「うーん。おでこ、熱いですねぇ」
そんな事を言いながら、ジュンのおでこを触っていたのは、ここ、幽々子の○○を勤める魂魄妖夢である。
その人は今、布団の横に座り、気だるそうに眠るジュンのおでこを触り熱を測っていた。
「コホン、コホン。」
ジュンの、頬は赤くほてり。
その半分だけ開いた瞳は、辛そうである。
そう、ジュンは風を引いていた。
昨晩の事である。
思い出せば、ジュンはどこか顔が赤かったかなぁ。と、思うのは妖夢である。
元気よく、幽々子さまと、ご飯を食べていたのだが、顔が赤く。しかし、無理をしているようには見えなかった。
故に妖夢としても、油断していたのだろう。気付いていれば、何か処置のしようもあったのかも知れない。
ジュンと、幽々子、妖夢の三人は、丸いちゃぶ台を取り囲み、夕飯を食べていた。
幽々子は、いつもどおり。ジュンはいつもより少しがっついた感じにご飯を食べていた。
幽々子は、食べていた箸を止め隣でグーでお箸を握りながら、ご飯を書き込んでいるジュンを見、そのあと、ジュンの前に配膳されている盆の上を見た。
メインの料理と、副菜。お味噌汁、漬物たちが乗っかっているそれは、メイン料理と、お味噌汁だけ量が減っていて他の(野菜メインの)料理には、全く手がつけられていなかった。
「ジュンちゃん。ちゃんと、お野菜も食べないといけませんよ」
「あとで、食べるのー」
このやり取りも、何度見ただろうか。
幽々子は、少しの笑みを顔に乗せる。
「そうよ、ジュン。ちゃーんと、お野菜食べないと、悪い病気とかになっちゃうんですよ~」
「むぅ~。分かったよ」
幽々子が、そう言うと、本当に少しだけ、副菜である野菜を口に含んだ。
そして、味噌汁で流し込んでいる。
その様子を見た妖夢は溜息を着いていた。
「はぁ~。何でこんなにも食べてくれないんでしょうか。おいしいのに……。あぁ、藍様は、どうやって橙を育ててるんでしょう」
この悩みは子育てをするものの悩みなのだろうか。
ジュンの野菜克服の為に妖夢は、昔から様々な手段を講じていたのだが、まったくそれが功を帰す事は無かった。
甘い野菜ジュースならば、飲めるようになったのだが、コレを進歩と言っていい物か……。
それから、多大な時間をかけて妖夢は、ジュンに野菜を食べさせる事に成功した。それにも、妖夢が幽々子からジュン用の野菜を守ったりと、死闘が色々とあったのだ。
その夜、妖夢は昨日とは違い、少しの肌寒さを感じていた。
最近は、暑い日が多かったので体調を崩しやすそうだ。と、妖夢は考えていた。
夕食のあと、ジュンと幽々子の三人でお風呂を浴びたあとは、手早くジュンを着替えさせる。
その時ジュンが着ていたのは少し薄めの長袖と、半ズボンであった。
暑い日が続いていたために、厚いのはしまってしまったのだった。
「ジュンちゃん。今日は寒いですし、私が出してきますから、ちょっと厚ぼったいパジャマにしませんか?」
「え~、やだよ。だって熱いじゃん」
妖夢は着替えさせた後、ジュンの着たパジャマを見ながら尋ねた。
しかし、ジュンの脳内では昨日まで熱かったのでその事がインプットされているのだろうか。
「はぁ、まぁ明日からまた熱くなりそうですから大丈夫でしょうか……」
一抹の不安をかかえつつも、妖夢は今日だけならと、たいしてジュンに強制する事もなかった。
その日ジュンは妖夢と一緒に布団へと入った。
結果。
「こほん。こほん……」
妖夢は、いまだ苦しそうに咳をしているジュンを見て溜息を着いていた。
「じゃあ、りんごでも向いてきますから……」
そう言うと妖夢は、立ち上がり台所へと向かった。
一人妖夢が、りんごの一本向きに挑戦していると、後ろにある扉が開いた。
妖夢は、手に包丁を持ったまま、顔だけ後ろを振り返る。
「あっ、幽々子様ですか。どうでした? 置き薬見つかりました?」
「だめよ、妖夢。見つからないわ。どっかに会ったはずなんだけど」
入ってきたのは幽々子であった。
幽々子はジュンが目覚め風だと分かったときから屋敷内どこかにおいたはずの置き薬を探していたのであった。
しかし、その置き薬をおいたのも随分まえのことで最近はとっていなかったりする。
「はぁ、どうして。ジュンが風邪に何かなったのかしら」
「そうですねぇ。ジュンちゃんの能力があれば、細菌を寄せ付けないはずなんですけどね」
そう言いながら、妖夢は向き終わったりんごを一つまるまる幽々子に渡す。
「あら? 私の?」
ジュンのりんごを向いていたのだろうと思っていた幽々子は不思議そうな声をだす。
「はい。そういえば、風邪のときって、食欲がわかないんですよね。だから、ジュンちゃんが興味を持つようにしなきゃと思いまして」
「ふーん」
そう言って妖夢は、凄いスピードで一つのりんごを兎の形に切り分けていく。
幽々子は、もらったりんごにかじりついた。
幽々子が食べ終わると同時に妖夢も、りんごを切り分け終えた。
「では、幽々子様。これをジュンちゃんに食べさせてあげてください。私は永琳さん。を呼んできますので。くれぐれも、これを自分で食べる事の無いように」
「分かってるわよ」
そう言って、幽々子に兎りんごを預けると、妖夢は玄関付近にかけてある上着を羽織って外へとでた。
「いってらっしゃ~い」
後ろでは、兎りんごの乗ったお皿を片手に持ち腕を振っていた。
永遠亭。
妖夢は、その玄関の前まで来た。
ここは、迷いの竹林という場所の中にあるのだが慣れだろうか、迷わずにここまで来ていた妖夢だった。
妖夢は、玄関の戸を二度叩いた。
「はーい。」
すると、直ぐに返事が届いた。
目の前にある扉が開かれる。
そこから、あらわれたのは永琳ではなく。可愛らしいブレザーと、ブリッツスカートを身にまとったレイセンであった。
レイセンは、扉を叩いたのが妖夢だと分かると、少しだけ驚いた顔をした。
「どうしたんですか?」
「実はジュンが風邪を引いてしまって……」
困っている表情の妖夢を見てレイセンは先ほどいった言葉が本当のことだと分かると。更に驚いたようだった。
「えぇ! 珍しい事もあるもんですねー」
「そうなんです。ですので早急に永琳さんに来ていただきたいのですが……。実は留守番で幽々子様を残して来たのですが心配で。」
「わ、分かりました。ちょっと待っててくださいね」
レイセンはそう言うと、扉を開けたままにして置くに「ししょー?」と、割合大きな声で永琳を呼びに行った。
すると、永琳が来るまでのあいだ妖夢はただ立って待っているだけだった。
「ねぇ。本当にジュンが風邪引いたの?」
そんな妖夢に話しかけてきたのは、因幡てゐである。
てゐは、いつの間にか、玄関の近くにあった切り株にすわり妖夢に話しかけている。
「そうなんですよ」
妖夢は、ジュンの事が心配なんだろうと思っててゐの質問に応えた。
それを聞くと、てゐは何だか意味ありげな深い笑みを浮かべる。
「私知ってるよ。彼。拒絶をする程度の能力をもっているんだってね。何でも命の危機と判断したものを全て自動で拒絶してしまうとか……」
「えぇ、幻想卿のトップシークレットをどうして知ってるのか知りませんがそうですよ」
「なら、変だねぇ。風邪、なんて言ってもさぁ。油断してたらコロリといっちまうでしょ? 何で、能力が発動しなかったのかね?」
「何が言いたいんですか?」
その意味深な、笑みと言い方に不審な気配を感じた妖夢は頭に血が上っていく。
そんな妖夢をてゐは片目でこっそり一瞥すると、両手をやれやれとでもいいたそうに振る。
「いや、別になにも言いたい事なんてないけどさ。私は、彼の能力に何か異変が起きてるんじゃないかって思うわけ」
てゐは、今回のことはジュンの体内で起きている異変だと言う。
「そんなわけあるはずありません。今更、今更、ジュンちゃんの中で異変が起こるはずもありまあせん!!」
妖夢は、その考えを否定するように頭を激しく左右に振った。
「今更」……。過去にも似たような事があったのだろうか(伏線1)
「ふん。どうだかね」
「そこまでにしておきなさい。てゐ。」
「師匠!!」
扉の方から声がする。
妖夢と、てゐがそちらの方を向いてみると永琳が、レイセンを傍らに連れて、立っていた。
その右手には、救急セットが握られている。
「では、いきましょうか。てゐは、ここで留守番してなさい」
「そんなぁ……」
「はい。行きましょう!!」
永琳は、そのまま妖夢の前に立つとそういった。
てゐは、不満気な声をあげる。
妖夢は、先ほどまで、てゐと衝撃的な内容で話し合っていたために、目的が頭から抜けていたのだが、気を取り戻すと気を高ぶらせた。
そして、三人は、てゐを残して白玉楼へと歩いていく。
「妖夢! ジュンに、お大事にって言っておいて」
妖夢が歩き出すとき、てゐは慌てるようにして、妖夢に言った。
その言葉に、妖夢は言葉を返すことは無かった。
白玉楼。
「あら?」
永琳が何かに気がついたように声をあげた。
「あれ?」
妖夢も、同じくだ。
レイセンは、傍らにたたずむだけで声を出す事は無かったが、驚きに目見開いていた。
三人が目を向けるそこは、白玉楼。
そこは、明るく光がともっていたのだ。ここを出る前、妖夢は光を消していったはずの部屋の光がついていたのである。
「妖夢。ここを出てくるとき、ちゃんと光消したの?」
「消した……はずなんですけど」
妖夢の言葉尻の声量が小さくなっていく。
まさか、空き巣でもはいったのだろうか? そんな、ありえないような考えが妖夢のなかによぎる。
「泥棒……でしょうか?」
「それは、無いでしょう。ここには幽々子がいるのよ」
「ですよね」
しかし、永琳はその考えをあっさり否定する。
そして、白玉楼の扉に手をかける。
「じゃ、おじゃまするわよ」
妖夢とレイセンだけに聞こえるような声量で永琳はいった。
「「「…………」」」
三人が中に入り、光がともっていた部屋まで行くと、声も出ないような事態が起きていた。
そこでは、風邪であったはずのジュンが部屋の中央で、どこから出して着たのかはっぴを出してきて踊り、その横で幽々子が手拍子をしていた。
「ゆ、幽々子さま?」
顔に暗く縦線が入っていた妖夢が低めの声で聞く。
幽々子は、妖夢たちが入ってきた事に気づいていないようで、妖夢に呼びかけられて始めて気がついたようだった。
「あら、どうしたの? 妖夢。あっ、永琳もレイセンもいらっしゃい」
妖夢達の方を向いて幽々子は笑顔で言った。
辺りに静寂が訪れる。
ジュンは、いまだ踊っている。
「妖夢。帰ってもいいかしら?」
見るからに、元気なジュンを見て永琳は疲れてそうな声色で言った。
どの言葉を聞いた、妖夢は慌てだした。
「ちょちょちょ、ちょっと待ってください!ジュンちゃんも、踊ってないでちょっとコッチに来てください」
「えー」
「いいから来て!!」
「はぁい……」
やっとこ、踊りをやめたと思ったらぐずりだすジュンに妖夢は珍しく怒鳴った。
それを聞いた、ジュンはおとなしく踊るのを止め永琳の前まで歩いていく。
「ん。ちょっと診せてみて」
永琳はジュンと視線の位置を合わせると、ジュンの瞼を開き白目を見る。
「いいわよ。今度は口あけて。ん。」
言うと、ジュンはおとなしく口を大きく開けた。
永琳は、その中を覗き込むと、妖夢の方を向いて言った。
「ん。ちょっと見た限りだけど、体調が悪いって言うのは無いみたいね。何故か。一応、風邪のクスリを置いていくから、食後に飲ませると良いわ」
「これです。妖夢さん」
そう言ってレイセンが永琳の後ろからおずおずと出てきて妖夢に一つの袋を渡し、また、元の位置まで下がる。
妖夢は、貰った袋の中身を覗き込む。
「どうかしら? 幽々子。これを気に置き薬。はじめてみない?」
「そうねぇ。ジュンがまた、風邪に掛かっちゃったら大変だし置いとこうかしらね」
別の所では、置き薬の勧誘が始まっていたりしていた。
こんな感じの雑多録。
後日談。
今回、ジュンちゃんの風邪がいつの間にか治っていて安心したけれど、何故ジュンちゃんは、病気になったりしていたのでしょうか?
彼の能力は……。弱まっている?
今後はもっと注意しなきゃ。いざという時守ってあげるのは私なんだ。
途中電波を受信してまったく違う話になってしまった。
次の話しは本来はこういう話を書きたかったんだよって奴。