仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon Trilogy~ 作:龍騎鯖威武
ユイと沙奈子との出会いから5ヶ月。季節はすっかり冬になった。
竜也が城戸真司からデッキを受け継いで、もう1年近くが経とうとしている。
あれ以来、竜也は人と関わる事を、自然と避けていた。
だが、ひとたびモンスターの気配を聞き取ると、その場へ赴く。
モンスターはある程度のダメージを負わせて、追い払うのみ。
無意識のうちにデッドリマーを惨殺したとき以外、未だモンスターを自分の手で倒した事はない。
そこでモンスターと対峙したら、幾度か、人から避難の言葉を受けた。
「テメェがいるから、あのバケモンが来るんだろ!?」「あなた自身、バケモノじゃないの!?」
必要以上の中傷を受ければ、自分の心が壊れてしまいそうだった。だから人とは基本的に関わらないつもりだ。
しかし…。
「この期に及んで、まだ迷っているのか僕は…」
情けなかった。いくら、人と関わらず生きようと思っても、心の奥底で寂しさが募る。
もともと竜也は、寂しがりな性格だった。
それが急に、孤独に生きようとするほうが無理のある話だ。
キィィン…キィィン…
「…またか」
それでも向かう。ただ仮面ライダー龍騎としての使命を果たすために…。
「グウゥゥ!」
シアゴーストの群れが、破壊活動をしている。
すぐさま戦うため、デッキを構える竜也だったが…。
「ハイイイイィ!」
「…!?」
突如、一人の青年が現れ、シアゴーストたちに攻撃を始めた。
一般人とは思えない動きだ。
その勇姿に一瞬、見とれていたが、すぐに気を取り直す。
「変身っ!」
改めて龍騎に変身し、青年を庇う様に立ち、シアゴーストと対峙する。
「君は…!?」
「早く逃げてください!ここは僕が!」
<SWORD VENT>
ドラグセイバーを呼び出し、シアゴーストを睨む。握っている右手に力を込めて駆け出した。
「はあああああああああああああああぁ!」
ザァン!ズバァ!
縦横無尽に駆け回り、シアゴーストを蹴散らしてゆく。1年で戦いの実力は、かなり身についた。
モンスターを自力で倒した事はないものの、動きや城戸真司から聞いたことから行動パターンを読み、先手を打つといった戦闘スタイルが身についていた。
一通り、モンスターを切りつけると、龍騎はこう言い放った。
「…帰れ!二度と、人を苦しませるな!」
モンスターにも恐怖という感情は存在するのだろうか、逃げ出してしまった。
先ほどモンスターと戦っていた青年が、龍騎に声をかけた。
変身を解くつもりはない。また罵倒や貶しの言葉を浴びせられそうだからだ。
龍騎という仮面を被る事によって、脆い心を守っているように感じた。
「君が、噂の赤い騎士なのか?」
「噂…?」
青年が近くに落ちていた新聞を拾い、龍騎に見せる。
‘’正体不明の赤い騎士、出現!?’’
大きな見出しに、そう書かれていた。
「マスコミも、僕のことを苦しめるんですか…」
「違う。記事をよく見るんだ」
青年の言葉に、記事をもう一度目を凝らすと…。
この騎士の正体については全く不明だが、同時期に現れた謎の怪物を攻撃し、人々を守っている行動が見受けられる。騎士については賛否両論。
ある人は災厄を呼ぶ災厄と言い、ある人は脅威から自分達を守ってくれる希望とも言う。
以前、騎士と接触した事のある少女「Y(18歳)」は、怪物に負わされた怪我で大手術も行なわれたが、奇跡的に一命を取り留めた。
彼女は次のように語っている。
「あのとき、わたしは彼の事を偏見の目で見てしまっていました。でも今、冷静になって考えて分かったんです。彼は純粋に人を助けたくて戦っていました。なのに、わたしは彼のことを、バケモノって…」
涙ぐみながら取材に応じるY。彼女の胸中には、何があるのだろうか…。
現在Yは、ある病棟でリハビリを受け、もうすぐ退院できるそうだ。
最後に彼女は「また彼に会ったら、ちゃんと謝りたいです」と答えた
(執筆者…大久保大介)
「ユイさんだ…!生きてたんだ!…それにこの記事を書いた人って、大久保さんだ!」
驚いた。まさか彼女が生きているとは思わなかった。
「君がどんな経験をしてきたのかは分からない。でも君の事を応援している人だっているんだ!だから卑屈になるな。俺も君の事を応援する!」
肩に手を置き、強く激励する青年。そして、肩から手を離す。
「…あの!」
そう言って、お礼を言うために振り向いた龍騎だが…。
青年の姿は、見せていた新聞を残して消えていた。
以前、城戸真司はこう言っていた。
「誰かから信じられたいなら、自分から信じるしかない。信じるためには、心を強く持つんだ」
もう一度、新聞に目をやる。
‘’謎の怪物、ある地方に大量出没!’’
この地方は、自分の生まれ故郷だった。
キィィン…キィィン…
それから数週間後。
竜也は、強い決意を秘めて、モンスターの前に現れた。
そこには、蜘蛛型の脚に胴体が付いた、継ぎ接ぎの様なモンスター「ディスパイダー・リ・ボーン(以下、ディスパイダーR)」。
「変身!」
仮面ライダー龍騎に姿を変え、アドベントカードをデッキから引く。
<STRIKE VENT>
バイザーの音声とともに、ドラグレッダーが飛来する。戦いの中で、かなりの連携がとれるようになった。
「ガアアアアアアアアアァ!」
「はああああああああああぁ…だあぁっ!」
ゴオオオオオオオオオオオオオオォ!
「ギシャアアアアアアアァ!」
ドラグレッダーと繰り出すドラグクローファイヤーは、ディスパイダーRにかなりのダメージを負わせる事になった。
新たにカードを引く。そして、ドラグバイザーにセットした。
一瞬、躊躇ったが手に力を込めて、ベントインを行なった。
<FINAL VENT>
この力を使うのは初めてだ。
しかし、迷う事はできない。
「ふんっ!はああああああああああああああああああああぁ!」
かつて、城戸真司がやったように、力を込めて構えを取る。
そして、高く高く飛ぶ。
「はあああああああああああああああぁ…だああああああああああああああああああああああああああぁ!」
喉が張り裂けそうになるほど叫び、発動した必殺技。
ドラゴンライダーキック。
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!
凄まじい爆音とともに、ディスパイダーRは燃え尽きた。
「はぁ…はぁ…」
息遣いを荒くし、再び立ち上がる龍騎。
戦った龍の騎士を癒すかのように、白い小さな結晶が空から舞い落ちる。
「雪…?」
一瞬、そう思った龍騎だが、それは…。
「…灰か」
存在していたものが燃え尽きたと言う証拠の灰だった。
夢…。
夢を見ている…。
毎日見ている夢。
終わりのない夢。
赤い雪、赤く染まった世界。
夕焼け空を覆うように、小さな子供が泣いていた。
せめて、流れる涙をぬぐいたかった。
だけど、手は動かなくて。
頬を伝う涙は、雪に吸い込まれて。
見ていることしかできなくて、悔しくて、悲しくて…。
大丈夫だから…。
だから泣かないで。
約束だから…。
それは誰の言葉だったろう…夢は別の色に染まっていく。
「落ち着いた…?」
「うん…」
今までずっと下を向き、顔すら合わせなかったあゆ。
しかし、少しだけ顔を上げ、不安そうにこちらを見た。
「あ、やっと目が合った!…って、あっ!?」
近くに備え付けられた時計を見て、竜也の顔は青ざめた。
「大変だ!お母さんから、お使い頼まれてた!」
この記憶は、いずれ偽りと気付くときが来るが、それは別の機会の話。
「ごめんね、あゆ。じゃあね!」
手を振って走り去ろうとした竜也の服の袖を、弱々しく握るあゆ。
「また…」
「…?」
「また明日も、一緒に…」
あゆは、小さかったが強く言う。
「はい」
竜也は小指を立てた右手を出す事によって、返事をした。
「指きりしよ!僕は指切りしたら、約束守るよ!」
「…うん」
「指きった!」
「じゃあ、また明日。同じ時間にこの場所に!」
「うん…!」
そして、夜は明けてゆく…。
目を覚ました竜也。
「また、あの夢か…」
時折見る、あの夢。少女が涙を流し、それをなぐさめる自分。
「あの…あれ?」
なんども、名前を聞いたはずなのに…。
あの少女の名前が思い出せない。
不自然だ。
ド忘れにしては、出来が良すぎる。
「もしかして…」
ふと、ある考えが浮かんだ。
(あの街に行こう…)
おそらく、記憶や夢の真実が隠されている。真相を確かめたい。例え分からなかったとしても、何か意味はあると思っている。
それに頻繁にモンスターが現れるならば、なにか不穏な動きがあの街で起こっているはずだ。
もしかしたら、そこに住み続けるかもしれない。
そのためには、強くなければいけない。
そう。
例え、偽りでも。
もう迷わない…。
迷えない…。
僕は…いや、
おれは…
仮面ライダー龍騎だ。
キャスト
龍崎竜也=仮面ライダー龍騎
あゆ
一般男性
一般女性
モンスターと戦った青年
城戸真司=仮面ライダー龍騎(初代)