シャルの話は割りとサクッと終わらせます。
メインは学園ですしね。
では、どうぞ(*´∀`)つ
俺たちがフランス・パリの空港に降り立ったのは、まだ日の昇っている時間帯だった。
「簪、今日はどうする?デュノア社に行くのは明日にするつもりなんだが・・・」
「それが良いね。じゃあ折角パリに来たんだし、町を歩いてみたい」
パリに来たとは言え、ここにデュノア社が在るわけでは無い。ISを造るのだから、当然性能調査などをしなければならない訳で、IS程のものになればその施設もそれなりのものが必要になるから当然町中に造れる筈も無く。
結果。デュノア社も倉持技研同様、人里離れた所に建てられている。
だから今から向かう訳にも行かず、今日はこの辺りを見て回る事になった。
・・・一夏に聞かれれば怒られるかも知れないが、厄介事の解決に出向いたのだから少し位の息抜きは許して貰いたい。
第一、今から行っても着くのは夜中なのだから時間は有意義に使わないとな。
そんな言い訳を心中でしつつ、護瑠は簪に連れられてパリの町へと繰り出した。
ルーヴル美術館にエッフェル塔、その他にも色々名所を見て回り、ホテルに着いたのは日が落ちてからだった。
元々取った部屋はそんなに高くない普通の部屋だったのだが、実は楯無さんがホテルを予約していたらしい。
簪が言うには楯無さん曰く
ーー二人が泊まるなら其れなりの部屋じゃないとね!折角の海外なんだから、これくらい良いでしょ!ーー
だからってスイートを取りますか、楯無さん・・・
だが既に部屋を取ってあるなら仕方が無い。更識家の財政を心配しながら、有り難く使わせて貰うことにした。
護瑠もスイートルームが始めて、という訳ではない。家の関係で政界の大物などと顔を合わせる用事があるときは、度々利用した事もある。
だが簪と二人でと言うのは、初めてだった。
胸が高鳴る。
何故かは分からないが、この部屋に来てからずっとだ。
確かにここのスイートは思った以上に豪華だったし、夜景も綺麗だ。
けれどそれでこんなに胸が高まるという程、経験が浅い訳でも無いと思っている。
やはり違いがあるとすればーーー
「護瑠、どうしたの?」
ーーー簪の存在だろうか。
「いや、何でも無いよ」
愛しいこの子と居るならば、どこでだって自分は幸せになれるだろう。
それはきっと、この上無い幸せだろうと思う。
「簪」
「ん///」
思わず、簪を抱き締める。
二人の夜は、誰にも邪魔される事無く更けていった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
翌日。
二人はまたしても早朝からホテルを出て、デュノア社を目指した。
デュノア社があるのは、パリから数時間の田舎町だ。
そこに、広大な敷地を利用して作られたデュノア社と、併設されたISの試験場がある。
「護瑠、お姉ちゃんが学園の名前使って良いって」
列車に揺られながら、簪から楯無さんの伝言を聞く。
「了解。サポートはする、って言質も取ってあるからな。・・・それにしても、この時代にこんなのが残ってるなんて思いもしなかったな」
座席のシートを触りながら言う。
「こう言うのも風情が有って良いよね」
「だな」
旧式だからこその良さと言うものを感じながら、二人は列車に揺られた。
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「IS学園の者です。デュノア社長とお会いしたいのですが」
デュノア社に着いた護瑠は、受付で仲介を頼む。
当然の事ながら、アポなど取っていない。
織斑先生は何日でも公欠を出すと言ってくれたから、今日捕まらなくても明日がある。
ーーーそんな心配は、必要の無いものだったが。
「社長はすぐに会えるそうです。使いの者が来ますので、あちらでお待ちください」
言われた通り、ロビーで待つ。
その使いの人物はすぐに来た。
「・・・まさか、社長直々にいらっしゃるとは思いませんでしたよ」
「そうかい?これは、私なりに誠意を尽くしているつもりなんだが」
現れたデュノア社長の姿に、護瑠は困惑する。
疑惑では無い、困惑だ。
ここに来たのはデュノア社の真意を確かめるためだ。そのためには、多少の荒事は覚悟の上だった。
なのに護瑠と簪は、その社長直々に案内される形で社長室に向かっていた。
「(護瑠、これは一体・・・)」
「(・・・分からん)」
二人の困惑を余所に、社長は部屋に迎え入れる。
見たところ罠のような物は無く、ISでスキャンしてもそれらしいものは全く無かった。
「・・・」
「そう怖い顔をしないでくれ。この通り、私は何の武装もしていないし、部屋にも何の仕掛けも無い」
それは、君たちも確認済みだろう?とデュノア社長は語る。
「・・・それは分かりました。では、何故我々がここを訪れたのか、それも分かっておいでですね」
「勿論だ。そして、来てくれたことに感謝している」
護瑠と簪は怪訝な表情を見せる。
「感謝・・・ですか?」
「ああ、そうだ。私の娘、シャルロットの事だろう?」
シャルロット・・・それがデュノアの本名かと、護瑠は内心呟く。
「それで、シャルロットの処分はどうなる?」
「・・・デュノアはまだ何も行動を起こしていない。今素性を明かすなら、我々が彼女を罰する理由はありません」
その言葉に、デュノア社長はホッとした表情を見せる。
「貴方、まさか・・・」
「ああ、その通りだ」
「娘の幸せを願う。親として当然の事だろう」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
帰りの列車の中、護瑠が思い出すのはデュノア社長が語った話だ。
ーーー最近、デュノア社が経営危機にあることは知っているだろう?
今シャルロットには、多くの見合い話が来ていてね。所謂政略結婚という奴だよ。融資してやるから、娘を差し出せとな。
どいつもこいつも顔と体目当てだよ。考えただけでも、吐き気がする。
だから私はシャルロットをIS学園に送り出した。
IS学園には諸外国からの干渉を阻むルールがある。それにどの程度効果があるかは別として、干渉を阻む理由にはなる。
そこで良い出会いが、IS学園で無くとも日本で良い出会いがあれば・・・シャルロットが幸せを見つけてくれるならばそれで良いと、そう思ってね。
フランス政府に話をつけるのは簡単だったよ。
日本の数少ない男性操縦者の情報を手に入れるために、娘をダシにする。そう言えば簡単に許可をくれた。
今は女性優位の社会だからね。政府の男連中は、女に惨めな思いをさせられるなら、それだけで満足だったんだよ。
私にそんな気はさらさら無いなんて事も知らずにね。
だから、シャルロットには最低限のスパイの知識も教えなかった。バレることが私の狙いだったのだから、バレなかったらそれこそ問題だ。
シャルロットが幸せに過ごしてくれれば良い。最初から、私の願いはそれだけだよーーー
その話を思い出して、護瑠は手元の端末を操作する。
閲覧したのはデュノア社長の経歴。
成る程、これを見ればデュノア社長が政略結婚に拒否反応を見せるのも当然だ。
元々、デュノア社長も今の妻とは政略結婚だったらしい。
つまり、デュノア社長は政略結婚でシャルロットの母と引き離され、愛した人の死に目にも会えず、愛娘の成長も側で見られなかったと言うわけだ。
最初から疑えと言いたげな書類、経歴。スパイとしての知識もなく、その為に体を弄ってもいない。
それらは全て、娘の幸せを願ってのもの。
自分が与えられなかった幸せを、誰か与えてくれる人が居てくれればと。
バレるのが目的とは言え、そうなれば会社がどうなるか分からない筈が無いのに。
そもそも、俺たちが初めからデュノアを助ける気が無ければどうするつもりだったのか。
・・・それだけ必死だったという事か。
「護瑠。来て・・・良かったね」
「ああ、そうだな」
これで全部の問題が解決した訳じゃ無い。
デュノア社がIS学園に嘘の書類を提出し、それをフランス政府が支援していた。
大きな問題になるかもしれない。
けどま、それを何とかするのが俺たち杜野と更識の仕事か・・・。
「明日からまた、大変だな」
「だね」
それでも、護瑠の心はいつになく晴れていた。
お読み頂きありがとうございました!
・・・原作のシャル回りの事を考えると、こうでもしないと都合が付きませんでした。・・・何か、もっと画期的な理由付けを思い付いた方は居るでしょうか・・・?
批評や感想・質問などいつでもお待ちしていますので、お気軽にどうぞ!
では、次回をお待ちください!