最近、投稿間隔が空いてしまっていますが、出来るだけ早く投稿出来るように頑張ります!
では、どうぞ(*´∀`)つ
織斑一夏には幼い頃の記憶が無い。本来多くの人がそうである様に、幼い頃の出来事を全く覚えていないという事は有り得ない。
しかし一夏は小学校以前の出来事を全く思い出せ無い上に、思い出す手がかりに成りそうな写真や日記なども一切残っていなかった。
一夏が思い出せる一番古い記憶は自身が小学校一年の時、高校の頃の千冬の姿だ。
高校に上がってすぐの千冬は、いつもイライラしていて周りを警戒している様な・・・一夏からはそんな風に見えていた。
だがそんな刺々しい雰囲気を放ちながらもそれは自分を守るためだったのだと、自分を育てるのに必死だったのだと・・・毎晩バイトで疲れきって帰ってくる千冬を見て一夏は幼心に理解していた。
「一夏、お前は私が守る。何も心配する事は無いんだぞ」
千冬は幼い一夏を抱き締めて、口癖の様に言っていた。
一夏はずっと千冬に守られてきた。それを当然だと思ったことは無かったが、やはり心の何処かで思っていたのだろう。
「千冬姉がきっと何とかしてくれる」
それがあの結果を招いたのだと、もっと自分が強かったら違った結果になっていたんじゃないかと考える時がたまにある。
「だから俺は・・・」
『織斑さん』
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一夏がハッと顔を上げると既にそこはアリーナ上空、正面にはセシリア・オルコットが佇んでいた。
先に飛び出した一夏はオルコットが出てくるまでに考え事をしていたが、気付かない内に思考の深みに填まっていたようだ。
「考え事ですの?」
「ああ、ちょっとな」
準備が出来たなら早速始めようと言おうとした一夏だったがオルコットの様子に何やら違和感を感じる。さっきまでのオルコットならばここで嫌味の一つでも飛ばしてくるだろうと思う一夏だが、その違和感はオルコット自身によって解決された。
「私も考え事が・・・。いえ、考えなければいけないことが出来ました。その答えはこの戦いで見つかるかも知れません。ですので、全力で戦わせて頂きますわ!」
そう言ってライフルを構え、真剣な眼差しで一夏を見つめるオルコットからは教室での他人を見下した態度は微塵も感じられなかった。どうしてこの短時間でここまで変わったのか、詳しい事は一夏には分からなかったがそれならそれで構わなかった。
「よし、全力で戦おうぜ!」
そのオルコットの姿にさっきまでのいざこざは無しだと言わんばかりに、清々しい表情で一夏もオルコットに答え、武器を構える。握るのは『雪片弐型』過去、姉が使っていた剣と同じ名を持つ剣である。
互いの準備が整ったと判断され、試合開始の合図が鳴る。
「行きますわ!」
開始早々、オルコットの正確無比な射撃が一夏を襲う。
「うおッ!?」
そして一夏がビームを回避している隙にBTを展開、一夏を包囲する。先の対戦では出し渋っていたBTを序盤から使うのは、オルコットがそれだけこの戦いに本気だということの表れなのだろう。
「くッ!!」
だが一夏も負けていない。前後左右上下に展開されたBTの射撃を紙一重で回避し、BTの包囲から脱出しようとする。その動きはISに乗り始めてまだ半年しか経っていないとは思えない程のものだ。
だがやはりまだ経験が浅いのか、避けきれない攻撃もある。
「グッ!?」
BTの攻撃にシールド・エネルギーを貫通する程の威力は無いようで機体に損傷は無いが、エネルギーは削られる。
一方的な展開に、一夏の顔に焦りが浮かぶ。
「織斑さん教えてください。貴方たちはどうして強く在れるのか!貴方は何故戦っているのか!」
オルコットはBTの操作を止め、ライフルでの狙撃に転じる。四方八方からの攻撃は無くなったがその代わり正確さが増していて、一夏も回避と雪片での防御で精一杯だ。
オルコットの突然の問い掛け。別に律儀に答える必要は無いだろうが、一夏は答えなければいけないと感じた。
強さの理由、戦う意味。
「俺は、強くなんか無い!でも・・・強くなりたいんだ!あいつみたいに、千冬姉みたいに!守られるだけじゃなくて、今度は俺が皆を守れるようになりたいんだ!!それを示すために戦うんだ、負けられない!!」
一夏は攻撃を必死に回避し、告げる。
「大切な人を守る強さ・・・そう、それが貴方の強さですのね」
オルコットは一夏の言葉を噛み締める様に反芻する。一夏の言葉に思い当たるものが有るのか、オルコットは一瞬顔を伏せる。
「!ここだ!!」
やっとで見せたオルコットの隙に、一夏は攻勢に転じる。
「やらせませんわ!!」
一夏はオルコットに後少しという所まで迫る!
が、オルコットはミサイルBTを射出、それはオルコット自身さえも巻き込んで一夏を吹き飛ばす。
両者ともダメージを食らっているが、また距離が離れてしまった。
状況は一夏が不利だ。
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「・・・織斑先生、一夏は元々あんなタイプでしたか?」
管制室に居る護瑠は、千冬に尋ねる。
「まあ、正義感の強い奴ではあったぞ。その辺は篠ノ乃にでも聞いた方が早いだろう」
箒は何かを思い出しているのだろうか、赤くなって頬が緩んでいる。
「だが、ああやってハッキリした気持ちを持ち始めたのはお前と出会ってからだ」
「・・・そうですか」
護瑠は千冬の言葉に顔を伏せる。千冬たちより後ろでモニターを見ていたお陰で、その表情を見たのは簪だけ。
「ッ・・・」
簪は護瑠が何を思っているのか分かってしまうせいで何も言えない。
簪に出来たのは隣に立つ護瑠の手を握ること・・・それだけだった。
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「くそ!どこかに隙は・・・」
一夏はBTの猛攻に耐えながら逃げ回っているが、もうこれ以上は耐えられない程ダメージを受けてしまっている。
「・・・一か八かだ!」
これまで上空を逃げ回っていた一夏だが、何か思い付いたのか急降下しオルコットに迫る。
「何度やっても変わりませんわ!!」
オルコットは一夏を近寄らせまいと後退しながらスターライトmkⅢで応戦する。
だが、それこそが一夏の狙いだった。
「今だ!」
オルコットが後退するのと同時一夏は反転し、最も近くを飛んでいたBTに向かう。
オルコットが一夏の狙いに気付いた時には遅かった。
一夏はBTとのすれ違いざま雪片で両断、爆発が起こる。
「やっぱりな!!お前はBTを操作している時はその場から動かなかったからな!お前かBTかどちらかしか動けない、動かせない!違うか?」
そういって一夏は次のBTに向かう。同時に操縦出来ないなら今がチャンスとばかりの猛攻だ。
一夏がペースを握っている。
「クッ!これ以上はやらせませんわぁ!!」
今度はオルコットに焦りの色が浮かぶ。だがすぐにBTの操作に戻ると、その包囲網を持ってして一夏に集中放火を浴びせる。
そして、それが隙に繋がる事を一夏は見逃さなかった。
「うぉぉぉおおお!!」
BTに集中していたせいで咄嗟に回避行動に移れなかったオルコットに、一夏は瞬時加速を使って迫る。
「なッ!?イ、インターセプター!!」
瞬時加速<イグニッション・ブースト>により超スピードで迫る一夏をオルコットは咄嗟に近接武器で迎撃する。
「これで終わりだぁぁぁあ!!」
オルコットの振るうショートソードを掻い潜り、一夏は雪片弐型を振り抜く。
一夏の勝利が、告げられた。
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「良くやったな、一夏!」
「おう!・・・ってあれ、護瑠たちは?」
一夏は出迎えた箒に気持ち良く答えるが、少し見渡してみると護瑠と簪が居ないことに気付く。
「杜野は体調が悪いと言ってな、更識はその付き添いだ。そういう理由で、今日のお前と杜野の対戦も無しにする」
千冬の言葉にガッカリした様子を見せる一夏だが体調不良ならば仕方が無いと、昼食の時間まで千冬からの辛口評価を聞きながら反省会をして過ごすことになった。
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「どうだった、一夏との戦いは?」
ピットでは護瑠と簪がオルコットを待っていた。
「・・・ええ、貴方の言葉通り、答えが見つかったような気がしますわ」
護瑠がオルコットに一夏の事を話したのは二人の試合が終わった後、護瑠が助け起こした時だ。
一夏からならば、お前の疑問を解決する手がかりを見付けられるだろうと。
「ですがその前に・・・。更識さん・・・貴女への暴言、謝罪致しますわ」
そういってオルコットは頭を下げる。彼女はこの短い時間で大きく変わったのだろう、さっきまででは考えられない行動だ。
「・・・直接言われたわけでもないし、元々私は気にして無かったから。だからこれからは友達として仲良くして貰えるかな、護瑠も一緒にね?」
「そうだな。正直、あのときは俺も熱くなりすぎたと思って反省してるんだ・・・友人になってもらえるなら、俺も嬉しい」
二人の言葉に私も喜んでと笑う彼女に高慢な様子は感じられない。やはり、変化を与えたのは一夏か。
「それで、オルコットは一夏から何を得たんだ?単に強さの秘訣って訳じゃないだろう。・・・やはり、父親の事か?」
護瑠の言葉にオルコットは目を見開いて驚く。何故その事を知っているのか、疑問が湧くのも当然だ。
「最初、オルコットの事を知っていると言っただろう?知っていたのは代表候補生だってことだけじゃなくて、会社の事とか家族の事もなんだ」
「私たちは家の仕事の関係上、国外の有名人とか企業の事も詳しく調べたりするの。それで、貴女の両親の事も少しだけ」
護瑠と簪の話を聞いて、オルコットは納得した表情を見せる。それならば、護瑠が自分の考えを知っている様な態度も分かる。
「そうでしたの・・・。ええ、その通りです。私は父が嫌いでした。いつも弱腰で、母にも何も意見しない父が・・・。ですが、一夏さんとの戦いで男の人が弱いばかりでは無いことを知ることが出来ました。だから、きっと父も・・・と」
オルコットの話を聞き、今ならば素直に受け入れられるだろうと護瑠はオルコットにとって大切な話を伝える。
「・・・オルコットは、御両親が亡くなった列車脱線事故の詳しい事は知らないんだよな?」
「?ええ、まだ幼い頃の事でしたし、あまり掘り返したい事では無かったので・・・」
「それもそうだな・・・。・・・知って欲しいのは、その時の遺体の状態についてなんだ。辛いとは思うが大事な事なんだ、聞いてくれ」
オルコットは複雑な表情を浮かべながら、それでも頷いてくれた。
「ありがとう。あの脱線事故は被害も酷いもので、多くの乗客の遺体が惨い事になっていたらしい。だがとりわけオルコット氏の、君の父親は酷いものだったらしい。その・・・飛来物がぶつかったと見られる傷痕や打撲痕が随所に見られていたんだ」
「それは・・・」
「ああ・・・オルコット夫人の死因は列車が横転し、車体が潰された事による圧死・・・。遺体も、折り重なる様にしているのを発見されてる。」
「では、やはり父は・・・」
「うん。貴女のお父さんは最後まで自分の身を省みずに大切な人を守ろうとした・・・強い人だったんだよ」
両親の話を聞き終わったオルコットが何を考えているのか、二人に背を向けていて知る事は出来ない。だが、きっと悪いことにはならないはずだ。彼女はもう、これまでとは違った父の姿に目を向けている。
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「セシリア、置いてきて良かったかな?」
「セシリア本人が一人にしてくれって言ったんだ、色々考えたい事も有るんだろ」
一人にして欲しいと言われた別れ際、名前で呼んで欲しいと呼ばれたためセシリアと呼んでいるが、まだ少しぎこちない。
本校舎に入り、少し歩くと医務室に着く。IS学園の医務室には世界最新の設備と名医が常駐しており、高度な医療技術が揃っている。これは世界各国から優秀なIS操縦者が集められた事の副産物だろうか。
「じゃあ俺はここで少し休んでるから」
そう、本来護瑠は体調が悪いから一夏との対戦も無しにしてもらって、アリーナから抜け出して来ているのだ。
そう言って医務室に入ろうとする護瑠を、簪は護瑠の手を掴んで引き留める。
「どうした・・・?」
「・・・私は、護瑠の考え方は間違って無いと思ってる・・・。けど、護瑠だけに背負って欲しく無いと思ってるの。一夏との考え方の差だって仕方なーー///」
二人の唇が重なり、簪の言葉を遮る。
「・・・ありがと。じゃあ、また後で」
「・・・護瑠のバカ」
簪は閉じられたドアに背を向け、食堂に向かう。その言葉に込められたのは嬉しさ半分、寂しさ半分と言ったところか。
波乱の初日が終わりに向かう。次の波乱はまたすぐそこに・・・
お読み頂きありがとうございました!
出来るだけ早い投稿を目指して頑張りますので、どうか応援よろしくお願いしますm(__)m
では、次回をお待ちください!