※---で挟んであるセリフは回想の人物の発言です。
では、どうぞ(*´∀`)つ
・・・私はいつもお姉ちゃんと比べられてきた。お姉ちゃんやお母さん、お父さんはそんなこと無かった。けれど家のお手伝いさんやお父さんの部下の人たちは直接口に出すことは無くても、その目が、その態度が私とお姉ちゃんを比べていることがいつも伝わってきた。
不幸だったのはお姉ちゃんが天才と呼ばれる部類の人間だったことだろう。お姉ちゃんは一度見たもの、聞いたものは直ぐに出来る様になって、苦手な事でも練習すれば直ぐにものにしていた(唯一編み物だけはどうしても苦手みたいだけど・・・)。
でも、私にそんな才能は無かった。今でこそ、お姉ちゃんにも引けを取らないものがあるのだと思えるようになったけど、昔の私はそんなこと無かった。あのままだと、きっと私は心を閉ざすようになっていただろうし、お姉ちゃんとの仲も悪くなっていたと思う・・・。
でも、護瑠が居てくれた。
「護瑠・・・」
初めて護瑠と会ったのは私が小学校に上がる前だった。その日はお父さんやお母さん、お姉ちゃんと一緒に、大事な所に行くのだと言われて揃って出かけた。今まで家族で出かけるなんて無かったから、少しだけワクワクしたのを覚えている。
そうして少し移動して、着いたのは大きな日本家屋の前だった。更識と比べても大きさに違いはなくて、私は実家より小さな家しか見たこと無かったから、同じくらいの家を初めて見て驚いてたっけ。
女の人が多い更識と違って、その家には男の人が多かった。今まであまり男の人と関わりが無かった私は、お姉ちゃんの影でビクビクしていたと思う。(それに、みんな強面なんだもん・・・仕方無いと思う)。
通された部屋で待っていたのは、一際強面のおじさんで・・・。でも、そのときはあまり緊張しなかった・・・。
それは・・・
「護瑠が居たからなんだよ・・・?」
強面のおじさんと私たちを待っていたのは、私と同じくらいの男の子・・・。
---今日は良く来てくれたな、楯無。---
---いや、此方もそろそろと思っていた所だ。招待感謝するぞ、堅護。---
お父さんとおじさんが言葉を交わすと、私とお姉ちゃん、そして男の子は別の部屋に移された。大事な話をするのだと言うことは分かったけど、特に説明もされなかった私とお姉ちゃんはお互いに顔を見合わせていた。
---じゃあ、自己紹介をしようか!僕は杜野護瑠です。よろしく!---
別室に移動した私たちに、男の子はそう言って自己紹介をした。今まで男の子と遊んだこと何て無かったから、私は何て言ったら良いのか分から無くなっていた。でも・・・
---私は更識刀奈よ。私の方が年上だから、刀奈お姉ちゃんって呼んでね☆---
お姉ちゃんはそんな風に気軽に自己紹介していた。お姉ちゃんが先にしてくれたお陰で、私はさっきよりも落ち着いて自己紹介できた。
---えっと、さ、更識簪・・・です・・・。---
---よろしく。えっと、刀奈お姉ちゃん。それに、簪って呼んで良いかな?僕も護瑠で良いよ!---
・・・落ち着いても、私は元々人見知りな性格だからあまり良い挨拶は出来なかった・・・。でも、護瑠はそんなこと気にせず名前を呼んでくれた。男の子に名前を呼ばれるのは初めてだったけど・・・不思議と嫌な感じはしなかった。
それから三人で一緒に遊んだ。誰にも私とお姉ちゃんを比べられない、あの嫌な感じがしない時間は初めてだったかも知れない。だからだろう。人見知りな私だけど、護瑠とは直ぐに仲良くなっていた。
---簪はゲームがすごく上手なんだね!---
そう言われたのも護瑠と仲良くなれた原因かもしれない。私はお姉ちゃんみたいに万能な才能は無かったけど、チェスや将棋みたいなゲームや、相手との駆け引きや心理戦が発生する事はお姉ちゃんよりも得意だった。そういった事は実家でも評価されていたのかも知れないけど、直接すごいと誉められたのは初めてで、初めてお姉ちゃんよりも得意な事が見つかった!と、内心とても喜んでいたことを覚えている。
お父さんがその日の用事を終えて家に帰っても、私はまた護瑠と一緒に遊びたいという気持ちが薄れることは無かった・・・。
また護瑠と一緒に遊びたい、とお父さんに伝えたのは翌日だった。きっと、私の初めての我が儘だったと思う。怒られるかもしれない。そう思っても我慢できなかったのは、護瑠という男の子の存在がその時既に、私の中でとても大きなものになっていたからだと思う。
---うん、良いぞ。また明日、遊びに行こう。---
私の心配は杞憂に終わり、逆にお父さんは安心するように私の頭を撫でてくれた。
それから私は、よく護瑠の所に遊びに行くようになった。更識家と杜野家はあまり遠くにあるという訳ではなく、車を使えばそう遠くない距離だ。護瑠も私が行くと喜んで迎えてくれた。それからは二人で、時にはお姉ちゃんも入れて三人で、いつも遊ぶような関係になっていた。
それ以外の時間も、一緒に居ることが多かった。小学校に上がってからは学校でも一緒で、学校が終われば家に帰る前に杜野の家で護瑠と遊んでから帰るようになった。護瑠のお陰で友達も沢山できた。人見知りな私は、最初学校では友達が出来なかった。でも、護瑠と一緒に居て、護瑠の友達と仲良くなって、そうして私の友達も増えていった。
私は護瑠に多くのものをもらった。護瑠と知り合えたからお姉ちゃんとは違った、私の得意な事が見つかった。友達が出来た。だからきっと・・・そんな護瑠に恋心を抱くようになるのは当然だった。だって、護瑠は私のヒーローなんだから。
「でも、私は・・・こんな風に・・・守って貰いたかった訳じゃ・・・!?」
声が震えているのが分かる、涙が溢れてくる。
思い出すのは初めて暗部の仕事に関わった時の事だ。
あの時は更識と杜野の合同任務で、その現場に私、お姉ちゃん、そして護瑠が連れていかれた。お父さんも、護瑠のお父さんも、乗り気で無いことはいつもと違う雰囲気で分かった。きっと、見たくないものを見ることになる・・・。そんな事を感じながら、作戦本部へ移動した。
私の予感は的中した。直接見たわけでは無かったけれど、リアルタイムで現場から送られてくる人が血を噴き出して死んでいく映像は、まだ小学生の私には刺激が強すぎた。
私はしゃがみ込んで、体を抱えて震えるしか無かった。恐ろしかった。更識にいる人が、杜野家に行ったとき優しく声をかけてくれた人が、人を殺している事が。私もしなきゃいけないのかとか、私もあんな風に死ぬのかと・・・。
ギュウッ
でもそんなとき、誰かが私を抱き締めてくれた。護瑠、だった・・・。
---簪、大丈夫だよ。簪が怖がる事はないよ。俺が簪を守るからね。---
抱き締められて、そう優しく言葉をかけられるだけで、十分だった。恐怖で支配されていた私の心は、護瑠のお陰で少しずつ平静を取り戻していった。恐怖はある。でも、護瑠が居てくれたらきっと大丈夫だと思えた。護瑠が私を守ってくれるんだと、根拠は無くても信じられた。
「それでも・・・護瑠が傷付いたら・・・意味無いんだよ・・・。」
あの日からもう三日経った。
護瑠はまだ、目覚めていない。
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パシュッ
「あら、お帰りなさい。」
空気が抜けるような音をたててスライドドアが開くと、その部屋の主は入ってきた少女に声をかける。
「ああ。」
声をかけられた少女は不機嫌そうに、ぶっきらぼうに返事をする。部屋の主は、少女の上司はその事を気にすることは無い。元々少女とは仕事を通じた間柄でしか無く、仕事さえ命令通りにこなすならどんな態度だろうと気にしないのだ。
「今回の作戦は失敗だったわね。あれだけ大掛かりな事をした割りに、対した損害を与えられなかったんですもの。」
「ふん、それはお前たちの落ち度だろう。私には関係無い。」
「あら、そうかしら。あなたに任せた彼、まだ生きてるみたいだけど?」
その言葉に、少女は初めて今までの仏頂面を崩した。
「ハッ冗談だろう。あの至近距離で三発だぞ。」
「いいえ、生きているわ。あなたの手に収まる口径の銃だったせいか、はたまた彼の運が良かったのか・・・。何にせよ、死んでいないのは事実よ。」
その言葉に、少女は苦虫を噛み潰したかのような顔になる。
「・・・次は殺すさ・・・。」
「ええ、そうして頂戴。そうでなくては、あなたの存在意義は無いのだから・・・。・・・それにしても、お姉ちゃん・・・ね。本当のお姉さんが恋しいんじゃないの?」
「黙れ・・・ッ。」
嘲るような口調で紡がれた言葉は少女の逆鱗に触れたようで、さっきまでの様子が一変、少女は彼女の上司に殺気さえ向けている。
「冗談よ、あまり興奮するものじゃないわよ。・・・当分は活動は無いわ。あなたも自室で大人しくしてなさい。」
「チッ・・・ああ。」
上司の部屋を後にした少女は、自室に戻るとライトも点けずベッドに倒れ込む。
「杜野護瑠・・・。姉さん・・・。」
少女は呟く。自分が殺し損ねた相手の名を・・・自分の存在意義に関わる相手の名を・・・。独りきりの、暗闇の中で・・・。
お読み頂きありがとうございました!
最後には今回の襲撃の犯人が・・・一体誰なのかなー(棒)
評価、感想お待ちしております!
では、次回をお待ちください!