仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon Trilogy~   作:龍騎鯖威武

6 / 11
序曲 ~EPISODE Kanon First~
「再臨」


 

「はぁっ…!はぁっ…!」

少年が死に物狂いで走っている。

彼は、ある青年に託された。

 

「ここで、正しい心を持った仮面ライダーを潰えさせては駄目だ。お前なら正しい心を持って戦えると信じている。仮面ライダー龍騎になって戦え!そして、お前が本当に信頼できる仲間に他のデッキを託して、共に人々を救え!」

 

「僕が継がないと…そうしなきゃ!」

少年…竜也はひたすら走る。

すると…。

 

キィィン…キィィン…

 

「な…!これが、モンスターの気配!?」

突如、耳鳴りのような音が聞こえる。

モンスターの接近音だが、これを聞くのは初めてだ。

「グウウウゥ!」

現れたシアゴーストの群れ。恐らく、追っ手だろう。

辺りを囲うように立ち塞がり、逃げ場はないように思える。

…と思ったが、よく観察すると、何とか抜けられそうな隙間がある。

ここから逃げ出そう。今は、逃げなくては。

だが…。

「…そうだ。逃げてたら、真司さんと、また会えない…!人を…守れない!」

意を決する。

この選択が例え修羅の道になるとしても。

竜也は決めた。

「…っ!」

青年…城戸真司から託されたモノであるカードデッキを、モンスターに見せるように突き出す。

使い方は熟知している。

彼のイメージどおり、腰に白銀のベルト、Vバックルが装着される。

右手を平たく斜め上に突き出し、大きく叫ぶ。

「変身っ!」

そして、カードデッキをVバックルに装填する。

すると、竜也の周りに幾つもの虚像が現れ、眩い光と共に彼を包み込む。

そこには、竜也の姿は無かった。…いや、姿を変えたのだ。

 

仮面ライダー龍騎へと…。

 

「しゃあっ!」

かつて城戸真司が意気込んでいたように、彼も意気込み、モンスターに向かって走り出す。

「だあぁっ!」

ドガァッ!

「グゥウウ!?」

自分の力とは思えなかった。

まるで、小石が遠くへ飛ぶように、シアゴーストは吹き飛ばされた。

「これが…仮面ライダー龍騎…」

両手を見つめて、改めてその力の凄まじさを実感する。

だが、敵は怯まず次々と襲い掛かってくる。

「…なら!」

デッキからアドベントカードを引く。そこには、青龍刀が描かれている。

左手にあるドラグバイザーに挿入し、セットするベントインを行なった。

<SWORD VENT>

右手にカードに描かれていたドラグセイバーが現れた。

「はあぁっ!」

ザンッ!

「グゲェアウ!」

襲い掛かってきたシアゴーストに向かって、それを思い切り振り下ろす。

少し抵抗があったが、結局あっさりと強固なシアゴーストの皮膚は切り裂かれた。

地面に倒れ、もがき苦しむシアゴースト。

その光景を見て、龍騎に一つの言葉がよぎる。

 

モンスターも生きているんじゃないのか…?

 

そう、モンスターには凶暴性しかないものの、確かに生命体ではある。

人を守ると言うことも、究極は命を守ると言うことだ。

ならば…たとえ、人の命を奪う存在だとしても、彼らの命を奪うことは、許される行為なのか?

さっきまで決めていたはずの決意は、早くも揺らぎ始めた。

 

ズガァ!

「ぐあぁ!?」

自問自答している間に、背後から攻撃を受ける龍騎。

スーツ越しだからと言って、その攻撃のダメージ全てを防ぐことが出来るわけではない。

もちろん、怪我もするし、痛みも伴う。戦うとは、こういうことなのだ。

苦痛を体験して、再確認するとは皮肉だった。

ただ、そこで立ち止まるわけにはいかない。

…とは言え、今の彼にこれ以上の攻撃は出来なかった。

「ガアアアアアアアアアアァ!」

「ドラグレッダー!?」

ドガアアアアアアアァ!

「グウウゥ!?」「グゥエェ!」

突如、契約モンスターである、無双龍ドラグレッダーが龍騎のもとに現れ、シアゴーストを薙ぎ払った。

「ドラグレッダー、ここから逃げるから手を貸して!」

龍騎はドラグレッダーの背中に飛び乗り、そのまま、大空へと飛んでいく。

ドラグレッダーが守っていたはずの城戸真司のことが脳裏をよぎったが、今の彼にはどうすることも出来なかった。

 

大空を舞うドラグレッダーの背中は、何故か心地よかった。

少しずつ、睡魔が襲う。

そのまま、紅い龍の背中に身を預け、変身を解いた竜也は意識を闇の中に落とした。

 

 

 

 

 

夢…。

 

夢を見ている…。

 

毎日見ている夢。

 

終わりのない夢。

 

赤い雪、赤く染まった世界。

 

夕焼け空を覆うように、小さな子供が泣いていた。

 

せめて、流れる涙をぬぐいたかった。

 

だけど、手は動かなくて。

 

頬を伝う涙は、雪に吸い込まれて。

 

見ていることしかできなくて、悔しくて、悲しくて…。

 

大丈夫だから…。

 

だから泣かないで。

 

約束だから…。

 

それは誰の言葉だったろう…夢は別の色に染まっていく。

 

 

 

夢の中にいる竜也。

これは…何の夢なのだろう…?

何気なく、外に出ていた自分。鼻を啜り、寒さに身震いする。

その姿は、7年前の姿だった。

「…?」

背中に何かぶつかった感触があった。振り向くと、同い年くらいの少女が、泣きじゃくっていた。

「うぐぅ~…」

「な、なんだ?」

いきなり目の前に現れた、泣きじゃくる少女に対して、竜也は困り果てる。この場合、どうすればいいのだろう…。

必死に考え、思いついたアイデアは、名前を聞くことだった。

我ながら、捻りのないアイデアだと落胆しつつ聞いた。

少女を怯えさせないように、穏やかな表情を見せることも忘れない。

「とりあえず、名前を教えて…?僕は龍崎竜也」

「ぐすっ…あゆ…」

なんとか、名前は名乗ってくれた。だが、苗字が分からない。改めて聞く。

「えっと…苗字は?」

「あ、あゆぅ…」

…あゆ?

名前があゆで、苗字もあゆ。

ということは…。

「…じゃあ、あゆあゆなの?」

「ち、ちがうよぉ…」

あゆと名乗る少女は、身を揺すって否定する。その表情に悲しさが、さらに浮き出た。

「じゃあ、苗字は…?」

「…ぐすっ」

何故か答えてくれない。聞かない方がいいのだろうか…?

「う~ん…」

首を捻って、これからどうするか考えていると、周りの人からヒソヒソと話し声が聞こえた。

「なに、いじめられてるの?」「あぁ~あ、かわいそうに…」

不味い、勘違いされている。

「よ、よし、場所変えて、話し聞かせて、あゆ!」

「うぐぅ…」

あゆの手を引いて、走り出した。

 

 

 

そして、夜は明けていく…。

 

 

 

「…?」

目を覚ますと、そこは何処かの事務室のようだ。

「大丈夫?」「あ、起きた!」

「驚いたよ。まさか、あんなところに倒れてるんだからな」

話しかけてきたのは、一人の男性と、竜也のことを興味深そうに覗き込む、メガネをかけた奇抜な髪型の女性と、いかにも今時と思わせるようなファッションに身を包んだ女性。

遠くには、仕事に生きる姿を体現したような女性が、パソコンに向かっている様子も伺えた。

「あぁ、安心しろ。ここは怪しくて、おっかないとこじゃねぇよ」

二カッと笑う男性。悪い人達ではないようだ。少なくとも、竜也にはそう思えた。

「自己紹介がまだだったな。俺は、この情報配信社「OREジャーナル」編集長、大久保大介」

「あたしは浅野めぐみ!「めぐみ」って呼んで!」

「あっちに居るのは、桃井令子。ここに運んでくるとき、手伝ってくれたんだよ」

「私は島田奈々子。君は?」

3人が、パソコンに向かっている「桃井令子」を含めて自己紹介をしてくれたので、自分も自己紹介した。

実はこの令子、後に久瀬に話しかけた「スーパー弁護士を名乗る男」がアプローチしている女性なのだ。

だが、それを知る術は、今の竜也にはない。

「あ、僕は龍崎竜也です。助けていただいて、ありがとうございます」

「竜也って言うのか」

名乗ってくれたことに喜んでいるのか、竜也の頭をくしゃくしゃと撫でる。

「お前、なにか背負ってるな?」

「えっ?」

大久保の突然の質問に、竜也はうろたえる。しかも、的中しているから尚更だ。

「昔な。ここに、おまえとよぉ~く似たヤツが来たときがあってな。名前も顔も知らないヤツなんだけど、初対面なのに俺や令子達のことを知ってるように接した。そいつも、何か重いモン背負ってる気がしてよ」

大久保編集長の脳裏によぎる、その青年。

 

…それが竜也の「誰よりも尊敬する人物」だと、誰が予想できたであろうか…。

 

「結局たった一日で、ソイツは居なくなっちまった。ソイツと同じ顔してるんだよ、お前。何があったか知らないけど、気負い過ぎんなよ?」

もう一度、ニカッと笑う大久保。

「…僕、わかんないんです。助けたい人がいて…でも助けようとすると、別の人を犠牲にしなくちゃいけなくなるんです。…どっちも犠牲にしたくないとき…どうしたら…っ!」

「アッハハハハハハハハハ!」

言い続ける言葉を遮るように、大久保が大口を上げて笑い出した。

突然のことに、竜也はビクッと驚く。

「上等だよ、コンニャロ!良いんだよ、答えなんか分かんなくて!考えてんだろ、その出来の悪そうな頭で。それだけで十分じゃないのか?…俺はそう思うぜ?」

「大久保さん…」

次に大久保編集長は真面目な表情になって、竜也の肩に手を置く。

「ただしだ。何が分からないかは良いが、そのなかにお前の選択肢も、ちゃんと入れとけよ?」

「僕の選択肢…?」

 

「…お前が信じるモノだよ。お前も心の中に「芯」がないと、話し合いにもならないし、誰もお前の話なんか聞いてくれない。…な?」

 

「僕の…信じるモノ…」

竜也の中に何かが生まれようとしていた。

今まで興味がなさそうにしていた令子だが、後姿の竜也を見て、優しく微笑んだ。

それは、めぐみと奈々子も同様だ。

 

キィィン…キィィン…

 

「…大久保さん、それに令子さん、めぐみさん、奈々子さん、ありがとうございました!」

そういい残して、外へ飛び出した竜也。

自分の「芯」を強く持ち直し、あらためて戦いの場へと赴くために…。

 

 

 

 





キャスト

龍崎竜也=仮面ライダー龍騎

あゆ

桃井令子
島田奈々子
浅野めぐみ

大久保大介

城戸真司=仮面ライダー龍騎(初代)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。