃものですねぇ」
「そうなんですか」
「そうですよ。何せ最近は、仕事に終われる人が増えてきてましてね。食べてお金を払い出て行く。が当たり前の世の中ですから。それも軽食屋として仕方が無い事なんでしょうけれども、あぁやって感想を言ってもらえるのはとても嬉しい事ですよ」
そう言って笑う。店主の瞳はとても慈愛の満ちている瞳だった。
しかし、それを見て私たちが妖怪だと知らないからそんな目で見る事ができるし、そんな事も言えるのだと。考えてしまう紫は、変であろうか。
「しかし、さすがにハシャギすぎでわ?他のお客さまにも迷惑だろうし」
「はっはっは、お嬢さん。そんな事は気にしなくてもいいですよ。あぁいう子がいるからこそ。私は未来に希望を持てます。そんな希望の種を潰すような、お客はお断りですよ」
店主は、朗らかに笑いながら言う。しかし、言った瞬間に、カウンターの近くに座っていた。年のとった昼をとりにきたと思われる会社員達がギクッと腰を浮かせた。
店主はそれを横目で見ながら笑う。理解しているのだ。そういう者がいることを。
「でわ、ごゆるりとお召し上がりくださいませ」
店主はそう言って頭を下げると、厨房の方へと下がっていった。
「ねぇねぇ、これってどっちで持つんだっけ?」
ジュンが置かれたナイフとフォーク、を見て橙に尋ねる。
そのフォークと、ナイフは当然のごとく子供用に小さい奴だ。
その質問に橙は考える。
「た、多分。フォークは左に置いてあるから、左で。ナイフは右においてあるから右手じゃないかしら?」
「言われてみれば、そうかも!」
そう言って、ジュンが見る先には、フォーク、皿、ナイフの順番で置かれている。さすがにこれを逆にしてもつのはいささか違和感があるだろう。
「じゃ、じゃあ、食べてみる!」
ジュンはゴクリと、喉を鳴らしながらそのホットケーキにナイフを入れていく。
橙は、ジッとその様子を隣からガン見していた。
ナイフは、まるでホットケーキという障害を感じないかのように、ススッと切れていった。
「「おぉ!」見てみて! 橙。すっとナイフが入る!」
「さっきから見てるわよ!」
「じゃあ、食べてみるね」
ゆっくりと、焦らすようにフォークでホットケーキを刺し口元に運んでいく。そこでちょっとの間動きを止め、口の中に入れた。
それを、橙もじっと追っていく。しかし、ジュンの口元にそれが動き。動きが止まったときに。橙は、頬を赤くした。
「ど、どうかしら」
橙は、何かを振り切るように強めの語気でジュンに尋ねる。
モムモムと、ジュンはじっくりと租借しながら、時間をかけて飲み込んだ。そして、橙の顔を見る。
「うっまーい!! 橙も食べてみてよ! ほんと、おいしいよ! 食べた事ない!」
「そ、そう!?」
それを聞いた橙はも、そのホットケーキにナイフを入れた。
「ほ、ホントにすっとナイフが入るわ」
フォークで刺し、口へと運ぶ。今度は橙が食べる形になり、ジュンがそれを見守っていた。
租借し、飲み込む。
すると、橙は目を見開き、パクパクと、二口目、三口目を食べていく。
「ほ、本当においしいわ!」
「でしょ!? おいしいよね」
「紫様。」
「……。」
「紫様?」
「…………。」
「紫様!」
「何よ? 藍。うるさいわねぇ」
橙や、ジュンたちがナイフの持ち手に悩んでいたそのちょっと後の事。
二人の向かいに座っている藍は、そのとなりにいる自分の主に怒鳴っていた。
その事を、何度か無視していた紫であったのだが、直ぐ隣で叫ばれては、さすがに無視をする事はできなかった。
「何で、目の前に、ジュン君と橙がいるのに。なんで、そのように、行儀悪く食べるのですか!? 二人の教育に悪いでしょう!」
「これのどこが、行儀悪いのよ?」
紫は分かっていないようだった。
藍は溜息を着く。
「パスタという物は、フォークにそのようにたくさん巻きつけない。これがマナーでしょう!」
「うるさいわねぇ…。いいじゃない。ご飯を食べるときくらい。マナーマナーって。感謝の意を持って食べる! これが、最大のマナーよ。それを守っていれば良いの!」
「また、幽々子様のようなことを言って……。はぁ、もういいです。好きになさってください」
そう言って藍は、3、4本をフォークに巻きつけ上品に食べている。
それを紫は、横目で見て、内心で溜息を着いていた。
(なんで、この子はこんなにまじめになっちゃったのかしら。やっぱり、貴族の豚共と昔生活していたせいかしら)
その後、紫も少なめにパスタを取り。藍を同じく上品に食べていた。
しばらく食べていると、紫はジュンが自分のスパゲティを見ていることに気がついた。
それにフッフーンと心の中で笑いを浮かべる。
「ジュン。このスパゲティちょっと食べてみる?」
「え、いいの!?」
「いいわよ。さっ、あーんして」
「あーん」
ジュンは驚いた表情を浮かべ、紫の指示に従う。
紫は、ジュンのあーんをしている顔と、自分がその顔をさせたということにエクスタシーを感じていた。そして、ジュンが食べやすいように少しのパスタをまきつけジュンの口での一口サイズにする。
そして、ジュンの口に近付けフォークを入れた。
「はいっ、あーーん。どう?」
「……。うん! おいしいよ!」
「なら、良かったわ」
紫はフォークを引き抜き、もう一度そのフォークにパスタを巻きつける前に、そのフォークの先端部をしゃぶるようにして舐める。
そして、小さく呟いた。
「私もおいしいわ」
そんなやり取りを、見ていた藍と、橙は紫の考えに驚いていた。
驚きの理由を記述する前に、ジュンの中にあるとあるルールを説明しよう。
ジュンの家でも、たまにスパゲティというメニューがでることがある。その際にでるのは主に、ミート、またはナポリタンがほとんどだ。
そして、そのほかの例えば、ボンゴレだとか、カルボナーラだとかはまったくと言って良いほど出ることは無い。
その結果ジュンは、ミートとナポリタンしかスパゲティは食べる事は無いのだ。たまに、他の物にも手を出す事があるが、滅多にない。
つまり、自分のなれている味以外。冒険する事は無い。というのがジュンの本質である。
そして藍と橙の驚愕の理由はそこにある。藍は食べたいもの。橙はもとからホットケーキが食べたいためにそれを選んだ。
しかし、紫はジュンにあーんをさせたいが為にミートスパゲティを選んだのである。
ここで藍と橙が、ジュンに勧めたとしても、藍は食べた事がないから、橙は同じものだからという理由で食べないだろう事が容易に知れた。
藍と、橙は紫に羨望の視線を浴びせる。
その視線が、紫の興奮に一役買っていることは書くまでも無いだろう。
その後は、普通に各自食事が再開された。
数分後、四人は食べ終わり、紫が勘定を済ませて。その軽食屋から出てきた。
その際時計を見ると、一時半。これで、遊園地にいけば丁度良い時間帯だ。
「はぁーっ、おいしかったわね」
「「うん」」
紫は、誰に言ったわけでもなかったが。隣にいたジュンと、橙が答えていた。
四人は、今。いきなり人が消えても分からないであろう場所を近所で探しながら、お腹を休ませる意味も込めて歩いていた。さすがに、この状態で遊んぶと気持ち悪くなるだろう。という配慮の元だ。
そして、少しばかり歩くと、人通りがかなり多い所にたどりつく。
「皆、あそこの角を曲がったらスキマを開くわ」
「「分かった!!」」
「はい、紫様」
紫の言った角とは、人通りが多い道でありながらその角に曲がる人や、曲がってくる人が少ないところだ。
そして、四人は歩いていき。その指定の角を曲がったとき。四人の姿はそこにはいなかった。
周りの人々はそれに気がつく事も無くただ普通に歩き続けていた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
次回の投稿は2012年8月12日0;00分くらいです。
予約の実装はよ。