仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon Trilogy~ 作:龍騎鯖威武
「2人の剣士」
ザァン!
「…逃がした」
舞は今日も、魔物退治を続けていた。
「あまり無茶するなよ?足だって全快じゃないのに」
「そうですよ~。それに夜は女の子には危険なんですよ」
「佐祐理さん、そこですか…」
そう言ってくるのは祐一。隣には佐祐理も居る。共に、舞のサポートを行っているのだ。
「でも、こうしないと何も変化は無い…。待っていても…」
舞が呟く。彼女の足の痣の謎は、未だに解明されない。しかし、ここで立ち止まっているわけにもいかないのだ。立ち止まっていたら、きっと後悔するかもしれないから…。
その帰り道…。
「…舞。そういえば、動物園に行きたいって言ってたよな?」
「…どうして?」
「明日、行かないか?」
祐一の突然の申し出に首を傾げる舞。
「おまえ最近、切羽詰りすぎだ。肩の荷を降ろして、穏やかに過ごすことも悪くないだろ?」
「祐一さん、デートですか?」
くすりと笑って、質問する佐祐理。祐一は苦笑して返す。
「はやし立てないでくださいよ佐祐理さん。舞はそんなつもり無いですよ」
「それでも…良い…」
舞は俯いて答える。
「祐一とデートするのは、多分きらいじゃないから…」
あまり表情の変化が無い舞だが、今は恥ずかしがっていることがよく分かる。顔がほのかに赤い。
祐一はそれを見て、優しく声をかける。
「決まりだな。明日の12時ちょうど。いいか?」
「はちみつくまさん」
次の日の朝。
百花屋で祐一は、ある3人を呼び出した。
「…という訳だ。言ったのは良いが、何をしてやればいいか、分からなくてな…」
「祐一がデート~?」
「相沢がなぁ…」
「あまり、そんなことを悩む人には見えなかったけど…」
祐一が相談を持ちかけたのは、潤、香里、名雪の3人。
クラスも同じで、行動が一緒になることが多いこの4人は、クラス内でも有数の仲良し組みである。
「おまえら、何気に酷いこと言ってないか?」
ジト目で文句を言う祐一。今まで友達をイジってきたしっぺ返しなのだろうか。
「わたし、デートのやり方なんて…く~」
「寝るな!…ったく、こいつは考え事をすると寝る癖でもあるのか」
名雪自身、必死に考えを絞ってはいるのだが、どうしても睡魔には勝てないらしい。
香里に目を向けるが、彼女も首を左右に振る。
「残念だけど、わたしもそういった経験は皆無よ。何も教えられないわ」
「じゃあ、おれと行かないか?」
潤が、席を立って誘う。
「出直してきなさい」
「そんなぁ~…」
「こいつらに聞いたのは間違いだったな」
祐一は3人を放って、店を出た。
「うーん…」
「見つからないね…」
辺りを見回しているのは、竜也とあゆ。
一応、本編の主人公とヒロインなのだが、今回は探し物をしている祐一達の友人という形に留めておこう。
今回の主役は祐一と舞なのだから。
「よ、竜也とうぐぅ」
「あ、祐一くん!…って、ボクうぐぅじゃないもん!」
「祐一、あゆをイジメるのは、いい加減にやめてよ…」
早速あゆイジり。さっきのことに懲りていないようだ。
「悪い悪い。ところで、聞きたいことがあるんだが、良いか?」
「なに?」
「おまえら、デートしたことあるか?」
「「えぇっ!?」」
声をハモらせて驚く2人。
「そ、そんなことないし、それにボクと竜也くんは、そんな関係じゃないよ…!?」
「そうそう、昔からの古い友達!」
慌てふためいて否定する2人。なんとも初々しいというか…。
「…なら質問を変える」
今までの流れを説明し終えた祐一。
「なるほど…」
「舞さんと祐一くんが…」
先ほどとは打って変わって、首を傾げて唸っている竜也とあゆ。
「なにか、いいプランがあったら知恵を貸してくれ」
「…案外、何も無いほうがいいと思うな」
何気ない様子で答える竜也。
「おれ、そういう経験は全く無いけど、色々考えるほうがなんか違う気がする。自然体で接することが大切なんじゃないのかな?」
「…確かに」
祐一は竜也の言葉を聞いて、考えが変わり始めた。
舞を喜ばせることばかりに気が行ってしまって、基本的なことを忘れていた。
「貴重な意見をありがとよ」
そう言って、手を振りながらその場を後にする祐一。
ふと思い出したかのように振り返り、こう告げた。
「そういえばおまえら、古い友達って言ってるけどな、どう見たってカップルだぞ。ちょっと竜也がロリコンみたいだがな」
「えっ!?」「うぐっ!?…って、ロリコンってどういう意味?」
2人は真っ赤。あゆは真っ赤になってはいたが、そのあと聞きなれない言葉の意味を竜也に聞く。
「確か…年下の女の子好きの人だっけ…?」「うぐぅっ!ボクは竜也くんと同い年だよっ!」
もう見えなくなった祐一に向かって叫ぶあゆ。
待ち合わせの場所である動物園の入り口の前には、一足早く舞が辿り着いていた。
「祐一、遅い」
「まだ時間まで10分あるだろうが」
舞は20分早く来ていた。実はここに来る前に、佐祐理から一つ聞いていたのだ。
「舞、良いですか~?女の子が待ち合わせに早く来ると、男の子は申し訳ない気持ちになるから、お願いを聞いてくれやすくなるんですよ~」
この言葉を聞いて、試しにやってみることにしたのだ。
「女の子を待たせるのは、最低」
「はいはい。じゃあ、これで許してくれるか?」
祐一はやれやれといった感じで、舞の手を握る。
「…っ!」「さ、行こうぜ?」
舞の応答を聞かず、動物園内に入場した。
…で。
「そればかり見てるんだな」
祐一の目線の先には、ウサギをじっと見つめる舞。
入園してから結構時間がたったのだが、ずっとこれだけを見ている。
「お母さんとの思い出だから…」
「そっか…」
舞の母親は浅倉によって殺害された。
それ以前にも、虚弱体質で命が危機に瀕したことは何度もあった。
「舞、動物園に行きましょうか」
「でもおかあさん、かぜが治らないんでしょ?」
「いいのよ…わたしは…けほっ!けほっ!」
「おかあさん!」
このころより少し前、身体が治ったら動物園に行く約束をしていた。
しかし、一向に良くならなかった。
あることを機に全快したのだが…それはまた別の機会に話すとしよう。
ちょうど10年ほど前の冬
「ねぇ、おかあさん!」
「舞?」
舞が手を引いて入院している病院の庭に出ると
「ほら、動物園だよ!」
舞が作った雪ウサギがたくさん並べてあった。
「本当…」
こうして約束は守られたのだが…。
結局、本当の約束が果たされることは無かった。
「祐一は…居なくならない?」
「舞?」
振り向いて不安そうに尋ねる舞。
「お母さんみたいに、居なくならない?」
もう一度聞く。
祐一は、舞の目の前に歩いてきて、彼女の頭を優しく撫でる。
「安心しろ。竜也や斉藤ほどじゃないが、おれは意外と強いぞ?少なくとも、おまえを守ることくらいは出来ると思う」
「祐一…」
舞は、祐一の胸に身体を預ける。
「ちょっと…だけ」
「あぁ…」
彼の存在を、強く感じながら、少しだけ目を閉じた。
「よし、デートはこれからだ。もっと他のやつも見ようぜ?」
祐一の言葉に、少しだけ頷いた舞は、祐一の手をもう一度握る。
「甘えん坊だな、舞は」
「祐一だから…」
これから降りかかる戦いの間の小さな安らぎのときである…。
彼らは、この安らぎを果てるまで続けられるようになるため、戦い続けるのだ…。
仮面ライダーとして…
そして人間として…。
キャスト
相沢祐一=仮面ライダーナイト
川澄舞=仮面ライダーファム
舞の母親
倉田佐祐理
北川潤=仮面ライダーライア
美坂香里
水瀬名雪
月宮あゆ
龍崎竜也=仮面ライダー龍騎