東方喰種:MM~美食家が幻想入り~   作:ナライ

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本当にお久しぶりです。ナライです。
バイトや大学の行事などが重なって手を出せずにいました。申し訳ありません。
最近、シャドバも始めました(本当はこっちにハマってて投稿できなかったなんて言えない...。)
今回の話で取り敢えず序章が終わります。次話から一章が始まる予定なので気を長くしてこれからも読んでいただけると嬉しいです。



第十四話 序章

 

 

 僕が目覚めてから二日後。あの事件から五日目の今日。僕は永遠亭を退院することになった。

 

 目覚めてからは献身的に咲夜や永遠亭の者たちが僕の面倒を見てくれた。まぁ、眠っていた間も勿論面倒は見てくれていたが。紅魔館の皆もお見舞いに来てくれたりした。レミィに感謝されたり泣かれたりして少し戸惑ったが…。

 その時初めてレミィの妹のフランと出会った。最初彼女は戸惑っていたが僕が優しく語り掛けると彼女は心を開いてくれたかのように笑顔で言葉を返してくれた。どうやら彼女はあの偽フランと意識を共有していたらしく、偽フランが行っていた行為や我々のやり取りを記憶していた。つまり僕を傷つけたのを記憶していたから僕と話すのを彼女は戸惑い、そして僕が優しく語り掛けたことで僕の人間性を記憶していた彼女は笑顔で言葉を僕に返してくれたのだ。そして僕らは帰ったら一緒に遊ぼうと契りを交わした。

 美鈴も来てくれた。その日は特別に門番の仕事と修繕の仕事は休みにしてもらったらしい。彼女もお礼を言ってくれたが、それ以上に僕の戦闘技術に興味を持ったようで僕に「完治してから月山さんの体術をご教授して頂きたいのですがダメでしょうか!」と言った。

 パチェも僕にお礼の言葉を言った後にあのカードを見せる事や本の読み聞かせの約束をお願いしてきた。勿論僕は承諾したが、

 

『これでは帰った後も大変だね…』

 

 と心の中で静かに呟いた。

 

 大変だったのは彼女たちと交わした約束だけではない。永遠亭の者たちとの間でもそういったことはあった。

 てゐと言う兎耳を生やした少女に食事に劇物(デスソース)を混入されるという悪戯にもあったし、咲夜とうどんげが我先にと僕に料理を運んで来て二人の間で険悪なムードにもなった。Ms.エーリンに至っては僕に身体に良く効く薬と称し、実際は試験薬を僕に飲ませ、僕の身体に多くの異変を伴わせた。

 

 だが別に嫌ではなかった。確かに大変ではあったがそういった行為が皆のありのままの姿が見れたようで本当に僕はまたこのありふれた日常を迎えることができたのだと実感できる。“もう一度力を揮うことができる”ということは僕にとって本当に喜ばしいことであった。

 

 

 

 

 

 

「薬は一日一錠。飲むタイミングはいつでもいいわ」

 

「oui. ありがとう。迷惑かけたね」

 

 月山は永琳と二人っきりで診察室にいた。退院するにあたってそのための手続き、もとい最後の確認を行うために今ここにいる。

 

「いいのよ 私も色々と試せたし♡」

 

 そう言われて月山の脳裏に入院していた間に永琳から強制的に摂取させられた妖しい薬の記憶が駆け巡った。

 

“…今回貰った薬は何でもない普通のものだと祈っておこう”

 

 そう切に願うばかりであった。

 

 

「いいの?傷は治ったけどまだあまり身体は動かせないでしょ?元々、栄養不足で痩せていた身体なんだから無理しなくてもいいのよ」

 

「逆さ 今、体を鍛えておかないと今度異変が起きた時に満足に対応することができない。今回の事件も僕の体が万全であったならばもっといい結果になっていたはずなんだ…」

 

 そう言って月山は自分の朱い左の掌を見つめる。その表情は悲愴に染まっていた。

 

「…その左手や貴方の失った部分の補填となった朱い肉は完全に貴方の身体に癒着しているけどそれが貴方の身体のものではないとこのRc値が示してる」

 

 

 

 

 

月山習 左腕 血中RC値:5744

 

 

 

 

 

「でもこの朱い肉以外の部分は900台をキープしてる 貴方が言っていたことは本当ね その左腕たちは彼女のものよ」

 

「……」

 

 僕が死にかけ、意識を失った時。どうやらあの時僕の命を救うためにあの娘は何かをしたらしい。それは何かしら特別な術を持っていたのか、僕に自身の肉を咀嚼させたのか…それは一生知ることができないのであろう。但しこれだけは言える。彼女は僕の命を救うためにその命を捧げ、僕と共に生きることを選んだ。例えそれがどのような姿になったとしても…。

 

「それにしても本当に不思議だわ 完全に癒着しているはずなのにRC値がまったく変化しないなんて…まるでこの姿になっても意思を持っているかのようね」

 

 

そう、まるでもう一人、月山習とは違う者がいるかのように…。

 

 

 そして月山の身に変調を与えないようにするその様は月山の身を案じているようにもとれた。

 

 

 彼女は生きているのだ。生きようと契を交わした月山と共に。

 

 

 

 

 

 

「それでは行くとしよう また何かあれば顔を出すことがあるかもしれません その時はよろしく頼みますDr.エーリン」

 

 確認を終えた月山は席を立ちそう言った。そして扉の前まで歩いていき、扉に手をかけその場を立ち去ろうとした。

 

その時だ。

 

「何で聞かないの?」

 

 それは突然だった。永琳の口から謎の言葉が発せられた。しかしそれは当然のことなのだ。

 

「紫から聞いたのでしょ 喰種はこの世界に存在しないという事を だったら何故私がその事を詳細に知っているのか 貴方も謎に思い、不審に思ったはず なのに何故私にその事を聞こうとしないのかしら?」

 

 この世界には喰種という種族は存在しない。月山がいた世界というのは今いるこの世界からは遠く離れた所にある異なる次元の世界だ。のでこの幻想郷にいる者たちが喰種の事について知識を知るはずがないのだ。しかし、この八意永琳は違う。喰種の事や月山のいた世界でも一般人は絶対知らないような専門的な事まで知り尽くしていたのだ。当然その事について疑問を持つ。だが、月山は意識が戻ったこの二日間この事を聞こうともしなかった。否、それ以前にも聞けたはずだ。何故なら平行世界云々の事を月山が知ったのはあの事件が起きた一日前。博麗神社へ行ったあの日だ。あの帰りにでも里へ寄らずに直接永遠亭へ向かうこともできたし、その次の日にも行こうと思えば行けていたはずだ。なのに月山が永遠亭へ向かうことは無かった。だから永琳は月山に問い詰めた。全ての用を済ませたかのようにこの場を去ろうとする月山に向けて。

 

 そう言われて月山は振り返る。その時の表情はいつも見せる微笑みだった。そのまま彼は静かに口を動かす。

 

「だったら聞くがMs.エーリン。貴女は何故、『博麗神社』行くことを僕に進めたんだい?あそこに行けば否が応でも僕に疑問を持たれることは分かっていたはずだ。」

 

 それは永琳が予想していた月山が自分に聞くべきことではなかった。だが月山習にとってはそれが一番重要で彼女『八意永琳』を信用に値する人物だと結論付けたことでもあった。

 

「それだけで貴女が少なくとも僕にとって害をなす存在ではないことは理解できた。だから僕は貴女が喰種の事について知っている理由を自ら話そうとしない限り貴女の事について何も聞かない 僕の命を救ってくれた恩人である『八意永琳』を僕はとても信用しているから」

 

 そう月山は爽やかな表情で永琳に伝える。この答えは同時に『自分をこの世界に送り込んだ術者』ではないと言ったことになる。当の永琳の方はその返答にびっくりしたのか言葉を出さずに月山のその姿を目を見開きしっかりと捉えていた。しかしすぐに永琳は「クスッ」と笑い先程浮かべていた驚きの表情を崩す。

 

「貴方が私の事そんな風に思っていてくれたなんて意外ね 試薬飲ませたり勝手に半喰種に改造したりしたから少なくとも恨まれているとは思ってたのだけれど」

 

「Why!(何故!)そんな事を思うわけがないだろう!(少し危険な人だとは思ったが…)貴女が僕の恩人ということもあるが、何より貴女みたいな美しい女性を疑い、追及するような真似はあまりしたくないのですよ…(というか女性を追及することに関しては碌な思い出が無いものでね)」

 

「まぁ美しいだなんて嬉しいこと言ってくれるのね 貴方は外見も内面も紳士なのね」

 

「Hahahahaha! I get that a lot.(よく言われるよ)」

 

こういったことを正直に言ってしまうのも月山の紳士的な所なのかもしれない…多分。

 

 

 

 

 

「…私が何故貴方達の事を知っているのかは“まだ”言えない でもそういう貴方だからそれとは別にいいことを教えてあげるわ」

 

「貴方の体の事なんだけど、魔力を貯め込みやすい性質を持ってるって前に説明したわよね 貴方の赫子はRc細胞の干渉を受けやすい それは魔力にも言えたことで貴方の『溜め込む』体質のお陰でいつ貴方の体が壊れてもおかしくない状態なのよ」

 

「だが僕にはこのファンタズムカードがある このカードが僕の体の魔力を吸収するから僕の体が崩壊することは無い そうなのだろう?」

 

「確かにそのカードが肩代わりはしてくれているようだけれどそれは貴方の魔力のみを吸収するわけじゃないわ このカードは空気中に漂っている魔力なども吸い込んでいるはずよ それにどんなものにでも許容量というものがある 時間にはよるけど遅かれ早かれそのカードは貴方の肩代わりは出来なくなるはずよ」

 

「…ということは定期的に君の所に来て処置を受けなければならないということだね」

 

“良いことを教えるとは言ったが聞いたところとても重要なことに思うのだが…”

 

今聞いた話を総合すると「命に関わる状態だから定期的に永遠亭へ来い」ということだ。意地悪な性格をした永琳でも医者としてこのことを伝えないというのは少しおかしい。月山はこの話にまだ何かあるのだと確信した。

 

「そう 時期が来ればそう言おうと思っていたし今回、入院していた時にも言おうと思っていたわ でもそれは必要なくなった…」

 

 

「それはどういう…?」

 

 

 

 

 

 

「その左腕が貴方の体の魔力量を調節してくれていることが分かったの」

 

「…!」

 

 月山は激しく驚愕した。それは感情に言い表すにはとても複雑で曖昧な想いだった。

 

「正しく言えば補填された左半身が身体に悪影響を及ぼす無駄な魔力を代わりに貯め込んでくれてるの 貴方の左半身は貴方の体の構造とは違い魔力による悪影響は受けないし、ちゃんと肩代わりした魔力を体外に適量排出する役割も担ってる」

 

 月山の家系は近親婚を繰り返してきたがためにRC細胞の影響を受けやすく、体内のRC細胞を増やし続ければ身体が壊れてしまう。それは魔力や霊力にも言えたこと。だが、それは月山のような者たちが限定であり、通常の喰種ならRC細胞を増やし続ければ“更なる力”を得ることができる。故に「RC細胞の増加=魔力、霊力の類の増加」は通常の喰種にとっては“身体的には”何の悪影響も与えないのだ。

 この左腕を含めた左半身の殆どはあの偽フランのもの。月山と同じく近親婚を繰り返してきた喰種でない限り、魔力による拒絶反応を起こすことは無い。それに加えこの朱い左半身は月山の溜め込んだ魔力を吸収し、体外へ送り出す循環器の代わりもこなす。

 

 なぜこんなにも月山の体を労わるかのようにこの左半身は動いているのか…それは誰にも説明することは出来ない。言うのなら今から永琳が言おうとしている言葉が相応しい。いや、もしかすると彼女、八意永琳は分かっているのかもしれない。この言葉が全ての答えであり、真実なのだと。

 

 

 

「本当に…固有の意思を持っているとしか思えないわね…」

 

「…。」

 

 月山は俯き暫く無言でいた。頭の中でその言葉の意味を噛み締め、何度も反芻した…自分を生かしてくれた偽フランへの感謝を…。

 

 

 この言葉が偽フランに伝わっているのかは分からない。だが月山は何度も何度も…繰り返し呟くのだ。『ありがとう』と…。

 

 

 

 

 

 

 

『気にすんじゃないわよ そんな事』

 

 

 

「…!」

 

耳から感じた声ではなかった。その声は自身の内にのみ響いている…。

 

 

 

『私はただアンタと一緒に生きたいと思っただけなんだから…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 この声が幻でも…。

 

 彼女から譲り受けたものが都合のいい夢でも…。

 

 僕は信じよう。

 

 彼女は生きている。

 

 今も僕の中で…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最後に1つ…言っておきたいことがあるわ」

 

 話題は次に移っていた。どうやら永琳の言う良い話と言うのはもう一つ用意されていたらしい。

 

「それはあの偽フランのことや貴方をここに呼びつけた者に関しての話よ」

 

 ゴクリ…

 

 彼女の真剣な表情からも伝わってくる。これから話すことの意味。そしてその闇。今、月山はその深淵に足を踏み入れようとしていた。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「…と言うわけで僕の武勇伝は終わりだ。それからは鍛錬を重ねて、、ほら!身体の方もmuscleになったろう!彼女の左半身もよく馴染んだし今の僕はclimaxと言っても過言ではないだろうね!」

 

「へぇ~確かに最初見た時とは打って変わって今のお前は筋肉そのものって感じだな!」

 

 

 

 僕がこの幻想郷に来てから一カ月近くが経っていた。

 

 永遠亭を退院した後、僕はあらゆる方法を使って自身を鍛えた。

 

 痩躯であった肉体に必要十分の筋肉を付けるために全身に負荷を掛け続け、この世界のことを理解するために頭に色んな知識を詰め込んだ。

 

 それに鍛えるに至って紅魔館の皆に手伝ってもらった。

 

 メイリンからは中華拳法の動作。

 

 パチェからは簡単な魔法の使用。

 

 レミィからは吸血鬼の戦い方。

 

 サクヤからは反射神経の強化。

 

 そしてフランからは……

 

 

 

 

「ねえー!!!二人で話してないで早く弾幕ごっこしようよ!!!」

 

「ホントすっかりお前に懐いたな フランのヤツ」

 

「ああ…でも少々、活発過ぎるのは困るなあ さっきまで遊んでいたばかりなのに少し君と話をしただけでこれだ おかげで僕の体が持たないよ…」

 

 

 

 この世界の住人の底知れない力を…。

 

 

 今、僕。月山習は魔法の森の近くにある草原にいる。フランの遊び相手としてレミィにフランと一緒に外出するように仰せつかったのだが、その遊びがまさか『弾幕ごっこ』だったとは思いもしなかった。因みにこれはゲームなので死ぬことはないのだが、やっていることは魔法等を用いた本当の戦闘と変わりないので凄くsomatic (身体的)にもmentalis (精神的)にもハードだ。おそらく紅魔館内で弾幕ごっこを行えば館に甚大な被害を齎すかしれない。それを避けるために僕はレミィにこの場所へ遣されたのだろう。要するにフランは初めから僕と弾幕ごっこをするつもりだったのだ。

 

『完全に罠にはめられた…』

 

 ただただ普通の遊びをしたり、買い物をするだけだったと思っていた僕は急な彼女の本当の要求を断ることもできず弾幕ごっこをすることになった。

 

『怪しいとは思っていたんだ…わざわざ夜に出かける事とかいつもの里に行く方向とは別の方向に行ってる事とか…』

 

 だが過ぎたことを嘆くほど意味のないことはない。僕は決心して“遊び”をすることにした。

 

 

 

「なんかうるせぇと思ったらお前かフラン!」

 

 そしてその弾幕ごっこの最中にやって来たのがこの魔法の森で暮らしている霧雨魔理沙だった。

 僕は一旦フランとの弾幕ごっこを中断し、彼女に謝罪しに行った。その時に彼女からあの事件のことを聞かれ暫く彼女と話をしていたのだ。

 

 

 

 

 

 

「もうこれで三戦目になる…」

 

 月山の眼のハイライトが一瞬消えたような錯覚に襲われる。それほどまでに彼自身がこの状況に疲弊しきっていた。流石に肉体改造した喰種でもこのハードワークは堪える。

 

 そんな時だ。僕の肩に何かが乗ったのは。振り返るとマリサが笑顔で僕の肩に手を置いていた。

 この時、僕は思っていた。彼女が代わりに戦ってくれるのではないか?若しくはこのごっこを何らかの理由で終わらせてくれるのではないかと…だがそんなことは一切なかった。寧ろ状況はさらに悪化した。

 

「私も入れてくれ!三人で弾幕勝負だぜ!」

 

 

 

 ああ…パパン。やはり紳士は女性に優しくなければなりませんよね…それがどのような人物であったとしても…。

 

 

 

 

 

その夜、明け方まで草原からは何度も爆音が聞こえたらしい。

                              七色の人形使いの談

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

 少女は暗闇を一人、孤独に歩んでいた。闇は長く続く上り坂のようで少女の足への疲労を重ねてゆく。しかし少女はその歩みを止めない。自身には伝えなければならないことがあるからだ。

 

 

「はぁ…れ、霊夢…魔理沙に早く会わないと…今、旧都で異変が起こってるって…!」

 

 

 

 

             新たなる運命が幕を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             次章、『地霊殿強襲編』開幕…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回から一章『地霊殿強襲編』の始まりです(その予定)
話は月山さんと魔理沙ペアメインで進んでいく予定です。
早めに投稿できればいいと思っていますが、今回みたいなことになるのかもしれないので過度な期待はよしてくれよな!テヘペロ
また、変な書き方をしていたら感想で言ってください。すぐに修正しますんで!
それではこれからもよろしくお願いします!ナライでした!
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