仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon Trilogy~ 作:龍騎鯖威武
「再臨」
「はぁっ…!はぁっ…!」
少年が死に物狂いで走っている。
彼は、ある青年に託された。
「ここで、正しい心を持った仮面ライダーを潰えさせては駄目だ。お前なら正しい心を持って戦えると信じている。仮面ライダー龍騎になって戦え!そして、お前が本当に信頼できる仲間に他のデッキを託して、共に人々を救え!」
「僕が継がないと…そうしなきゃ!」
少年…竜也はひたすら走る。
すると…。
キィィン…キィィン…
「な…!これが、モンスターの気配!?」
突如、耳鳴りのような音が聞こえる。
モンスターの接近音だが、これを聞くのは初めてだ。
「グウウウゥ!」
現れたシアゴーストの群れ。恐らく、追っ手だろう。
辺りを囲うように立ち塞がり、逃げ場はないように思える。
…と思ったが、よく観察すると、何とか抜けられそうな隙間がある。
ここから逃げ出そう。今は、逃げなくては。
だが…。
「…そうだ。逃げてたら、真司さんと、また会えない…!人を…守れない!」
意を決する。
この選択が例え修羅の道になるとしても。
竜也は決めた。
「…っ!」
青年…城戸真司から託されたモノであるカードデッキを、モンスターに見せるように突き出す。
使い方は熟知している。
彼のイメージどおり、腰に白銀のベルト、Vバックルが装着される。
右手を平たく斜め上に突き出し、大きく叫ぶ。
「変身っ!」
そして、カードデッキをVバックルに装填する。
すると、竜也の周りに幾つもの虚像が現れ、眩い光と共に彼を包み込む。
そこには、竜也の姿は無かった。…いや、姿を変えたのだ。
仮面ライダー龍騎へと…。
「しゃあっ!」
かつて城戸真司が意気込んでいたように、彼も意気込み、モンスターに向かって走り出す。
「だあぁっ!」
ドガァッ!
「グゥウウ!?」
自分の力とは思えなかった。
まるで、小石が遠くへ飛ぶように、シアゴーストは吹き飛ばされた。
「これが…仮面ライダー龍騎…」
両手を見つめて、改めてその力の凄まじさを実感する。
だが、敵は怯まず次々と襲い掛かってくる。
「…なら!」
デッキからアドベントカードを引く。そこには、青龍刀が描かれている。
左手にあるドラグバイザーに挿入し、セットするベントインを行なった。
<SWORD VENT>
右手にカードに描かれていたドラグセイバーが現れた。
「はあぁっ!」
ザンッ!
「グゲェアウ!」
襲い掛かってきたシアゴーストに向かって、それを思い切り振り下ろす。
少し抵抗があったが、結局あっさりと強固なシアゴーストの皮膚は切り裂かれた。
地面に倒れ、もがき苦しむシアゴースト。
その光景を見て、龍騎に一つの言葉がよぎる。
モンスターも生きているんじゃないのか…?
そう、モンスターには凶暴性しかないものの、確かに生命体ではある。
人を守ると言うことも、究極は命を守ると言うことだ。
ならば…たとえ、人の命を奪う存在だとしても、彼らの命を奪うことは、許される行為なのか?
さっきまで決めていたはずの決意は、早くも揺らぎ始めた。
ズガァ!
「ぐあぁ!?」
自問自答している間に、背後から攻撃を受ける龍騎。
スーツ越しだからと言って、その攻撃のダメージ全てを防ぐことが出来るわけではない。
もちろん、怪我もするし、痛みも伴う。戦うとは、こういうことなのだ。
苦痛を体験して、再確認するとは皮肉だった。
ただ、そこで立ち止まるわけにはいかない。
…とは言え、今の彼にこれ以上の攻撃は出来なかった。
「ガアアアアアアアアアアァ!」
「ドラグレッダー!?」
ドガアアアアアアアァ!
「グウウゥ!?」「グゥエェ!」
突如、契約モンスターである、無双龍ドラグレッダーが龍騎のもとに現れ、シアゴーストを薙ぎ払った。
「ドラグレッダー、ここから逃げるから手を貸して!」
龍騎はドラグレッダーの背中に飛び乗り、そのまま、大空へと飛んでいく。
ドラグレッダーが守っていたはずの城戸真司のことが脳裏をよぎったが、今の彼にはどうすることも出来なかった。
大空を舞うドラグレッダーの背中は、何故か心地よかった。
少しずつ、睡魔が襲う。
そのまま、紅い龍の背中に身を預け、変身を解いた竜也は意識を闇の中に落とした。
夢…。
夢を見ている…。
毎日見ている夢。
終わりのない夢。
赤い雪、赤く染まった世界。
夕焼け空を覆うように、小さな子供が泣いていた。
せめて、流れる涙をぬぐいたかった。
だけど、手は動かなくて。
頬を伝う涙は、雪に吸い込まれて。
見ていることしかできなくて、悔しくて、悲しくて…。
大丈夫だから…。
だから泣かないで。
約束だから…。
それは誰の言葉だったろう…夢は別の色に染まっていく。
夢の中にいる竜也。
これは…何の夢なのだろう…?
何気なく、外に出ていた自分。鼻を啜り、寒さに身震いする。
その姿は、7年前の姿だった。
「…?」
背中に何かぶつかった感触があった。振り向くと、同い年くらいの少女が、泣きじゃくっていた。
「うぐぅ~…」
「な、なんだ?」
いきなり目の前に現れた、泣きじゃくる少女に対して、竜也は困り果てる。この場合、どうすればいいのだろう…。
必死に考え、思いついたアイデアは、名前を聞くことだった。
我ながら、捻りのないアイデアだと落胆しつつ聞いた。
少女を怯えさせないように、穏やかな表情を見せることも忘れない。
「とりあえず、名前を教えて…?僕は龍崎竜也」
「ぐすっ…あゆ…」
なんとか、名前は名乗ってくれた。だが、苗字が分からない。改めて聞く。
「えっと…苗字は?」
「あ、あゆぅ…」
…あゆ?
名前があゆで、苗字もあゆ。
ということは…。
「…じゃあ、あゆあゆなの?」
「ち、ちがうよぉ…」
あゆと名乗る少女は、身を揺すって否定する。その表情に悲しさが、さらに浮き出た。
「じゃあ、苗字は…?」
「…ぐすっ」
何故か答えてくれない。聞かない方がいいのだろうか…?
「う~ん…」
首を捻って、これからどうするか考えていると、周りの人からヒソヒソと話し声が聞こえた。
「なに、いじめられてるの?」「あぁ~あ、かわいそうに…」
不味い、勘違いされている。
「よ、よし、場所変えて、話し聞かせて、あゆ!」
「うぐぅ…」
あゆの手を引いて、走り出した。
そして、夜は明けていく…。
「…?」
目を覚ますと、そこは何処かの事務室のようだ。
「大丈夫?」「あ、起きた!」
「驚いたよ。まさか、あんなところに倒れてるんだからな」
話しかけてきたのは、一人の男性と、竜也のことを興味深そうに覗き込む、メガネをかけた奇抜な髪型の女性と、いかにも今時と思わせるようなファッションに身を包んだ女性。
遠くには、仕事に生きる姿を体現したような女性が、パソコンに向かっている様子も伺えた。
「あぁ、安心しろ。ここは怪しくて、おっかないとこじゃねぇよ」
二カッと笑う男性。悪い人達ではないようだ。少なくとも、竜也にはそう思えた。
「自己紹介がまだだったな。俺は、この情報配信社「OREジャーナル」編集長、大久保大介」
「あたしは浅野めぐみ!「めぐみ」って呼んで!」
「あっちに居るのは、桃井令子。ここに運んでくるとき、手伝ってくれたんだよ」
「私は島田奈々子。君は?」
3人が、パソコンに向かっている「桃井令子」を含めて自己紹介をしてくれたので、自分も自己紹介した。
実はこの令子、後に久瀬に話しかけた「スーパー弁護士を名乗る男」がアプローチしている女性なのだ。
だが、それを知る術は、今の竜也にはない。
「あ、僕は龍崎竜也です。助けていただいて、ありがとうございます」
「竜也って言うのか」
名乗ってくれたことに喜んでいるのか、竜也の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「お前、なにか背負ってるな?」
「えっ?」
大久保の突然の質問に、竜也はうろたえる。しかも、的中しているから尚更だ。
「昔な。ここに、おまえとよぉ~く似たヤツが来たときがあってな。名前も顔も知らないヤツなんだけど、初対面なのに俺や令子達のことを知ってるように接した。そいつも、何か重いモン背負ってる気がしてよ」
大久保編集長の脳裏によぎる、その青年。
…それが竜也の「誰よりも尊敬する人物」だと、誰が予想できたであろうか…。
「結局たった一日で、ソイツは居なくなっちまった。ソイツと同じ顔してるんだよ、お前。何があったか知らないけど、気負い過ぎんなよ?」
もう一度、ニカッと笑う大久保。
「…僕、わかんないんです。助けたい人がいて…でも助けようとすると、別の人を犠牲にしなくちゃいけなくなるんです。…どっちも犠牲にしたくないとき…どうしたら…っ!」
「アッハハハハハハハハハ!」
言い続ける言葉を遮るように、大久保が大口を上げて笑い出した。
突然のことに、竜也はビクッと驚く。
「上等だよ、コンニャロ!良いんだよ、答えなんか分かんなくて!考えてんだろ、その出来の悪そうな頭で。それだけで十分じゃないのか?…俺はそう思うぜ?」
「大久保さん…」
次に大久保編集長は真面目な表情になって、竜也の肩に手を置く。
「ただしだ。何が分からないかは良いが、そのなかにお前の選択肢も、ちゃんと入れとけよ?」
「僕の選択肢…?」
「…お前が信じるモノだよ。お前も心の中に「芯」がないと、話し合いにもならないし、誰もお前の話なんか聞いてくれない。…な?」
「僕の…信じるモノ…」
竜也の中に何かが生まれようとしていた。
今まで興味がなさそうにしていた令子だが、後姿の竜也を見て、優しく微笑んだ。
それは、めぐみと奈々子も同様だ。
キィィン…キィィン…
「…大久保さん、それに令子さん、めぐみさん、奈々子さん、ありがとうございました!」
そういい残して、外へ飛び出した竜也。
自分の「芯」を強く持ち直し、あらためて戦いの場へと赴くために…。
キャスト
龍崎竜也=仮面ライダー龍騎
あゆ
桃井令子
島田奈々子
浅野めぐみ
大久保大介
城戸真司=仮面ライダー龍騎(初代)