東方喰種:MM~美食家が幻想入り~   作:ナライ

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何とか四月中に出せました(汗)
挿絵は間に合わなかったので後日貼り付けようと思います(いつになるかは分からない)
序盤辺りの投稿スピードに戻したいと思っているんですが、中々スケジュールとの折り合いが付かなくて一月ペースになってます(泣)ホントすいません!
まぁ、失踪したと勘違いされないように頑張ります!

因みに作者のFGOに☆5鯖が五体も来ました!(オルニキ、カルナ、ジャンヌ(二枚目)、ヴラド、邪ンヌ)急に運が良くなって嬉しい限りです!ありがとう運営!(でもピックアップが反映されているのは邪ンヌだけなんだよな...。)

今回も意味不説明入ります。くれぐれも温かい目でお読みください。

P.S クオリティの低い挿絵作成完了ですwでもどういう状態なのかを知って欲しかったのでやはりこのシーンには挿絵が必要でした。因みに元々は紫さんの絵を描くつもりでしたが急遽こちらに変更したことで時間がかかってしまいましたw
 あと画像の元ネタは:reの62話の最初のシーンです(トレス)


第十一話 美食

 

「『美食をする程度の能力』ゥ?...ハッ!意味の分かんないこと言ってんじゃねぇよ!」

 

 フランは月山に馬鹿にされていると思ったらしく、更にその怒りを露わにする。

 

「食べるだけの能力って...そんなの誰にでもできることじゃない!ちょっと自分が有利になったからって調子に乗んじゃねぇぞクソ野郎ォ!!!」

 

 そう言って激昂しながらフランはまた月山に大鎌を構え、飛び掛かって来る。

 

「......」

 

 ブオンッ...ブオンッ...ブオンッ...

 

 しかしフランが放つ大鎌の斬撃は全て空を斬り、月山の身体を捉えることはできない。

 

「く、...クソッ!!!」

 

「初めに言ったはずだよ...感情に流されると攻撃が単調になるとね...」

 

 タンッ...    ガギンンンン!!!

 

 そう言って月山は大鎌の斬撃を避け、フランから距離を離す。標的を失ってしまった大鎌はそのまま月山がいたはずの床に深々と突き刺さる。

 

「チッ...!ちょこまかちょこまかと...!!!」

 

 フランは気に入らない存在を見るように月山を睨み付ける。

 

「フッ...そんなに僕の言う事が信じられないのなら少し本気の力を見せてあげようか...もうじきmaindish(主役料理)が出来上がりそうだからね...」

 

「は?何言って......ッ!?」

 

 そう言ったフランの目にはあるモノが映った。

 

 

 シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ.........

 

 月山の右の足元に謎の球体が形成されていた。外見は淡い赤色を帯びた半透明で周りからは白煙を吹いている。よく見るとそれは氷で出来た球だった。

 

「既に発動はしていたんだけどね、どうやらこのspellは完成するまでに少々時間を要するらしい...」

 

「?......ハッ...!」

 

 そう言った月山の言葉である事に気が付いた。脳裏には満身創痍で謎の刻印が刻まれたカードを構えている月山の姿が浮かび上がる。

 

 

 

『氷喰『エターナルブリザード』...』

 

 

”あの時か...!”

 

 

 あの時言った言葉は『冷気を操る程度の能力』を発動するためのものじゃなかった!あれはスペルを発動するために言った言葉。だって『程度の能力』を発動するためにスペル名を答える必要なんて無い!『程度の能力』は常に発動することができる固有のものだから!

 

「因みにこのspellの時間がかかるのにはわけがあってね 凍結させた室内の水分を大量に使用し、圧縮しないと発動することができないんだ...」

 

 この時月山は言っても分からないと思って黙ってはいたが、この氷球の材料になった水分の中には月山の血液も含まれていた。そしてその血液中にはRC細胞が含まれているため、いわばこの氷球は『球の形をした赫子』である。氷を圧縮しただけでも相当な威力はあるが、更にそこに甲赫の堅牢さが加わればその威力はとてつもないものになるだろう。

 

「ッ!!......クソがァ!!!!!!!!」

 

 ガバッ!!!!

 

 フランは悪あがきという風に大鎌を掴んでいた即座に手を離し、月山に飛び掛かる。黒い怒りをぶつけるように...。だが、その怒りが届かない。

 

「さあ、いくよ...」

 

 スゥゥゥゥゥ.........

 

 月山は右足を静かに後ろに上げる。それは正しく蹴ろうとするときのモーションだった。そう月山は蹴ろうとしているのだ足元にある氷球を...。

 これが彼のスペル「エターナルブリザード」の発動の形。氷球を勢いよく蹴り上げることで最適、最高、最大の攻撃を実現するシュート技(スペル)だ。この幻想郷で使われている攻撃用スペルは主に『弾幕ごっこ』に使用されているために”大量に弾を打ち込むもの”が主だ。それは月山の「エターナルブリザード」にも言えることである。先程使用した「アイスグランド」と「スノーエンジェル」は防御のためのもの。指定した位置に障害物を配置する行動制限系(ストレスタイプ)のスペルだ。しかし今から放つこのスペルは前述した二つとは違い、フランが放ってきたものと同じ種類のものになる。

 

「エターナルブリザード...!」

 

 シュッ...バギィィィィィィィィイイイイン!!!!

 

 月山は足元にある氷球を勢いよく蹴り上げる。するとどうか、蹴り上げられた氷球は鋭い音を立てながら砕けていく。そして残ったのは砕けず残った氷球の中心部分と砕けてしまった所為で辺りに散らばっていく氷の欠片。これが月山の弾幕「エターナルブリザード」の正体だ。ワザと氷球の表面を蹴り砕くことにより無数の鋭利な氷の礫を作り出し、それらを弾幕として扱っているのだ。月山に飛び掛かっているフランからすれば正面からは高速で氷塊が自分に向って来ている。ならばとこれを避けようとすれば無数の氷の礫の餌食になってしまう。それ以前に今の彼女の体勢ではろくに回避することもできない。

 

 正に避けようのない攻撃...『弾幕』。

 

 

”まるで羽赫の攻撃だ...。”

 

 ふと月山は砕けてゆく氷を見つめ、元の世界の事を思い出す。彼とあの日戦った姉弟のようにはいかないが、それに近いものは出来上がっていた。そしてその弾幕は飛び掛かっていたフランに今、直撃する。

 

 

 ボッ!!!    ビシュッビシュッビシュッビシュッ.........!!!!!

 

 

「グゥ......ハァッ!!!!!!!!!!」

 

 氷球はフランの腹部にめり込みながら直撃。大量の氷の礫も全身に突き刺さる。その衝撃にフランは吐血し、体中からものすごい勢いで血が噴き出す。

 

「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ァァァァァァァァァァァァァァァァa"aaaaaaaaaaaaaaaaaaahhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh亜”アアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

 

 ガァアアアアアアア  ドォオオオオオオオオ!!!

 

 その強烈な威力に思わずフランは叫びを上げながら、「エターナルブリザード」の威力の影響でそのまま真後ろに吹き飛んでゆく。しかし、彼女は化け物。体が吹き飛ぼうと死ぬことは無く、全快して何度も立ち上がるだろう。それは今対戦している月山が一番理解していた。

 

“今は有利だったとしてもこのまま続けていればいずれ僕は敗北する...どうすればいい.........”

 

 ツゥ.........。

 

「...ん?」

 

 月山は自身の頬に垂れてきた液体に気が付いた。それは今、吹き飛んでいったフランの返り血だった。月山はそれを手で拭う。その時だった。月山の鼻にその返り血の匂いが伝わって来た。

 

”ッ!?”

 

 月山はその匂いに驚愕した。

 

”こ、これは!?まさか!?”

 

 と同時に月山の頭の中に”ある事”が浮かび上がる。それはこの戦いを終わらせる事でもあり、彼女を救うことができない事でもあった。

 

 ペロッ...

 

 月山はその仮説を確信に変えるべく、その血を味わう。

 

「.........」

 

 味わった月山は黙ったまま目を閉じ、天井に顔を向ける。そしてある事を聞くべく、月山はその人物の顔を思い浮かべながら、心の中で言葉を呟く。

 

 

 

『レミィ... 少し聞きたいことがあるんだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

-------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 四人は驚愕していた。目の前で行われている光景に。

 

「何なのよ!アレは!?」

 

 最初に口を開いたのはレミリアだった。先程までボロボロの状態だった月山が何事もなかったかのように今、フランと戦っている。しかも優勢に。

『形勢逆転』。正にこの言葉が相応しいような復活劇だ。

 しかし、これだけを四人は驚いたのではなかった。重要だったのは月山が出現させている『氷塊』と『謎のカード』だ。

 

「あれは、“スペルカード”…でしょうか?」

 

 すると美鈴がある仮定を口にした。いや、美鈴だけではない他の三人もその仮定を思い浮かべた。そう仮定付ければ今、目の前で起こっている事を大体は説明することができる。

 だが、この仮定を認めるには問題があった。

 

「でも、スペルカードは『弾幕ごっこ』をするために私たちのスペルの威力を抑え込む道具であって今、行われているような『殺し合い』をするためのものではないわ あのスペルの威力を見れば分かる」

 

 その問題をパチュリーは淡々と答えていく。

 

「シュウにフランを殺す気が無かったとしてもここで技の威力を抑え込むようなことは決してするはずなんてないわ」

 

「それに…」

 

 パチュリーの説明にさらにと付け足すように咲夜が口を開く。

 

「あれはスペルカードではありませんでした 私が自らの目で確認しました」

 

「「「!?」」」

 

 その言葉に聞いていた三人は更に驚愕した。多少疑問はあったが、あの手に持っているカードが力の発生源なのは皆は気付いていた。ならばあのカードは一体なんだというのか?という疑問が三人の頭を埋め尽くす。

 

“あれは、何の神秘も魔力も感じないただの紙切れだった…いや、あるいは私たちが知りえない力があのカードに隠されているのか……”

 

「そこは私が説明してあげるわ」

 

 その時だった。その咲夜の問いを答えるように背後からある声が聞こえてきた。

 咲夜が振り返るとそこには空間にぽっかりと空いた穴から金色の髪を靡かせる女性が顔を覗かせていた。

 

「貴女は…八雲紫」

 

 そう。そこにいたのはスキマ妖怪。『八雲紫』だった。そこで咲夜はある事を思い出す。月山にあの謎のカードを渡した張本人がこの目の前にいる八雲紫だという事に。

 

「フフッ」

 

フワッ

 

 そんな咲夜たちの反応を見たせいか、紫は嘲笑いながら地上に舞い降りる。

 

「それはどういうことかしら?」

 

 そう言った紫に向ってレミリアは問う。月山に例のカードを渡したのが紫という話は咲夜しか月山から聞かされていない。だからここにいる咲夜以外の三人はカードと紫の関係性を知らない。

 

「あら?シュウ君から聞いていないのかしら?あのカードを直接彼に手渡したのが私だって事 ま、知っても知らなくても別にどっちでもいいんだけど…」

 

 そう言いながら紫はその嘲笑っているような微笑みを止めない。何だか馬鹿にされているようでここにいる全員が不快な気分でいた。しかし、月山の力の謎を知るのは彼女しかいない。四人はその気持ちを押し殺し、黙って紫の話を聞く。

 

「じゃ、説明しようと思うけど、まずさっき咲夜が言っていたことは本当よ あれは貴女達が知っているスペルカードではないわ あれはね、『ファンタズムカード』っていうものなの」

 

「ファンタズムカード…」

 

紫から告げられたあのカードの真名を聞いていた咲夜は小さな声で復唱する。

 

「貴方達紅魔館の住人がこの幻想郷に来る前にある平行世界人に貰った代物よ その世界では化学が異常に進歩しているらしく、あの『ファンタズムカード』もその発達した科学による産物よ その代わりに魔力や霊力などの神秘の力の概念が無い世界らしいけどね」

 

「......」

 

 当然の反応だ。話を聞いていた四人は完全に唖然としている。いきなり『平行世界人』から貰ったと言われてもその存在を信じることなんて簡単にはできない。しかしその四人の反応お構いなしに紫は微笑みながら話を続けていく。

 

「どういった仕組みなのかは分からないのだけれど、あのカードは『自身のもう一つの可能性』を呼び出すカードらしいの 要は平行世界の自分の力を貸してもらうためのチケットって感じかしら」

 

「まるで※魔導書(グリモア)みたいな効能ね ま、作りと習得するものは根本的に違ってるみたいだけど」 

 

魔導書(グリモア)・・・魔法自体を封じた本の総称。魔法を習ったことがない者も魔力さえあれば簡単に使用することができる便利な本。ただその場合は使用者制限としてとても弱いものまでしか使えない。

下記に魔導書のランク分けを記載する。

レベル0(赤色の本)・・・無能力者クラス

レベル1(青色の本)・・・初級者クラス

レベル2(黄色の本)・・・中級者クラス

レベル3(緑色の本)・・・上級者クラス

レベル4(紫色の本)・・・特級者クラス

レベル5(白色の本)・・・賢者クラス

レベル6(黒色の本)・・・大賢者クラス…etc

尚、パチュリーは賢者クラスの黒の魔導書を作成することができる。読み取りも黒の魔導書(というか黒までしか読んだことがない)まで。因みにそのレベルに応じた魔導書を作成できても、そのレベルの読み取りができるとは限らない。その逆もある。

 

 

 

 パチュリーはこの世界にあるモノと異界の技術で作成された例のカードとの類似点を口にした。

 紫はそれを踏まえて更に深くカードについて説明していく。

 

「確かに違ってはいるけど最終的な効能は同じね あとはそこのところで言うと※神降ろしに似てるかしら ほら霊夢が時々使ってるヤツ でも、これは魔導書と違って簡単に習得できなかったていうか色々と試してみたんだけど今までに誰もあのカードを使用することはできなかったのよね このカードは魔法や結界術などが使用できない人達を対象としてつくられたものだから元々神秘の力を完全に使用することができる存在の私たちでは扱うことができないらしいの でも魔導書と同じように魔法を使用するためのエネルギーは必要になる 更に言えばこのファンタズムカードの場合は呼び出す力と素になる同じ種類のエネルギーが必要になる分、魔導書より勝手が悪い だから対象者が扱おうとしても体内にある程度のエネルギーが無ければ結局は使用できない もちろん魔力などのエネルギーなんて元々そんな概念のない世界の人が貯め込めるはずなんてないのに ホント、矛盾してるわよね」

※神降ろし・・・神の性質などを示す神霊を身体に宿すことで、神の力を使用することができるというもの 性能は似てはいるがこちらは他者の力を借りるのであり、ファンタズムカードは平行世界の自分自身の力を貸してもらうので両者は似て非なるものだ

 

“要は欠陥品を渡されたってわけか…”

 

 説明を聞いていた四人全員が同じことを思った。どうやらその平行世界人とやらは知能は高いのだろうが、かなり律儀で少し天然な人物のようだ。わざわざ欠陥品という説明をしておいてそれを手渡そうとするなんてそんな奴しかしないだろう。ま、受け取った紫もおかしいとは思うが。

 

 だが、ファンタズムカードの説明をしてもらっても四人にはまだある疑問が残っている。『なぜ、月山がその欠陥品を問題なく扱うことができているのか?』ということだ。そして今度はその説明をするように紫はある事を咲夜たちに聞き出す。

 

「貴女達は『生物濃縮』という現象を知っているかしら?」

 

 かなり唐突な問いだったが、すぐにパチュリーは答えた。

 

「ある種の化学物質が生態系での食物連鎖を経て生物体内に濃縮されてゆく現象のことね 外界では人体に多大な影響を与える環境問題の一つとして認識されている」

 

「正解よ で、何でこの話をしたかと言うとシュウはそれと似たように魔力などのエネルギーを異常なほど大量に体内に貯め込む特殊な体を持っているらしいの 貴女達も知っているでしょ彼が人間でも妖怪でもない存在だってこと」

 

 そう。月山は人間でも妖怪でもない。彼は人を喰らい、また同種を喰らう者。『喰種』だ。その喰種の特異性が彼にあのカードを使用させる一因となったことをようやく四人は理解した。

 

「勿論、『生物濃縮』と同じで体には有毒だけどね この幻想郷には外の世界とは違いかなり高い濃度で神秘のエネルギーが空気中などに充満している それを吸収し続けるとどうなるか分かる?」

 

 そう言われた咲夜はある事を思い出す。それは月山と初めて邂逅した時の事。その時の彼の状態。月山はその時完全に弱っていた。原因は栄養失調と言っていたが、あの弱り方はそんなもので現れるようには見えなかった。確かに痩せているようには見えたが所々、身体が腫れ上がっていた。完全に危篤患者のそれ。死を迎え入れようとしている人間に残された僅かな時間。それを感じさせた。

咲夜は己が抱いた最悪の想像を確信し、紫に言った。

 

「“死ぬ” そうよね」

 

 紫はそんな咲夜を見て、少し間を置いて説明を続けた。

 

「…ええ、彼の体には私たちに体内にはないある細胞が大量に含まれているらしいのだけど、その細胞が一酸化炭素中毒時のヘモグロビンの如く空気中の『純粋』なエネルギーを優先して蓄え続ける しかしシュウにとってはただの異物だから体内で分解や体外に放出することができない さらにその細胞は彼にとっての第二の胃みたいなものだからそれが正常に働かなくなってまず異常な空腹を感じるようになる そして暫くすると蓄え続けるために体が膨張し、そのまま…」

 

 そう言って紫は右手に拳を作り、そのままその拳を開く。そのモーションが何を意味しているのかはこの場にいる誰もが言われなくても既に分かっていた。そして紫はその既に理解されている事を告げる。

 

「…内部から身体が破壊され死ぬ でもそのエネルギーは逆に細胞の運動を活性化させ、高い再生能力を生み出してしまうため簡単には死ねない 永遠と思えるような長い時間、再生と崩壊を繰り返す身体の痛みは想像を絶するでしょうね」

 

「………」

 

 聞いていた全員言葉が出なかった。それだけ月山が危険な状態にあったこと。そしてここにいるだけで彼は確実に死に近づいてしまうこと。

 

「じゃ、じゃあ何でシュウは今、生きているの?その話が本当なら死んでいるはずよ!」

 

 そう言ったのはレミリアだった。確かにその話が本当なら矛盾している。それが本当なら月山はとっくに死んでいるはずだ。だがそれはすぐに身内の咲夜に否定される。心当たりがあったのだ。月山が何故今も健常な状態でいるのか。

 

「永遠亭での手術…」

 

 月山のあの症状が消えたのは、永遠亭の永琳に見てもらってからだった。その時彼は人間と同じように生活できるように体を改造されたという。おそらくこの時の手術が月山の破滅を防いだ要因になったのだろう。

 

「そう 彼が永遠亭で受けた手術が彼の体内にあるその細胞の量を大幅に減少させたことにより彼の身体の崩壊を防ぐことができたの ま、それが減っただけで結局溜まりつづけるからいずれは死んでしまう事には変わりないんだけど… そこでまたあのカードの登場よ」

 

 そう言って紫は『安心して』と言わんばかりに右目でウインクをする。

 

「あのカードにはねぇ  その純粋なエネルギーを貯める機能も付いているの そのお陰で自力で体外に放出することができないエネルギーをカードに送り込むことができる だから私はあのカードを彼に渡したのよ 幻想の世界と破滅してゆく身体の均衡を保つために… ま、あのカードを彼が使いこなせるようになるとは思わなかったけど」

 

 どうやらそこのところは紫も予想外だったらしい。初めは月山の喰種としての体質とファンタズムカードの効能の相性が良いと踏んで手渡した。だが、その結果、副次的な効果が出現した。ファンタズムカードの発動条件を満たしたことだ。

 

『魔法や霊術などの特殊な力を使用できない』

 

『体内に発動するためのエネルギーを貯めることができる』

 

 この二つを満たす月山だからこそ今、あの凶悪で強力なフランドールに優勢して戦うことができている。

『だったら魔法とか使ったことのないこの幻想郷の人間なら使えるのではないか?』と思うだろうが、何の覚悟もなしに簡単に力を手に入れさせてしまえば十中八九その力に溺れる。魔導書には使用者に制限がある。それゆえに魔法が使えない者には周りに危害を加えない程度の魔法しか扱えないようになっている。一方、ファンタズムカードは別の世界だとしてもそれは自分自身の力。使用を続けていればすぐに周りに危害を与える程度にまで昇華させることもできるし、何より自分自身の力のため余計に使用者を傲慢にさせてしまう。結果、その人物を始末しなければいけないこととなる。だから紫はそう言った神秘の力を使用できない者を試しはしなかった。

 

「結果、月山君は新たな力を手に入れた…いや、もう一人の自分の力を得たのよ そのこともおそらく彼は直感である程度は理解してるはずよ 他者の力を得、それを自身の力に変える そう それは『食事』と同じ 他者から命を貰い、自身の命にする行為 そして命を過剰に摂取し続ければ身体の毒にもなってしまう…それが彼の持ち得る『程度の能力』よ」

 

 ここまでの説明で聞いていた四人は謎のカードや月山の力を理解することができた。だがしかし、咲夜にはまだ気になっていることがある。

 

「…なぜそんなことを貴女が知っているのかしら?」

 

「だっておかしいでしょう 昨日知り合ったばかりの男についてそこまでのことが既に知りえているなんて」

 

 月山がこの幻想郷にやって来てまだ三日しか経っていない。更に言えば紫が直接月山と会ったのは昨日だ。そんな知り合ったばかりの人物の事を知っているのはどう考えてもおかしい。しかも、例のカードを渡したのは昨日だ。ということは月山の事についてその日以前から知っていたという事になる。咲夜はどうしてもそれが気になった。それは個人的な探求心から来るものではなかった。ただ、何かが引っ掛かった。それだけだった。そして、紫がそれを知っているのならおそらく…

 そして紫が返してきた言葉は咲夜のその予想そのものだった。

 

「永琳から聞いたのよ 彼の体について…手術は済ませたようだったけど、いずれ体が崩壊するのは目に見えていたからその後のことは私に任せると言ってたわ 永琳ぐらいの技術があれば簡単に治療できると思うのだけど…なんで私なんかにわざわざ伝えたんでしょうねぇ」

 

 そう言って紫はまた不敵な微笑を浮かべる。まるで『どう?貴女が本当に聞きたかったのはこの言葉でしょ』と言わんばかりの表情だった。

 

「………」

 

“永琳がシュウの身体について知っているのは検査して分かったと言えば説明がつくけど それでもおかしな部分はある 何故『喰種』という種族を知っていたのかと言うことだ 私はこの幻想郷にいる時間よりも外の世界でいた時間の方が多い でも私の知る限り外の世界には喰種などと言う種族は存在しない シュウの話では喰種は誰もが知っているように言っていた だったら私が知らないのはおかしい それにあのカードの説明…だったらもしかすると彼は…”

 

 この時、咲夜の頭の中に二つの疑問が浮かび上がる。一つは月山習と言う人物の正体について。もう一つは八意永琳がなぜ『喰種』という存在を知っていたのか。

 そして、一方の疑問にはある仮説が思いつく。咲夜はそれを紫に聞こうか、聞くまいかでためらう。しかし、聞かなければならない。それは月山がここに来た理由に繋がり、また、『八意永琳の正体』に繋がるから。

 咲夜は意を決して紫に聞く。月山習がどういった存在なのかを。

 

「ねえ シュウはもしかして…平行世界人なの?」

 

 咲夜は至った。

 

『ファンタズムカード』、『平行世界』、『喰種』、『外の世界』、『特殊な細胞』、『人外』、『改造手術』、『八意永琳』…。

今まで聞いて来た言葉の羅列を頭の中で並べ、組み合わせ、その考えに至った。いや、そう仮定すれば全てが説明付く。現に平行世界人の存在を認める話を目の前で聞いたのだ。月山が平行世界人だという可能性は0ではない。いや、寧ろ高いはずだ。

咲夜はそう確信し、紫の目を真っ直ぐに見据える。その視線を強く感じている紫はその考えに至った咲夜を褒めたたえるように拍手する。その行動で仮説は証明された。紫は拍手をしながら、微笑む口をゆっくりと開いた。

 

「よく分かったわね ええ そうよ 彼は『妖怪』が存在せず、その代わりに『喰種』といった存在がいる世界からやって来た平行世界人よ」

 

「…!?」

 

「やっぱり…」

 

 その言葉に咲夜以外の説明を聞いていた三人は驚愕した。一方の咲夜は驚いてはいなかったが、悲哀の念を抱いた。それは月山の境遇に対しての想い。これが本当なら簡単には元の世界に帰ることができないことを理解したからだ。おそらく紫が言った平行世界人は自力で帰る力を所有していたのだろう。だが、月山には帰る手段はおろか、自分が何故ここに来てしまったのかも知ってはいなかった。この幻想郷の中でも古参の妖怪である紫に昨日話をしてそのままこの紅魔館に帰って来てるのがその証拠。彼女が帰る手段を知らないのならそれはこの幻想郷に平行世界を移動する手段が無いのと同義なのだから。そしてそれは彼も理解しているはずだ。

 咲夜は少し顔を俯かせ、自分を責めた。月山が抱える絶望に気が付かなかった自分に対して。そしてこんなことをしても何にもならないことを理解しながら。

 

「いえ、“やって来た”と言うのはおかしいのかもしれないわ 彼は無理やりこの幻想郷に“誘われた”かもしれない」

 

 突然と言う感じだった。咲夜の耳に紫が放った言葉が入って来る。咲夜たちにとってはその言葉がよく分からなかったのだろう。紫に復唱を要求したのは美鈴だった。

 

「…“誘われた”ってそれどういう事でしょうか?」

 

 そう要求された紫は勿体ぶるように少し間を空けて口を開いた。

 

「…この幻想郷に彼を呼び出した者がいる おそらく何らかの目的を達成するために」

 

「え?」

 

 四人とも疑問の声を上げる。そう言われてもまだ頭で理解することができないようだった。その様子を見ていた紫は説明するためにまた言葉を紡ぐ。

 

「貴女達も知っての通り彼は所謂『幻想入り』でここに来た 幻想入りするための条件は世界に存在を忘れ去られること…つまり、月山君は元いた世界にいる事を何らかの影響によって拒絶した しかし彼がいる平行世界は私たち妖怪がいない世界 限りなく私たちのいる世界からは遠い所にある場所よ そこからやって来ようにも通常の幻想入りではまず不可能」

 

「でも、ここに彼を呼び出した者がいるとしたら話は別」

 

 その説明の言いたいことをパチュリーは理解し、紫より先に口にした。その言葉を聞いた紫は正解という風に頷き、そのまま話を続けた。

 

「ええ そう考えれば彼が何故ここにやって来たのかは説明が付く」

 

「けどそんなことが本当にできるの?遥か遠くの世界にいるシュウをここに連れてくるなんて」

 

 しかし、理解できてもそれは机上の空論。実際に行えるかどうかは別だ。確かにこの幻想郷にはあらゆる世界に繋がるくらいに世界を隔てる境界が曖昧だ。だがそれは近い世界だから繋がるのであって、遠くの世界となればどう考えても繋がることはできないだろう。そこに呼び出しの力を加えて幻想郷に召喚しやすくしたとしてもそれは本当に実現するものなのか?そんな疑問を抱いたレミリアは紫に問いかける。

 

「正直私でも無理よ どれだけ彼が世界に絶望し、この幻想郷に呼ばれやすくなったとしてもそれでもここに連れてくる確率は0.0001%にも満たない おそらく彼を呼んだ者は私以上の術者である事に間違いないわ」

 

「…」

 

 この時、咲夜にはある考えが浮かんでいた。そしてその考えはおそらく紫も感じ取っているはずだとも咲夜はここで理解した。紫を超えるほどの術者となればもうこの幻想郷で浮かび上がる人物は一人しか思いつくものがいないからだ。

 

“紫以上の手練れ…ならばやはり…!”

 

 

シュッ...バギィィィィィィィィイイイイン!!!!

 

「!?」

 

 何かが砕ける音がした。音は今も戦いが行われてる場所からだった。皆、音が聞こえてからそれを見たが、その時月山がとっていた動きと、今、フランが置かれている状況で何が起きたのかを理解した。

 

「氷、を蹴った…!?」

 

ボッ!!!    ビシュッビシュッビシュッビシュッ.........!!!!!

 

 

「グゥ......ハァッ!!!!!!!!!!」

 

 そう。月山は氷塊を蹴り砕いたのだ。氷塊の表面は砕かれ、鋭利な刃と化し、砕けなかった氷塊の中心部は高速で標的に向かって行く。そしてそれらはフランの華奢な身体に容赦なく襲い掛かる。氷の刃は深く突き刺さり、氷の球はフランの胴にめり込みながら肉を抉る。

 

「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ァァァァァァァァァァァァァァァァa"aaaaaaaaaaaaaaaaaaahhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh亜”アアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

 

 ガァアアアアアアア  ドォオオオオオオオオ!!!

 

フランはその激痛に耐えかねたように絶叫し、そのまま吹き飛んでゆく。

 

「どうやら今の技が“氷使いの月山君”のとっておきだったようね」

 

 確かにあの技はどう見ても必殺技と言ってもいいものだった。紫が言っていることも本当だろう。

 だが…

 

「…あれでは倒せないわ」

 

 そう言ったのはレミリアだった。フランと直接対峙した彼女にはあの程度の攻撃でフランを倒すことができない事は明白だった。そしてそれはフランの異常なまでの回復力を見てしまった残りの3人にも言えることだった。

優勢に見えて、実は劣勢。状況は最初の時から何一つ進展していない。寧ろそれは悪い方向へと進んでいる。

月山が新たな力を手に入れようとフランを止める術はない。打開策は何一つ存在しなかった。

 

 

『レミィ...』

 

 レミリアの頭に声が響く。それは今向こうで佇んでいる月山の声だった。

 

『シュウ!無事なの!?』

 

『ああ、何とかね このカードのお陰で体の傷はほぼ治ったよ そこにいるユカリに感謝の言葉を伝えておいてくれ』

 

『ええ 分かったわ』

 

『そこで、少し聞きたいことがあるんだフランの事でね』

 

『?』

 

 レミリアには何故今更自身の妹の事について月山が自分から聞き出そうとしているのかがよく分からなかった。それはこの戦いの中で月山は相手のフランのことをよく理解できたと思ったからだ。

 しかし、レミリアは知らなかった。今月山に伝えようとしているフランの情報によって今まで全員が認識していた目の前のものが本当は虚実の混合物であり、色々なことに勘違いし続けていたことを…。

 

 

 

 

-------------------

 

 

 

 

 

 

 

 

『ああ やはりそうか…レミィありがとうこれでようやく理解した もう切るよ それに…』

 

「準備ができたようだ」

 

ズズズズズズズズズズ……

 

 目の前には吹き飛ばしたはずのフランが立っていた。あの短い会話の間にもうこれほど近くまで移動していたらしい。

 

「グゥ…ハァ ハァ…」

 

ビシュッビシュッ  ズズズズズズズズズズ

 

 フランは月山を鋭い目つきで睨み付けながら近づいてくる。その憤怒を感じさせる表情は正しく“鬼”と言うに相応しいものだった。

 だが月山はそれに動じない。それは彼が恐怖を感じないほどの強靭な精神と戦士としての矜持持っているからという意味ではない。

 それは“鬼”という存在を真っ向から否定している目。いや、彼女を、フランを“鬼”として見ていないと言った方が良い。そして彼女を彼女としても…

 

「一つ聞きたいことがある…」

 

 突然月山は近づいてくるフランに問いかけだす。その言葉はとても重く、これからフランから聞き出すことの重要性を感じさせた。

 

「君は誰のために戦う?」

 

「…ハァ?」

 

 フランは本当に意味が分からないといった表情と声を上げる。誰が聞いても月山が言ったこの言葉について、「今更聞くか?」と思うかもしれないが、月山にとってはこの質問はとても重要なものだった。

 

「そんなの決まってるじゃない 私は“フランドール・スカーレット”の存在のために戦う 私が抱いた怨嗟、憤怒、嫉妬、憎悪の分、この世界に破滅を振り撒く! それが私の戦う理由!」

 

 とフランは言い切る。当たり前の事だった。ここに至る以前にも彼女はそう告げている。彼女は自身が抱いた復讐のために血を求める殺人鬼。己以外の存在が消え去るまで戦う。

 それが彼女の戦う理由であり、存在理由だ。

 

「僕はフランドール・スカーレットに戦う 彼女を救うために だけどね…」

 

「僕は君のためには戦わない」

 

 

 

「...私のためにってことは何となく理解できたわ みんなと仲良くした方が私にとっては一番良いって言いたい訳でしょ でも、最後の奴はよく分かんないわ 矛盾してる」

 

 そう矛盾している。だが月山は“君”と言った。それに彼の眼はこの時、確信と自信で満ち溢れていた。

 

ビッビュビッ  ズズズズズズズズズズ

 

「矛盾なんかしていないよ だって君は…」

 

 告げる。紡ぎだした真実を。全ての謎を。これが彼が導き出した解答。

 

「フランドール・スカーレットではないんだから」

 

「…ハ?」

 

ビチュッビビッシュッ ズズズズズズズズズズ グワァビチュビチュチュグワァ

 

「君は一体何者だ?」

 

 フランはその言葉に疑問の声を上げながら先程から行ってる身体の修復を行っている。左上半身の殆どが無残に抉れ、傷口は酷く、内部の肉が露わになる。その色は赤黒く、どう見ても人間のモノではない。そこまでならまだ理解はできる。彼女は吸血鬼なのだから人間とは構造が違っていてもおかしくはない。

 だが、吸血鬼とは内部の肉の中に無数の口があるものなのか?

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 月山の目にはフランではないその何かが〝呪い”を帯びた少女のように映っていた。

 

 

 

 

 

 




意味不説明大丈夫だったでしょうか?分からなかったら感想に書き込んでください。
あとおかしなところも教えてくれると助かります。後に編集させていただきます。

次回もしくはその次くらいでこのプロローグの章は終わりそうです。そしてそこから一章が始まるのをきっかけに本格的に東方喰種:MMが始動する予定なのでもう少し付き合ってもらうと嬉しいです。

つまり「もう少し続くよこの話。」ってことです。

因みに一章で月山と行動を共にするキャラは...(ヒント ☆)
そして舞台は...こっちはまだ楽しみにしておいてもらいましょうか(みんながみんな楽しみにしているわけではない)
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