仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon Trilogy~   作:龍騎鯖威武

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「春が来たら…」

「てぇあぁ!」「だあああああああああああああぁ!」

ドガアアアアアアァ!

凄まじい爆発。その理由は、龍騎とインペラーにあった。

たった今、モンスターを倒したところなのだ。

ちょうど、サトルたちと別れた後に遭遇したのだが、仮面ライダーに休み無しとは、よく言ったものだ。

「よっし!」

2人は変身を解き、ミツルと竜也の姿に戻った。

「平気だった?」「あうぅ…」

物陰で見守っていた真琴とあゆが近づいてきた。

「大丈夫、これくらいなんとも無いよ」「まさか、おれ達があんなモンスターに苦戦するとでも?」

「よかったぁ…」「あぅっ…!」

あゆは2人の反応を見て安堵し、真琴はミツルに飛びついた。

「ったく、いつまでも子供のつもりか?」「あぅ…?」

飛びついた真琴をうっとうしそうに押しのけるミツルだが、それは本意ではない。彼女の自立をほんの少しでも導くためなのだ。

ただ、真琴はそのことが分からないため、少しだけ不安げな眼差しでミツルを見る。

少しいたずらげな笑みを浮かべて、ボソッと呟くあゆ。

「ミツルさん、真琴ちゃんにメロメロのくせに…」

「そうだ。悪いか?」

「あ、あれ?」

あゆは、ミツルの隠している本音を暴くつもりだったのだが、意外にも慌てふためくことはせず、さらりと本音を述べるミツル。

「おれは自分の感情を押し殺すことは苦手だし、真琴もおれの事を好きでいてくれる。おれが隠す必要があるとでも思ったか?」

「うぐぅ…参りました…」

ぺこりと頭を下げ、謝るあゆ。それを見ていたミツルは仕返しを開始した。

「おまえは隠しているだろうな。おれよりも感情を押し殺すことは上手いようだしな」

「え…な、なんのことかな?」

ミツルの振りに、冷や汗を一筋たらすあゆ。

 

「いやぁ、羨ましいなぁ~!初々しいなぁ~!」

 

近づいてくる声。

振り返ると、警備員らしき青年が屈託の無い笑顔で歩み寄ってきた。中くらいの大きさのダンボールを抱えている。

「若い少年と少女の恋!あこがれるなぁ~!」

「なんだ貴様?」「ミツル、失礼だって!」

少し怪しむミツル。

「あぁ、ゴメンゴメン。名乗りたいんだけどね、名詞忘れちゃってさ。まぁ、ここは偶然、出会ったイケメン警備員ってことで!」

随分とフレンドリーな警備員である。

「ところでさ、そこの君」

そう言って、警備員はミツルを指差す。

「なんだ?」

「お宅さ、いろいろ吹っ切れたんだ。昔は自分の願いにだけ執着して、周りを見てなかったみたいだけど、今は目の前のこと以外にも見えてるんだね。教えたいことが色々あったんだけど、君に関しては大丈夫そうだな。自分の本当の願いが叶ったとき、残った叶えるための力を正しく使えている。俺も「百合絵さん」って婚約者がいてね。彼女と出会えたとき、残された力を上手く使えなかった…」

「わけが分からん…」

彼はどうやらミツルに伝えたいことがあったらしいが、今はその必要はなくなったらしい。

「そうだ。教える代わりに、この子、貰ってくれない?周りの住民がうるさくてさ。保健所に引き渡すのも可哀想でね」

ダンボールをあけると、そこには小さな猫がいた。

「ウニャ~」

「あ、たい焼きつまみ食いしてた、猫ちゃん!」

「うそ!?」

覚えているだろうか。第2話であゆが竜也に伝えたことを…。

 

「たい焼き屋さんでたい焼きを買ったんだ…。でも、お金がないことに気がついて…」

「そのとき、猫(・)ちゃんがやって来て、置いてたたい焼きをつまみ食いしようとしてたの…。そしたら、おじさんがものすごい怒って、それで怖くなって…」

 

その猫がこれなのだ。

「泥棒する猫を、おれ達が飼えって言うのか?」

呆れ口調で言うミツル。

「あうぅ…!」

突然、真琴が首を振り、猫を抱きかかえる。少しだけ上目遣いになり、涙を目に溜めてミツルを見つめる。

「くっ…。竜也、家にこいつを飼えるスペースの余裕あるか? エサ代諸々は、おれが払う」

「おれは良いよ。それにエサ代とかだって、おれもちょっとは出すよ。家族がまた増えるなんて、嬉しいからね。あゆは?」

「ボクも賛成!」

満場一致。この猫は竜也の家に住むことになりそうだ。

「助かったよ。じゃ、後よろしく!あ、最後に言っとくよ。大切なのは願いを叶えるまでじゃなくて、叶えたあと」

「まったく…。猫を押しつけやがって…ん?」

猫をチラリと見た後、警備員のいた方向を見ると。

 

彼は消えていた。

 

「どこ行ったんだろ?」「逃げ足だけは速いらしいな…」

「この前の占い師の人と言い、最近は急に消える人が多いね」

警備員のことはさほど不思議に思ってはおらず、早速、猫の名前決めが始まる。

「こいつ、名前どうする?」

「あうぅ…」

真琴が地面の砂で文字を書き始めた。

 

‘’ピロ’’

 

それを書くと、ミツルの腕に抱きつく。

「ピロ…それでいくか。名前決めに時間かけることも面倒だしな。異論はあるか?」

「ピロ、良い名前貰ったね!」「よろしく、ピロ!」

 

「みんなぁ!」

 

遠くから2人を呼ぶ声がする。

名雪とサトル、そして久瀬だった。

「さっき、爆発がきこえたんだが…」

「遅いぞ久瀬。もうおれと竜也で片付けた」「ありがとうございます。もう大丈夫ですよ」

「そ、そうか…。とりあえずは安心したよ」

ミツルと竜也の言葉で安堵する久瀬。

「わぁ、猫だぁ!」「な、なゆちゃん!猫アレルギーでしょ!?」

名雪は、真琴が抱いているピロを見た途端、大好きなものを見つけたかのように近寄ろうとする。

しかし彼女は、猫に触れると涙や鼻水が出てしまう、いわゆる猫アレルギーなのだ。そのことを知っているサトルは、何とか引き離そうとする。

「ピロって言うんだよ。あ、今からピロの世話道具を買いにいかないと…。ミツル、真琴ちゃん、先に帰って、ピロと遊んであげて。久瀬さん、あゆ、手伝ってくれる?」

「あぁ、構わないよ」「うん、いいよ!」

そう言って、3人は街へと戻っていった。

「そういえば、クリスマスが近いね。なにか、計画してみようかなぁ…」

ふと独り言を呟きながら、竜也は歩いていった。

 

名雪とサトルと別れ、帰り時の途中。

「そういえば真琴。おまえ最近、マンガをよく読むな」

ミツルがそういったのは、ときより書店に立ち寄ったとき、真琴はよく少女マンガを立ち読みしている姿を見るからだ。

「あうぅ…」

ミツルの初任給で買い与えたマンガがあるのだが、それを真琴は肌身離さず持っている。

ページをめくり、一つの単語を指差す。

 

結婚

 

少女マンガではよくある話なのだが、彼女はこれをずっと見ていたらしい。先ほどの警備員が言った婚約者等の話も、真琴はかなり聞いていたような気がする。

「結婚か…」

真琴は以前、ミツルと一度別れる前のときに、高熱を出していた。そのとき、おぼろげに彼女が自分と結婚をしたいと呟いていたことをふと思い出した。

 

「あうぅ…くるしい…」

「しっかりしろ。いたずらを成功させるんだろ?」

「ミツルぅ…そばにいてくれる?」

「…」

そのときのミツルは復讐に燃えており、自分と一緒に居れば、彼女を巻き込んでしまう。そのことは良く思っていなかった。

だから、その答えは出せなかった。

「そうだ…結婚…。結婚したら、ずっと…一緒なんだよね?」

彼女はミツルと、どうしても一緒にいたかった。

だから、彼女が知っている大好きな人とずっと一緒にいることの出来る唯一の方法を、口にした。

「…春が来たらな」

真琴を悲しませないための嘘だった。

その言葉を嬉しそうな表情で受け止めた。

「そうだね…春が来て…結婚して…ずっと春だったらいいのに…」

 

だが、今は違う。

「…大丈夫だ。結婚なんてしなくても、おれがおまえを離さない。でも…おれにおまえを絶対に守ることの出来る自身が着いたら…」

一呼吸置いて、真琴と正面を向いて言う。

「真琴、結婚してくれ」

今までの中で、これ以上無いほど幸せそうな表情で頷く真琴。

「あ…ぃあぁ…と…」

かすれるような声だったが「ありがとう」と言った事は分かる。

「こっちこそありがとな」

 

「ふふ、盗み聞きは無粋と思いましたが、聞かせていただきました」

「天野…!?」

物陰から、美汐が現れた。

「あうぅ…」

真琴も恥ずかしいらしく、顔を真っ赤にしてミツルの後ろに隠れる。

「わたし、2人の婚約の証人にさせていただきますね」

「…くえない奴だな。さて帰るか。竜也とあゆも帰ってきたら、一緒に飯を喰うぞ。天野もどうだ?」

美汐がニコニコしているのが気に食わないのか、ぶっきらぼうに言い捨て、歩き去ってしまったミツル。

真琴は美汐の腕を引っ張り、彼を追いかけた。

「大丈夫ですよ。あの人はとても優しい人ですから…」

 

これから降りかかる戦いの間の小さな安らぎのときである…。

 

彼らは、この安らぎを果てるまで続けられるようになるため、戦い続けるのだ…。

 

仮面ライダーとして…

 

そして人間として…。

 

 





キャスト

斉藤ミツル=仮面ライダーインペラー

沢渡真琴

天野美汐

虎水サトル=仮面ライダータイガ
水瀬名雪
久瀬シュウイチ=仮面ライダーゾルダ

警備員

月宮あゆ

龍崎竜也=仮面ライダー龍騎
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