「「え?」」
妖夢と幽々子は紫の言葉にほうけた言葉で返す。幽々子は紫の言っていることが理解できていなかった。
対して紫は先ほどとは打って変わり得策は我に有りといったような表情をしていた。
その言葉に最も早く反応したのは永琳だった。
「どういうことかしら?」
「私にも分からないわ。だけど、私の生きてきた経験とか勘とかそういういろんな物が私に告げてるのコレはジュンを救うためのカードだって」
紫はそう言うと隙間を作り出しその中へ片手を突っ込んだ。そしてその腕をぐるぐると中を探るように動かした後、やっと目的の物を見つけたようでその腕を引き抜いた。
その引き抜いた手には一枚の紙が握られている。
ここの意識を持っている全員の視線がその紙へと向けられた。
「それは?」
「まって、私にもまだ分からないわ。突然スキマに違和感を感じて中に手を入れてみたら入ってたの。多分これがジュンを救う鍵になるのよ」
幽々子は尋ねるが紫はその問いには答えられなかった。
紫はその四つにたたんである紙を丁寧に開いていく。その紙は半紙のような材質で開いてみるとだいたいA4ぐらいの大きさだった。
四人は集りその紙を覗く。それには墨で次のように書かれていた。
その内容を代表して紫が読みつづる。
「なになに。幻想卿の諸君ごきげんよう……。何よこれ!」
「まぁまぁ、続きを読みましょうよ」
その書の書き出し文句に紫が叫ぶがそれを妖夢がいさめる。
幻想卿の諸君ごきげんよう。
いきなりこのような書をだしてすまない。しかし、これを出さないと私も死んでしまうかもしれないのでね。
では、君達の今最大の悩みである。ジュン君の症状の原因だが。
それは、拒絶をする程度の能力を使役し続けた事が影響なんだ。何故そうなってしまったのかはチルノに聞いてくれ。くれぐれも怒らないように。彼女にも悪気はなかったんだ。
それでだ。
肝心のジュン君の治し方だが、私も他人づてに聞いただけなので何故そうなったのかは分からないのだが。
とにかく、チルノを起こせば全ては解決するそうだ。
ふむ、これ以上書くことも無いようだ。
ではサラバだ。また数年後に会おう。
「何かしらこれは?」
「性質の悪い悪戯ですかね?」
その書かれた内容に紫は少し頭に血が上る。それは妖夢も同じ気持ちだったようだ。
その悪戯とも取れる内容。いや、内容は無きに等しいものだが。そもそもこれは何処にあったのだろうか。そう、紫のスキマの中である。その中に紫以外のものが自主的に物を投げ込むなど不可能である。そしてそのスキマの内部に干渉できる者は紫以外に一人だけいる。その事が内容とは裏腹にこの書かれていることが真実だという事が強まる。
それに霊夢ではないが紫の勘もかなりの高確率で当たる。その事が強まった真実をさらに強めた。
「でも、あなたの勘ではこれがジュンを助ける希望なんでしょう?」
「えぇ、そうなのよ。それもこの紙を広げてからその勘は更に強くなったわ」
「なら、試してみる価値はあるんじゃないかしら」
幽々子がそう言うと隣にいた妖夢に視線を送る。
その事で妖夢は何を幽々子が言いたいかを理解し、頷くと眠っていたチルノの体をゆする。
「チルノちゃん。チルノちゃん」
妖夢は呼びかける。しかし、中々チルノは起きることが無かった。それはよほどグリズリーとの戦いで疲れたのかそれとも、永琳の薬が強力すぎたせいか。
なおも呼び続けるがチルノはピクリともしない。その事に他四人の顔に焦りが生まれていた。手紙によるとジュンを治す鍵となるのはチルノなのである。
そのチルノが起きなかったら。八方塞がりとなり四人には手も足も出ないのだ。
「お願い。チルノちゃん。ジュンが死んでしまうかもしれないの。お願いだから起きて!」
その時チルノはピクリと身体が跳ねた。ジュンという言葉に反応したのだ。
その事に気づいた妖夢はジュンという単語を交えた言葉を続けて発する。
そして最後に妖夢は言った。
「ジュンを助けるにはチルノの助けが必要なの。お願い起きて!」
沈黙が辺りに訪れる。起きないのか四人がそんな思いを胸にしたとき。チルノがもぞもぞと動いて上半身だけを起き上がらせた。
まだ眠いのかその瞳をチルノはこすっていた。
「あれ? あたい……」
目をパチクリさせながらチルノは周りを見渡す。
その見渡した視界の中に見えてきたのは紫、幽々子、永琳、妖夢。そして布団で眠っているジュンだった。
「ジュン……」
しばらくボーっとしながらジュンを見詰める。
チルノはもぞもぞと動き出すと立ち上がりまわりに紫達がいるにも関わらずジュンが眠っている布団の中にもぐりこんだ。
「ジュンごめんね。あたいが……」
チルノは涙を一筋流しながらポロリと一言漏らすそして後半は何か言っていたようだが言葉になっていなかった。そして父または兄に甘える娘または妹のようにジュンにピタッと張り付くと目を閉じしばらくすると寝息を立て始めてしまった。
その様子を息を呑みながら見守っていた四人は思わずずっこけそうになる。実際ずっこける事は無かったが。
「こ、これで。いいのかしら……」
誰かがポロリと声を漏らす。
その問いに答えることが出来る者は誰もいなかった。
その後四人はこれでいいのか悩みながらも、紙に書かれていることと紫の勘を信じ解散となった。
夜、ジュンに近しいものはこれまでの人生のなかで最大の不安な一夜を過ごす事となる。
しかし、その不安も翌日には解消されることになる。
白玉楼の庭で仲良く遊んでいるチルノとジュンがいたのだ。
妖夢は朝起きてその様子に驚き、二人に昨日何をしていたのか問いただしたが二人は昨日の事を綺麗さっぱり忘れていた。
ようやく戻ってきた日常。幻想卿には笑顔が戻った。
10年後……。
「紫、ちょっと付き合ってもらいたいところがあるんだけど……」
fin
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