今回は護瑠と簪の父親がメインです。
子供のことを想ってこそ親だと私は思います。
ではどうぞ(*´∀`)つ
更識家が襲撃され、護瑠が重傷を負ってから既に三日。更識杜野両家では、と損害の把握と復旧が急がれていた。
そんな中、更識家当主:更識楯無と更識刀奈、杜野家当主:杜野堅護は今までの情報の統合と、これからの活動について話し合っていた。
「取り敢えず、死者が出なかった事は不幸中の幸いだな。」
「そうは言うが堅護、それはあの日お前が護衛を連れて更識家に来ていたからだろう?それに護瑠君だって重傷を負っているんだ、私としては素直には喜べないぞ。」
「護瑠のことは心配しなくても大丈夫だろ。あいつは簪ちゃんを守って怪我を負ったんだ、ちゃんと守れたと知れば、自分の怪我なんて放っておいて簪ちゃんが無事なことを笑って喜ぶさ。まあ、そうやって危険に飛び込むのはあいつの長所で、短所だからな、心配しているが・・・。何にせよ、みんな無事なんだ。今はそれで良いだろう?」
楯無と堅護が互いの子供の心配をしているのは、何も相手の事を気にかけているだけ・・・と言う訳では無い。古い友人の二人にとって、互いの子供は自分の子供の様に大切に思っているのだ。
「まあ、そうだな・・・。刀奈、簪の様子はどうだった?」
「ずっと護瑠君の病室に居るわ。この三日、私が無理矢理お風呂に入れさせる以外はずっと護瑠君の側で看病してるわ。自分を庇って護瑠君が怪我をしたって事が相当ショックみたい・・・。無理も無いわ・・・簪ちゃん、護瑠君のことが本当に好きなんだもの・・・。病室から声が漏れてきたから聞こえたけど、護瑠が傷付いたら意味がないって・・・そう言ってたわ。」
今、護瑠の病室は更識と杜野の実力者が交代制で守っている。その中でも更識の士気は特に高い。それは今回の事件の落ち度は更識にあるという意識と、護瑠のお陰で簪は無事だという事から来ている。それは、『次の交代では自分が』っという声がひっきりなしに上がるほどだ。
「そうか・・・。きっと、今の簪に休めと言っても聞き入れないだろうな・・・。護瑠君が目覚めれば良いのだが、そればっかりは待つしかない・・・。」
「そうね・・・。まあ、私から声はかけておくわ。簪ちゃんが倒れちゃったら、それこそ護瑠君が心配しちゃうもの。」
「ああ、頼むよ。・・・そろそろ本題に入ろうか。襲撃者の目星と、今後のことだ。」
元々この集まりは慰め合いなどではない。大切な人の心配はしても、次に目を向けなくてはいけない。それに、此処に居るのは日本を守る暗部の人間だ。彼らが前を向いて居なくては、もっと多くのものを失いかねない。
「今までも襲撃が無かった訳じゃないが、今回の襲撃は規模が違いすぎる・・・。更識の目を誤魔化した情報操作や死んだ襲撃者にヨーロッパ系とアジア系が混じっていた事から、どこぞの国家の特殊部隊という事も考える難い。其処から考えられる最も有力なものは・・・。」
「亡国機業・・・か。だが、奴等が更識に何の用だったんだ?」
「更識には色々な情報が集まっているからな、そういうものも考えられるが・・・。恐らく、今後日本で活動する為に更識の弱体化を狙ったんだろう。あの襲撃で狙われたのは人だったからな。情報関係には手を付けられていない。」
亡国機業。第二次大戦中から存在すると言われる正体不明、目的不明の謎の組織だ。ごく稀に亡国機業が関わったのでは無いかと思われる事件も起こっているが、その実態、活動拠点は未だ更識ですら掴めていない。
「今回の襲撃で更識を弱体化し、それを足掛かりに日本で活動するつもりだったと考えるのが自然か・・・。だが、今回更識に大きな被害は無し、当分は日本での亡国機業の活動は無いと思うが、楽観視は出来ない。・・・やはり、亡国機業の調査は早急に行う必要がある。」
「と言うことは、以前からの計画を実行に移すと?」
『以前からの計画』
楯無のその言葉に、堅護は固い表情して頷く。その様子を見ている刀奈には詳しい内容は分からない。けれど、二人の表情や雰囲気が、必要な事だが出来ることならやりたくないと、そう言っている様に感じられた。計画の内容は分からないけれど、聡い刀奈には何となく分かる。きっと二人の表情が固いのは、私達子供がその計画に関係してくるからだと。
だからこそ
「お父さん、その計画に私も協力出来るの?」
刀奈はそう切り出した。親が子を想う様に、刀奈も父親の力になりたいと思っているのだ。それに、恐らく二人の計画は亡国機業に関係したものなのだ。協力すれば更識を襲って護瑠を傷付けた相手に報復出来ると、刀奈はそう思って話しかけた。
「協力・・・というか負担を強いる事になる。それに、今回の事が無ければもっと先になる筈の事を前倒しにするんだ、正直私も堅護も乗り気ではない。」
「だが、やらなければもっと大変な事態になる可能性が大きいのも事実。刀奈ちゃんからそう言ってくれたんだ、俺達も腹を括らなきゃいけないかもな・・・。」
「堅護・・・。そうだな・・・刀奈も簪ももう小さな子供じゃないんだ。これからは俺達が信じて任せる番かもな。」
「だな。」
そう言って、堅護と楯無は笑っている。正直強面の堅護と優顔の楯無が笑い合っているのは奇妙な光景だが、そこには子の成長を喜ぶ親の顔があった。
「でも、直ぐって訳にもいかんな。俺達の準備も足りてない無いし、護瑠も目覚めていない。この話は子供達が揃ってからにしよう。」
「そうだな。刀奈もそれで良いな?」
そう問われた刀奈は頷く。元々自分だけの話だとは思っていない。その計画で更識と杜野の当主が何かするつもりなら、次期当主である護瑠の存在は必須になるからだ。
「それじゃあ、この問題はまた今度という事にして、刀奈とは別の話をするとしよう。」
「別の話?」
楯無の言葉に刀奈は首を傾げる。対亡国機業以外の話がこの場で出るとは思っていなかったからだ。
「ああ。簪と護瑠君ことなんだが・・・」
「二人のこと?」
刀奈はまたしても首を傾げる。この状況で二人のことと言われても、何の話しなのか分からない。・・・いや、でも最近屋敷内で耳にすることと照らし合わせるともしかして・・・
「二人を・・・
婚約させようと思う。」
刀奈はその言葉にただただ・・・穏やかな笑みを浮かべた。
「あの二人、今も身を呈して守ったり献身的な看病をしているのに、未だにお互いの気持ちを伝えて無いだろう?お互い奥手なのかタイミングが合わないのか、何時まで経っても告白の一つもしない。」
「そのくせ周りから見れば何時も二人でイチャついてるからな。杜野では、部下から壁が足りないと俺に苦情が来る始末だ。」
「更識でも似たようなものだ。だからこの際にと思ってな。・・・正直な所、打算的な部分もある。今の更識と杜野は先の襲撃で疲弊している。それが二人の婚約で気が紛れればという思いもある・・・。」
「でも、それは当主としての考えるでしょう?親としては、ずっと前から決めたかったことなんじゃない?」
「そりゃそうだ。なんせ、小さかった頃から護瑠君は簪を守ってくれていた、味方で居てくれたんだ。・・・私のように、立場のせいで好きなように出来ない者とは違ってな。」
「俺としても簪ちゃんみたいな可愛い娘が家に来てくれるならそれ以上の事はない。護瑠には勿体無い位だ。」
そういって笑う堅護にも、申し訳なさそうに目を伏せる楯無の目にも、そこに有ったのは子の幸せを願う親の顔だった。
「私としても嬉しいわ。家は暗部だもの、自由に出来る事はきっと普通の人より少ない・・・。でも、好きな人と結ばれるっていう普通の事をあの二人が手に出来るなら、それ以上の事は無いと思う。」
「・・・刀奈も、好きにして良いんだからな。」
「勿論よ、好きな人が出来たら・・・ね☆」
刀奈はそう茶化す様に言うが、それが簡単な事では無いと思っている。暗部の家系に生半可な人間は入れられない。時には人の道に反したこともするこの世界を、一体どれだけの人が許容出来るだろう。
「じゃあ、この話はここまでにしておこう。この話は先の計画の内容について伝える時に一緒にな。」
「じゃあ、今日はここまでにしよう。刀奈は後は好きにしていて良いぞ。・・・ああ、ついでに櫛奈達を呼んできてくれ。」
「はいは~い」
緩やかな空気を残したまま、今日の会合はお開きとなった。
護瑠が目を覚ましたのは、これから数日後のことだ。
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パシュ
「お帰りなさい、今回の作戦は大変だったわね。」
「ただいま。ああ、ったくなんなんだよあの家は!」
少女が出ていってから、今度は茶髪の女性が入ってきた。先程の少女の様に無愛想という訳ではないが、こちらの女性は随分荒れている。
「まあまあ、あの日の当主会談にまさか杜野の護衛があんなに動員されるなんて予想外だったんだから仕方無いわよ。それより、私はあなたが無事に帰ってきてくれてホッとしてるわ。あなたは私の恋人なんだもの。」
「や、やめろよ。照れるじゃねぇか///」
さっきまで荒れていた茶髪の女性だったが、恋人らしい女性の言葉に先程までのトゲは抜かれていた。
「ふふ。疲れたでしょう、こっちにいらっしゃい?私にあなたを労わせてちょうだい。」
「あ、ああ///」
そうして、どうやら恋人らしい二人は部屋の奥へと消えていった。
世界は何時も動いている。例えこの世界の何処にいても・・・
お読みいただきありがとうございます!
やっと護瑠も起きたので、早く簪とイチャイチャさせたいです!
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