他の投稿者様の簪を見て、自分の書く簪をもっと可愛く出来たらなと思うカタヤキソバです。
では、どうぞ(*´∀`)つ
力が欲しい・・・。俺に力が有れば結果を変えられたかもしれないと、そう思う時はこれまでたくさんあった。簪の時も、俺にもっと力が有れば簪を悲しませる事も無かっただろうし、今まで俺がやってきた仕事で死んだ部下も、死なずに済んだかも知れない。
それに・・・一夏の事もだ。俺に力が有ればあの結果も変えられたかも知れない。
力が欲しい・・・誰も傷付けさせない、絶対的な力が。
「ハッ・・・ハッ・・・ハァァッ。」
一人きりの道場で何度も繰り返す型の練習。毎日行う鍛練は、以前よりも過酷なものになっていた。怪我をする様なものもあったし、簪に心配されることもあった。それでも鍛える事をやめる事は出来なかった。自分がやらなければ・・・その思いでやってきた。
第二回モンド・グロッソから約一年。護瑠は今までに無い程、力を求めていた。
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「ふぅ。」
「護瑠、終わった?」
護瑠の鍛練が終わった頃を見計らって、簪が道場の扉を開けて入って来た。一緒に鍛練をする事や組手をする事もあるが、基本的には別々の鍛練を行っている。その鍛練の時間が護瑠の方が長いため、簪が護瑠の様子を見に来るのだ。
「ああ、丁度終わった所だよ。」
「ん、良かった。お菓子作ってきたから、一緒に食べよ?」
「お!良いな。簪の作るお菓子は美味しいからな!」
護瑠の最近の楽しみは簪の作るお菓子だ。昔から料理をしていた簪だが、最近はお菓子作りにも力を入れている。普段の料理はお手伝いさんが作るから、お菓子位は自分の作ったものを護瑠に食べて貰いたいと簪は言っていた。
「ん!このケーキとミルク、どっちも美味しいな!」
「こっちのケーキはブラウニー、ミルクは近くの農場から買ったものなんだよ!鍛練の後だし、胃に優しくてカロリーの有るものが良いと思ったから。」
護瑠にお菓子の出来を誉められて、簪は顔を綻ばせている。
簪がこのようなものを用意しているのは護瑠の為だ。護瑠が厳しい鍛練を重ねる様になって、始めは止めるよう言っていた簪だが、次第にそれを助ける様になっていた。護瑠の意思は変わらない。だったら護瑠が体を壊さない様にサポートするべきだと思った結果の事だった。
「いつもありがとな、簪のお陰で頑張れるよ。」
「うん・・・。でも、いつも言ってるけど体は壊さないでね。そんなことになったら意味無いんだから・・・。」
「ああ、分かってる。心配してくれてありがとな、簪。」
「ん///」
護瑠はいつも、簪に心配されると簪の頭を撫でる。簪を安心させたい時の、一種の癖の様なものだ。
「そういえば、簪が倉持技研に行くのは明日だったか?」
簪の作ったお菓子を食べながら、護瑠はふと訊ねる。
「うん、そうだよ。明日は私の専用機の装備とかで話があるって。」
簪は中学生にして日本の代表候補生となっていた。姉の楯無と同じ様に、中学生ながら高いISへの適正値からだ。
倉持技研とは日本で最高のIS作成技術を持つ企業で、それはつまり世界最高の技術を持つという事でもある。現在世界中で使われている第二世代型IS『打鉄』も、その倉持技研が製作したものだ。
「それ、俺も一緒に行っても良いか?」
「うん、良いけど・・・でもどうして?」
簪の疑問ももっともだ。護瑠は今まで、簪が倉持技研に行くときに、付いて行こうとした事が無かったからだ。
「それが、昨日父さんから連絡が来てな。最近亡国機業の船と思われるものが、日本方面に向けて出港したのを確認したらしい。それで一応・・・な?」
「!・・・そっか。」
両親たちが施設を潰して回っているが、それでも拠点は多いし、第一場所は隠されている。亡国機業は、今でも世界で暗躍している。
「倉持にはISのデータが多く有るからな。亡国機業が狙うとするなら、恐らく倉持だと思う。」
「ん、分かった。じゃあ、よろしくね?護瑠。」
「おう!」
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翌日、護瑠と簪は倉持技研に出掛けた。倉持技研は山の上に作られており少々交通の便は悪いが、自然豊かな良いところだ。
「やーやー諸君、よく来たね!」
何やら山のなかで、水着姿でゴーグルをしている変態と遭遇していたが。
「変態か!?」
「あ、護瑠待って!あの人は変態じゃなくて・・・」
変態ならば簪に近付ける訳にはいかないと簪の前に出て構える護瑠だが、それを簪が制する。
「変態とは失礼な!私は倉持技研第二研究所所長の『カガリビ ヒカルノ』だよ!」
「あ・・・どうも・・・。」
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「いやー、君が更識君の言っていた恋人かぁ!思ってたより良い男じゃないか。」
二人はヒカルノに案内されて開発室へと通されていた。開発室には作り掛けのISが二機置いてあったり、デスクにはそのISの設計図と思われる書類があったりした。
外見は奇抜なヒカルノだがその頭脳は本物の様で、話ながらでも簪の要望を設計図に起こしている。
「簪が俺の事を?」
「ああ、そうだよ。自分が力を求める理由だって言ってね。この力で今度は私が守るんだって言ってたよ。」
ヒカルノの声は穏やかだ。自身の作るものが正しいことに使われるなら、それ以上の事は無いとでも言うように。
「簪・・・。」
「・・・///」
本人の目の前で自分の想いを暴露されてしまった簪は真っ赤になってしまっている。そんな簪を見て、赤くなる簪可愛いなーとか思っている護瑠はもう末期症状だ。
ビーッビーッビーッビーッ
「!?なんだ!」
突然、研究所内に警報が鳴り響く。
「・・・どうやら、ここに高速で向かってくる飛行物体が有るようだよ、これを。」
そう言って空中投影ディスプレイを護瑠と簪に見せるヒカルノ。そのディスプレイには外の様子が映し出され、こちらに向けて迫る一機の飛行物体が映っていた。
「このサイズでこの速さ。十中八九ISだね。」
「・・・やはり来たのか、亡国機業!!」
護瑠は歯軋りをし、ディスプレイの向こうのISを睨み付けている。亡国機業は護瑠にとって大きな因縁のある相手だ。怒りに我を忘れる事は無くても、叩き潰したい気持ちは有る。
「・・・ヒカルノさん、このIS使っても良いですか?」
突然そんなことを言い出した簪に、護瑠とヒカルノは驚いて振り返る。ここに在るのはまだ製作途中のもので、実戦に使えるものでは無い。それは簪もよく知っている事のはずだ。
「私が出て時間を稼ぎます。その間に自衛隊と更識家へ連絡をしてください、今ならお姉ちゃんも家に居ますから。」
「待て簪!一人でなんて無茶だ!」
自分が出ると言う簪だが、護瑠はそれを止めようとする。自分の身の安全を考えるなら、倉持技研の地下にあるシェルターに避難した方が安全だからだ。
「ここにはISのコアが有るからそれを狙っているんだと思う、貴重なコアを渡す訳にはいかない・・・。それに、さっきヒカルノさんの言った通りだよ、今度は私が守るからッ!」
一人では厳しい事は簪も分かっている。作り掛けの機体に不十分な調整。対する襲撃者は十全な状態だろう・・・。
それでも簪は、自分が出ることに何の躊躇も無かった。今までにずっと護瑠に助けられて来たから・・・今度は自分が守る番だと、守りたいと思っていたから。
話している内にも素早く設定を終えた簪は、製作途中の自身の専用機に乗って襲撃者を迎え撃つべく出撃する。
「・・・ッ!!」
護瑠は何も言えなかった。簪の言う通りコアは大変貴重なもので、ISを使えない自分は何も出来ない。
それでも・・・分かっていても何も出来ない自分が恨めしかった。今までやってきた事は何だったのか。こんな時の為に・・・大切な人を傷付けさせない為に過酷な鍛練を積んできたのでは無かったのか?
気が付くと、護瑠の足は何かに導かれる様にもう一機のISへと向かっていた。
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簪は外へ出ると、山の中腹で襲撃者を迎え撃つ事にした。ここならば麓の民家や上の倉持技研に影響はあまり無いはずだ。
「止まりなさい!ここから先へは、行かせない!!」
簪の言葉に襲撃者は飛行を止め、その場に留まる。
「ああ~ん?何だお前、そんなガラクタ同然の機体でこのオータム様の邪魔をしようってのか?」
自らをオータムと名乗った襲撃者は、簪の機体を一瞥すると小馬鹿にしたようにせせら笑う。
「私の邪魔を・・・するんじゃねぇ!!」
オータムは自身の機体背部に取り付けられた八本の副腕を自在に動かし簪を攻め立てる。
対する簪は不完全な機体ながら、自分自身の高い戦闘能力でオータムの攻撃を冷静に見切り、ブレードで攻撃をいなしている。伊達に幼い頃から鍛えてはいない。
だが、それも長くは続かない・・・
「そんなんで誤魔化せると思ってんのかぁ!!」
「!?うあぁぁぁぁぁぁッ」
機体性能の差には限界があった。簪の機体は動かすのもやっとな上、剣は簪の得意な武器では無い。これが簪の理想の機体で、得意な薙刀を使っていたならば簪にも勝機はあったのだが、そのどれも無い状況では時間稼ぎも厳しい事は自明の理であった。
簪の機体は無理な機動でスラスターが焼け付き、オータムの猛攻で装甲も殆どが破壊されてきている。
「(駄目!機体のダメージが多い!シールドエネルギーももう・・・ッ。)」
「おらぁ!!」
「!?ああぁッッッ」
オータムの攻撃により山肌へと叩きつけられた簪に、もう動けるだけの力は残っていなかった。シールドエネルギーも既に無くなり、簪の身を守るものはISに備わる絶対防御のみとなっていた。
「呆気なかったなぁ。私に楯突いたことを後悔させてやるぜぇ!!」
「い、いや・・・。」
オータムの攻撃は絶対防御に阻まれるが、激しい衝撃は簪に伝わっている。
結局私は何も出来ないのか・・・。
朦朧としてくる意識の中で、簪の心を絶望が覆う。
守りたいと思ってきた。二年前の様な事にしない為に、もう護瑠が傷付かない様に、私が敵を倒すんだと決意して飛び出して来た。でも、結局何も出来なかった・・・。ISを使えても代表候補生になっても、私には何も守れない・・・。私は・・・
「これで終わりにしてやるぜ!」
オータムは最後の一撃を食らわそうと構えている。もう簪のISにエネルギーはほとんど無い。次の一撃をくらったらISは機能を停止し、ただの鉄屑へと成り下がる。剥き出しになったISのコアも、簪の心に同調するかのように輝きを失っていく。
「ごめん・・・なさい・・・。私・・・何も出来なかった・・・。」
「死ねぇ!!」
オータムはとどめとなる一撃を放つ。
「そんな事無い!ワンオフ・アビリティ、発動!!」
「なにぃ!!」
オータムは驚愕に目を見開く。
オータムの一撃は簪へ届かなかった。オータムの振り上げた右腕は、簪とオータムの間に割って入って来た人物の少し前で何かに阻まれる様に止まっている。
「・・・え?」
弱々しく見上げる簪の前には、ISを纏った護瑠が立っていた。
「簪の気持ち、ISを通じて伝わって来た。・・・そんな悲しいこと言わないでくれ、簪が居なかったら今の俺は有り得なかったんだ。」
「でも・・・でも!!私は護瑠に助けられてばっかりでッ!!」
護瑠がISを纏っている事にも意識が及ばない様子で、簪は自分を責めてしまっている。
「俺だって、簪には助けられてばかりだ。美味しいお菓子も、俺を気遣ってくれる気持ちも、いつも俺の助けになる。だから・・・今度は一緒に戦おう。二人で敵に立ち向かおう。」
そうやっていつもの様に穏やかに簪に笑い掛ける護瑠に、簪の心は溶かされていく。
「私も、一緒に?」
「ああ、俺だけじゃ出来ないことはたくさん有るからな。だから、一緒に。」
「うん・・・うん!」
自分を責めていた顔はもう消えた。そこに有るのは新たな決意を固めた顔だった。
「いつまでも私を無視するんじゃねぇぇぇ!!」
護瑠と簪が話している間にも、オータムは護瑠の前にある障壁を殴り続けている。しかし、その障壁が揺らぐ気配は無い。
「さあ、簪!まずはこいつを倒そう!」
「うん!」
少年少女は立ち上がる。今度は二人で、背中を預けて。
お読み頂きありがとうございます!
ISにはたくさんヒロインが居ますし、モブも可愛いですが、皆さんは誰が一番好きですか?
私は当然簪です。・・・アニメを見返しているとみんな可愛いと思うんですけどね、やっぱり一番は簪です。
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