どこからともなく声が発せられると、ジュンを中心にして光が辺りに放たれた。
突然発せられた光に幽香とサンは驚きの表情をする。
その光は、視界を妨げるほどの強烈な光ではなかった。故に幽香と、サンにはその場の変化を見ることが出来た。
ジュンから放たれている光は段々と収束し、それはやがて人の形を作り始めた。
「メラ!」
その事をほうけながら見ていたサンは次第に表情を険しくし、慌ててその光に魔法を放った。
魔法が光に近付いていき当たる。すると、大きな音を放ち辺りに煙が立ち込めた。
その煙は光を中点としてその後ろには広がっていなかった。
次第に煙が引いていく。サンの額に汗が流れおちる。
同時に幽香の表情も見えてくる。その表情は驚きで溢れ、目を見開いていた。
煙が完全に引き、煙の中から一人の青年が出てきた。
先ほどまで光を放っていたジュンは、ドサリと倒れてしまった。
「ジュン!」
幽香が、痛みに悲鳴を上げるからだに鞭を打ち、這うようにしてジュンに近付いていく。
そして、突然現れたこの男にジュンが倒れた原因があると思った幽香はキッとその男をにらみつけた。
「何をしたの!」
「おいおい、そんなに睨むなって。今は緊急事態だから、詳しい説明は出来ないが。とりあえず坊主は大丈夫だ。」
幽香の声にはわずかな殺気が含まれていた。
新たに出現した、敵か味方かよく分からない不確定要素を目の前にして警戒しているのだ。
しかし、新たに現れた男は味方だった。
男は言うと、辺りをキョロキョロと見渡す。
そこには、サンの被害に合った人たちが所せましと転がっていた。
「幽香。君の怪我をここで治したら一瞬のうちにここにいる皆を連れて離れられるかい?」
その一言に幽香は不思議そうな顔を一瞬して、直ぐに思案する顔をした。
この男の思惑を考えているのだ。しかし、自分の今の身体の状況を考慮し何もする事ができないと悟った幽香は、男のいう事に従う事にした。
「できるわ」
「そうか、なら頼むぞ」
言うと、男は幽香に向けて右手を掲げる。
すると、先ほどのような光が溢れ幽香を包み込んだ。
しばらくして、その光が発散する。
幽香は驚きの顔をして立ち上がりなんとも無くなった身体を見た。
「すごい。なんとも無いわ」
「そうか、なら行ってくれ。こいつらを頼んだぞ。あいつは俺に任せてくれ」
「分かったわ」
そう言って幽香は一番遠い場所にいる霊夢と魔理沙を取りに行こうと高速で移動する。
「誰が、連れて行って良いと許可したのだね」
「俺だよ」
しかし、それをサンは妨害するために幽香の進行方向に高速で移動する。
そのサンを更に上回るスピードで、男はサンに接近すると、横に殴り飛ばす。
「ぐぁあああああ!」
無様な声をあげてサンが転がっていく。
その隙に幽香は霊夢と魔理沙を拾い、ジュンが横たわっている所に置く。続いて幽々子と妖夢の回収に向かった。
そして、二人を担ぎ上げ、また同じ所に置く。その事を早苗や、二人の神に対しても同じ事を繰り返した。
幽香は、ジュンだけを抱えあげる。そして他の奴らには持っていた傘からマスパを繰り出し、ここから離れたところへ吹き飛ばす。それを追うようにして幽香もその場から消える。
ここまで、約2秒。
幽香が消えてから、数秒たちサンがようやく立ち上がる。
「ぐ、ぐううう。貴様何者だ。先ほどのガキといい、お前といい。本来ならここにはそのような者はいないはずだ!!」
サンは叫んだ。
しかし、その言葉を聞いた男は首をかしげるだけで何の返答もしなかった。
そのまま、沈黙が数秒間続いた。
「ま、まさか……。この世界は、東方を模していながら別の世界として機能している場所なのか。似て非なる……。それなら、イレギュラーである俺を排除する力を持つものがいてもおかしくは無い。くっ、神のやろう」
そして、何やら重大なことに気がついたサンは目を見開く。
ブツブツと呟いているが、その言葉は男まで届いていなかった。
「おいおい、何ブツブツ言ってんだ?」
「う、うるさい! 本来ならお前はいないはずだったんだ。それが、それが……。うぅ。くっそう」
「意味が分からん」
男は言うと、すーっとすべるようにしてサンへと近付く。
「お前が何に驚いているかはしらんがな。俺にしてみりゃ大事な家族がやられて。非常に腹が立っているんだ。嬲り殺されろ」
「くっ」
そして男は、サンの腹に膝蹴りを放つ。
サンはいきなり近付いてきた男に、反応することが出来なく。なんとか腹に腕を割り込ませる事しかできなかった。
そして、男の蹴りの勢いによってサンは、上空に放り出される。
それを、追うように男も空へとあがる。
サンは、吹き飛ばされながらも何とか体勢を立て直し迎撃の構えになる。
「メラゾーマ!」
「効かん!」
サンは、自身の手からマグマのビームを男に向かい放つが、男は右手を前に出しつーっと人差し指を上から下にすると目の前に空間の割れ目が出現し、そのビームを飲み込んだ。
サンは目を見開いた。先ほどからサンは驚いてばかりだ。
「そんな馬鹿な! それは八雲紫しか使えないはず……」
「ははっ、どこからそんな事を聞いたか知らねぇが。冥土の土産だ。教えてやるよ。俺の『真似をする程度の能力』の力だ」
「『真似をする程度の能力』だと!」
「そう! だから」
こんな事もできる。
そう言って男はサンの後ろに回りこむ。
そのあまりにものスピードにサンは反応できず。反応したのは数瞬たった後。その間サンには完璧な隙が出来た。
サンは後ろを振り向く。そこにはサンに向かって右手を掲げている男の姿。サンは脳から、身体の各部に向かって早くここから離れろという指令を出す。
しかし、何故か身体が動いてくれなかった。
「メラゾーマ!」
「(くっ、これが世界の修正力かっ……)くっそぉぉぉぉおおおおおおお」
サンはマグマに飲み込まれた。
男は、一人その場所に立っていた。
周りを見ても誰もいなかった。当たり前だ、先ほどまで倒れていた人たちは幽香に遠い所へと非難させてもらったのだから。
そして、先ほどまで男と戦っていたモノは。
「なーんだこりゃ?」
男が見詰める先。そこには、何か黒い奇妙な物体がブスブスと燻り存在していた。
外見は、黒く。まるでスライムのようなゼリーの身体をしている。
腕なのだろうか、左上の部分から何か触手のようなものが伸び、正面から見て右の少し上辺りに目玉だ一つついていた。
その、申し訳程度に着き、これ以上醜いものは無いと思える目玉は、じっと男をこの上ないほどの呪詛を込め見詰めていた。
その視線に男は寒気を覚える。
このゼリーのようなナニカは、先ほどサンを男がメラゾーマを放ち蒸発させたかと思いきや出てきた何やら不気味な物体である。
男はコレをこのまま放置しておいても何も出来ないような気がしていたのだが、そういえば、ここに住む巫女と神々は女性だったな。と思い出す。
そんなとこにコレを残すのは危険だと考えた。
「まっ、お前さんがやった事。色々とゆるせねぇけど。ここらで、俺が水に流しといてやるよ。そうじゃねぇと、来世で閻魔様に蟲畜生にされちまうからな。なぁに、大丈夫。苦しみなんて感じる前に殺してやるからさ」
その言葉を聞いたモノは男に背を向け一目散にここから離れようとしていた。
しかし、そのモノは小さい。いくら一目散に逃げようとしていても男の一歩で追い越された。
それでも、逃げようとするモノ。
男は、その無様さについ笑ってしまった。
「ハハッ、往生際がわりぃな。それ以上無様な姿をさらすなよ。ここらが年貢の納め時だぜ」
ピチューン。