護瑠にもちゃんと友達は居るんですよ?出てこないだけで・・・
では、どうぞ(*´∀`)つ
護瑠が杜野家当主になって既に半年。だが、護瑠の生活が大きく変わった訳ではない。勿論、暗部の当主としての仕事は有るし、当主としての立ち振舞いが要求される場面もある。しかし、杜野家内部では護瑠はあくまでも子供として扱われた。それは護瑠の事を認めていないとか、そういう理由からでは決してない。
『子供は子供らしく。』
それが杜野の人間の考え方であり、護瑠の両親が部下や使用人に浸透させてきた事だ。当然、暗部としての教えは叩き込まれてきたし、同年代の子供は決してしないような過酷な訓練もしてきた。それに、既に護瑠の手は決して綺麗とは言えなくなっている。そんな・・・暗部の人間という生まれは変えられない。それでも、少しでも普通の子供の様に過ごして欲しいと、将来が幸せで有るようにと、そう願った親の気持ちは杜野の人間の総意となっていた。そんな訳で・・・
「護瑠、早くしないと学校遅れちゃうよ!」
「悪い!もう少しで出られるから!」
なんて、微笑ましい光景が見られる様になっていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
俺と簪の通う学校は杜野家から約2km先の丘の上に建っていて、そこに俺たちは徒歩で通学している。俺や簪の立場ならば車で通学すれば良いじゃないかと思うかも知れないが、それは中学初日に断念した。理由は、俺を小学校時代から知っている奴等はそうではないのだが、知らない人が怖がったのだ。黒塗りの車に運転手付き、降りてくるのは鋭い目付きの鍛えられた男という事で、ヤクザの跡取り息子なんじゃないかとか色々噂されてしまった・・・。まあ、あまり間違ってもいないのだが・・・流石に傷付いたから、それ以降は徒歩で通う様になった。
そんな訳で、俺と簪は走る羽目になっていた。主に俺の寝坊のせいでな!
「もう、昨日も遅くまで仕事してたからだよ!」
「仕方無いだろ!最近仕事が増えてきたんだから!」
そんな風に話ながら通学路を駆けている俺たちだが、息はまったく上がっていない。俺は勿論、簪も伊達に鍛えては居ない。
話ながら走っていると直ぐに学校が近付いてきた。前は一人で退屈な時間だったけど、簪と一緒だとただの通学も楽しいから不思議なものだ。
「お~い、まもる~ん、かんちゃ~ん。」
「ん?おう!おはよう本音!」
「おはよ、本音。」
校門で俺たちを待っていたのは『布仏 本音』。更識の使用人の家系である布仏家の次女であり、簪の付き人だ。因みに、俺が本音と出会ったのは小学生の時だが、家に遊びに来たことは無い。簪が俺の家に遊びに来ていたのは更識から離れたかったのが理由にあったから、家を意識させる本音は連れてこなかったそうだ。
そして、本来なら常に簪の側に居なくてはいけないような立場の本音だが、今は更識家の方で暮らしている。それは本音の家事スキルがあまり高くないという事も有るのだが、一番は本音自身が気を使ったからだ。
・・・せっかく恋人になったんだから~、二人っきりの方が良いでしょ~?・・・
とは本音の言葉である。本音の事なので別にサボろうとか思っていた訳では無いと思っている。でなければ、校門で俺たちが来るのを待っていたりしないだろう。本音は雰囲気で勘違いされやすいが不真面目では無いし、仕事はキッチリするタイプだ。
「おはよ~。時間ぎりぎりだねぇ~。」
「ああ、寝るのが遅くて朝起きられなくてな。最近仕事が増えたんだ。」
「それ、さっきも言ってたけど、何か問題が起きてるの・・・?」
「その事について楯無様からお話があるんだって~。だから、放課後に更識に来て欲しいな~。」
「ああ、悪いな。じゃ、取り敢えずは教室に行こう。」
「うん、急がなきゃ。ちゃんと私にも教えてね?」
「は~い。」
三人のクラスは一緒なので別れる必要もなく一緒に向かう。たぶん更識家から一緒にするよう話が有ったのだろう。それが護衛の必要があったからだとか、全く楽しくない理由からなのは想像に難くない。まあ、俺は簪と一緒なんだから文句は言わないし、本音も簪と一緒に居られるのは嬉しいだろう。
「今日の一限は体育だったか?」
「うん。女子がソフトボールで、男子が柔道だよ。」
「おお~。じゃあまもるん大活躍だねぇ~。ちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~。」
なんて、他愛の無い話をしていると直ぐにクラスに着いた。四階建ての三階で、階段に一番近いクラスだからな。便利な様な、味気無い様な微妙な気持ちにさせられる。
「お!おっす護瑠!今日も可愛い彼女を侍らせてるな!」
「おっす優希。因みに彼女は簪だけだぞ?可愛いのはその通りだけどな。」
「おはよう簪!本音!ねぇ宿題終わった!?出来たら見せて欲しいなー・・・なんて?」
「おはよう梨香。もう、貸し1つ・・・ね?」
「おはよ~りかりん。今日も元気だねぇ~。」
「「あ、三人ともおはよー。」」「おはよー。」
クラスに入って直ぐに話しかけて来た男子は『嶋田 優希』。簪と本音に話しかけた女子は『佐野 梨香』。どちらも俺たちの小学校からの友達だ。このクラスでは小学校からの友達はこの二人だけだが、中学入学当初から世話になっている。俺がヤクザの跡取りだとか噂が流れたときは、二人ともその噂を否定してくれたし、少し浮きかけていた俺に良く話しかけてくれた。俺の学校生活が保たれたのは二人のお陰と言っても良い。
「今日の柔道は負けねぇぞ!」
「おう、俺も全力でやるからな!」
そんな感じで、俺の学校生活はいたって普通だ。簪と一緒に、楽しい毎日を送っている。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
放課後になり、護瑠、簪そして本音の三人は更識の用意した車に乗って更識家へ向かった。更識家は学校を挟んで杜野家と大体反対の位置にある。
三人は更識家に着くと、護瑠と簪の二人は直ぐに応接間に通された。本音とは玄関先で別れることになった。応接間に着くと既に楯無が待っており、それは今日は私用ではなく、両家当主の会談という事の表れなのだろう。
「今日は来てくれてありがとう。来てもらったのは、最近護瑠君の方に回っている事案についてよ。」
「お姉ちゃん、その事案って何の事なの?」
「あら、簪ちゃんには話して無かったの?」
「ええ。最近は仕事が遅くなる事も多くて、簪には先に寝てもらっている事も多かったですから。」
「あらあら、仕事熱心なのは良いけど、簪ちゃんを蔑ろにしちゃダメよ?簪ちゃんも一緒に寝られなくて寂しいでしょ?」
「も、もうお姉ちゃん・・・///」
「俺だって寂しいんですよ!簪と一緒に寝られないのは!」
寝る寝る言っているが決してイヤらしい意味ではない。ただ一緒に並べた布団で寝たり、同じ布団で寝るだけである。それだけである。本当です。
「ふふ、ごちそうさま。それじゃ、本題と行きましょうか。」
簪をからかったりして遊んでいた楯無だが、終われば直ぐに暗部の顔になる。それは護瑠も同じだ。
「ええ、それじゃあ、簪に説明しながらと行きましょう。簪、近々開催される大きなイベントと言ったら何だ?」
「今なら・・・モンド・グロッソ?」
「そうだ。世界最強の単体兵器ISのスポーツ利用としての世界大会だ。」
「でも、モンド・グロッソに日本の暗部が関わる様な事って無いと思うんだけど・・・」
「それが、関わらなきゃいけない事態になりそうなのよ。」
「実は・・・政府はドイツで行われる第二回大会に、あの織斑選手の弟を招待しようとしているんだ。」
「!!それは・・・あまりにも危険すぎる・・・。」
「だろう?世界最強の称号を持ち、世界大会二連覇を成し遂げようとしている織斑千冬。その唯一の弱点とも言える弟の織斑一夏を国外の、それも開催国に連れて行こうなんて・・・。モンド・グロッソは国家の威信を賭けたものだ。その大会で日本に二連覇されたくない連中は大勢居る。」
「でも、実力は織斑選手が圧倒的・・・。映像で見ただけだけど、機体性能とか慣熟度とか、そんなのとは次元が違うレベルにあの人は居る。だからこそ考えられるのは・・・。」
「織斑選手を棄権させる為の人質。織斑一夏君の誘拐って所ね・・・。日本に居るならまだしも、国外だと人員を潜ませる事も難しくなる。なのに、それをどうにかしろって言ってきてるのよ、政府の連中は。」
護瑠も楯無もこの問題には頭を抱えている。国内に居る織斑一夏を守るのならば、そんなに難しい事ではない。しかし国外になるとそうも行かない。大勢の人員を送るのは難しいし、相手国側に協力を求める事も出来ない。それでは国が貸しを作る事になるし、IS先進国の日本としてはそれで技術提供を求められる様な事にでもなれば大損だ。せっかく日本が長年持たなかった他国に優位に立つための交渉の切り札なのに、それを手放す訳にはいかない。
「一番良いのは織斑一夏を国外に出さない事なんだが・・・。政府の連中はどうしても達成しろと言ってきている。大方、織斑選手にサプライズで弟と会わせ、恩を売りたいとかその辺りの理由なんだろうが・・・。」
「そんな成果にしては、失敗したときのリスクが大きすぎるわ。間違いなく誘拐を企てる組織は出てくるし、もしその組織がISを持ち出してきたらどうしようもないわ。」
ISはISでないと倒せない。それが、既存の兵器と圧倒的な性能差を持つISの評価であった。
「・・・今回の仕事、自衛隊の方に回した方が良いと思う。自衛隊ならISを数機所持してるし、織斑選手の弟の護衛って理由なら、政府も自衛隊を動かすと思う。」
「・・・仕事をまわすのに多少強引な事をする必要はあるが、それが一番かもな。楯無さん、それで良いですか?」
「私もそれが良いと思うわ。今回の仕事はISが無いと成り立たない・・・私たちでは限界が有るわ。・・・私の専用機が間に合ってれば、何とか出来たかも知れないんだけどね・・・。」
楯無は本格的にISを学ぶ高校を前にして、既に代表候補生となっていた。だが日本の候補生ではなく、ロシアの候補生としてだ。本来は半合法的にスパイを送るために更識が持つ、自由国籍権を使っての事だったが、実力は申し分無し。早くも楯無に専用機が与えられる事となっていたが、残念ながら今回の仕事には間に合いそうもなかった。
「楯無さんは悪くないですよ。元々、織斑一夏を国外に出すのは政府の勝手ですし、政府の連中は暗部を勘違いしている様ですから。我々の役目は国を守る事であって、一個人の為に動けるほど自由な訳では有りませんよ。まあ、出来ることならとは、思いますけどね。」
護瑠も簪も楯無も、なにも起こる確率の高い事件を見過ごしたい訳ではない。ただ、今回の事は手に余るのだ。国外、物量作戦不可、敵の規模不明、敵がISを持っていたら終わり、こちらにIS無し。安請け合い出来るレベルは当に越えている。だからより確率の高い方に賭けたのだ、ISを持っている自衛隊なら可能性は高いと。
「ただ、このまま何もしないと言うのも気が咎めますからね、少し忠告して来ますよ。」
「忠告?」
「ええ、少し会ってきますよ、織斑一夏に。」
最善の手は常に打つ。何でも出来る訳では無いから。少しでも多くの人を守れるように。
お読み頂きありがとうございました。
・・・あまりイチャイチャして無いですね。反省です。ですが今回はこれが精一杯です。すいませんm(__)m
次回はもっとイチャイチャさせられる様に頑張ります!
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