紫たちが、スキマを抜けるとそこは遊園地ゲートの前であった。
紫たちが、遊園地へと着くと、時間帯の事もあってかなりの人たちがそこにいた。
ジュンは、この密集した地帯にあつまる大人数。こんな光景を幻想卿では見たことも無く。ただただ、吐息を漏らしている。橙と握っていたはずの手は、人ごみに飲まれないようにと、紫によって握られている。橙の手は藍によって握られていた。
「紫さま。意外と混んでいましたね」
「そうねぇ~、もうちょっと、空いてるかと思ってたけどこれは凄いわね」
そう言って、紫は周りを見渡した。
いまこの場にいるのは、家族連れ、そしてカップルがほとんどだ。それらにマジって友達どうしで来ている人たち(学生だろうか)がいくつか。
ジュンは、その団体の中で、とある家族連れをジーッと見ていた。その事に紫たちは会話をしていたために気付いていなかった。その家族は、ゲートの中へと消えていく。そしてまた先ほどと同じような家族を探し出し、視線を固定させる。
「では、チケットを買ってきますね」
藍は、そう言って橙をつれ人ごみを掻き分けていく。
それを見送り、人ごみの中に消えてしまった後、ジュンはクイックイッと紫の袖を引いた。
「何かしら?」
「んっ!」
その事に紫は、ジュンの方を向いた。
ジュンは、紫の視線が自分に来たのを確認すると、さきほどまで見ていた家族をビシッという擬音がでそうなほどの勢いで指差した。
指差した先にあるのはお父さんが、子供を肩車している所だった。
その事に紫は、ジュンが何を言いたいのかを察した。
「肩車をしてみたいのね。んー、ごめんなさい。やってあげたいのは山々なのだけど、今来ている服がヒラヒラしてるから、無理だわ。帰ったら森近さんにやってもらいましょ」
「そうかぁ。分かった」
紫は、そう言ったジュンに向かってうん。と頷く。ジュンの聞き分けの良いところが好きだった。しかし、同時に紫は寂しく思う。もう少しわがままを言ってくれても良いのにと。
やはり、私はよその家の人?なのかしらね。と紫は思う。
どちらにしても、今の格好では無理なのだけれど。
しばらく二人だけで待っていると、藍が四人分のチケットを買って戻ってきた。
「お待たせしました。紫さま」
「では、行きましょうか。」
4人はそう言って遊園地のゲートをくぐっていく。
ふと、周りを見渡してみると男達が紫たちを見て、口をあけていた。そして、一緒に来ていた彼女であろう。足の指を踏まれている。その事に気がついた紫は、口をゆがませる。藍はそんな紫を見て、首をかしげていた。
「さて、先ずは何に乗りましょうか」
「先ずは、ジェットコースターでしょう!」
「え……」
4人は、大広間のような所まで歩いてきて、立ち止まり紫が聞いた。
橙は既に乗りたいものを決めていたようだった。
しかし、それを聞いたジュンは固まった。
固まったジュンを見た橙はニヤリとする。
「あら? ジュン。もしかして、恐いの?」
「そ、そんな訳無いだろ!!」
「なら、一緒に乗りましょ。大丈夫、楽しいわよ」
橙は、そう言ってジュンの手を取りジェットコースターのある場所まで歩いていく。
乗り場まで着いてみると、既にたくさんの人が並んでいた。
最後尾に立っている時間街の看板を見ると、1時間待ち。と書かれていた。
「ねぇ、橙。橙?」
「な、なによ。」
「違うのにしない?」
「そうね」
橙はガックリと肩を落としながら、その看板を恨めしそうに睨んでいた。
そんな橙にジュンは声をかけ、手を引いて歩いていく。ジュンはジェットコースターが乗れない事に内心安堵していた。
しかし
「あら、橙。そんなに肩を落とさなくても大丈夫よ。この券。どうやら、待ち時間をパスして乗れるみたいだから」
「ほんとう!?」
そう言ったのは、先ほどまでジュンたちの後ろから着いてきただけだった、紫である。
それを聞いた橙は顔を輝かせ、はたまた橙の手を引いていたジュンは振り向き口をДの形にしていた。
紫はそのジュンの表情を見て嬉しそうに笑う。
「さっ、ジュンもそんな顔してないで、大丈夫よ。頑張りましょ」
紫は、そういってボーっとしているジュンの手を取り ジュンの手は、橙と握られていたはずであったが、するりと抜け、紫とともに、ジェットコースターの所まで戻っていく。
「ちょ、ちょおっと待ってよ!!」
「はぁ~、ゆかりさま」
その事に、橙は呆然とし、はっと気がつくと駆け足で紫を追っていった。
藍はそんな主を見て深く溜息を着き、それでも楽しそうな足取りで着いていく。
「すいません」
「はい、なんでしょう」
ジェットコースターの所まで戻ると、紫は乗り場付近で、チケットの確認をしている従業員(男)に声をかけた。
声をかけられた男は、紫の顔を見て目を丸くし、受け答えをする。見ると、丸くした目の黒い部分は、次第に下へと下がっていっていた。
「これで、今すぐ乗りたいのですが」
「あっ、はい。確認しますね」
紫は、持っていたパスを人数分その従業員に見せる。
従業員は、そのパスを受取り、四枚分そのパスを切り取る。
「大丈夫です。お返ししますね。では、次の奴にお乗りください」
「ありがとうございます」
フフフと、上品に紫はその従業員から、パスを受取り、少し離れた所にいる藍の元に戻る。
「やっぱり、お金があるといい物ね」
「そうは言っても紫様。それは、コッチだけでの話ではないですか。向こうでも、確かに貨幣制度は流入してきたとはいえ、ブツブツ交換の方が盛んです」
「ちょっと紫! そんな事よりジュンを何とかしてよ!」
橙にそういわれた紫が、ジュンの方を見ると、まるでジュンは世界の終わりであるかのような顔をしていた。
その顔を見て、紫は辺りを見渡す。そして何も変わらぬ日常が続いている。その事を確認すると、顔に笑みを浮かべた。
(何だ。ジュンも楽しみなんじゃない)
「ジュン。そんな顔しないでよ。せっかく来たのだから楽しまないと損よ」
「そうよ、ジュン。楽しみましょ。悪かったわ。もう次からは、絶叫マシーンには乗らないから。ねっ」
ジュンは、その間も世界の終わりのような顔をして、何の反応もしない。
しかし。
「あっ、ジェットコースター来たわね」
「うわぁぁああああ。いやだぁぁあああああ。ようむぅぅぅうううう」
紫のその一言で現実へと引っ張り出された。
ジュンは半狂乱に喚くが、いつも助けてくれる妖夢が来てくれることは無かった。
「さぁ、いきましょー!」
「いやだー」
「ははっ、ジュン。諦めなさい。人生諦めることも肝心よ」
紫はそう言って嫌がるジュンをズルズルと引っ張る。そして橙もそれに加勢した。
猶もジュンは重心を後ろに取り必死に抵抗するが、悲しいかな所詮こどもの身体に、こどもの体重。大した苦労もなく紫たちはジュンをジェットコースターにの乗せてしまった。
そして最低限の考慮で、ジュンの隣には藍が。そしてその一個前の列に紫と橙が乗ることになった。
藍が、ジュンの隣に乗った理由は、藍がこの三人の中では一番落ち着いていて安心できるからという理由からである。
「ちゃ、ちゃんと、手握っててね」
「大丈夫ですよ。絶対に離しませんから」
そして先ほど、ジュンたちがこのジェットコースターに乗ってからずっとこの会話がリピートして続いている。
しかし、その続く会話も藍は嫌そうではなかった。
幻想卿の主たる人物の中と比べ、ジュンとは距離がある藍であるが。別にジュンの事が嫌いという訳では無い。
ただ、藍はジュンと橙を結ばせるという野望があるため。一銭を引いているのだ。
一線を引こうと常々意識している藍でさえ今のジュンのこの行動は胸をキュンとさせる校歌をもっていた。
ジュンは先ほどから、そう言うと。キュッと少しだけ握っていた手の力を強めるのだ。
そしてダンダンにその力が抜けていき、藍が弱くなったかなーと思うと、先ほどのセリフを言ってキュッと、不安そうな顔をしながら握るのだ。
その様子に前の二人はやきもきしていたが。
「人生諦めることも肝心なんですよね。橙、紫様?」
と、藍が言うと、二人は溜息を着いて、ジェットコースターを楽しむ事に意識を切り替えたようだった。
先ほどから続いたこの会話も、ダンダンと終わりが近付いていた。
それは。
「おっ、動き始めましたね」
ジェットコースターが動き出したのである。
このジェットコースターは大きい山が一つ、小さい山が二つ。計三つ山がある。
最初のうちは、カタカタとゆっくりゆっくり進んでいく。
先ほどまで仕切りに同じセリフを繰り返していたジュンであったが、ジェットコースターが動き始めた頃から。藍の手をいままでとは桁違いの力で握り締めていた。
その力に藍は驚いてふと、隣を見るとジュンが身をちぢこませて、目をつぶっているのが見えた。
(そこまでか?)
まだ、ジェットコースターも最初のうちなのだ。
恐がるとしたとしても、まだまだ先だろう。
例えば。そう、カタカタという音を立て上っていくときだとか。
そこまで恐がっているジュンを不憫に思い。藍は効果があるかどうかわからない助言をしてみる。
「ジュン君。景色を楽しむようにしてみてはどうでしょうか?」
藍はそう、ジュンに言ってみるが、ジュンがただ首を横に振るだけで絶対に目を開けようとはしなかった。
目を開けているより、目を閉じている方が恐いのでは?と思う藍であった。
(ん……)
カタカタという音と供にゆっくりとジェットコースターは坂を上に上にと上っていく。
そして……。
「ぎゃーーーーーーーー!」
その後の出来事は語らずにも分かる事だろう。
最後までお読みいただきありがとうございます。
次回の投稿は2012年月13日の私が起きたころぐらいという事で