護瑠と簪はバカップルのようです。
では、どうぞ(*´∀`)つ
「ねえ護瑠、織斑一夏に会うって言ってたけど、何を伝えるつもりなの?」
「それはあれだ、自分がどれだけ価値のある人間なのかって事かな?」
「人質としての?」
「ああ。国外に出すことは政府が決めたけど、行くことを決めたのは織斑一夏本人だからな。」
楯無との会談の後、自衛隊にドイツでの織斑一夏の護衛を任せた護瑠は、杜野家の自室で簪と寛いでいた。最近はその事についての政府への対応で簪と一緒に過ごす時間が減っていた護瑠は、ここぞとばかりに簪に甘えている。膝枕で。
「モンド・グロッソまで時間が無いからな、明日会いに行こうと思う。簪も一緒に行けるか?」
「うん、私も一緒に行く。二人で遠出するのは久し振りだね。」
「最近は忙しくて、なかなか遊びにも行けなかったからな。」
「だね。仕事とはいえ、一緒に出掛けられるのは楽しみ。」
「俺もだよ。それに、あの辺は確かIS学園の近くだったか?遠目からでも見てみたいもんだ。」
そんな話をしながら二人は寝支度をする。二人で寝るには十分な広さがある部屋だが、布団はピッタリとくっついている。最近いっしょに寝られなかった分を取り返そうとしているかの様だ。
「ねぇ護瑠、ぎゅってして?」
「ん、良いぞ。」
・・・結局同じ布団に入って、二人は眠りについた。
翌朝起こしに来るお手伝いさんに生暖かい視線を向けられるのだが、今更気にする二人では無い。
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次の日、二人は新幹線で織斑一夏の元を目指した。本来なら車で移動すべきなのだが、この方が人目に付きたくない連中は手を出し難いし、私服の護衛も多く付けやすいのだ。・・・まあ、ちょっと旅行気分を出したかったという気持ちも無い訳では無かったが。
「護瑠、そのおかず少し分けて?」
「ん、良いぞ。じゃあ代わりにそっちのも少し分けてくれ。」
「ん。じゃあ、はい、あーん///」
「っん!美味しいな。じゃあお返しな、あーん。」
「ん///こっちも美味しい・・・!」
なんて様子を見せ付けられる護衛の人達の気分は如何程か・・・。実際は、二人の平常運転ぷりに特に気にした様子も無く、二人の護衛をする傍ら各々の駅弁を味わっている。伊達に日々二人の側に居る訳ではない。
「護瑠、着いたのは良いけど、彼がどこに居るか分かってるの?」
「ああ。調べによると、最近は姉がモンド・グロッソ関連で居ないから、友人の家で世話になっているらしい。そこを当たれば会えると思うぞ。」
「・・・アポを取れないのは仕方無いけど、行き当たりばったり・・・。」
「・・・まあ、知らない町を歩くのも楽しいと思うぞ?」
そう言って差し出された手を、簪も自然に繋ぐ。何だかんだ言っても、簪も護瑠と一緒に知らない町を散策するのは楽しみな様だ。
二人が出発したのが早い時間だったためか、着いた頃に町はようやく生き生きとし始めていた。朝の空気から昼の空気へと移り変わる町の中を、二人は織斑一夏が世話になっている『五反田食堂』を目指して歩いていた。
「しかし、織斑一夏の身辺を調べてみると、姉もさることながら織斑一夏本人もなかなかすごい奴みたいだ。周りの女性を落としまくっているらしい。」
「・・・女遊びが激しいの?」
今の話を聞いて簪は顔をしかめている。チャラチャラした人なら、あまり関わりたく無いのが簪の本音だ。
「いや、どうやら本人は女性を惚れさせるつもりは無いらしいし、自分に惚れた女性の好意に気付かないらしい。『付き合って』と言われて『買い物か?』と素で答える様な性格らしいからな。」
「・・・朴念仁なんだ・・・。彼を好きになった人は大変そう。」
「実際、周りから見ればモテまくっているのに今まで恋人が居たことは無いらしいぞ。」
男なら普通は色々と怒り狂いそうな話だ。調査していた諜報員が、調べる過程で何度か発狂寸前まで追い込まれたらしい。恐るべし、織斑一夏。
「ただ、それ以外はすごく良い奴みたいだ。困っている人は見過ごせず、弱き者を助けようとする。生粋の主人公《ヒーロー》体質なんだろ。」
「へー。」
「気になるか?」
「興味だけ。私のヒーローは護瑠だから///」
そう言って幸せそうに護瑠に寄り添う簪の姿は、先程の織斑一夏の話以上に周囲の独り身の男たちのヘイトを集めていたが、それを感じた上で幸せそうに寄り添って歩く二人は随分と良い根性している。まあ、二人にとってこんなことは平常運転なだけなのだが・・・。
「ちょっと一夏!遅いわよー!」
「そんなに走るなよ鈴!」
「良いじゃない!早くしないと日が暮れちゃうわよ!」
「ん?」
護瑠と簪が五反田食堂目指して歩いていると、何やら前方から騒がしい二人組がこちらにやって来た。
「ねぇ護瑠。あれってもしかして・・・。」
「ああ。目標発見!だな。」
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「すいませーん!」
「!はい、なんでしょう?」
「すみません。この辺に、有名なクレープのお店が在ると思うんですけど、どこか分かりますか?実は、道に迷っちゃいまして・・・。」
「ちょっと一夏!なぁにやってるのよー!!って、あんたたち誰よ!」
「おい鈴失礼だろ。この人達、道に迷ったんだとさ。有名なクレープの店を探してるらしいんだが、鈴は知らないか?」
「クレープ?だったら私たちの目的地と同じところじゃない?この先の自然公園で移動販売してるやつ。」
「ああ、それですそれ!一緒に良いですか?」
「良いですよ、鈴も良いよな?」
「もう・・・良いわよ、案内したげる。」
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「(取り合えず接触成功って所だな。)・・・ん?」
護瑠が袖をクイクイと引っ張られる感覚にそちらを向くと、何やら簪がもの言いたげに護瑠を見ていた。
「どうしたんだ?」
「・・・すごく、わざとらしかった。」
そう言われて護瑠は苦笑している。護瑠自身自覚しているが、彼はこういう人を欺く事が苦手だし、そういうのは楯無の仕事だと思ってる。今回上手くいったのは、相手がお人好しだったのと簪が一緒にいたお陰だろう。
「まあ、取り合えずは一緒に居られそうだ。普通に話していれば大丈夫だろう。」
「ん、そうだね。」
「あ、そうだ!自己紹介しますね。俺は織斑一夏って言います。こいつは鳳鈴音で、みんな鈴って呼んでます。」
「あ、そうですね!俺は杜野護瑠。こっちは・・・」
「更識簪、です。」
「よろしく!ねぇ、あんたたち私たちと同じくらいよね?私は中2だけど。」
「あ!じゃあ同い年ですね。俺たちも中2ですよ。」
「じゃあ、敬語は無しにしようぜ!せっかくだからな。俺の事も一夏って呼んでくれ!」
「私も鈴で良いわよ!」
「分かった。よろしくな、一夏、鈴。俺の事も名前で呼んでくれ。」
「・・・よろしく。私も名前で、良い。」
同年代の少年少女たちはすぐに打ち解け、共通の目的地へと向かっていく。護瑠は、一夏が自分から名前を明かすのも、相手の言葉を疑わないのも危機感の無い証拠だと思いながらも、それが普通だと思えない事に少し寂しさを感じていた。
「あ、あれよあれ!ほら、行くわよ!」
「あ、鈴待って!」チラッ
「俺のは適当に美味しそうなの買ってきてくれ。一夏、座る場所探しとこうか。」
「だな。まったく鈴のやつは・・・。でも、あいつも良い奴なんだぞ?」
「分かってるよ。」
クレープ屋を見つけた途端走り出した鈴の相手を簪に任せて、護瑠は今回の目的を果たしに行く。
「一夏、あそこなんか良いんじゃないか?」
「お、そうだな!」
護瑠が示したのは自然公園のすみの方、人気の少ない場所だ。
「にしても、鈴は元気の良い奴だな。一夏の彼女なのか?」
「いや、違うぞ?ただに幼馴染みだ。」
「・・・そうか。(この辺は調査通りなのか、あんなに分かりやすいのに・・・。)」
「護瑠の方こそ、簪は彼女なのか?」
「ん?そうだぞ、恋人だ。そうだな・・・俺と簪も幼馴染みってやつになるな。」
「へー!」
「一夏は恋人を作らないのか?織斑選手はそういうの厳しいとか?」
「!!・・・知ってたのか?」
「まあな。織斑なんてあまり無い名字だし、この辺で織斑と言ったらあの織斑千冬の関係者だろ。」
護瑠の言葉に警戒心を露にする一夏だが、それでも距離を取らない辺り警戒しているというよりは、疑念を抱いていると言った感じ様だ。
「そんなに警戒するなよ。俺はお前の味方だし、別にどうこうしようって気は無い。それに、俺が敵ならこんな人気の少ない所に誘い込まれた時点で積みだぞ。」
「・・・じゃあ、なんでそんな思わせ振りな態度だったんだ?」
「今回会いに来たのは、一夏に警戒心を持ってもらう為だからな。」
「なんでそんなこと・・・?」
「お前は織斑千冬を勝たせたくない連中にとって、格好の獲物だからだ。姉弟仲が良いのは有名だからな、お前を誘拐すれば織斑選手に試合を棄権させるのは簡単だろう?」
「!!それは・・・」
「だから、よく注意しておけよ。日本ならまだしも、国外にはお前を狙う奴も居るってことだ。」
「・・・・・・。」
「・・・じゃあ目的は達成したし、俺はこの辺で行くよ。鈴の事、ちゃんと楽しませてやるんだぞ!」
「あ、ちょ、護瑠!」
声をかける一夏だが、護瑠としては騙すような真似をした以上一緒に居るのも気まずいし、後は一夏の問題だ。
「簪!」
「あ、護瑠。もう良いの?」
「ああ、そろそろ行かないとな。」
「何よ、もう行っちゃう訳?」
クレープを買ってきてくれた簪と合流してこの場所を離れる。もう少し一緒に居たいのは護瑠も一緒だが、あまり重要人物と一緒に居るのは立場的に良くない。
「またね、鈴。私はIS学園に進学するし、もしかしたら会えるかも知れないよ。」
「そうね・・・。今は分かんないけど、また会いたいわ。」
「じゃあな鈴。一夏にもよろしく言っといてくれ。」
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IS学園を望むカフェで、護瑠と簪は鈴たちと買ったクレープを食べていた。
「ん!このクレープ美味しいな!人気になるのも納得だ。」
「だね。・・・護瑠、無理してる?」
「いや・・・無理はして無いぞ。ただ、ああいうやり方で良かったのかとは、思うけどな・・・。」
「仕方無いと思う・・・。護瑠だって、公的な立場が無ければもっと一緒に居られたんだし・・・。」
「ありがと、簪。そう言ってもらえると助かるよ。」
護瑠の性格からすればモンド・グロッソの時も自分が護衛をしたいと思っているし、今回のように他所に丸投げするなんてしたく無いと思っているが、個人的な気持ちだけではどうしようも無い事もある。今回の接触が、今出来る最大の行動だと護瑠も簪も思っている。
「それに、自衛隊には話が行ってるし、政府にも今回の重要さは書面で伝えてるし、悪いことにはならないと思うよ?」
「そうであって欲しいな・・・。(問題は政府の女権団の連中か・・・。余計なことをしなければ良いんだが・・・。)」
女権団。女尊男卑の傾向が強まった昨今において勢力を伸ばしてきた『女性権利団体』のことだ。ISという女性にしか扱えない超兵器の登場により、女性こそが優れていると掲げて政界にも進出している。多くの女性は耳障りの良い言葉に気分を良くする程度で済んでいるが、中には狂信者と呼べる人間も出てきている。そんな人間が何を仕出かすか・・・考えたくも無い予感が護瑠の脳裏をよぎる。
「・・・さっきの話だけど、やっぱりIS学園に進学するんだろ?」
「うん。検査でも高い数値が出てるし、やっぱり、お姉ちゃんみたいに成りたいって気持ちもあるから・・・。・・・けど、護瑠と離れ離れになるのは・・・嫌・・・。」
「そればっかりは仕方無いさ。休みの日にはこっちまで会いに来るよ。」
そう言って簪の頭を撫でている護瑠だが、まだ一年以上あるとは言っても、離れ離れになると思うと撫でる手にも力が入る。今までずっと一緒だった相手と離れる事を辛く思うのは、護瑠も簪も一緒だ。
「さ、そろそろ帰るか。今度は、駅まで違う道で行ってみよう。何か面白いものが有るかも知れないぞ?」
「・・・うん!」
護瑠に『織斑千冬が大会決勝に現れなかった』という情報が入って来たのは、それから数日後の事だった。
気持ちだけではどうしようも無い事も有る。だからこそ力を求める。自分の思いを通す為に。
お読み頂きありがとうございます!
何故か鈴みたいな元気っ娘が出ると動かしやすいですね、護瑠も簪も大人しいタイプだからでしょうか。
次回も出来るだけ早く投稿出来るよう頑張ります!
感想、評価よろしくお願いします。