東方喰種:MM~美食家が幻想入り~   作:ナライ

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何か早めに投稿できました!
fgoの七章クリアと終章攻略、シャドバのランクマに時間を費やしていたと思っていたんですが気が付いたらできていました。
なのでどっかおかしな感じの文があるかもしれません…その時は知らせてくれると嬉しいですw




第十六話 HCYA

 

 

 

「これはスゴイ!さっきまでの飛行とは別次元の世界だ!!」

 

 

 

 

 

 魔理沙の背後にいる月山は五感を通じてその飛行中の世界を堪能する。この間欠泉地下センターに来るまでに感じていたものはあくまで観光用の速度。今、彼が体験しているのは魔理沙が扱うことができる全速力の飛行だ。

 

 

 

 

 

「シュウ!喜ぶのは良いけど酔うのは勘弁してくれよ!今日ちょっと調子が悪いのか変な飛行になってるけど、酔いを介抱する時間なんて私たちには残されてないんだからな!」

 

 

 

 

 

「ああ!分かっている!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 今、二人がいるのは間欠泉地下センターの中枢に存在する核融合炉が設置された縦穴内。二人の眼の先には遥か底の方で途轍もない熱気を放つ光源がある。それが核融合炉。この施設の研究対象であり、ここのシステムの動力源でもある。

 

 

 

 

 

「確か核融合は非常に高い温度を必要とするらしいがその温度をものともしないこのponchoは素晴らしい!着用部分が胴までなのにまったくと言っていいほど全身に熱気を感じない」

 

 

 

 

 

「多分耐熱の呪文か何かをかけてんだろうな そんでこの布はその能力を強くさせてて着たら体全体を保護してくれるんだろうぜ んでもあの核融合炉の側まで行ったら耐えられないだろうな」

 

 

 

 

 

 そう言われ月山はもう一度底の方に見える形容するなら太陽のような光源体を見る。見ているだけでも全身が蒸発するのではないかと錯覚してしまう程その圧倒的高熱を感じていない今の状態の月山にすらそう思わせる何かがその核融合炉から発せられていた。

 

 

 

 

 

「ところで目的地である旧地獄への入り口は?」

 

 

 

 

 

 そう月山が告げると魔理沙は「あそこだ」と言い指を指す。魔理沙が指を指す方向を見ると遠方にあるが縦穴の壁の側面に大きな穴が見える。施設から階段もそこで終わっている。

 

 

 

 

 

「高さで言やぁこの縦穴の大体真ん中の位置だ そんでこのままあそこに突っ込む」

 

 

 

 

 

 突然だが何故月山がこのタイミングで目的地の事を聞いたのか分かるだろうか?実は彼はある異変に気が付き魔理沙にこのことを聞いたのだ。前回の話を見た者ならおそらく既に察しが付いているだろう。

 

 

 

 

 

 月山はその謎の真相を今からゆっくりと牛歩の如く魔理沙に語ってゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでマリサ 君は火の魔法を使えるのかい?」

 

 

 

 

 

「ん?そりゃ八卦炉使えば出せるぜ 主に使えんのはレーザーみたいな光の魔法と星の魔法くらいだ あ!でも火炎瓶を投げつける弾幕なら持ってるぜ でもそれがどうかしたのか?」

 

 

 

 

 

 そう言葉を返した魔理沙が後ろを振り返ると重々しい表情をした月山の姿が目に映った。そして石のように固まった口を開き、遂に異変の真相を告げた。

 

 

 

 

 

「いや…今気づいたんだがね…箒のブラシ部分がね…派手に炎上しているんだよ…」

 

 

 

 

 

「へぇ!?」

 

 

 

 

 

 メラメラメラメラ…

 

 

 

 

 

 そう言われ月山の背の向こうを魔理沙が急いで見ると、黒煙と共に真っ赤に燃える箒が目に映る。

 

 

 

 

 

「に、にとりのヤツ…箒の分忘れてやがったなぁぁあああ!!!!」

 

 

 

 

 

「僕はてっきり君がロケットエンジンの如く炎を噴射しているのかと!」

 

 

 

 

 

「いやいや!!どう見てもコレは燃えてんだろ!!煙すっげぇ出てるもん!竹めっちゃ燃えてるもん!何かさっきから不規則な動きするなと思ったらこういうことだったんかい!」

 

 

 

 

 

 衝撃の事実に思わず頭をかかえる魔理沙と冷静になろうとするが思考が纏まらない月山というまるでパニックに陥っているコメディ映画のワンシーンを彷彿させるような二人の画がそこにはあった。

 

 

 

 

 

「気づかなかった僕らにも責任はあるが、どうするんだい!このsituation(状況)!!」

 

 

 

 

 

「チィッ! 仕方ないぜ余分に魔力使うけどレーザー噴出させて一気にあの穴まで移動するのぜ!!」

 

 

 

 

 

 魔理沙は箒のブラシ内部に組み込んであるミニ八卦炉から光の魔力を放出することによって短時間で目的地に着かせると言い切る。だがカッコよく言い切った割にはおかしな言葉が混じっている。

 

 

 

 

 

「Oh! それでこの現状を改善できるんだね!」

 

 

 

 

 

 しかしそんな間違いも気にならなかったのか、その言葉で月山の表情はパッと明るくなる。

 

 

 

 

 

「いや…炎上する手助けになって早い段階で箒が燃え尽きるかもしれない…」

 

 

 

 

 

「…」ポカーン( ゚д゚)

 

 

 

 

 

 しかしその返答を受け、一変。月山の表情はまるで彫刻のように固まり、目は明後日の方向を見つめている。

 

 

 

 

 

「何もしないでいるよりかはマシだろ!このまま放置してたら絶対に着く前に燃え尽きちまうから!」

 

 

 

 

 

「分かった…ゴクリ 君の考えに乗ろう」

 

 

 

 

 

 月山は生唾を飲み込み覚悟を決める。死を渇望している彼だが何も成し得ずにこのままぽっくり逝ってしまうのは流石に御免被る事だった。

 

 

 

 

 

「まぁ、乗る以外に選択肢は残されてないんだけどな そんじゃ覚悟しとけよ!行くぜェッ!!」

 

 

 

 

 

「Ou、iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiィィィイイイ!!!!」

 

 

 

 

 

 ビュゥゥゥゥゥウウウウンン!!!!

 

 

 

 

 

 了承の言葉を発した時にはもう全身で体感するものすべてが変わった。たった一言の言葉が今、体感している世界について行けずに叫びに変容する。初めは喜んでいた月山でも魔理沙の全速力のスピードには恐怖を感じた。

 

 

 

 

 

「うぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 

 

 

 

 魔理沙も叫ぶ。バカげた状況ではあるが今の二人の生死を分ける状況には違いなかった。そのために彼女も必死になる。

 

 

 

 

 

 だが、生死のジャッジは思ったよりも早くに訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ビュゥゥゥゥウウウウウウウウッ、、、、、、、、ボフッ、、、ボン…!

 

 

 

 

 

「「あ。」」

 

 

 

 

 

 両者察する。月山の後方から嫌な音が鳴る。月山は何がそんな音を出しているのかは分からなかったが魔理沙は理解していた。

 

 

 

 

 

 “ブラシ部分に内蔵していたミニ八卦炉が壊れる音。”

 

 

 

 

 

 それはレーザー放出の力が潰えるのと同時に箒のブラシ部分が焼失したという事。

 

 

 

 

 

 つまり正常な操縦ができなくなってしまうことなのだ。

 

 

 

 

 

 レーザー噴射してから1分も経っていなかった。

 

 

 

 

 

 月山だけは何の音なのかは分からなかったがこれから起きる事だけは分かっていた。

 

 

 

 

 

 遂に柄だけになってしまった箒はさらに不規則な動きになる、だがレーザによる推進力の加算でスピードは落ちない。

 

 

 

 

 

「お、落ちるぅぅぅううう!!!」

 

 

 

 

 

 魔理沙が叫ぶ。正に絶望的状況。どうすることもできない。

 

 

 

 

 

「マ、マリサ!君だけでも浮遊して逃れてくれ!」

 

 

 

 

 

 魔理沙は箒を浮遊移動のアイテムとして愛用しているだけで実は生身で浮遊移動することができる。実際、弾幕ごっこをする時などは生身で浮遊しながら戦ったりしている。

 

 

 月山はそれを既知していたのでマリサにそう提案する。

 

 

 

 

 

「いや!無理だ!こんな回転しながら落ちてたら私の三半規管が…うっぷ…!」

 

 

 

 

 

 そう言ってマリサは口元を押さえる。どうやら「酔うな」と言っていた本人の方が完全にこの激しい動きに酔ってしまったらしい。

 

 

 この状態では飛ぶことも(まま)ならないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “O、OMG(オーマイガー)ィ(ま、まずい)…”

 

 

 

 

 

 瞬間、月山は心中で呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 緋に燃ゆる猛火の底に二人の影は着実に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☽

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…クッ」

 

 

 

 

 

 地霊殿の主である古明地さとりは絶望していた。突如としてこの地霊殿に出現した災厄を眼前に映し、膝を折り、唇を噛む。

 

 

 地霊殿自慢の壮麗な庭園は血の赤で覆われ、放し飼いしていたペット達も無残な姿と化していた。

 

 

 

 

 

「さとり様大丈夫ですか!?」

 

 

 

 

 

 そこに赤髪の少女がさとりを心配して近寄った。

 

 

 

 

 

「…お燐 私は大丈夫よ それよりどれくらい被害出た?」

 

 

 

 

 

「…おおよそですが、大半は…」

 

 

 

 

 

 重々しく、言いたくなさそうにしていたがゆっくりとそしてはっきりとお燐と呼ばれた赤髪の少女は残酷な現実をさとりに告げた。

 

 

 

 

 

「…そう」

 

 

 

 

 

 それを聞いてさとりは一度離した唇を再度噛む。先程よりも強い力で。

 

 

 

 

 

「あれは一体…怨霊の質に似ているのにそんな脆弱な存在とはまるで違う」

 

 

 

 

 

「そうね強いて言うならああいうのを本物の『化け物』って言うんじゃないから...」

 

 

 

 

 

「何としてもお空が来るまで持ちこたえないと…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァーーー…アピャピャパヤピャピャピャアアアアアアwwwww!!!!」

 

 

 

 

 

 ゴギッ!グシャベチャベチャ…!

 

 

 

 

 

 右手には犬の頭部、左手にはその首から胴体部分までが握られていた。よく見ればその周辺は血だまりが湖のように広がっており、その中に夥しい量の様々な動物の肉片が浮かんでいる。

 

 

 中央に佇むは白髪の巨漢。但し顔と右腕全体に紅い鱗のようなナニカが取り巻いているため本人の特徴を示す顔を確認することができない。

 

 

 

 

 

「…反抗するから少しは楽しめたがすぐ壊れちまって長くは楽しめねぇなァー」

 

 

 

 

 

「やっぱ人の形してるヤツを弄るのが一番だわ」ギロッ!

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

 

 

 

 

 目線をいきなりさとり達の元に男は向ける。その目は血走っており、息は荒く、これから起こる事への悪い兆候を示していた。

 

 

 

 

 

「ん~そうだ♪お前こいつらの飼い主だったよな??」

 

 

 

 

 

 そうさとりに言い放った男は両手に握ってあった犬であったものを捨て去り、血の海に転がっていた二つの命をその両手に掴んだ。

 

 

 

 

 

「んじゃ、この喋る犬と喋る鳥、どっちを助けたい??」

 

 

 

 

 

 右手には大型犬が左手には大型の鳥が首根っこを掴まれていた。よく見るとその二匹はどちらも絶滅危惧種に認定されている種類の動物であった。この地霊殿には一般的に見られる動物の他に外の世界ではほとんど見られないような貴重な動物も存在している。

 

 

 それにさとりとさとりのペットたちは強い絆で結ばれている。だからさとりはこの質問の解を求めることは出来ない。

 

 

 

 

 

「そんなの選べるわけ…!」

 

 

 

 

 

 ダンッ!!

 

 

 

 

 

 さとりがそう言った瞬間、地響きと共に強烈な音が響く。それは眼前の化け物が地団駄を踏んだ音であった。

 

 

 

 

 

「そういうの聞いてんじゃねぇんだよ!!拒否権なんてお前にあるわけないだろぉ!!」

 

 

 

 

 

 グググッ…!

 

 

 

 

 

 案の定、男は憤慨していた。その影響か掴んでいた腕の力が強くなり裁定にかけられている二匹がひどく苦しんでいる。

 

 

 

 

 

「や、やめて!」

 

 

 

 

 

 思わずお燐が静止の声を上げる。その声で冷静さを取り戻したのか男は腕にかけていた力を緩め、不敵な笑みを浮かべながらゆっくりとこう告げた。

 

 

 

 

 

「お前はどっちを救いたいか正直に言えばいいんだよ…それとも」

 

 

 

 

 

「『どっちを殺す?』って言い方に変えようか?」

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

 その時、さとりとお燐の二人は理解した。目の前にいるこの男は私たちが苦しむのを心から楽しんでいる。他人を気付けることにアレは悦を感じているのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――― え ら べ ぇ ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 新しいおもちゃを貰った子供のように化け物は興奮を抑えきれないといった感じの表情をしていた。そしてその表情に二人とも戦慄する。

 

 

 

 

 

「このまま選ばなかったら両方殺すんだぞ?どっちかに絞った方が得策だとは思わないかぁ?」

 

 

 

 

 

 そう言って男は二人に見えやすいように否、二匹の苦しむ表情を見せびらかすように掴んでいる両手を上げる。

 

 

 

 

 

「や、やめろぉぉぉぉおおおお!!」

 

 

 

 

 

 それに耐えられなかったお燐が男の方へ駆け出す。

 

 

 

 

 

「ダメッ!お燐!」

 

 

 

 

 

 さとりはお燐を制止するが感情の赴くままに駆け出した彼女を止めることは出来ない。

 

 

 

 

 

「てめぇはすっこんでやがれッ!!」ドガッ!!

 

 

 

 

 

「きゃぁ…!」

 

 

 

 

 

 男はそう言って向って来たお燐を殴りつける。お燐はその衝撃に耐えきれずに真下にある血だまりに倒れる。

 

 

 

 

 

「ああ…もうめんどくせ よし、この猫野郎も加えてまとめて合い挽き肉にしてやる」

 

 

 

 

 

「えっ!?」

 

 

 

 

 

 いきなりの男の決定にさとりは驚愕の声を上げる。

 

 

 

 

 

「そこで見てろよ無能なご主人様 アンタが選択しなかったから両方が殺されて関係のなかったコイツまで俺の手によって殺されるんだからなァ!!!」

 

 

 

 

 

「や、やめてよ!殺すなら私を殺しなさいよ!」

 

 

 

 

 

「心配すんな、お前の方も後で可愛がってやるから でも先にこいつらの断末魔とお前の苦心に塗れた表情を見せてもらおうかァ!!」

 

 

 

 

 

 そう言い、男が右手に巻き付いていた鱗のような触手を掴んでいる二匹と倒れているお燐に伸ばす。

 

 

 

 

 

「ンッフ さぁ お前らのイロンナものを俺に見せてくれェェェえええwwwww!!!」

 

 

 

 

 

「やめてぇぇぇぇぇええええええええええ!!!!」

 

 

 

 

 

 触手を向けられた者の命の灯が今、消える―――そう思われた時だった。

 

 

 

 

 

 刹那の間、一陣の風が吹く。

 

 

 

 

 

「手ぇ離しやがれブサメン…」

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドガァァァァアアアアン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 轟音が鳴り響くと共に白煙に包まれる中、いつの間にやら男が立っていた場所には違う人物が立っていた。

 

 

 

 

 

「ほら早くここから離れろよ」

 

 

 

 

 

 そう言ってその人物は先程男が握っていた二匹を掴んでいた手から離し、床に下ろす。離された二匹は安堵と感謝を心に思ったかの如く、彼女の顔を見つめ即座にさとりの元に向う。

 

 

 

 

 

「あとコイツもだ」ポイッ

 

 

 

 

 

 その人物は目の前に倒れていたお燐を拾い上げ、そのままさとりの方へ投げつけた。

 

 

 

 

 

「貴方は…星熊遊戯(ほしぐまゆうぎ)

 

 

 

 

 

 その人物の正体は旧都最強の鬼、星熊遊戯であった。さとりに声をかけられそちらに勇儀は振り向く。その顔は何やら軽く軽蔑の念が混じったような表情をしていた。

 

 

 

 

 

「あんたらみたいな偉そうにしてるヤツは気に食わないと常日頃から思ってるんだが今回は別だ なんせ旧地獄の危機なんだからな」

 

 

 

 

 

 どうやら勇儀自身がさとりに対して快い印象を持っていないための表情であった。だがそう嫌味にも聞こえることを言われるさとりの方はむしろ感謝と申し訳なさそうな表情をする。その彼女に対してどこからか声が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

「…貸しをつくったとは思わないでほしい コイツはそういうのを嫌っている それでも思う所があるのならこちらにも貸しならある お前たちは旧都の妖怪たちの避難や旧都にいた人間たちを博麗神社に繫がる道までの案内をする時間を稼いでくれた この者たちの犠牲によってな」

 

 

 

 

 

 声の聞こえる方を確認すると勇儀の肩に金髪の少女がおぶさっていた。彼女の名は『水橋(みずはし)パルスィ』。彼女も勇儀と同じく旧都に住んでいる妖怪の一人であった。

 

 

 

 

 

「おい、パルスィ もう着いたんだからいい加減私から離れろよ」

 

 

 

 

 

 勇儀はずっと自分におぶさっているパルスィに降りてもらうように言った。

 

 

 

 

 

「ああ、すまない お前の怪力と妙な好感度上げに嫉妬してたら地面に降りるのを忘れていた…」

 

 

 

 

 

 そう言いパルスィは勇儀の願いを受け、軽く地面に着地する。

 

 

 

 

 

「嫉妬するのは勝手だが変な嫌味のように言うのは止めろ」

 

 

 

 

 

「嫌味なわけないだろ?これでもお前の事を褒めているんだけど」

 

 

 

 

 

「はいーはい 分かりました分かりました ありがとうごぜーまーすー」スッ…

 

 

 

 

 

 そう言って勇儀はパルスィの言葉を聞き流すよう返答し、目線をある方向に向ける。

 

 

 

 

 

「何時まで私たちに痴話喧嘩コントやらす気だ さっさと起きやがれ木偶の坊」

 

 

 

 

 

 目線を向けた方向にあるのは壁に減り込み埋もれる紅い触手を持つ男の姿があった。それに向け勇儀は上記の言葉を言った後に中指を立て男を挑発した。

 

 

 

 

 

「あ″あ″ァァァァァァァぁああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアaaaaaaaaaaaaaaaaaaaahhhhhhhhh!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 ドガッ!ガラガラガラガラガラガラ….ゴシャッ!!!!!!

 

 

 

 

 

  それに反応してか男は激しい慟哭を響かせ触手を暴走させる。暴走した触手の影響からか辺りの壁や庭の設置物がバラバラになり瓦礫と化してゆく。

 

 

 

 

 

「ホントに化け物だな」

 

 

 

 

 

「私には派手な触手持ってるだけで対して強くは見えないがな…どういうわけだ?お前くらいの実力がありゃあ苦戦ならまだしもこうも一方的にやられるなんて」

 

 

 

 

 

 さとりはこの地底では誰も逆らえない(こいし談)ほどの存在であり、それに見合う程の力を持っている。だから勇儀は彼女にそう質問した。

 

 

 

 

 

「アイツの心は読むことができないのよ 心を読もうとすると悲鳴みたいな声が頭に鳴り響いて聞けたものじゃないわ」

 

 

 

 

 

 さとりが保有する能力は『心を読む程度の能力』。その名の通り相手の心が読める能力だ。彼女は胸にある第三の眼を使うことにより相手の表層意識を読み取ることで行動の先読みをすることができる。しかし、彼女曰く彼の化け物の表層意識は読み取ることができないらしい。

 

 

 

 

 

「その感じだとお前自慢のトラウマ模倣弾幕も通用しないみたいだな」

 

 

 

 

 

 勇儀が言う『トラウマ』『模倣』弾幕というのは彼女が扱うスペル『想起』を示す弾幕の事だ。

 

 

 それぞれ説明をするとまず『トラウマ』というのは彼女の扱う能力 想起「テリブルスーヴニール」ことだ。この能力には催眠効果があり、その効果で相手のトラウマを思い起こさせることができる。そして『模倣』は『トラウマ』で説明した能力を応用して相手が過去に体験した弾幕の再現を可能にすることだ。彼女は今まで戦ってきた者の記憶から弾幕をコピーしており自身の弾幕として扱い保持している。

 

 

 だが『トラウマ』の方は心を読むことができないのでこの時点で意味を成さないことが分かる。そして『模倣』による猛者たちの弾幕も…

 

 

 

 

 

「…ええヤツの耐久力と再生力の前には私の贋作の弾幕は赤子同然だった おそらくヤツと戦っている間は弾幕の威力が弱まっている気がする それに使うたびアイツが強くなってる感じもするわ…力も耐久力も再生力も魔力を行使する度上がってると思う」

 

 

 

 

 

「保有魔力を減少させる類の能力を持っているのか…」

 

 

 

 

 

 さとりが得てきた模倣弾幕もあの男には通用しないと彼女自身の口から告白された。パルスィはそれを聞いて冷静に相手の分析をする。

 

 

 

 

 

「紛い物だがあの萃香の弾幕すら効かないか…」

 

 

 

 

 

「ヤツの前では大抵の魔力での攻撃は全部無駄になる ヤツを倒すなら相当高威力の攻撃を与えないとダメね…」

 

 

 

 

 

 あの男には魔力を介する攻撃はほとんど通用しない。この事実は最悪を意味する。この幻想郷に置いて魔力は力の象徴でそれ以上の力を発現することはまずできない。事実、あの男を止められるものはこの幻想郷にはほぼ存在しないと言っても過言ではないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこの角生やしたアマァ!!てめぇどっから現れた!!」

 

 

 

 

 

 男は会話をしている三人に向け、そう叫ぶ。但しその声の対象は勇儀のみに向けられたものであった。

 

 

 

 

 

「ん?ああ、そりゃあの丘から跳んで…ってあれ?こっからじゃ全然見えねえな」

 

 

 

 

 

 そう言って勇儀は後方の方を指差すが見えるのは地底の闇だけで丘なんてものは何処にも確認できない。

 

 

 

 

 

「あ″あ″?てめぇ何言って…」

 

 

 

 

 

 男は勇儀の言っていることが理解できていなかった。もし彼女が言う通りに丘から跳んできたというのならこの屋敷の屋根を越えることになる。そんな常識を外れた跳躍力をこんな女が持っているはずがないと男は思ったのだ。

 

 

 

 

 

 だがここは幻想が現実になる世界。彼が思っている常識は通用しない。

 

 

 

 

 

「おい、さとり つまり弾幕以外でアイツとやり合ったらいいんだろ?」

 

 

 

 

 

 ドンッ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう言った勇儀の姿はいつの間にか消えており、残ったのは勇儀の立っていた場所に出来た小規模のクレーターと鈍い音だけだった。

 

 

 

 

 

 ドギャッ!!ボォォォオオオオオオン!!!

 

 

 

 

 

 瞬間、男のいた方から激しい轟音が鳴る。次第にその音は違う方向から聞こえてくる。音が移動していた。

 

 

 

 

 

 そうそれは男が勇儀に蹴りを喰らって吹っ飛んでいく音であった。

 

 

 

 

 

「それならで自力(ステゴロ)十分だろ コイツにはな」

 

 

 

 

 

 彼女は鬼。鬼は人間ですら太刀打ちできない超常の存在。その存在はまるで自然現象。人の手ではどうすることもできない定められた運命そのもの。

 

 

 

 

 

 そう、彼女にはこの世界の『常識』ですら通用しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サポート必要ないかー?」

 

 

 

 

 

 勇儀の方に向けパルスィが勇儀に聞こえるようにそう呼びかける。

 

 

 

 

 

「大丈夫だー!そいつら連れてすぐこっから離れてろ てか単体相手なんだからお前の能力活かせねぇだろ それに…」

 

 

 

 

 

「お前使ったら()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 そう言った勇儀の表情が変わる。それは一体一の戦いの邪魔して欲しくないという思いと本当に言ったとおりになってしまうという事を伝えさせる。

 

 

 

 

 

 その表情を見たパルスィはその思いを汲み取り返答する。

 

 

 

 

 

「分かった まあ楽しめるだけ楽しんでこいよ」

 

 

 

 

 

 返答したパルスィはさとりに「立てるか?」と確認を取り、生存している者たちを引き連れこの地霊殿を後にしていく。

 

 

 

 

 

 勇儀とパルスィの間には別れの言葉などはいらないようだった。

 

 

 

 

 

「さぁて邪魔者はいなくなったしそろそろ始めないか?バケモンさんよ」

 

 

 

 

 

 勇儀はそう言い目線を吹き飛んだ男の方にへと向ける。

 

 

 

 

 

「フフッ….ハハハハハハハhh!!!まさか二度も蹴りを喰らうとはァ…よぉく分かったよ女ァ!君は確かに強い!名前、何て言うの?」

 

 

 

 

 

「星熊遊戯だ アンタは?」

 

 

 

 

 

「僕の名前?そうだなぁ…ここはやっぱり()()()()()と名乗っておこうか」

 

 

 

 

 

「何だそりゃ?本名じゃねえのか?」

 

 

 

 

 

 ジェイソンと名乗る男が含みのある言い方をしたので勇儀は疑問に思ったことをそのまま口にした。

 

 

 

 

 

「いいやこれは名前さ 今の僕を表す強さの象徴そのものと言ってもいい」

 

 

 

 

 

 “つまり、本名じゃないってわけね”

 

 

 

 

 

 そんな男の言い分を聞いても本名ではないことが分かったので勇儀は少し呆れながら心の中でそう呟く。

 

 

 

 

 

「ふふっ でも良かったのかな?本当にお友達を行かせちゃって~」

 

 

 

 

 

 ジェイソンの言う通り、普通に考えれば彼と対峙するのに一対一で戦うことは余りにも無謀なことである。だが勇儀は違う彼女は常識などという物差しでは測れない存在だからだ。

 

 

 

 

 

「いいんだよ 私はアンタと一対一(タイマン)したくてここに来たんだ あいつらがいちゃ折角の楽しい戦いがつまんなくなっちまう それに私だけで十分だしな」

 

 

 

 

 

 その言葉を聞いてジェイソンは思った。今、目の前にいるこの星熊遊戯という女が嘘偽りを言っていないことを。それは先程彼がもろに喰らってしまった二度の蹴りからでも分かったことだ。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 ジェイソンは改めて彼女を敵として認識した。

 

 

 

 

 

「…君みたいな強気で好戦的な奴は好きだよ」

 

 

 

 

 

「ふぅーんてことはアンタも()()なのかな?」

 

 

 

 

 

 勇儀はジェイソンの言い方から自分と同じ戦いを楽しんでいる者なのかと彼に問いかける。が、彼女自身彼がそれだけでこんな事をしているとは本気で思ってはいなかった。

 

 

 そして予想通り。否、予想以上の答えがジェイソンから返ってくる。

 

 

 

 

 

「いや、僕は戦いを楽しんでいるわけじゃない ()()()()()()()()()ただそれだけさ 戦いはその快楽を得られる過程にしか過ぎない」

 

 

 

 

 

 そう言ったジェイソンの顔には不敵な笑みが浮かんでおり、まるで何かに取りつかれたかのように涎を垂らしながら語りだした。

 

 

 

 

 

「夥しい量の肉塊。鮮血の赤。喉が裂けんばかりの断末魔。崩れゆく精神…etc 

 

 

 それら全てを五感で一つも残さずに平らげる…こんな愉悦、戦いの中でしか得られない!特にィ~君みたいに脆くなさそうな玩具に出会うのはねぇ!!」

 

 

 

 

 

「…アンタ…イカレてんなぁ」

 

 

 

 

 

 その発言にマジ引きする勇儀。しかしジェイソンはそんなのお構いなしに笑みを浮かべたまま自論を展開する。

 

 

 

 

 

「ふふっ 僕にとっては当然の感情さ 子供が買ってもらったばかりの玩具をはしゃぎながら遊ぶように僕も戦いの中で得られた人間(おもちゃ)で思う存分遊びたいだけさ!」

 

 

 

 

 

 正にどす黒い悪。常人の倫理観とは明らかにズレたその恐ろしい望みに勇儀は吐き気を催すような感覚を得た。勇儀は嫌悪感と軽蔑を表情に浮かべ、右の掌を動かしジェイソンを挑発するようにこう言った。

 

 

 

 

 

「だったら今度はお前から来いよジェイソン 私を玩具にしてみな」

 

 

 

 

 

 その発言にジェイソンは嬉々しながら「始めるか…」と小さな声で言う。次の瞬間、ジェイソンと勇儀の間に空いた空間は無くなる。ジェイソンの常軌を逸した脚力により一瞬で勇儀のいる方向に移動したのだ。だが勇儀の方もその動きについて行く。彼女も先程ジェイソンの方まで移動したときのように地面を蹴り上げ移動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に君は良い拷問対象(おもちゃ)になりそうだ!」

 

 

 

 

 

「アンタも私の良い戦闘対象(おもちゃ)になりそうだぜぇ!」

 

 

 

 

 

 ドォォンッ!!

 

 

 

 

 

 二人はちょうど先程それぞれがいた場所から丁度真ん中の位置で対峙する。二人の右の拳がぶつかり合うことで激しい轟音と衝撃波が館中に広がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 今、地底の…幻想郷の運命をかけた大勝負が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☽

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワァァァアアアアアアアア!!!」

 

 

 

 

 

 現在、箒(だったもの)と共に絶賛落下中の魔理沙(酔い)と月山。このままでは穴底に激突死する前に着ているポンチョが熱に耐えられなくなり全身が燃え尽きてしまうだろう。

 

 

 

 

 

 “くっ…何とかしなければ…!”

 

 

 

 

 

 月山はこの危機的状況を打開する方法を模索する。そして月山は縦穴の周りに広がる壁に目を見やる。

 

 

 

 

 

 “壁に僕の赫子を突き刺せば階段の方に移動することができる…さらにタイミングを合わすことができれば一気に旧地獄の入り口にまで行くことも可能だ”

 

 

 

 

 

 だが不安要素はある。それは月山がいる位置から壁までの距離だ。その距離は月山が赫子を全力で伸ばしたとしても届くか届かないかというものだった。先程の魔理沙によるレーザー噴射での移動で中央部にいた時よりは壁に近い位置にはいるが、それでも赫子を壁に突き刺すには厳しい距離だった。

 

 

 

 

 

 “突き刺して移動するだけの時間なら僕の赫子は燃え尽きることは無いだろうが、果たして届くのか?いや、考えている場合じゃない!やるしかない!”

 

 

 

 

 

 そう決意し、月山はまだ酔っている魔理沙を「失礼」と言い抱きかかえ右手を狙いすます壁の方に向ける。

 

 

 

 

 

「マリサ!一か八かだが壁に僕の赫子を突き刺してあの入り口に移動してみようと思う このままじっとしていてくれ」

 

 

 

 

 

 グッ…!

 

 

 

 

 

 酔って言葉を発せないのだろう。魔理沙は月山に向け了承のグーサインだけをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “入り口にdirectに行くタイミングは………今だ!”

 

 

 

 

 

「行っけぇェェェええええええええええええ!!」

 

 

 

 

 

 ズズズズズズズズズズゥゥゥゥゥウウウウウウウ!!

 

 

 

 

 

 雄叫びを上げる月山の右肩から彼の赫子が放出される。赫子は勢い良く真っ直ぐに壁に向って直進する。

 

 

 

 

 

 “よし!このペースなら届く…!”

 

 

 

 

 

 ザクッ!

 

 

 

 

 

 月山はそう確信し、歓喜する。実際、予想通りに赫子は壁に突き刺さった。あとはこのままターザンの蔦渡りの如く真下にある入り口に直接行けば良いだけ…だが現実は月山たちには残酷であった。

 

 

 

 

 

 ガラッ…ボコッ!

 

 

 

 

 

「Why!(どうして!)」

 

 

 

 

 

 思わず月山は声を上げる。それもそのはず何と赫子を突き刺した壁が突如崩れたのだ。おそらく二人の体重に耐えられなかったのだろう。二人はそのまま入り口の方に行くことは無く落下していく。

 

 

 

 

 

 “ここまでなのか…”

 

 

 

 

 

 月山は心中でそう呟く。壁に突き刺さっていた赫子は役目を終えるかのように消失する。二人に待っているのは絶対的な死。それを理解してしまったが故の呟きであった。

 

 

 

 

 

「ふふっ…」

 

 

 

 

 

 突如、月山の耳に笑い声が聞こえてきた。それは魔理沙が発したものだった。

 

 

 

 

 

 月山は当初、彼女の笑いはこの死を迎えるしかない現状に絶望したために発せられたのだと思った。だが彼はすぐにそんな考えを改める。

 

 

 何故なら霧雨魔理沙という人物が簡単に諦めるということをするとは思えなかったからだ。月山が知る彼女とは何事にも全力を尽くし逆境を覆すそんな少年漫画の主人公のような存在。

 

 

 だから月山はぼんやりにだが気が付いた。この彼女の笑みの意味を。

 

 

 

 

 

「てっきりもう地霊殿の方に行ってると思ったんだがな 下見てみろよシュウ 助かるみたいだぜ」

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 そう言われて月山は下方に目線を向ける。

 

 

 

 

 

 “目に映るのは核融合炉の燃ゆる橙色だけ…いや!何かが見える。こちらに近づいてきている!アレは…!”

 

 

 

 

 

「く、Crow(カラス)!?」

 

 

 

 

 

 月山の目に映ったのは黒い飛行物体。こちらに向って来るのが確認できる。月山はそれを見た瞬間、即座にカラスを連想したが、よく見るとそれは黒い翼を持った少女だった。

 

 

 

 

 

「おーい!さっさと助けてくれー!地獄烏!ちんたらしてんじゃねーぞ!」

 

 

 

 

 

 魔理沙はそう大声で言い、黒翼を携える少女に救助の催促をする。

 

 

 

 

 

「おいおい…それが人にものを頼む態度なのか?」

 

 

 

 

 

 バサッ…!ボォォォオオ!!!

 

 

 

 

 

 黒翼の少女は呆れながらもその翼をはためかせ更に加速する。

 

 

 

 

 

『!?』

 

 

 

 

 

 月山は驚愕する。気付けば落下していた自身の体が何かに引っ張られて上昇していたのだ。

 

 

 そのまま月山は後ろを振り返る。見ると黒翼の少女が月山の着ている服の後襟を掴んでいたのだ。

 

 

 

 

 

 そのまま上昇しながら黒翼の少女は旧地獄の入り口まで飛び、掴んだ二人と共にそこに降りた。

 

 

 

 

 

 ドサッ!ドサッ!  トトンッ…

 

 

 

 

 

「うぎゃ!」「Oh!」

 

 

 

 

 

 だが、先に二人は降ろされた。というか投げ捨てられた。二人とも思いっきり体を地面にぶつける。黒翼の少女は二人が体を地面にぶつけた後にゆっくりと降り、地面に足を付けた。

 

 

 

 

 

「痛ぅ…もっと優しく下ろせよ!って言いたいところだがマジ助かったぜ(うつほ)…うっぷ!」

 

 

 

 

 

 魔理沙は黒翼の少女、『(うつほ)』に感謝の言葉を口にするがまだ酔いが醒めていないのか気分を悪そうにしている。

 

 

 

 

 

「上から連絡が来てね ん、そこの男 これに出てみてよ」

 

 

 

 

 

 空はそう言い月山に電話機のようなものを手渡す。

 

 

 

 

 

「ん?あ、ああ…excuse me」

 

 

 

 

 

 月山はそれを受け取り、右耳に近づけ応答を願う言葉を発する。電話機からは聞き覚えのある少女の声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

「シュウか?良かった間に合ったみたいだな」

 

 

 

 

 

「おお、にとり!」

 

 

 

 

 

 声の主は上の施設にいるにとりであった。どうやら月山たちを助けてくれたこの少女をここにへと遣したのはにとりであったらしい。にとりは続けざまにこの黒翼の少女『空』についての説明を簡潔に答える。

 

 

 

 

 

「そこにいる烏女は霊烏路空(れいうじうつほ)って言ってな お前たちがこれから行く地霊殿に住んでる従者だ 既にここから出て地霊殿の方へ向かっていると思ったんだがこいしちゃんのあの姿を見たらもしかしてと思ってね」

 

 

 

 

 

「ん?その言い方じゃ彼女は元からここにいるという風な口ぶりだけど」

 

 

 

 

 

「そうだけど そいつは底の核融合炉のシステムを一挙に担っている制御烏だからな」

 

 

 

 

 

「N!?」

 

 

 

 

 

 月山が驚愕すると同時にその頭からプシューっと機械がショートする音が聞こえる様に彼の思考はこの発言を理解できない。実際、それが事実だとするならあの太陽の如き灼熱の中に彼女は居続けたということになる。それにあの強大なエネルギーを制御する力をたった一人が持ち得るものなのか?

 

 

 いくらこの幻想郷が非常識が蔓延っている世界だということを理解している月山にとってもこれだけは安易に信じることができなかった。

 

 

 

 

 

「ま、恐れ多くも神様の力を持ったヤツだからな そいつがいれば今回の異変も速攻で解決できる」

 

 

 

 

 

「何もかもover過ぎて僕の思考能力では追いつかないよ…」

 

 

 

 

 

 月山自身、まだこの幻想郷にいる神には会ったことがない。いずれ彼は出会うだろうが今回のようなことで思考がショートするのなら神との邂逅の時にはそれ以上のリアクションを期待することができるだろう。

 

 

 

 

 

「ま、そいつ馬鹿で扱いやすいから有効的に使って楽して異変解決に勤しんでくれたまえ そんじゃ!」

 

 

 

 

 

 プツッ…ツーツー

 

 

 

 

 

 最後にとんでもない事を言い残し、にとりは月山との通話を切る。にとりとの通話が終わった月山は空の方に振り向き、彼女から手渡されていた電話機を返す。

 

 

 

 

 

「電話でにとりから聞いたけど君は霊烏路空と言うらしいね 僕らを助けてくれて本当に感謝している 僕の名前は月山習 この幻想郷に舞い降りた美………」

 

 

 

 

 

 電話を返すと同時に月山はすかさず感謝の言葉といつも通りの胡散臭そうな自己紹介に入るがその言葉は対象の空の耳には入っていない。というかその自己紹介を途中で切るように空は言葉を発した。

 

 

 

 

 

「話は済ませたんだよね?だったら早く行こうよ 私は早くさとり様ところに行きたいの…!」

 

 

 

 

 

 その言葉は空の中に渦巻く激しい感情を色濃く醸し出していた。

 

 

 

 

 

「…それもそうだね…今は緊急事態だ だが、マリサが未だに酔っていてすぐに動き出すことができないみたいなんだ それに僕は浮遊の術を持っていないから誰かに連れられないと空中を移動できない 申し訳ないが一緒に連れて行ってもらえると助かるのだが…」

 

 

 

 

 

 出立の催促をする空の言葉を聞き、月山は今置かれている自分たちの現状を説明し、こう提案した。月山自身女性に向けこんな事を願うのは申し訳なく思ってはいたが、空自身のポテンシャルと最善の選択だと思ったからだ。

 

 

 

 

 

「…だったら私一人で行ってくる」

 

 

 

 

 

 だがその提案を空は拒否した。彼女自身、元から一人で行くつもりだった。それは誰かの力を借りずとも自身の莫大な力があれば解決できるという自信。地霊殿を護るのは自身の役割だという責任感。そして早く地霊殿に向いたいという思いがあったからだ。

 

 

 空の決意は堅く、今にもその翼で飛び立ちそうな状況だった。

 

 

 

 

 

「おい!ちょっと待った!」

 

 

 

 

 

 飛び立とうとする空を呼び止める声が上がる。それは酔いで気分を悪くしていた魔理沙のものだった。

 

 

 

 

 

「何だ!こっちは急いでるんだ!邪魔しないで!」

 

 

 

 

 

 自分を呼び止めた魔理沙に空は怒りを露わにする。だが魔理沙は動じない。どうやら何か彼女には考えがあるのだろうとそれを見ていた月山は思った。

 

 

 

 

 

 “不敵な笑みを浮かべた時のマリサには『何か』がある…!おそらくこれからマリサが言うことは虚言…だが空に共闘を促すことができる言葉!期待しよう!”

 

 

 

 

 

 そして魔理沙は月山の期待を裏切らない。これから彼女が発する言葉は本当に空の考えを変えさせる。

 

 

 

 

「地獄烏さん 君は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を電話で聞かなかったのかな?」

 

 

 

 

 

「うにゅ?あれそんなこと言ってたかな?」

 

 

 

 

 

 無論、これは魔理沙が即興で考え付いた嘘である。

 

 

 

 

 

「そうなんだよ!お前はいつも大事なことを忘れるんだから!」

 

 

 

 

 

「そう言われると…そう言われたような気がする…」

 

 

 

 

 

 因みに電話でにとりも言っていたが、彼女「霊烏路空」は馬鹿である。それもかなりの鳥頭で物忘れがひどい。数分前に話していた内容も曖昧にしか覚えていないということが日常茶飯事だ。

 

 

 魔理沙は空のその物忘れのひどさを利用し、空の説得ならぬ空への洗脳をしているのだ。

 

 

 

 

 

「私の酔いはもう大丈夫だから その大事な大事なさとり様のお客様を地霊殿まで運ぶのが従者としての役割なんじゃないのかな?」

 

 

 

 

 

 空を洗脳するには十分な決め台詞。完璧な言い回しだった。

 

 

 

 

 

「…よし!分かった!おい!男!」

 

 

 

 

 

 予想通り空は考えを改め、月山の方に振り向き、呼びかける。だが、その言葉に魔理沙は苦言を呈する。

 

 

 

 

 

「おい!大事なお客様に男はないだろ?ちゃんと名前の『シュウ』と『さん』を付けて呼んでやれよ」

 

 

 

 

 

「ま、マリサ僕はそこまで…!」

 

 

 

 

 

 そう訂正しろと空に言う魔理沙に対し月山は慌てふためく。

 

 

 

 

 

「分かった…シュウさんは私が責任をもって地霊殿まで運ばせていただきます(ニッコリ)」

 

 

 

 

 

「ええ…」

 

 

 

 

 

 魔理沙の言葉にすっかり染められてしまった空に対し、月山は思わず困惑の声を発する。

 

 

 

 

 

「それでは失礼しますね」ぎゅっっ…!

 

 

 

 

 

 完全に態度が豹変した空はしっかりと左腕で月山の体を支える。

 

 

 

 

 

「いや!そんなに畏まらなくていいよ!もっとfrankに!自然体でいいから それに僕の事は『シュウ』と呼び捨てで言ってもらえる方がうれしい……あと、さとり様もそうして欲しいと思ってるよ…多分」

 

 

 

 

 

 急な空の態度の変容に月山は自然に接してくれていいと懇願する。更に魔理沙同様に『さとり様』というワードを利用し、彼女の考えを改めさせるように促せる。

 

 

 彼自身嘘をつくのは得意だし、よく吐く。だがこんなにも簡単に引っかかってしまう程純真な空に対しては今まで感じえなかったほどの罪悪感が湧き、可哀そうに思え、その嘘の切れ味も普段のものよりも数段鈍くなってしまう。

 

 

 

 

 

「いいのか?」クイッ

 

 

 

 

 

 そう月山に言われた空は何故か関係のない魔理沙に許可を求める言葉を発する。今まで魔理沙から月山の事を言われてきたからだろう。そのために自然と空は彼女に聞いてしまったのだ。

 

 

 

 

 

「は?何で私に聞くんだよ?本人がそう言ってんだからいいんじゃねーの?」

 

 

 

 

 

 魔理沙も自分には関係ないと主張する。それを聞いて空は態度を一変させる。それは初めに見せた時のものでも、魔理沙に指摘され変えた時のものでもなかった。

 

 

 

 

 

「それもそうだね!じゃあシュウ 一緒にさとり様を助けに行こう!」

 

 

 

 

 

 空の表情は笑顔になり、明るさが際立っている。おそらくこれが本来の彼女自身の態度なのだろう。地霊殿の襲撃の事を聞いて彼女は普段とは違い、躍起になっていた。

 

 

 空を本来の姿にへと戻すことができたのは魔理沙のお陰だ。魔理沙はこれを最初から狙っていたのかもしれない。空との共闘を実現するためだけではなく、執着心に捕らわれた彼女の思考を本来のものに変え、冷静さを取り戻させることも目的だった。冷静さを欠き、私情に塗れ戦いに挑めば隙や弱点が生まれ不利な状態になるのは必然。

 

 

 普段の振る舞いこそ馬鹿っぽくはやっているが、魔理沙は常人よりもずっと周りがよく見えているし、今回のように機転が利くので頭の回転もいい。実は魔法使いよりも探偵などの方が向いているのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「Oui!もちろんさ!さぁ!早く行こうか!」

 

 

 

 

 

 話は戻り、空にそう言われた月山は快く快諾する。その言葉に空は更に朗らかな表情を浮かべ答える。

 

 

 

 

 

「分かったぁ!」

 

 

 

 

 

 バサッ…!

 

 

 

 

 

 空の黒翼が開かれる。飛び立つ準備は既に整っているようだった。

 

 

 

 

 

「おい空!因みに言っとくがシュウは早く地霊殿に着きたいとおっしゃっている…その意味が分かるよなぁ?」

 

 

 

 

 

「うにゅ?」

 

 

 

 

 

 突然、魔理沙が空に向け言葉を発する。その言葉に当の空は何のことを言っているのか分からないのかその気持ちを表す言葉を発した。それを聞いていた月山は嫌な予感を感じていた。そしてその予感は見事に的中する。

 

 

 

 

 

「全速力でシュウを地霊殿まで運んでやれw」

 

 

 

 

 

 普通これだけを聞けば当たり前の事のように思えるが、空が見せた先程のスピードを思えばその考えは変わる。あの速度で飛行されればとんでもない事になるのは誰にでも分かる事だった。

 

 

 

 

 

「分かった!」

 

 

 

 

 

 そして空はそれを快く承諾する。

 

 

 

 

 

「ハッ?お、おい!?マリサ!?」

 

 

 

 

 

 月山はそれに驚愕し、その事実を受け入れられないがもうこれを変えることは出来ない。

 

 

 

 

 

「よぉーし!それじゃ行くぞぉ!!」

 

 

 

 

 

「ちょ、ウツホ、マッ」

 

 

 

 

 

 待っているのは小さな絶望だけだった。

 

 

 

 

 

 ドォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!

 

 

 

 

 

「Ahhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!!!」

 

 

 

 

 

「がんばれーww(他人事)私もすぐに追いつくからーー!」

 

 

 

 

 

 派手に轟音を鳴らし(叫び)、空と月山は旧地獄へと続く闇にへと消えていく。それを魔理沙は愉悦しながら見送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




地霊殿メンバーがようやくこの東方喰種:MMに初登場しました!(パチパチパチ…)
まぁ、すっごくピンチな場面でのお披露目ですが...(許せさとり…)

今回のタイトル気付いている人は気付いていると思いますが...実は初のアルファベット表記のタイトルです!イェーイ!(どうでもいい)
意味の解らないタイトルですが由来は作業終わりに聴いていたMM氏の曲名です。
曲の意味が今回のおくうの地霊殿メンバーに対する想いに合っていると直感しての決定でしたw別に百合的な意味じゃないよ!(重要)だが勇パルは俺のジェラシー

てかこの曲をEDに使ったアニメにMM氏のキャラいるけど、もしその力使うとしたらノロさん超えちゃうなぁ...(ま、採用するかどうかは俺次第だけどね!)

流石に次の投稿は来年になるでしょう。あと正月辺りは所用でスケジュールが埋まっているので投稿はその後になると思います。気長に待ってくれると嬉しいです。
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