東方喰種:MM~美食家が幻想入り~   作:ナライ

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先日、:reの五巻購入しました。話は本誌の方で知っていたのですが、改めて見ると驚きの展開が多い話だったなと思います。あと最後のページのカラーイラストと黒山羊の卵の文章にはとても興奮しました!だってホントすっげぇ綺麗なんだもの!

まぁ、そとなみ先生の感想はここまでにしておいて、今回のあらすじ的なことを書いておこうかな。

この前のあとがきで言ったように今回は人間の里にMM氏が行きます。(ただしこれだけとは言っていない)

はい!あらすじ終了!あとは自分の目で確かめてください~(温かい目でオナシャス)


第四話 隠匿

 ”まただ…。”

 

 ”また僕はこの夢を見ている…。”

 

 

 

 ---彼が闇に消えてゆく光景-。

 

 

 

僕は性懲りもなく彼に呼びかける。

 

 

 ”振り返ってくれるはずがないのに…。”

 

 

 尚も僕は叫ぶ。

 

 

 ”答えてくれるはずもないのに…。”

 

 

 声にならない声で…。

 

 

 ”それでも君は僕の目の前からいなくなってしまうんだろ?”

 

 

 そして悪夢はendingを迎えようとする…。

 

 

 

 

「何、勝手に終わらせようとしてるんですか…。」

 

 

 

 

 

 

 

---瞬間、背後から声がした…。

 

 

 

 

 

 

 

 ”ハッ!”

 

 

 振り向くとそこには”黒髪の男”がいた…。

 しかし顔は確認できない。否、見ることが出来なかった。

 

 

 だってその顔は大きな闇が続いている穴がぽっかりと空いていたから…。

 

 

 

 

 

 

「僕をこんな”茶番”に付き合わせて何を考えてるんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

彼は一歩一歩僕に近づいてくる。

 

 

 

 

 

 

「現実から目を背けるのは勝手だけど他人を巻き込むのはいただけないな。」

 

 

 

 

 

 

 そして一歩一歩また近づいてくる。

 出そうと思っても僕は声を出すことができない。

 

 

 

 

 

 

「ねえ、本当は分かってるんでしょ。」

 

 

 

 

 

 

 一歩、一歩。その距離が縮まる。

 

 

 

 

 

 

「この世の不利益は当人の能力不足――」

 

 

 

 

 

 

 そして彼は僕の目の前に立つ。

 

 

 

 

 

 

「…呪うなら自分の弱さを呪ってください」

 

 

 

 

 

 

 冷淡に彼は見下しながらそう僕に告げた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ”ウッ…意識が遠のく…。”

 

 突然の感覚に思わず頭を押さえ、倒れそうになってしまう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…もう時間のようですね…。それじゃ僕は”…もう行くよ―”…。」

 

 

 

 

 何の時間が来たのか分からなかったが彼はそう言って僕の耳元にその虚を寄せ囁いた…。

 

 

 

 

「…さようなら”月山さん”」

 

 

 

 

 

 

 そしてNightMare(悪夢)は今…終わりを告げた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 僕は今、サクヤが用意してくれた朝食を食べようとしていた。

 この幻想郷にやってきてようやく一日が経過した。正確に言えばまだ経っていないのだが。

 

 

 僕の世界では考えられないようなことがここでは起こす事が出来る――。

 

 

 昨日、体験して知った、ここでの常識。 

 

 

 

「……」

 

 

 

 僕は悩んでいた。それはこの世界へ来て見だした不思議な夢や脳裏に浮かんできた何かのvision(映像)。

 だが、最初に見た夢について僕はそれを見てしまう理由を知っている。

 

 

 

 問題はその後に見た、夢と映像―――。

 

 脳裏に浮かんだvisionは何処かで僕が見たことのある光景に間違いなかったのだが、どうもその記憶をlost(失くす)してしまっているらしい…。

 

 僕はあのビルの屋上で堀と話したところまで記憶している…。おそらくそのvisionはそれ”以前の記憶”なのだろう。

 

 そして一番謎なのはあの夢に現れた黒髪の男。僕はあの男を知らない…知らないはずなのに、”なぜか知っている感覚”に襲われた。自分が作り出したfantôme(幻影)とも考えたがあの放っていた存在感は実在しているものに違いなかった。僕が知らないように思っているだけで彼を僕は何処かで記憶している。

 さらにその男が言った言葉…

 

 

 

 

『僕をこんな”茶番”に付き合わせて何を考えてるんですか?』

 

 

 

 farce(茶番)とは一体何なんだ。

 

 

 

『現実から目を背けるのは勝手だけど他人を巻き込むのはいただけないな。』

 

 

 

 他人を巻き込む?カネキ君のことか?僕はただ彼のことを思っているだけだ…!

 

 

 

 

『この世の不利益は当人の能力不足――…呪うなら自分の弱さを呪ってください』

 

 

 

 僕がカネキ君を止められなかったことか?でも彼を止められなかったことを他人のせいにしようなんて思ったことはない。彼があのときなぜ無謀にもあの戦場へ身を投じたのかは分からないが、彼を止められなかったのは単純に僕の力不足せいだと割り切っている。

 

 

 そして―――。

 

 

 

 

 

『…さようなら”月山さん”』

 

 

 

 なぜ彼は僕の名前を知っていた…?

 

 

 

 

 その悩みが顔に出ていたのだろう、レミィの側に立っていたサクヤが僕に声をかけてくれた。

 

「どうしたのシュウ?さっきから口にしていないけど?」

 

 彼女は首をかしげている。慌てて僕は言う。

 

「…n、ああ!Don't worry!昨日の様にうるさくしないで食べようと平常心を心がけるようにconcentration mentale(精神統一)していたのさ。昨日のようだとパチェに嫌がられるからね。」

 

 そう言ってサクヤに向けてウインクし、パチェの方を振り向く。

 

「…ええ、こんなにすがすがしい一日の始まりにあの叫びを聞くのは御免被るわ。」

 

 パチェは僕の目を見てはっきりとそう言う。

 昨日はちゃんと僕と目を合わせてもらえなかったが、僕と言う人物を理解してくれたのか今日は面と向かって話をしてくれる。

 

「…プイッ」

 

 と思ったが、彼女は目を逸らす。まだ信頼を勝ち取るには時間がかかりそうだ。

 

昨日は食事に集中していたことと、パチェが顔を隠していたことではっきりと顔は見れなかったが彼女も僕がよく知っている人に似ていた。

 

 僕の家…月山家の使用人であり僕のsœur(姉)のような存在だった”松前”に似ている。詳細に言うとその姿は僕が幼少期の頃の彼女に似ていた。

 

 ”これぐらいの時はよく共にscrabble(単語並べ)やったっけ…。でも、少し過保護すぎるところもあったが…。”

 

 そんなことを思い出しながら、彼女の顔を見て微笑む。

 彼女は横目でまた僕を見るがすぐに目を逸らす。

 

 ”本当に時間がかかりそうだな…。”

 

 そう思ったときにレミィから声をかけられた。

 

「今日は”博麗神社”に行くって言ったわよね?」

 

「Oui。昨日、エーリンからここの結界のことを聞いてね。この世界の外へ行く方法を知りたいのなら博麗神社へと出向いて、そこにいるshrine(神社)の管理者に話を聞いてみるといい、そう言われたからね。」

 

 そう答えるとその場にいた全員がおかしな表情になった。

 

うー☆「”アレ”の所に行くのか…。」

 

PAD「まずそんな事を知っていないような気がしますね…。」

 

むきゅ「”絶対知らない”に美鈴の夕ご飯三日分を賭けてもいいくらいよ。」

 

中国「ホントですよーそれくらいに信じ…って!ナンデ私のご飯なんですかー!!」

 

 そう紅魔館の住人たちは口々に言いあう。

 

 そんなに博麗神社の”神主”は信用されていない人物なのか?少し心配になってきた。

 

「でも、行ったら分からないことも分かるかもしれないし、アイツも大丈夫でしょ。シュウがおかしなことをしなければ何とかなるハズよ多分。」

 

 とレミィは確証なさ気に僕に言った。

 

「心配なら何か人間の里で美味しいものを買っていくといいわ。食べ物(or金)を差し出せばアレは誰にでも優しくなるから。」

 

 とサクヤが提案するとみんなが「それだ!」と言いポンッと左の手のひらに右の拳を下す。

 

 ”どれだけ神主はみんなに嫌なimageで印象付けられているんだ…。信用していないわけではないがもしくはここにいる彼女たちが勝手に思っているだけであって彼はそんな人物ではないのかもしれない。”

 

 ”まぁ食べ物で人心掌握できるのならなんとかなりそうだ。”

 

「それじゃあ、行きに人間の里でsouvenir(御土産)を買って、博麗神社に行くことにするよ。」

 

「道は知っているの?分からないのならサクヤに案内させるけど…。」

 

 とレミィは言う。

 

「Unnecessary!(無用!)お言葉はうれしいが、地図も持っているし、サクヤをこのchâteau(館)から出ていかせると色々な仕事ができなくなるようだからね。一人で行かせてもらうよ。」

 

 そう言って僕はサクヤが用意してくれた朝食をもう一度食べ始める。さっきの悩みもう気にしていなかった。

 

 ”うん!やはりサクヤの料理はC'est génial!(最高だ!)”

 

 今日もこの美食を食べることができると思うと自然と笑顔が零れた。

 

 

「セッ!ジェニアァァァァァァァァァァァァァァァァルッ!!!」

 

「結局、叫んでるじゃない…。」

 

 パチェは呆れ顔でそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

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 紅魔館から出ていく前にレミィと話しをしておこうと僕はレミィの部屋へと足を運んだ。

 

「それじゃレミィ出かけてくるよ、夜になる前までには帰ると思う。」

 

「ええ、分かったわ。それじゃあ言ってらっしゃいシュウ。」

 

「…ところでレミィここに来てから気になっていたのだがこの館には僕ら以外に”他の人達”がいるのかい?あっ、他の人と言ってもメイド妖精たちのことではないよ。紅魔館(ここ)に来てから不思議なsmell(匂い)がするんだ。”下の方からね”。」

 

 僕はてっきり彼女が僕に言えないような隠し事をしていると思っていた。だからそういった返答や態度をされると思っていたのだが、そんな僕の予想を裏切り、彼女はとてもあっさりと答えた。

 

「”妹”よ。あの子、シュウが来ると言った途端に地下室に隠れてしまったのよ。最近はよく話すようになって友達も作ったりしてたんだけど、やっぱり男の人はダメだったみたい。」

 

 彼女の目を見てみるがやはりそこには曇りがない。嘘はついていないようだった。

 

「ふぅん…どうりで君に似た香りがすると思った。僕もlimit(制限)付きではあるがこの紅魔館の住人。今日の用事が終わったら君のpetite sœur(妹)には会いに行かなくてはいけないね。」

 

「やめておいた方がいいわあの子人見知りだけど気性はとても荒いの。どうしても会いに行くというのならあの子に八つ裂きにされる覚悟を持って行きなさい。」

 

「そんなに心配してくれるのに結局一人で行かせるんだね…。」

 

「面倒ごとに巻き込まれるのを嫌だと思うのは当然でしょ。」

 

 そう二人で笑いながら話していたが僕にはまだ気になっていたことがあった。

 

「レミィ、君の妹は”二人”いるのかい?」

 

 その言葉にレミィは不思議そうな顔をする。

 

「いいえ、一人だけよ。どうしてそう思ったの?」 

 

「いいや、僕の嗅覚がそう感じたんだが、もしかすると勘違いだったかもしれないね。」

 

「あっ!でもあの子分身の術みたいな能力を持ってて、最大四人にまで変身できるわ。」

 

「アイエエエエ! ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」

 

 予想だにしていない返答に思わずびっくりしてしまう。

 

 本当に幻想郷(ここ)は不思議なことが満ち溢れている。

 

「まぁ、そういうことができるのなら勘違いじゃなかったようだね。僕が聞きたかった話は聞けたからもう行くことにするよ。」

 

「ええ、行ってらっしゃい。」

 

 そう言ってもらい、僕はレミィの部屋を後にする。

 

 

 

 

 しかし……分身の術とは昨日から今までの間ずっと使いつづけられるものなのか?あとこの匂いはもっと下の方から香っている気がするし、レミィのような吸血鬼の香りに似ているがどこか違う。

 強いて言うならそれは純粋な死肉の香り…

 

 

そう、それはまるで”僕ら(グール)”の匂いだ。

 

 

 

 

 

 

-------------------

 

 

 現在、朝の9時。僕は紅魔館から出て、人間の里にやって来ていた。人間の里は時代劇で見るような昔ながらの木造の平屋が里の大半を占める一方で、僕の世界で見られるような現代的な建物も少なからず存在する。服装も和服の者もいたり、現代風の服を着てたりする者がいて、まるで映画村みたいな状態だ。そしてここではこの時刻に朝市をやっていると聞いていたがこんなにも活気があるとは思わなかった。そのまえに僕はこういった所に来るのは初めてなのだが。(人肉の市場ならあるが。)

 

 この幻想郷では人間と妖怪に絶対的な関係性がある。

 

 それは『妖怪が人間を襲うこと』である。これはたとえフリでも妖怪という存在の存続のために必要とされている行為である。つまり妖怪にとって人間の持つ心が必要不可欠なのだ。そしてこの場所は人間と言う種を残すために存在している『動物園』みたいな場所だ。

 しかし、それも昔の話。現在の人間の里では人間と妖怪たちは仲良く共存して暮らしている。もう人間の里とは呼べないほど妖怪たちなどもここに住んだりもしている。先ほど妖怪が生きていくことに必要なことは『妖怪が人間を襲うこと』と言ったが、それは別に言えば自身が畏れられそのものたちの心に深く印象付けられること。妖怪たちはその畏れを人間との共存を通して築いていくことを選択した。それは今までに与えていた”恐れ”ではない。妖怪たちは人間にはできないことも簡単にやってのける。今、妖怪たちが存在を保つために人間から貰っているのは、みんなから頼りにしてもらう”畏敬”の気持ちだ。(だが驚かせて畏れられようとする妖怪もいるようだが。)こうなったのには妖怪たちと人間たちが理解し合えたのもあるが、ある2人の尽力で今の人間と妖怪の関係が成り立っている。

 そして僕はその一人である博麗神社の神主に会いに行こうとこの朝市でまず手土産を買っていくことにした。

 

 朝市は里の大通りにズラッと並んでいた。そこには食べ物の屋台やアクセサリーの即売など人間と妖怪が互いに店を出し合って賑やかにやっていた。その様子からは以前の襲う側と襲われる側だったことを感じさせなかった。まあ、何故か”罪”と書かれた袋をかぶりLoincloth(ふんどし)一丁の男がいるがこの幻想郷では普通のことなのだろう。Oui。色んなladyたちから暴力を振るわれているがここではおそらく普通のことだ。だって彼すごく喜んでいるし。あと何故か少し親近感が湧いてしまう。がんばりたまえCRIMMEBAG(罪袋)くん。

 

 

 

 ”サクヤが言うのも分かる。この景色を見れば"人間と喰種"(僕らが)ともに歩んでいけるんじゃないかと思えてしまう。ここまで人間と妖怪の関係をガラリと変えてしまった博麗の神主はそれほど偉大な人なのだろう。”

 

 そう思い、朝市の景色を笑顔で見ていると。

 

「おい!そこの笑顔の似合っている兄ちゃんよ!ウチの買って行ってくれよ。」

 

 おそらく僕のことだろう。声の聞こえる方へ僕は振り向く。振り向くとハイカラな着物を着た店主らしき老人が豪快な笑いを浮かべてこちらを見てくる。

 

「何だいcommerçant(店主)?ん?それは?」

 

 僕は白い煙を上げている網の上に置かれた白い円形のモノを見つめ言った。

 

「応よ!そりゃなぁ、ウチ特製の焼きたて煎餅だ!」

 

「fun…rice crackerか。焼いているところは初めて見たよ。」

 

 そう言って僕は珍しいものを見るようにその網を見ていたのだろう。そんな僕を見ていた店主は僕にこう言った。

 

「へぇ~そうなのかい。だったら今、出来立ての煎餅食べてみるかい?一つくらいならタダでいいから。」

 

「Est-ce vraiment?(本当かい?)」

 

 思わず僕は喜んで店主の両手を握る。

 

「ぁ、ああ。別にいいってことよ。その代わり正直な感想で答えてくれよ!遠慮して嘘の感想言われるのが一番困るからな。」

 

「Oui!Oui!」

 

 すると店主は焼いていた煎餅が焼けているのを確認し、その一つを手で取り、『秘伝之醤油』と書かれたツボに入ってある刷毛を取り出し手に取ってあった煎餅に刷毛でタレを塗り、紙で煎餅を軽く包み僕に手渡す。

 

「さっ!おあがりよ!」

 

 そう言って店主は食べるように催促する。

 

「Oui!それでは早速頂くよ。」

 

 僕は口にその煎餅を近づけていく。口に近づくたびにその芳しい香りが僕のcavitē nasale(鼻腔)を刺激する…。

 ”これが醤油の香りか…。なんとperfumē(香り高い)なliquid(液体)。それはまるで花のような甘い香り…。そしてこのambre(琥珀色)…beau(美しい)…。”

 

 そして僕はその琥珀色の円盤を口にする。

 

 口の中で何かが弾ける。

 

 瞬間―――。月山に電流走る…!

 

「トレッ!!ビィアアアアアアアアアアアアアアアン!!!コ…!コレハッ!?噛んだ瞬間、広がる醤油の香りとこの癖になる食感!パリッと噛む度、口の中で弾けてさらに広がっていく香りと旨み…。これが…煎餅…!」 

 

 それは衝撃的な食べ物だった。ただ小麦をこねて干し、焼いたものに醤油をかけただけでこんなにも美味しくなるとは…。

 

「おお!その様子じゃ気に入ってくれたみてぇだな!」

 

 店主は喜んだ顔で僕を見ている。

 

「Oui!!僕、手土産を買おうと探していんだが、この煎餅…これなら気に入ってくれそうだ。commerçant!この煎餅、御土産用に包装してもらえるかな?数はお好みで。」

 

「あいよ!毎度ありぃ!!」

 

 そして店主は僕の注文通りに既に焼けていた煎餅を大きな袋に入れていく。既に焼けていたと言ってもその煎餅からは白煙がもくもくと出ている。熱々だ。

 

 ”人間の味しか知らなかったが、この舌を持ったことで美食(世界)が広がった事を実感する…。他の出し物も気になるが今日は急いでいる。まあ、暫く人間の里に通って美食の探求に没頭してみるのも良いかもしれない。そして帰ればサクヤの絶品料理が待っている…。なんと美食家(グルメ)冥利に尽きることだろう。”

 

 そんな事を思っていると店主が包装し終わり僕にその袋を手渡してくる。僕はお礼を言ってその場から立ち去る。袋越しに煎餅の熱が僕の腕に伝わる。まるでここの人達のぬくもりを感じているようだった。そう感じると自然と笑みが零れる。だが、その表情の裏で少し悲しくもなった。残酷だがささやかな幸せもあった自分の世界のことを思って…。

 

 

 

 

 

 

-------------------

 

 

 

 

 

 僕は今、博麗神社に続く階段の前に到着した。おそらく人間の里を出て3時間程経った。

 ”しかし、不思議なものだ。3時間経ったがまだこの煎餅は温かいままだ…。”

 買ってから感じてきたそのぬくもりは時間が経った今でも感じる。何か製造に秘密があるのだろうか?

 そんな事を考えながら僕は階段を登り始める。暫くすると大きな鳥居が見えてくる。見えてくるのだが…最上段の位置に何か紅いものとそこから何か2つ垂れ下がっている。よく見てみるとそれはスカートと足だった。

 

 人が倒れていた。

 

「Santo cielo!!(なんてことだ!!)」

 

 僕は急いでそこに駆け寄る。そこには紅白の巫女服を着た少女が轢かれたカエルの如く倒れていた。ここの巫女だろうか?しかもこんなところで倒れているなんて。そのときレミィの言葉を思い出した。

 

 ”もしかすると誰かの襲われたのかもしれない…。レミィが言っていた運命はもう始まっているのか!?”

 

 僕の脳裏に最悪のsituation(状況)が浮かんでしまうがそんなことを思うのは今は後にする。今は彼女の安全を確認するのが最優先事項だ。そうして僕は恐る恐る彼女に声をかけてみる。

 

「Hey!大丈夫かい?意識があるのなら返事をしてくれたまえ。」

 

 すると微かに彼女は僕の声に反応した。

 

「ぉ…お、か……s、いた…。」

 

「Pardon?」

 

 よく聞き取れなかったので僕はもう一度彼女に何と言ったのか聞く。

 

「お腹が…」

 

「Oh!abdominale(腹部)にケガをしているのかい!それは大変だ!」

 

 僕はさらに慌てて彼女のケガが見えるようにうつ伏せになっている彼女を仰向けの体勢にするように彼女の体を動かした。が、その腹部にはケガはなく衣服も破れてはいなかった。すると彼女は僕にさっきの言葉の続きを言う。

 

「…おなかすいた…。」

 

 そう言った瞬間、彼女の腹部からグゥーっと音が鳴った…。

 

 

 

 

 

 

-------------------

 

 

 

 

 

 

 バリッバリバリバリ

 

 隣で甲高く煎餅を食べる音がする。

 

「んん~♪」

 

 そこには僕が買ってきた煎餅を笑顔で頬張る少女がいる。あの後僕は彼女に手土産で買ってきた煎餅を与え、階段の最上段から見える幻想郷の景色を望みながら二人で座っていた。煎餅は神主用に買って来たものだがこの神社の巫女がお腹を空かせていたのであげたと言えばきっと分かってくれるだろう。

 

「そんなに急いで食べてしまうところを見るとよほどhungryだったようだね。詰まらせると危ないからこれも飲んで。」

 

 僕はそう言ってサクヤが用意してくれていた紅茶が入った水筒を取り出し、その水筒に付属してあったコップに紅茶を注ぐ。注げば辺りにはfruityなaromaが広がる。一般的な意見だと煎餅に紅茶なんて合うのかと言われそうだがとんでもない!この2つはとても相性が良いと僕の美食家の舌はそう言っている。そうして僕は彼女にそのコップを手渡す。

 

「ん?ああ!ありがとう。頂くわ。」

 

 紅茶なんて合うのかという顔をされると思ったのだが彼女は何の躊躇いもなく紅茶を飲む。プハ~ッと気持ちの良い声が彼女の口から漏れる。

 

「でもこの煎餅よく買ってこれたわね。これあの店の限定商品で朝市の時にしか売っていないの。だからいつも長蛇の列ができて買うのは困難なはずなのに。」

 

「えっ?そうなのかい?僕、呼び止められて買ったのだが…。」

 

 そう彼女に言われてあの時を思い返してみると、店主と僕が話している隣の方で人がたくさんいた気がする。

 

「モグモグ…あそこのオヤジ、稀にそういうことするのよ人が並んでるのに。何しろ自分が見て気に入ったヤツだからって理由らしいけど…。あのオヤジに気に入られるなんてあなたやるわね。」

 

 そういうことなら帰りに寄ってお礼を言いに行こうか。気に入ってくれた理由も気になるし。

 

「ところで君がお腹を空かせていたから倒れていたのは分かったのだが、なぜここで倒れていたんだい?」

 

「ああ、モグモグ…ゴクン。いつもはそんなことないんだけど偶然朝早く起きてしまって、やることもなかったからちょっとした修行をここで行っていたの。考えなしに自前の霊力を使い切ったことで倒れてしまってそのまま…。霊力は回復したんだけれど空腹で今度は起き上がれなくなって…ホントあなたが来なかったら危なかったわ。」

 

 そうして笑顔で彼女は僕の方を見て感謝の意を僕に伝える。

 

 ”fun…この顔でお礼を言われるとなんだかむず痒い気持ちになるね。…霧嶋さん…。”

 

彼女も僕の知っている人物に似ていた。―――霧嶋董香。『あんていく』と言う喰種が経営していた喫茶店の従業員でもちろん彼女も喰種だ。客には優しく振る舞っているが激情型の一面も持っている彼女。そして人間を憎みながらも人間に憧れていた不器用な同族(化け物)…。色々なことで彼女とは衝突したがそれも懐かしい思い出だ…。

 

「巫女の役割も大変なようだね。僕のことは気にしなくていいから君の空腹が満たされるまで食べるといいよ。」

 

 そう言うと彼女は僕に軽くお辞儀をしてまた貪るように煎餅を食べ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

-------------------

 

 

 

 

 

「ふ~♪食った食ったぁ~ご馳走様♪」

 

 彼女はものの数分で袋に入っていた煎餅を全て完食した。

 

「お腹の方は満足したかい?」

 

「ええ、”だいぶ”ね。ところであなたは何者なの?サクヤの紅茶を持って来たってことは紅魔館関係の人間ね。でもあなたみたいなのあそこで見たことないわ。」

 

 ”紅茶の味だけでサクヤが入れたと分かってしまうのか…。いや、紅茶の味を知った新参者の僕でもこの紅茶の味がサクヤ以外の者に出せるとは思えない。分かって当然か…。”

 

 そう思い僕は首をかしげて僕を見ている彼女の疑問に答えた。

 

「僕は外の世界から来た者で月山習と言う。昨日、何も此処のことを知らない僕を紅魔館の方々に助けて頂いてね。なぜ僕がこの幻想郷にやって来てしまったのかを知るために幻想郷と外の世界を隔てている結界を管理する者がいるこの博麗神社に来たんだ。」

 

「へぇー」

 

 そう言った僕の言葉を彼女は紅茶を啜りながら聞いている。

 

「だからここの管理者の神主に会わせてほしいのだが…?」

 

 そう彼女に伝えると彼女は目を見開いて驚いた顔をしている。何か可笑しなことを言ってしまっただろうか。

 すると彼女は…

 

 

 アッハハハハハハハ…!

 

 何故か笑い出した。そして彼女は僕に向けて告げる。

 

「…ここに神主はいないわここにいるのは私一人だけよ。誰にそう言われたのかは分からないけど多分そいつに『博麗神社の管理者に会えばいい』って言われたんでしょ?」

 

 言われてみると僕は確かにそう言われた。そうか僕は勝手に 神社の管理者=神主って思っていたのか。idiot me…(愚かな僕…)だが普通こう言われたら誰もが神主と思うはずだ。エーリンの腹黒さが垣間見えた気がする…。

 

「と言うことは君がここの管理者なのかい?」

 

「ええ、私はこの博麗神社の巫女であり管理者の”博麗霊夢”よ。レイムって呼んでもらっていいわ。」

 

 レイムと名乗った巫女は僕に自分が管理者だと言った。それならば僕が持ってきた手土産を渡す相手は知らず知らずに渡すべき相手に渡っていたようだ。

 

「ならば!僕がなぜここに来たのか教えてくれたまえ!」

 

 僕はなぜ自分がここに来てしまったかの理由を彼女に問う。

 

「そんなの知らないわ。」

 

「Hey…?pardon me!?(なんだって!?)」

 

 まさかの返答に僕は驚きを隠すことが出来ずその驚きを口に出してしまう。

 

「確かに私はこの博麗神社の管理者よ。だけどこの幻想郷と外を隔てている結界は私、ほとんど管理していないわ。めんどくさいし。だからと言って管理している家系の者だから知っているんじゃないかって言われそうだから言っておくけど、私はあなたが思っているほどそういったことを知っているような専門家ではないわ。だからわたしはなぜあなたが外の世界から来たのかっていう疑問に対して答えることが出来ないの。…ズルズルズル」

 

 紅茶をまた啜りながら彼女はとんでもないことを言った。本当にサクヤ達が言ったように彼女は何も知らなかったようだ。だが彼女はこうも言った。「めんどくさい」と…。

 

「…レイム。君は今、”めんどくさい”と言ったね。と言うことはその面倒な作業を押し付けている人物がいるんじゃないか?現在、この結界を実質管理している人物が…。」

 

「へー、よく分かったわね。いまそいつのことを紹介しようと思ってたところよ。そいつなら多分あなたが知りたそうなことも知っていると思うわ。まぁ会うのは嫌だけど命の恩人の頼みだからね。ちょっと待ってて今、あいつを呼びに…」

 

 そう彼女が言ったとき、僕らの背後から突然声が聞こえた。

 

「それには及ばないわ霊夢。」

 

 そして僕は後ろに振り向く。するとそこには金髪longでfrillの付いたdressを着用している女性が立っていた。 何か変なものを感じて横を見ると隣の霊夢が嫌悪感を全開に出した表情をしている。すると金髪の彼女は霊夢に向けていた視線を僕に移してこう言った。

 

「ようこそ幻想郷へ”月山習”。幻想郷はあなたを歓迎しているわ。」

 

 そう言って謎の女性は妖しい笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい!次回、月山さんが気になっていることが判明(おそらく)します。
因みにそろそろバトルシーンを書いてみたいと思っているんですが(やるとは言っていない)このまま戦わせると結構月山さんにとって厳しい戦いになるので月山さんのスペルカードなんか考えています。
でもいざスペルカードを持たせるとおそらくオリ技になってしまうしキャラが壊れそうなので本当に取り入れていいのか…。
基本的には赫子で戦わせたいのでもし作るのなら補助系、低燃費、低火力のスペカになるんじゃないかな?
まぁ、慎重に考えていきたいと思います。
もしやってもいいという意見や、やめてほしいという意見があるのなら感想に書いてもらうとありがたいです。
個人的にはオリスペカとかもやってみたい気もあるんですがね(悪ノリ)
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