第四話です。
今回は、護瑠の想いや簪の想いなど、たくさんの想いを伝える回なると思います。
では、どうぞ(*´∀`)つ
「(声が聞こえる・・・。簪の声だ・・・・。)」
あの日撃たれて昏睡状態だった護瑠は、暗闇の中でずっと簪の声を聞いていた。撃たれた護瑠を必死に助けようとする声を、早く元気になって欲しいという声を、護瑠自身を・・・大事にして欲しいという声を。簪の悲しむ声を聞いていた。
護瑠は早く目覚めようと必死にもがいていたが、どんなに精神力があっても目覚められないほど、護瑠の体は疲弊していた。
「(俺のせいで簪を悲しませたくないな・・・。簪は、笑顔が一番似合うんだから・・・。)」
護瑠は簪の笑顔が大好きだ。ずっと見ていたいと思うほどに、護瑠は簪の笑顔の虜だ。その笑顔を最初に見たのは何時だっただろうか・・・。そうだ・・・あれは、初めて簪が護瑠の家に来たときだ。
「(最初は刀奈さんの背中に隠れてたっけ・・・。それから一緒に遊んで、笑い合う様になって・・・。うん・・・やっぱりあの日、俺は簪の事を好きになったんだ・・・。)」
簪がまたすぐに遊びに来てくれた時には本当に嬉しかった。同じ学校に通うようになって、同級生に簪との仲をからかわれた時は恥ずかしさよりも嬉しさが湧いてきた。大好きな子と一緒に居るのだと実感できたから。
「(それはきっと、俺が自分を普通じゃないって思ってたからなんだろうな・・・。でも、簪が居てくれたから・・・。)」
護瑠は、自分の家が普通とは違う事に早くから気付いていた。小学校に上がって普通の子と一緒に居るようになって一層実感するようになった。現場の様子も、簪より早くから見ていた。だからこそ護瑠は、『好きな子と一緒に居られる』なんて普通な事を実感させてくれる簪に救われていたのだ。もし簪が居なければ、自分と周りの違いに悩み、自分の殻に閉じ籠っていたかもしれない。そう思うからこそ護瑠は、身を呈して簪を守る事を躊躇しなかった。
「(それでも、簪を悲しませたら意味無いんだよな。)」
護瑠は、なにも簪を悲しませたかった訳では無い。だが、もしまた今回の様な事態になったら?簪の身に危険が迫ったら?その時もやはり、護瑠は何を於いても簪を守ろうとするだろう。それだけ護瑠にとって、簪は大切な存在なのだ。
「(いい加減、気持ちを伝えるべきなのかもな・・・。簪は俺の気持ちに答えてくれるかな・・・。)」
護瑠も簪が自分に好意を向けてくれている事には気付いている。だが、護瑠にはその気持ちがどういった好意なのか、異性としてなのか、大切な友人としてなのか今一自信を持てない。この辺りは、幼馴染みである欠点かも知れない。
「(でも、取り敢えずは体を休めて早く起きないとな・・・。話はそれからだ。)」
そうして、護瑠の意識は微睡みの中へ沈んでいった。
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「護瑠・・・。」
「かん・・・ざし・・・?」
「!護瑠、目が覚めたの!?」
簪の呟きに反応するように護瑠が簪の名前を呼ぶと、簪は直ぐに護瑠に寄り添った。
「意識はハッキリしてる?痛い所は無い!?」
「ん、大丈夫だよ、簪・・・。」
「よかった・・・護瑠が死んじゃうんじゃないかって、もう目覚めないんじゃないかって・・・心配だった・・・。」ギュッ
そう言って、簪は護瑠を抱き締める。ここに護瑠が居るのだと・・・そう実感するために。
「心配かけてごめんな・・・。」ナデナデ
護瑠はまた何時もの様に、簪の頭を撫でる。自分は変わらず此処に居るのだと、簪に伝えるかの様に。
「うん、でも良いの・・・護瑠は無事に目覚めてくれたんだから・・・。・・・・・・あのね、護瑠・・・。」
だが、今日の簪は何時もと少し違った。今までなら少しの間撫でられたままだった簪だが、今日は直ぐに護瑠から離れる。
嫌だったか?そう思った護瑠だが、何やらそうでは無さそうに見える。護瑠から離れた後も簪は俯いたままだ。髪に隠れて表情は見えないが、何やら酷く迷っている様な雰囲気がする。
「護瑠、あの・・・その・・・護瑠に言いたい事があって・・・。」
「うん、どうしたんだ・・・?」
「その、ずっと護瑠に伝えたいと思ってたんだけど恥ずかしさが有ったしそれで関係が壊れたらと思うとあと一歩が踏み出せなくてでも今回の事で昔の事を思い出したらやっぱり伝えなきゃと思ってそれにお姉ちゃんからアノ事を聞いたからその前に自分の言葉で伝えたいと思ったからそれで!」
「う、うん」
簪は普段は落ち着いていて冷静なタイプだが、その反動なのか、昔からテンパるとこんな風に長い理屈や理由を並べ立てる所があった。
護瑠はそう言えば俺との関係を囃し立てられた時などこんな風になっていたなと思い返していたが、取り敢えず分かった事は、これから大切な事を伝えられるという事だった。
「ずっと、護瑠の事が好きでした!こ、恋人になってください!!」
「ーーーーは、はい!!」
簪の突然の(二人の周囲の人間からしたら今更の)告白に、今度は護瑠がテンパる番だった。そんな中で護瑠の頭が考えることが出来たのは、簪から告白された→返事をしなきゃの二つだけだった。
「ほ、ホント?」
「ぇ、あの、うん・・・お、俺なんかで良ければ、その、よ、喜んで?」
護瑠の発言がおかしくなっているが、今の護瑠の頭の中はは良く分からない状況になっていた。死にかけながら簪に告白する事を決めたら、起きたとたんその相手から昔から好きだったと告白されたのだ、無理もない。
ガラッ
「もう、簪ちゃん焦りすぎよ!それに護瑠君も!こんなとき何だから、それこそ歯の浮く様なセリフ言わなきゃ!」
二人してテンパってアワアワしていると、どうやら外で聞いていたらしい刀奈が我慢出来ずに病室に入ってきた。それにその扉の向こうでは、他の護衛が壁を殴っている。簪の告白は多くの人に聞かれてしまった様だ。色々混乱している簪にはその様子が見えないのが救いだが。
「お、お姉ちゃん!」「か、刀奈さん!」
「二人とも、いっつもイチャイチャしてる癖にこんな時は初なんだから!聞いてる此方が恥ずかしいわよ、まったく。」
「「 /// 」」
人生初の告白の様子を身内にバッチリ見られ、二人ともこれ以上無いくらい顔を真っ赤にしている。
「もう・・・。簪ちゃん、護瑠君が起きたならちゃんと伝えなきゃダメじゃない。大事なお話もたくさん有るんだから。」
「ご、ごめんなさ「でもね。」」
「簪ちゃん、おめでとう。やっとで、想いを告げられたわね。」
「う、うん・・・///」
小言を言う刀奈だが、内心護瑠と簪の気持ちが通じあった事に心から喜んでいる。浮かべている笑顔がその証だ。
「護瑠君・・・簪ちゃんの事、幸せにしてね。」
「!・・・はい。必ず。」
「ん・・・。それじゃあ、みんなを呼んでくるわ。」
護瑠の返事に満足した刀奈は、そう言って病室を出ていった。残された護瑠と簪は、今まで感じなかった気恥ずかしさを感じながら待つのだった。
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更識夫妻、杜野夫妻が護瑠の病室に集まり、護瑠に始めに伝えられたのは簪との婚約だった。簪が告白した事を聞いていた親たちは余計な事だったかと笑っていたが、簪はお陰で踏み出せたと笑っていた。護瑠としては自分から告白したかったとも思ったが、簪から告白された時の喜びを考えれば些細なことだと一人考えていた。
「それで、次の話だ。俺たちは今回の襲撃を亡国機業の仕業だと考えている。そこでだ、護瑠。お前に当主の座を譲り、俺たちは世界各地に有ると思われる亡国機業の拠点を直接潰しに行こうと思う。」
「!それは・・・。本気なのか、父さん。」
「ああ、当然本気だ。あの組織は今後何を仕出かすか分からん。そういうのは出来るだけ早く潰すに限る。」
「そう言っても、直接乗り込むのか?どこに有るかも分からないんだ、それその言い方だと部下を連れていくつもりは無いんだろ?」
「ああ、俺と瑠璃、それに楯無と櫛奈さんだけだ。」
「!そんな・・・お父さん、お母さん、ホントなの?」
「ああ、本当だ。私も刀奈に当主の座を譲るつもりだよ。」
堅護の話を聞いた護瑠は驚き、簪は不安そうな顔を見せる。親たちの覚悟を聞いていた刀奈は口を出さないでいるが、心配な気持ちは変わらない。
「だが、直ぐにという訳ではない。準備もあるし、お前に当主の仕事の引き継ぎをする必要があるからな。」
「そうじゃなくて・・・なんでそこまで危険を犯す必要が有るんだ!そんな人数でなんて死にに行くようなもんだ、もっと時間をかけても良いだろ!」
「そう言う訳には行かん。時間が経つだけ奴らによる被害が増える。それに・・・俺たちはそうする事が、お前たちの未来に繋がると信じている。」
「俺たちの・・・ため?」
「そうだ。今の世界は混乱している。ISの登場、世界秩序の変化、そう言った時には亡国機業の様な組織の活動は活発化する。お前たちが幸せな未来を手に入れる時にそう言ったものは邪魔になる。・・・それに、ずっと前から決めていた事だ、お前たちが産まれた時にな。この子たちが幸せな未来を掴める世界を目指すと、その為のこの計画だ。」
「父さん・・・。」
お前たちに幸せな未来を掴んで欲しいから。そう言われては何も言えなくなる。
「本当はね、最初は反対したのよ?」
「お母さん・・・。」
「今だと貴女たちに多くの負担をかけてしまう・・・でも、刀奈も協力するって言ったって聞いて、私も信じることにしたの。今は負担をかけてしまうけど、それがきっと、幸せな未来に繋がるって。」
簪も刀奈も、母である櫛奈の心配を一番している。親たち四人の中では一番身体能力が劣る櫛奈は、最も危険に晒されるだろう。だが、その瞳に宿る輝きを見てしまっては引き留める事は出来ない。
「それに、危ないことばかりじゃないわ。海外旅行なんて今まで行けなかったもの、堅護さんとの初めての海外旅行を楽しんで来るわ!」
「はぁ・・・まったく母さんは・・・。」
シリアスな空気をぶち壊しにした母の瑠璃に呆れる護瑠だが、お陰でしんみりした空気は無くなった。こんなマイペースな人なのに今だに素手では勝てないのが、護瑠のここ数年の疑問だ。
「みんな死にに行く訳じゃ無いんだ。私たちは、理想の未来を掴みに行くんだよ。」
「・・・分かりました。必ず生きていてくださいよ。」
「絶対、死なないで。」
「家の事は心配しないでね。絶対に守るから。」
親たちの覚悟を聞き、子供たちも覚悟を決める。幸せな未来を掴むために、進むべき道を歩き始めた。
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それから一年
これまで変わった事はたくさんある。
一つ目は護瑠の当主就任だ。仕事の引き継ぎも問題なく終わり、今は当主の仕事をしながら中学に通っている。大変な仕事だが、多くの部下に支えられて二足のわらじを履いている。
二つ目は親たちだ。親たちは半年前に海外に発った。定期的な連絡で生存確認は出来ている。既に数ヶ所の拠点を潰し、海外旅行も楽しんで居るらしい。
そして一番重要なのが・・・
「護瑠、もう朝だよ。」
「ん・・・おはよう、簪。」
護瑠と簪が同棲し始めた事だ。っと言っても別に二人暮らしという訳ではない。場所は杜野家で、簪は多忙な護瑠のサポートをするために一緒に生活している。しかし理由はどうであれ、愛する人と何時も一緒なのだ。護瑠と簪にとってこんなに幸せな事も無いだろう。
「今日はいい天気だよ。」
「ホントだな。まあ、簪はいつも可愛いけどな。」
「もう・・・///」
「さ、今日も一日頑張ろうか!」
「うん!」
二人は未来に向かって歩き続ける。どんな事があっても二人は乗り越えて行ける。だって、隣には愛する人が居るのだから。
お読み頂きありがとうございます!
・・・なんだこの最終回。取り敢えず、次回は護瑠と簪の日常回を予定しています。
次回をお待ちください!
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