今回は少々長くなりましたが、切りの良いところ迄で全部説明するとこのくらいに・・・
では、どうぞ(*´∀`)つ
「嫌だ。戦う理由がねぇよ」
突然現れたボーデヴィッヒの言葉に、一夏はぶっきらぼうに答える。
「ほう・・・。だが、私には有るぞ?」
断られたというのに、ボーデヴィッヒは不敵な笑みを・・・いや、一夏を嘲笑し、見下す。
「お前は教官の唯一の汚点だ。お前さえ居なければ、教官が棄権などする必要も無かった」
「・・・っ!」
「一夏、抑えろ」
ボーデヴィッヒの挑発に熱くなる一夏を、護瑠が止める。
「金剛の操縦者か。・・・お前に用は無い、私が用があるのは織斑一夏だけだ」
護瑠は一歩前に出る。
「そうは言っても、ここで暴れて貰う訳にもいかないんでな。他の人の迷惑だろう」
「そんなこと、私の知ったことではない。どうしても戦う気が無いのなら・・・戦う気にしてやるだけだ!」
そう言うと、ボーデヴィッヒは護瑠に対して肩のレールカノンを向け。ーーー放った。
「ーーーっ」
だがそれは金剛の厭離穢土が阻む。
「ここには生身の人も居るんだぞ、なに考えてる!!」
「ふん、そんなこと知ったことか」
アリーナにはISを纏っている人間以外にも、生身の一般生徒も居る。もちろん専用機持ちも、ISを纏っていなければその危険度は変わらない。
「だが良い顔になったな。これで戦う気にもーーー」
『そこの生徒、何をしている!』
ボーデヴィッヒが意気揚々と飛び出そうとしたとき、当直の教員の声がアリーナに響いた。
「・・・邪魔が入ったな。織斑一夏、次はお前を叩きのめす」
ボーデヴィッヒは興が削がれたようにやる気を無くし、最後、一夏に宣戦布告をして去っていった。
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「ちょっと一夏、何なのよあいつ!好き勝手荒らして、さっさと帰っていって!」
「ま、待てって!俺もあいつの事は知らないんだよ!」
詰め寄る鈴に、一夏は仰け反りながら答える。
「だが一夏、あやつは第二回モンド・グロッソと言っていた。・・・その、千冬さんの棄権の原因はお前に有ると・・・」
「そうですわ、一体何が有ったんですの?」
「っ・・・それは・・・」
箒とセシリア言葉に、一夏は表情を歪ませる。
「ちょっと皆、一夏も嫌がってるし、無理に聞くのはーーー」
「ですが!あの方が何故一夏さんを目の敵にするのか、分からなければどうしようも有りません!」
デュノアは気圧され、口をつぐむ。
箒も鈴もセシリアも、一夏に不快な思いをさせたくて聞いている訳ではない。
あんな風に一方的に絡まれているのをただ黙って見ている訳には行かないと、何か助けになることは無いかと思って聞いているのだが、それ自体が少々一夏の古傷を抉っているのが考えものだった。
「取り合えず、三人とも落ち着け。・・・なあ一夏、これだけ気にかけて貰えるんだ、教えてやっても良いんじゃないか?」
「護瑠・・・」
「もし説明しにくいなら、私たちが話しても良い。勿論一夏が良いって言うなら、だけど」
「・・・ああ・・・」
一夏は少し考え、絞り出す様に肯定した。
そしてそのまま、何かを振り切る様にアリーナを後にした。
「ちょっと待て、鈴」
「グェッ」
そして一夏を追いかけようとする鈴を、護瑠が止める。
「今はそっとしといてやれ。一人に成りたい時だってあるだろ。鈴なら良く分かると思うが?」
「!・・・そうね、そうするわ」
それはお前の事だろうと、護瑠は自分で自分を嗤う。
護瑠は振り返り、どういう事かと不思議そうな顔をした面々に向かう。
「第二回モンド・グロッソで何があったかは俺が説明する。俺も、当事者だからな」
「夕食が終わったら、皆私たちの部屋に来て。そこで説明するから」
そう言うと、護瑠と簪もアリーナを出ていった。
後には、顔を見合わせる四人が残された。
「護瑠、良かったの・・・?あのときの事は、護瑠も良い思い出は無いのに・・・」
「まあ、確かにな。けど、知らない振りも出来ないだろ。俺が原因みたいな所もあるからな」
「そんなことーーー」
「良いんだよ。それに、話せば俺もスッキリするかもしれないしな」
「・・・分かった。そういうことにしておく・・・」
おう、と答えて、護瑠はどう説明しようかと頭を悩ませた。
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「さて、わざわざ足を運んで貰った訳だが・・・」
「あの、僕は一緒に居ても良いのかな・・・?」
夕食を終え、アリーナでの約束通り、護瑠と簪の部屋には一夏を抜いた面々が集まっていた。
「別に構わないぞ、極秘事項って話は無いからな」
護瑠の言葉に、デュノアは少しホッとした表情を見せる。
どんな人間なのか疑っている身としては無防備かも知れないが、護瑠の中ではデュノアへの疑いは白に近付いていた。
一人だけ蚊帳の外というのは少し可哀想だ、というのも有るが。
「じゃああの時何が有ったか話すが、これは俺達の目線での事だと言うことを覚えておいてくれ」
全員理解したのを確認して、護瑠は話し始めた。
「まずは第二回モンド・グロッソの前に何があったから話すぞ。あの時、俺たちの所には政府から要請が来ていたんだ」
「要請?」
鈴の呟きに、護瑠は首肯する。
「そう。俺たちの実家は政府直属のボディーガードみたいな仕事をしていてな。内容は、モンド・グロッソ中の織斑一夏の身辺警護だった」
「あの時千冬さんは優勝確実と言われていたからな。妥当な所だろう」
身内のお陰で常に警護を付けられる事になった箒は、その時の事を思い出しているのか納得しながらも少し苦々しい表情だった。
「そしてその内容は、織斑一夏のドイツでの身の安全を保証するという事も含まれてたんだ」
「何故ドイツなんですの?普通は日本国内だと思うのですが・・・」
「セシリアの疑問も尤もだ。それは、政府の連中が一夏をドイツに連れ出そうとしたからだ。織斑先生の、姉の決勝を現地で見るっていう餌で一夏を釣ってな」
「ちょっと待ってよ、それって、わざわざ一夏を危ない所に連れ出そうとしてたってこと?」
デュノアが渋い表情で護瑠に問い掛ける。
「他意が有ったかは分からないが、少なくとも結果的にそうなる。日本は海外と比べれば治安が良いからな。政府の連中の危機意識ってのは想像以上に低かったってことだ」
護瑠は吐き捨てる様に言う。
「護瑠、話がずれてる」
「ああ、悪い。それで海外での護衛になるわけだが、俺たちはそれを承諾することは出来なかった」
「何でよ」
「一夏を狙って襲ってくるであろう敵の規模も何もかも、分からなかったからだ。そんな不確定要素の強い事に、部下の命は掛けられない」
「それは・・・そうだけど・・・」
「だから一夏の護衛はISの配備されている自衛隊に任せて、俺たちはその件から手を引く事になった。それが第二回モンド・グロッソの数日前だ」
「・・・もしかして」
鈴は何かに思い当たった様に呟く。
「鈴は思い当たる事が有るだろ?俺たちが初めて出会ったときの話だ」
「あの時は偶然会ったように装ったけど、本当は一夏に会おうとして彼処に行ったの。危険が有ることが分かってるのに、ただ傍観してるだけって事は出来なかったから・・・」
少々気まずい空気が漂うが、今は無視だ。
護瑠は話を進める。
「それで一夏に直接会って、ドイツに行く危険性を伝えた。一夏もドイツ行きを取り止めたっていう連絡が自衛隊から俺たちの元に来た。・・・それまでは良かったんだ」
護瑠は目線を下げる。
「・・・一体何が有ったのだ」
「一夏はドイツ行きを取り止めた・・・。だが、奴等は・・・亡国機業は!日本国内で一夏を誘拐しやがった!」
護瑠は声を荒げ、振り上げた拳を自分の足に叩き付ける。
「・・・亡国機業って言うのは第二次大戦中から世界で活動するテロ組織で、その活動理念も不明な謎の組織。そんな組織だから、手段も選ばなかった・・・」
「ドイツは無理でも国内だけでもと、出来るだけの人員を一夏の護衛に回した・・・それを、奴等は皆、殺しやがった!」
怒りに震える護瑠に変わり、簪が引き継いだ。
「一夏が買い物に出掛けたのを見計らって、潜んでいた構成員が一夏を誘拐したの。・・・中にはISを持ったのも居て、私たちはどうしようも無かった・・・」
「け、けど、自衛隊からもISを持った人が護衛に居たんでしょ?だったらーーー」
「そのISを持った自衛隊員が、亡国機業の構成員だったの」
簪の言葉に、皆が絶句する。
「・・・正確にはその女は女権団の信者で、日本の女権団が、亡国機業と繋がってやがったんだ・・・」
「ど、どうしてそのような事が!」
皆あまりの事に真っ白になりそうな頭を必死に動かし、情報を整理しようとした。
「女権団ってのは、ISの登場によって女は男より優れていると思っている、というかそう言う謳い文句で人心を集めている政治団体だろ?そう言う連中にとって『ISの象徴である織斑千冬』の『弟』って存在は、酷く目障りだと思わないか?」
「・・・まさか・・・そんな理由で・・・」
呟いたのは箒だが、皆同じことを思っていた。
「私は・・・恥ずかしながら・・・。少し理解出来ますわ・・・」
セシリアは過去の自分を振り返り、そう弱々しく呟く。
「だが今のセシリアは違うだろう。あまり気にするな。一夏もきっと、同じことを言うと思うぞ」
セシリアは小さくはい・・・と応じた。
「だが、それでは話が繋がらないではないか。さっきの話を聞いていると亡国機業は、その・・・一夏を殺そうと、したように聞こえたのだが・・・」
そんなことは言葉にも出したく無さそうに、箒は尋ねた。
「それは女権団の考えだ。亡国機業は、その通りには動かなかった」
「つまり、仲間割れが起きたってこと?」
「仲間、ですら無かったかも知れないがな。とにかく、一夏を誘拐した亡国機業は女権団の考えとは裏腹に、一夏を連れたままドイツを目指した」
「ドイツ・・・。亡国機業は、一夏を千冬さんを呼び出す餌にしようとしたってこと?」
鈴は怒気を含ませながら問い掛ける。
「思惑は分からんが、結果的にそうなった。一夏を誘拐された事を知った織斑先生は決勝戦を棄権し、俺たちの伝えた情報とドイツ軍の力を借りて、一夏の捜索をした。以上が第二回モンド・グロッソの裏側で起こったことだ」
皆、何も言わない。情報の整理、気持ちの整理。とにかく自分の中で処理しなければならない事が多すぎた。
それは、護瑠も同じだ。
初めてこれだけあの時の事を話した気がする。俺の気持ちを察して、このときの事を掘り返すのは楯無さんでもしなかったからな。・・・そう言えば、どうして亡国機業は織斑先生を誘い出したんだ?女権団以外のパトロンの意向か・・・いや、それにしては・・・
「けど・・・それって一夏は何も悪くないじゃない・・・」
護瑠の思考は、鈴の呟きによって中断された。
「・・・そうだな。だからボーデヴィッヒの言葉は的外れだ。強いて責任が有るとすれば俺がーーー」
「護瑠さんも悪く有りませんわ!護衛の任務だって本来は他の方の仕事で、護瑠さんたちは部下の人を失ってまでその役割を果たそうとしたのではありませんか!」
「その通りだ。護瑠が自分を責めるのも、筋違いだ。誰も護瑠を責めない・・・勿論、一夏もな」
少し、ズルかったかも知れない。ああ言えばこういう反応が返ってくると、どこか計算して、自分に責任が有るなどと言ったのかも知れない。だけど・・・そう言われて、少し救われた自分がいた。
「ありがとう・・・。とにかく、これがあの時有ったことで、一夏はそれを今でも気にしてる。俺のせいで千冬姉の経歴に傷が付いたってな。そして、実際にそう思っているのがボーデヴィッヒだ」
「・・・なるほど、確か織斑先生は、IS学園に赴任する前は一時期ドイツに居たことが有るんだよね?さっきの話と合わせると、ドイツに居た頃の教え子が、ボーデヴィッヒさんなんだね?」
「恐らくそうだろう。ボーデヴィッヒは織斑先生を教官、と呼んでいるからな。敬愛する教官に汚点を付けた相手が許せない、て所だろう」
さっ、と護瑠は手を打ち鳴らす。
「取り合えず俺の話せる事は以上だ。他に何も聞きたいことが無ければ、これで解散だ」
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あの後。皆それぞれに思うところは有りながらも、部屋に帰っていった。
そう言えば、デュノアの部屋は何処なんだ?明日確認しておかないとな。
「ねえ護瑠、少しは楽になれた?」
今日は久しぶりに、簪と同じ布団に入っている。簪が一緒に寝たいと言ったからだが、正直今日の俺にはいつも以上に、その提案は嬉しかった。
少し、気弱になっているのかも知れない。無力だった(今でも十分だとは思っていないが)自分の姿を、思い返したからかも知れないな・・・。
「少しは、な。無力だった自分を思い出して、少しナイーブにはなってるけどな」
そう、自嘲気味に苦笑する。
「けど、あの時の事が有ったから、護瑠はもっと強くなろうと努力したんだよね」
「・・・そうだな。もう、あんな思いはしたくない」
だからもっと力が欲しい。だれも悲しまなくて良いように、何も失わない為に。取り零してしまった命は、もう戻らないから。
ーーー自分の安全が、その内に入っていないことにも気付かずに。
何かを救うために護瑠がボロボロに傷付いて、それで悲しむ人が少なく無いのだと気付けずに。
護瑠は簪の、愛する人の腕のなかで。愛する人を腕に抱いて。自分勝手な決意を抱いた。
お読み頂きありがとうございました!
はい、という訳で、これまでもさんざん出てきたモンド・グロッソの時の話です。察しが付いていた方も多いのではないでしょうか。
この世界は大抵亡国機業と女権団が悪いんです。
因みに、亡国機業と繋がっていた女権団幹部は、ちゃんと処理されてますよ。そんな不穏分子、見逃すはずが無いですよね。その辺りは、機会が有ったら書きたいと思います。
批評や感想・質問など、いつでもお待ちしています。お気軽にどうぞ!
では、次回をお待ちください!