IS-守るための力-   作:カタヤキソバ

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 お待たせしました、第十話更新です!

 今回は少し早めに投稿出来ました。これからもこれくらいのペースで出来るよう、頑張ります。

 では、どうぞ(*´∀`)つ


第十話 黒いIS

 クラス対抗戦当日。

 

 この日、学園中が異様な雰囲気に包まれていた。

 

一年一組の様子

「織斑君!優勝したら学食の『デザート半年間フリーパス』が貰えるんだよ、絶対勝ってね!」

「よ~し、皆で応援して、フリーパスゲットだ~」

「「「おー!!!」」」

 

一年二組の様子

「鈴、頼むから勝ってよ!あんたの両肩には私たちの未来がかかっていると言っても過言じゃないわ!」

「甘いもの一杯食べれば、胸も大きくなるわよ!」

「誰よ今貧乳って言ったのわぁ!!」

 

 大体こんな理由からだ。

 

 いや、もちろんデザート半年間無料なのは嬉しいし、女の子であれば特にそうだろう。

 だから率先してクラスを扇動しているどこぞの従者の事は放置しておこう。あいつのお菓子好きは今に始まった事じゃないからな。

 

「護瑠、何か異常は?」

「今のところ、問題無い」

 

 クラス対抗戦の開会宣言が行われ、優勝商品に燃える少女たちの喧騒から外れた観客席の出入り口。

 そこで二人はアリーナ全体を見渡していた。

 

「もし何か起こったら俺が前に出る。簪はその時々に合わせて動いてくれ」

「分かった。護瑠、くれぐれも気を付けてね・・・。っん///」

 

 別れ際、護瑠の頬に柔らかい感触が伝わる。

 つい、頬が綻んでしまう。

 今は甘い雰囲気を出して良い時じゃない。そう思っていても。やっぱり、嬉しいものは嬉しかった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 簪と別れた護瑠が訪れたのはアリーナの管制室。此処ならば、いざと言うとき学園の観測機器からも情報が入ってくるし、各々の行動の統率もしやすいだろう。

 

「織斑先生」

「杜野か、何のようだ?」

 

 護瑠はモニターを見る千冬の背中に話し掛ける。千冬は此方に振り向かなかった。

 

「もしも異常事態が発生した場合、一夏たちにも協力してもらいます。・・・よろしいですね?」

 

 護瑠の問い掛けに千冬は数秒黙り込みただ短く、ああ、とだけ答えた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 アリーナピット。

 

 ここでは第一試合で鈴と戦う一夏が、彼を慕う少女たちから応援を受けていた。

 

「一夏、私が教えた事を思い出してしっかり勝つのだぞ!」

「一夏さん、私たちの知識は全てお伝えしましたわ。勝利をお待ちしております」

「ありがとう、二人とも」

 

 この一週間、自分のために頑張ってくれた少女たちに、一夏は感謝の言葉を伝える。その言葉に嘘偽りは無い、無いのだが・・・

 

「(教え方は、あんまり上手く無かったんだよなー)」

 

 この一週間の訓練を思い出してみる・・・。

 箒は「グワー」や「ドオー」といった擬音と身振り手振りでの説明。セシリアは「このときの角度は四十度に体を引き、その次は五十五度に・・・」と言った具合に逆に細かすぎる説明。

 ISを動かしてから入学までの半年間。操縦の基礎を叩き込んでくれた千冬姉や山田先生がどれだけ上手く教えてくれていたのかが良く分かったよ。

 

 大人たちにも感謝しつつ、一夏は時間を待った。

 

「(絶対鈴に勝って理由を聞く。聞かないままじゃ、終れない!)」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 海上。

 

「何か見えるか?」

「いや、何も見えねぇなぁ」

 

 釣り船程度の大きさの船の甲板に男が二人、双眼鏡片手に海を眺めていた。

 どちらも厳つい顔にゴツゴツした身体。何も見た目に似合わないホエールウォッチングなどと洒落込んでいる訳ではない。探しているのは不審な船舶や飛行物体。

 彼らは杜野家の構成員だ。

 

「今日はIS学園で何かやるらしいじゃねぇか。しかも更識の嬢ちゃんも代表として出るんだって?」

「おうよ、何でも優勝候補らしいぜ」

「かー、やっぱりあの嬢ちゃんやるんだなぁ。若もあんな可愛らしい許嫁で、まったく羨ましいかぎりだぜ」

「まったくだ。おまけに若に一途と来たもんだ・・・・・・!?・・・そんな晴れの日に・・・余計な物が来やがったな」

 

 双眼鏡の先に見えるのは、快晴の青空には不自然な黒い点。あれが何かは遠くてよく分からない、が、良くないものである事だけは確かだ。

 

「チッ。すぐに若に連絡だ、怪しい何かが向かってるってなぁ!」

「おうよ!」

 

 迎撃の手段もこの船には積んである。だがアレには手を出すなと、修羅場を潜ってきた男たちの本能に警鐘が鳴る。

 あれは此方が何もしないからこそ見逃しているだけなのだと、理屈ではなく感覚で理解させられた。

 

 若、どうかご無事で。

 男たちは、揃って護瑠の身を案じていた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 護瑠に不審な飛行物体を発見したという連絡が入ったのは、一夏と鈴の戦いが始まってすぐの事だった。

 未だに衛星で不審な物体を発見したと言う連絡は来ていなかったが、それは些末な問題だ。

 

「織斑先生、此方に不審な物体が近付いているとの報告が来ました」

「そうか。・・・お前が行くのか」

 

 千冬は護瑠を見ようとはしない。

 

「ええ。・・・せっかくの行事です、邪魔させはしませんよ」

「・・・」

 

 そう言って管制室を出ていく護瑠に千冬は、同じく機材の操作を行っていた摩耶も、何も言えなかった。

 

 そうじゃないだろうと、みすみす子供を危険に飛び込ませるしかない自分を、千冬は責めた。

 IS学園の立場の事も、自分の立場も、護瑠の立場も理解している。だがそれでもーーー

 

「・・・子供に頼るしかないと言うのは、何だな・・・自分が情けなくなる」

「織斑先生・・・」

 

 一瞬表情を陰らせた千冬だが、すぐに何時も通りの表情に戻っていた。

 世界最強などと言う称号も、教員という立場も、煩わしくとも自分が守りたい者の為に手に入れたものだ。

 

「・・・摩耶、今は此方に集中するとしよう」

「・・・ええ。生徒たちの頑張りを、無駄にする訳にはいきませんからね」

 

 裏で何が行われていようと、この試合に向けて努力して来た生徒たちの思いを無駄にする訳にはいかない。

 

 試合の映し出されたモニターを見る。

 一夏と鈴の試合は互角を極め、アリーナを巻き込み、ボルテージは最高潮まで上がっていた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

『護瑠!』

 

 通路を駆ける護瑠に、簪から通信が入る。

 どうやら簪にも情報が入ったらしい。

 

「俺は海上で飛行物体を迎え撃つ。簪は此処で待機していてくれ」

『・・・っ。・・・分かった。敵が一人とは限らないから、だね・・・』

 

 本当は一緒に行きたいのだろう。簪は感情を理性で押さえ付け、言葉を絞り出す。

 

「そうだ、此方も何があるか分からないからな。・・・そんなに心配するなよ。絶対、無傷で帰ってくるさ」

『・・・絶対、だからね・・・』

 

 おう、と笑いかけ、護瑠は通信を切った。

 

 

 

「二人とも、どうしたんだ?」

 

 護瑠が走っていると、前方から見知った二人が歩いてきた。箒とセシリアだ。

 

「織斑先生に呼ばれましたの」

「ピットで見る位なら、管制室で見ないかとな」

「護瑠さんは何をしているんですの?」

「ちょっと野暮用だ。すぐに戻る」

 

 そう言って護瑠はまた、駆け出した。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 海上。

 

 護瑠がその飛行物体と相対したのは、IS学園に後数キロと迫った海上だった。

 

 その風貌に、護瑠は内心驚きを隠せなかった。飛行物体は、戦闘機か輸送機だろうと思っていたからだ。

 

「(これは・・・ISじゃないか!)」

 

 黒く、人型をしたフォルム。珍しいが、肌の露出していない全身装甲と呼ばれるタイプのものだった。

 ただ一つ。巨大な両腕だけが、異様に不気味だった。

 

「どこの所属だ!ここから先にはIS学園がある!不許可の侵入は条約違ーーーーッ!?」

 

 答えが有るにしろ無いにしろ、話が出来れば何か情報が得られるかもと呼び掛けたが、返ってきたのは無言の剛腕だ。

 

 咄嗟に槍を構え防御したが、護瑠は槍の状態を見て目を見開く。

 

「(金剛の装甲と同じ素材で出来ているのに、たった一発でへし曲げるとはな・・・)」

 

 驚くべきはその剛腕の速度と硬度か。

 護瑠は即座に二本目の槍を呼び出し、攻勢に出る。

 剛腕が振るわれるが、腕が巨大なせいで隙が大きい。護瑠は敵の懐へ潜り込み、脇の間接部に槍を突き刺す。

 切っ先が刺さることは無かったが、絶対防御が発動したのは確認出来た。護瑠は敵を蹴り付け、再度距離を取る。

 

 優勢な護瑠であるが、少々、敵の動きに違和感を覚えた。

 

「(・・・さっきの迎撃は、機械的すぎるな・・・)」

 

 来たから殴った。そう感じられた程に、敵の動きは単純だった。見たところ武器も無く、戦うにはあの握り続けている腕だけが頼りだろう。

 そんな機体に乗っているのに、懐へ入られる事への警戒心がまるで感じられなかったのだ。

 

 どういう事なのか・・・。疑問に思っていると、突然金剛からアラームが鳴り響く。それと供に眼前に広がる『警告』の文字。

 

「一体何が・・・ッ!!」

 

 何が起こっているのか確認する間も無く、敵は行動を開始した。

 敵ISは、護瑠とはまるで検討違いの方向。陸地に向かって腕を向けたのだ。

 そして、対峙してから初めて広げた手を見て、護瑠に戦慄が走る。

 

「(まさか『撃つ』つもりなのか!陸地に向かって!?)」

 

 見えたのは砲口。

 

 それを確認した時には護瑠はすでに動いていた。回り込み、そしてそれと同時にーーーー

 

「う、ッッォォォォォォオオオオオ!!」

 

 極大の荷電粒子砲が放たれた。

 

 護瑠は『厭離穢土』を全力展開しそれを防ぐ。それほどの威力を持って放たれた一撃だった。

 

 消費の激しい全力の厭離穢土だったが、それは正解だった。

 

「(この熱気は何だ!?クソ、まさか絶対防御が消えているのか!?)」

 

 厭離穢土を展開しながらも感じる荷電粒子砲の熱と痛み。さっきのアラームはこれだったのかと、今更ながらに理解した。搭乗者の安全を確保する為の絶対防御が、今この時、その機能を失っていた。

 

「ハアッ、ハアッ、ハアッ・・・」

 

 受けきり、肩で息をする。

 

 陸地に向けてこんなものを放つなど、一体何を考えているのか。まともな国がバックに有るならば、考えられない程の愚行だ。市民に被害が出れば、世論は大きく動く。このISの所属がバレたら、所属先がどうなるかは検討がつくだろうが!。

 

 護瑠は敵ISを睨み付けるが、敵は何の反応も示さず、IS学園に向けて飛び出した。

 

「行かせるか!!」

 

 速度は金剛の方が圧倒的に速い。

 

 だがーーーー

 

「またか!」

 

 護瑠が近付く度、敵は陸地に向けて荷電粒子砲を放ち、護瑠はそれを防御する。

 

 気付けば、二機はすでにIS学園のアリーナ上空まで来ていた。

 

 敵ISはアリーナ上空で更に高度を上げ、護瑠もそれを追いかける。

 だが、護瑠は途中で引き返さざるを得なくなった。

 

「(あれは、マズイ!!)」

 

 護瑠は苦虫を噛み潰した様な表情で、敵を睨み付ける。

 敵はこれまでとは比べ物に成らない程のエネルギーを溜め、両腕に集めている。

 砲門はバチバチと音を立て、解放を今か今かと待ち望んでいる。

 

 既に金剛のエネルギーは大部分を消費し、絶対防御が切れているせいで自分の安全も危うい。

 金剛では、今からあの機体を止めるのは火力的に不可能だ。

 それでも、護瑠に自分だけ逃げるという選択肢は存在しなかった。自分が逃げたら、アリーナは大惨事だ。

 

「(・・・観客席が無事なように、何とか軌道修正するしか無いな・・・)」

 

 つい、溜め息が零れた。

 

「一夏と鈴の戦いの邪魔になっちまうし、それに・・・。簪との約束も、守れそうに無いな・・・」

 

 光の奔流が、護瑠を呑み込んだ。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 鈴との対戦中、一夏は違和感を感じていた。どうにも機体の調子がおかしい様な気がしていたのだ。

 

 戦いが始まる前、鈴には絶対防御も完全じゃ無いと、それを上回る威力が有れば衝撃は肉体に伝わるのだと言われた。それは知っていたし、だからと言って今更引き返すなんて事は有り得ない。

 

 そう思って戦いに臨んだものの、先程からやけに身体に衝撃が伝わる様な気がするのだ。

 

「なあ鈴。変なこと聞くけど、最初より衝撃砲の威力って上げてるか?」

『はぁ?今は戦闘中よ!』

「そうだけどさ。何か、変な感じしないか?」

『・・・変な感じ?』

 

 そう言われてみると、鈴も思い当たる節がある。

 

『確かに、始めた頃よりあんたの剣が重い気がするわね』

「・・・」

 

 鈴の言葉に、一夏は疑問を深める。片方だけならまだしも、両者が違和感を覚えるのは少しおかしい。

 一夏が千冬に試合の中断を求ようとしたのと、それは同時だった。

 

 凄まじい轟音が、アリーナに響き渡る。

 

「!?な、なんだ!?」

 

 一夏の目に飛び込んで来たのは、天から降る光の柱。

 

『!?一夏!アレ!!』

 

 そしてーーー

 

「ま、護瑠!!」

 

 ボロボロになった護瑠と、天から降りてくる、不気味な黒いISだった。




 お読み頂きありがとうございました!

 護瑠、既にボロボロです。盾役の性でしょうか。


 では、次回をお待ちください!
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