仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon Trilogy~   作:龍騎鯖威武

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「異形」

あれから6ヵ月後。

竜也は、NoMenに召集され、城戸真司のスクーターを使って、指定された場所に呼び出された。

本部はあるらしいが、実際の場所は知らない。

指定された場所は、人が集まりそうにない、静かな空き地のような場所だった。

そこには、2人の男性…香川ヒロユキと仲村ソウイチの姿があった。

城戸真司と離れて以来、会うのは初めてだった。

「…おや、城戸真司さんの姿が見えませんね?」

もちろん、そのことを香川は知らない。気になった言葉に、竜也は苦虫を噛み潰すような表情で答えた。

「…何処にいるか分かりません。おれにこのデッキを託して…」

手元にあるのは龍騎のデッキと装着者のいない4枚のデッキ。

後の仮面ライダーナイト、仮面ライダーファム、仮面ライダーライア、仮面ライダーゾルダの変身者に受け継がれるものだ。

仲村は、それを見て合点がいった様子で言う。

「では、今は貴方が仮面ライダー龍騎ですか。手続きは私共の方で済ませておきましょう。これからも変わりなく、報酬を定期的に渡します」

「ありがとうございます」

「…そのデッキ、私達に預けるつもりはありませんか?」

香川が少し興味を示す。

何を隠そう、彼は科学者。未知の技術が込められた塊に興味を示すことは、至極、当たり前のことなのだ。

「それはできません…。真司さんから「心から信頼できる人に渡して、共に戦え」って言ってましたから…」

「我々が信用できないと?」

「違います。「共に戦う」ってことです。…仮面ライダーになるってことは、自分が思っていたことより辛いことでしたから…」

そう言ってスクーターにまたがり、走り去った。

 

「…やはり信用できないのですね。まぁ、私も「仮面ライダー」など、微塵も信用していないのですが」

 

 

 

 

 

夢…。

 

夢を見ている…。

 

毎日見ている夢。

 

終わりのない夢。

 

赤い雪、赤く染まった世界。

 

夕焼け空を覆うように、小さな子供が泣いていた。

 

せめて、流れる涙をぬぐいたかった。

 

だけど、手は動かなくて。

 

頬を伝う涙は、雪に吸い込まれて。

 

見ていることしかできなくて、悔しくて、悲しくて…。

 

大丈夫だから…。

 

だから泣かないで。

 

約束だから…。

 

それは誰の言葉だったろう…夢は別の色に染まっていく。

 

 

 

夢の中。

「えっと…なんで泣いてたの?」

あゆがようやく落ち着きを取り戻したので、理由を聞いてみた。

「おかあさんが…居なくなったの。もう、二度と会えないの…」

…幼い竜也にもどういう意味か、一瞬判断に迷ったが、今はちゃんと理解した。

だから、どう声をかければいいのかがわからない。

 

くぅ~…

 

泣いていて赤かった顔がさらに赤くなり、うつむくあゆ。

「もしかして…おなか減ったの?」

無言でこくりと頷く。

「…ちょっと待ってて!」

 

それから数分後。

「はい!」

竜也は手に紙袋を持ってきて、その中からあるものを渡した。

「…たいやき?」

「うん、近くで売っててさ。食べなよ!」

おずおずと、あゆはたいやきを頬張る。

「おいしい?」

「…甘いけど、ちょっとしょっぱい…」

不思議そうな顔をして言う。竜也はあゆの頬を見て意味を理解する。

「泣いてるからだよ。泣かなかったら、きっと甘くておいしいはずだよ!」

「そうなのかな…?」

「そうだよ!だから、笑って?…僕も笑うから!」

 

 

 

そして、夜は明けてゆく…。

 

 

 

 

 

 

 

さらに一週間が過ぎた。

時期は夏。

暑さで渇いた喉を潤すために、喫茶店に入った。

 

その名は「花鶏」。

 

「すいません、アイスコーヒーください」

店内で注文するが、店主らしき女性はきっぱりと返す。

「コーヒーは無い。紅茶だけ」

「あ…あの、じゃあそれのアイスティー…ですか?それください…」

ちょっと、怖気づきながらも改めて注文する。

「はい!」

ウエイトレスだろうか。同い年くらいの少女が、元気に返事をしてアイスティーの準備を始めた。

「いい娘でしょ」

「え?あ、はい…」

突如、先ほどのウエイトレスについて、店主の女性から話しかけられたので、戸惑いつつも返事をする。

「よく似てるのよ。あの写真の娘に」

顎でさす先には、コルクボードに数枚の写真が貼り付けられ、どの写真にも2人の少年と少女が写っていた。

「優衣って言ってね、アタシの姪っ子。もう一人は、その兄の士郎。優衣はこの世に居ないし、士郎も行方不明だけど」

「あの…なんかすいません」

竜也が申し訳なさそうに謝ると、店主は豪快に笑う。

「いいのよ!アタシがペラペラ喋ったことだからね!…そうそう、さっきの娘!優衣によく似てるだろう?」

「…そうですね。いわれてみれば」

実際は、写真よりも大きいが、雰囲気などは結構酷似している。生き写しとまでは行かないが。

「偶然にも「ユイ」って言ってね。あの娘も身寄りが無くて、アタシが引き取ったの。苗字も無かったから、アタシの家の苗字を使ってるわ。あ、アタシは「神崎沙奈子」って言うのよ」

ユイの紹介ついでに自分の名前も名乗った沙奈子。

「おまたせしました、アイスティーです!」「ありがとうございます」

ちょうど、ユイがアイスティーを持ってきた。

「あ、ちょうど良かった。ユイ、このお兄さんとお話したら?同い年のお友達が欲しいって言ってたでしょ?」

「え、でも…」

「そうそう、アタシこれから「アマゾン同好会」に行かなくちゃならないの。悪いけど2人で店番頼めない?」

「ぼ、僕、客ですよ?…信用できないでしょう?」

「大丈夫、アタシの勘に間違いは無いわ!じゃあ頼むわね!」

かなり強引に物事を進める沙奈子。肝っ玉の雰囲気が身についている女性だと、竜也は感じた。

そう感じていると、すぐさま沙奈子は店から去っていった。

「えっと…ユイさん、ですよね?」

「はい!よろしくお願いします!あと、ごめんなさい、沙奈子おばさんが余計な事言って…」

元気さが取り柄と言った雰囲気だ。しかし、謝るときはすこし、しおれてしまう娘と言う印象を受けた。

「そんなことありませんよ。僕は龍崎竜也です、よろしくお願いします」

ユイに対して嫌悪感は無く、自然な会話は出来た。

ただ、これ以上関わってはいけないようにも感じた。

 

なぜなら、自分は仮面ライダー龍騎だから。

 

「竜也さんですね!…えっと、この近くに住んでるんですか?」

「あ、いや。僕はずっと遠くに住んでいて、今は色んな所を転々としながら生活してます。だから、友達もあまり多くはなくて…」

それを聞いたユイは聞いてはいけないことを聞いたのかと思い、すこし申し訳なさそうに言った。

「あ、えっと…ごめんなさい」

「ユイさんは悪くないですよ。僕は…」

 

キィィン…キィィン…

 

「っ!?」「竜也さん?」

突如、モンスターの接近音が聞こえ、竜也の表情は自然と険しくなる。

「キィィィ!」

「きゃあぁっ!?」

花鶏の中に、猿型モンスター「デッドリマー」が侵入する。

「やだっ!来ないで!来ないでよ!」

ユイは取り乱し、壁際に逃げる。

「こっちです!」

竜也はユイの手をとって、花鶏を飛び出す。

 

かなり走った後、2人は地面に座り込んで荒い息遣いをしつつ会話する。

「はぁ…はぁ…ごめんなさい、急に驚いて…」

「いや…良いですよ。あんなの見たら、ビックリしますよね…」

竜也の言葉に、首を振るユイ。

「わたしに身寄りが無いって話、沙奈子おばさんから聞きましたよね?…わたしのお父さんとお母さん、あの怪物に殺されたんです」

「そんな…」

モンスターが呼ぶ悲劇は、こんなところにまで来ていた。その事実に竜也は絶望した。

「そのときの事が、頭から離れなくて…」

再び、顔を伏せるユイ。

竜也は、彼女の気持ちを何とか拭いたかった。

「…僕が行ってきます。あなたは、ここでじっとしていてください!」

「た、竜也さん!?」

 

「あれか…!」

走りついた先には、デッドリマーが暴れていた。

竜也に気付いたデッドリマーは、手に持っていた銃型の武器を構える。

「キィィィ…!」

「僕は戦う!倒すためじゃない。おまえ達のために傷ついた人達の苦しみを取り除く!それが僕の戦う意味だ!」

決意を胸に、デッキを構える。

「変身っ!」

現れたのは、一人の戦士。城戸真司の願いを受け継いだ、決意の紅い騎士。

 

「しゃあっ!」

 

「竜也さん…!」

その姿をユイが見ていた事を龍騎は知らない。

 

「くっ…」

決意したとは言え、戦う事に躊躇する気持ちがなくなったわけではない。

「はああああああああああああぁ!」

それでも心の迷いを必死に振り払い、目の前のモンスターに、思い切り拳を突き立てる。

ドガアァ!

「ギャアアァ!」

「ひっ!?」

吹き飛ばされた先には、ユイがいた。

デッドリマーは、ユイに目を向け、新たに狙いを定める。

「グウウウウゥ!」

デッドリマーが掴みかかり、ユイは錯乱する。

異形に殺されるかもしれない恐怖で正常な意識が働かなかったのだろう。

「ゆ、ユイさんっ!?」

「きゃあっ!離してっ、助けてええええぇ!」

ユイを救うべく、デッドリマーを突き飛ばす。

「はあっ!」

「グギァ!?」

デッドリマーと距離を置き、ユイに近寄る龍騎。

「大丈夫ですか!?」

手を差し伸べるが…。

 

「いやっ!こ、来ないでバケモノ!」

 

「ち、違います!僕は、あなたを守ろうと…」

「いや…いやあああああああああああぁ!」

なんとか弁解しようとしたものの、話は全く聞いてもらえず、彼女は走り去ってしまった。

「どうして…?僕は、守りたいだけなのに…。こんなことなら…いっそ…」

悲しかった。

人のために戦っていたつもりなのに、その人から拒絶される。

 

「キィィィ!」

立ち上がったデッドリマーは、ユイに銃口を向ける。

「っ!?ユイさん、避けて!」

 

ダァン!

 

間に合わなかった。

「…あぁ…かはっ…」

鮮血を噴出しながら、ゆっくりと地面に倒れ伏すユイ。

「ユイさんっ!ユイさんっ!」

龍騎は駆け寄り、必死に抱き起こすが…。

彼女の口から漏れた言葉は、残酷だった。

 

「…い…や…バ…ケ…モノ…」

 

それが最後の言葉だった。

「…ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!!!!!!!!!!」

頭の中がぐるぐる回る。凄まじい頭痛が襲い、意識を自然と手放してしまった。

 

 

 

 

気がつくと、目の前には肉塊となったデッドリマーだったであろうモノが散らばっていた。

「ガアアアアアアアアアアアァ!」

それをドラグレッダーが捕食している。

こうする事によって、モンスターとライダーの契約は果たされていくのだ。

 

 

あの日、城戸真司が言っていた事がなんとなく分かった。

 

「竜也。仮面ライダーになる事は、ただ人を守る存在になるだけじゃない…」

 

 

 

 

「僕は…バケモノ…もう…人間じゃないんだ…」

 

 

 





キャスト

龍崎竜也=仮面ライダー龍騎

あゆ

神崎ユイ
神崎沙奈子

香川ヒロユキ
仲村ソウイチ

城戸真司=仮面ライダー龍騎(初代)
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