東方雑多録   作:ヨコミチ

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お夕飯時の雑多録

 

 太陽も完全に沈み、明るい真ん丸な月が空に顔を見せ始めた頃ここ白玉楼に妖夢の声が響いた。

 

「みなさーん、ご飯ですよー」

 

 その言葉を聞いた各々は今していた事を終え、いつも夕食を食べている部屋へと急ぐ。

 ジュンは先ほどまでやっていた画面をタッチして遊ぶ機械を終える。

 これは、以前幽々子が紫にジュンが暇していると漏らしわざわざ幻想卿の外から買ってきたものである。

 

「よしっ、レポートも終わったし食べに行こっ。妖夢の唐揚げ楽しみだなぁ」

 

 ジュンは目をつぶり以前食べた唐揚げの味を思い出して口の中にたまった唾液を飲み込む。

 そして軽い足取りで夕食を食べる部屋に向かっていった。

 

 妖夢が呼ぶまでの間紫と幽々子は過去行われた幻想卿大運動会の事が記されている記事を読んでいた。

 その新聞は言わずもがな文々。新聞で、二人が見ているものはジュンの活躍が記されている記事だ。

 当時の事について思い返しながら二人が話し合っていると妖夢が呼ぶ声が響いた。

 

「あら、もうこんな時間?」

「ほんとね。時は光陰のごとしとはよく言ったものだわ」

 

 その呼び声に顔をあげた紫が外を見て言う。

 二人は立ち上がり廊下へと出た。そして、夕食を食べる部屋に味を向ける。

 

「今日の夕飯は何かしらね」

 

 紫はとなりを歩いている幽々子に聞いた。

 幽々子は少し考える素振りを見せて言った。

 

「うーん、何かしらね。妖夢はジュンの希望を中心にしてメニューを考えるから分からないわ」

「そう」

「でも、そうねぇ。カレーはその臭いがしないから違うし今日はハンバーグか、唐揚げじゃないかしら? ジュンの好物だし」

「なるほど、それがジュンの好物ナのね。後で家に遊びに来たとき藍に作らせるわ」

「まぁ、それはありがとう。あの子も喜ぶわ」

「逆に、ジュンの嫌いなものとかあるのかしら」

 

 そう言われて幽々子はすこし考える。

 

「言われてみれば、あの子は何でも食べるわね。前妖夢が聞いたとき野菜とか苦い物は全部ダメって言ってたけど……。結局は全部食べてるわ」

 

 そう言われた紫は少し驚いた顔をする。

 

「本当? 以外ねぇ」

 

 紫はそう言ってある事を思いついた。そしてその考えは多分間違って無いんだろうなぁ。と苦笑いをする。

 

「もしかして、ジュンは拒絶する程度の能力を使って口に入る苦い物とか野菜を片っ端から消してるんじゃないかしら」

 

 そう言われて幽々子は突然立ち止まった。

 

「どうしたのよ?」

 

 紫は声をかける。そこまで以外な事だったのだろうか、まぁ以外といえば以外かもしれないが……

「いえ、ただ妖夢がジュンがなるべく嫌いなものを克服してくれるように。色々考えていたわねと……」

「……。不憫ね」

 

 二人は歩いていく、夕食を食べる部屋に向かって。

 

 幽々子と紫が夕食を食べる部屋につくとジュンと妖夢がお皿を並べている所だった。

 二人はその皿の中でも一際大きな皿を見る

 

「今日はからあげだったわね」

 

 そして、その周りに並べられている野菜数々。その一つ一つに妖夢の工夫が加えられているのだろう。

 ジュンが興味を持つように作られている。しかし、それも口の中で能力を使い消されている事を思うと妖夢に同情を禁じ得ない。

 

「妖夢、貴女のやっている事は無意味じゃないのよ」

「はい? なんですか? 幽々子さま」

「いいえ、何でもないわ」

 

 最後の料理を運んできた妖夢に幽々子は声をかける。

 しかし、妖夢には良く聞こえていなかったようだった。

 

 料理が並べられているちゃぶ台を見、お肉と野菜類の割合を比べてみると若干野菜の割合が多いように感じた。

 ジュンはその中でもお肉が多く並べられている所の近くに座っている。

 

「あら、こんばんわ。ジュンちゃん。料理を運ぶ手伝いをしていたの? えらいわねー」

「うん! 見て! 今日は僕の大好きなからあげなんだ。妖夢のからあげはおいしいから好きなんだ」

 

 ジュンの隣に座ったユカリがジュンに話しかける。

 ジュンは並べられている料理の中にあるからあげに指をさす。

 

「はいはい、私の料理をおいしいって言ってもらえて嬉しいですけれど。ちゃんと野菜も食べてくださいね」

 

 妖夢はそう言って最後のお皿を置きジュンの後ろに回って足の間にジュンを差し込むような形で座る。

 

「大丈夫。ちゃんと食べてるから!」

 

 ジュンは笑顔でそう言うが、真実の程はさだかでは無い。

 

「そうよ、ちゃんと野菜も食べないと大きくなれないわよ?」

 

 そう言って幽々子は紫とは反対側に座った。

 その間に妖夢はジュンにせめてこれだけは食べるようにと数ある野菜を小分けにしてジュンの前に置く。

 

 そうして、ジュンと紫、幽々子、妖夢のちょっとだけにぎやかな夕食が始まった。

 

 

 そうして食べ始めてから時間がたった頃。

 妖夢は野菜を食べたがらないジュンに、自分で野菜を取りその口元に運んでいた。

 

「ねぇ、あとちょっとだから食べて。ほら、頑張って」

「んーんー」

 

 しかし、ジュンの野菜嫌いも筋金入りだった。

 最初に妖夢が小分けした野菜も残りほんの少しだった。

 紫と、幽々子は野菜を食べるのを嫌がるジュンを見て口の中で拒絶している訳じゃないのかな?と、思い始めていた。

 

 そして少しの妖夢とジュンの死闘の末妖夢はジュンに野菜を食べてもらう事に成功していた。

 リスのようにシャクシャクと野菜を齧るジュン。

 

「あっ、そういえば。ジュンは私に何かプレゼントがあるんじゃなかったっけ?」

 

 ジュンがその野菜を飲みこんだ時に紫が声をかける。紫は食べ始める頃からずっとその事を気にかけそわそわしていた。

 

「そうだった!」

「あぁ。」

 

 ジュンは紫にその事を言われ、今思い出したようで妖夢の膝から抜け出ると、駆け足で自室へと向かっていった。

 

「もう、紫様が余計な事言うからジュンちゃんが行っちゃったじゃないですかぁ」

「あはは、ごめんなさい。でも良いじゃない、直ぐ戻って来るんだし」

「まぁ、それもそうですけど」

 

 妖夢がジト目で紫を見る。

 紫はあやまるが悪いとは思っていないようだった。

 幽々子はその隣でどうでもいいとばかりに口に食べ物を放っていた。そして、ジュン用にて小分けされている野菜を見て妖夢の隙を突きそれも口の中へ放り込んだ。

 

「あぁ、幽々子様!!」

 

 それに妖夢は悲痛の声をあげた。

 

 しばらくしてジュンが花瓶と先ほど描いた紙を持って戻ってくる。

 そして花瓶を紫のちゃぶ台の前に置いた。

 

「先ずはコレ! これはいつだったかゆうかりんに貰ったものでそれ以来こうして毎日お水をあげて育ててるの」

「へぇ、これは綺麗な花ねぇ。さすがは幽香。ジュン、大事にしてあげてね」

「うん!」

 

 ジュンはそう言うとその花瓶をちゃぶ台の少し遠い所に移動させる。

 そして、ジュンはもう一つ紫に一枚の紙を裏向きで手渡す。

 

「あら、これは何かしら? 見ても良い?」

 

 紫はジュンに確認を取るとジュンがうなずいたので、その紙を表に返してみる。

 

「あら、凄い。」

 

 そしてそこから出てきたのは知っての通り紫の肖像画のような絵である。

 紫はその写したような絵の完成度に感動する。

 

「えへへー。凄いでしょ」

「凄いわ。本当に嬉しい、ありがとう」

 

 そして紫は笑うジュンを抱きしめて頭を撫でる。その頬には一粒のしずくが流れていた。

 

 妖夢はそれを見て数十秒待つと手をパンパンと二度叩いて意識をこちらに向けさせた。

 紫は妖夢を恨めしそうに見る。

 

「では、紫さまこれから本日のメインイベントである。私とジュンちゃんの芸をお見せします。」

 

 妖夢はそう言うとジュンに向かって手招きをする。

 ジュンは紫の抱擁から抜け出し妖夢についていった。

 

 ジュンが妖夢の後についていくと連れて行かれたのは妖夢の自室であった。

 そして妖夢はジュンに自分と同じ服を一着渡した。

 

「では、私の部屋でそれに着替えちゃってください」

「うん」

 

 ジュンは過去にコレを何回かやっていたので何の疑問を抱く事無くその服を受取る。そして妖夢の自室に入った。

 そこでジュンは着ている者をポンポンと脱いでいき下着を残したままになる。

 そしてジュンは自分の能力である真似る程度の能力を発動させた。

 すると、見る見る容姿が妖夢のそれと似ていく。そして最終的には身長も妖夢と同じ高さとなり、声も同じに、妖夢を生き写したような見た目になった。

 

「よし」

 

 ジュンは妖夢の部屋にある唯一の鏡で自分の姿を確認し、妖夢と同じ声で言う。

 そして妖夢から渡された服を着てその部屋から出た。

 

「うん。まるっきり私と同じですね」

「そうですね」

 

 妖夢は自分と同じ姿のジュンが出てきた事にさして驚くといったような事はせず淡々と言った。

 ジュンも妖夢の口調に似せて話す。長い間この白玉楼で過ごしてきたジュンにとってはたやすい事だった。

 そして二人は連れ立って先ほど夕食を食べる部屋へと戻っていく。

 

「「お待たせしました」」

 

 ステレオな声で二人が部屋に入っていくと、紫は信じられないものを見たとでもいうように目を丸くする。

 その様子を見た幽々子が隣で苦笑をする。

 

「こ、これは凄いわね」

「どう? 見分けがつくかしら?」

「つ、つまりジュンの芸っていうのは」

「これのことね」

「「はい、これから紫様には私達ふたりどちらジュンちゃんで、どちらが私なのかを見分けてもらいます。ルールとしては質問は何でもOKです」」

「なるほど」

 

 そう言うと紫は手を顎にして考え始めた。となりにいる幽々子はデザートに手をつけ始めている。

 それからしばらくは妖夢二人(内一人はジュン)と紫の間で質疑応答が交わされた。

 この質疑応答の中で紫は幾つかぼろが出るだろうと思い厳しい質問をぶつけていたのだが。

 

「駄目ね。分からないわ」

「ふぅん。賢者と言われる貴女相手でもこれは分からないのね」

「仕方ないじゃない。あんなきわどい質問してるのに二人とも同じ事を答えるのよ」

「まぁ、分からないわよね。妖夢と長年いる私も分からなかったもの。もし簡単に答えられでもしたらショックよ」

「幽々子でも分からなかったの?」

「いえ、私も最終的にいっこボロを見つけて分かったわよ」

「ボロがあるの!?」

 

 紫は驚きの声をあげる。

 この二人は本当に完璧に同体なのである。そこに幽々子はどのようなボロを見つけ出したのか。紫はもう一度思考の渦に沈み込んだ。

 そしてもう子一時間時間が過ぎたとき。紫はギブアップをした。幽々子の見つけたボロが分からなかったのである。

 

「降参よ、幽々子。貴女どんなボロを見つけたの?」

 

 紫がそう尋ねると幽々子は待ってましたとばかりに目をキラーンと輝かせる。

 そして、普段からは考えられないほど俊敏な動きで妖夢二人の後ろに回りこみそのスカートをバサッとめくりあげた。

 そしてそこから現れたのは女性物の下着と、男物の下着……

 

「あら?」

 

 ではなく両方ともに男物の下着をはいていた。

 

「「幽々子様、前と同じミスをすると思いますか?」」

 

 二人は主人の様子に呆れたように言う。

 そう、前回幽々子が見つけたボロ。それは下着の事であった。前回の時は女性の物、男性の物で別々の下着を着ていたために判断がついたのだった。

 しかし、今回は二人ともに同じ下着のため区別をつけることは出来なかった。

 

「私も分からないわ。降参よ」

 

 そして幽々子も降参をしたため妖夢二人は左右に並びお互いの顔を見合わせると幽々子たちから見て向かって左側の妖夢の輪郭がぼやけ段々とジュンの形を作っていった。

 

「はーい! こっちが僕でしたー!」

 

 ジュンはそうこの日最後のイベントを締めくくる。こんな感じで白玉楼の夜は更けていく。




どうやら、一気に何話も投稿することはサーバーに負荷をかけてしまうらしいので本日はここまでにします。
お読みいただいた方々へ、ありがとうございます。
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