その前日は、例えどれだけ疲労困憊であろうとも心が踊る。
さて、明日はなにをしようか。
病的な出不精な俺が休日に予定を入れるわけがない…ん?
…あ、そうだ。研究会だ。
なら逆に朝は早い。さっさと寝るとしよう。
しかし、休日のほうが早起きってのもあれな話だ。
まあ、趣味の延長上だし…まあ、いいか…
午前十一時三十分。川内艦隊指令基地給養室。
提督「では、第十一回給養研究会を初めます。霧島よろしく。」
霧島「はい。今日は”食堂での使用鶏肉の再選定”です。」
赤城「ちょっといいですか?なぜ再選定の必要があるんでしょうか?」
鳳翔「私が説明します。実は、大本営より給養予算見直しの通達が…」
赤城「だめです!予算削減反対!全ての艦娘には十分な食事をですね痛っ」
提督「落ち着け赤城よ」
欲を隠さない赤城を資料を丸めた束で小突いて収める。
非常に見慣れた光景だ。
研究会は不定期で開催される。
研究会が発足したのは、料理を趣味でやってた提督が市場へ買い出しにでかけた際に、
ばったりと鳳翔さんと出くわしたところから始まる。
最初は鳳翔さんと提督の休日が被った際は一緒に料理を作り、
非番の所属艦娘をひっ捕まえ、勝手に料理を振舞っていただけだった。
それは”料理会”と呼ばれ、全艦娘が認める母である鳳翔さんと、
鳳翔さんが着任するまで調理技術に差のあった所属艦に簡素な調理法を指示して、
最低限”美味しい”と言える食生活を保つことに執心していた提督の本気料理が食べられるとあり、
そのうち招待されることを心待ちにしている艦娘のほうが圧倒的多数となった。
なので、料理会を開催するときはできうる限り人目につかず、
招待する艦娘には秘密裏に招待状を手渡すようにしていた。
そんなある日、招待された艦娘の一人がなにげに発した一言から、
給養主任たる鳳翔さんの何かに火をつけたようだ。
そこから少人数を念頭において作る単価の高い料理のノウハウを、
大人数に振る舞いつつ単価を極力抑えなければいけない食堂メニューに活かし、
日常の食生活を豊かにして士気高揚を目指すというなんとも大層な目的ができてしまった。
提督は趣味に責任感ができてしまうことに若干の抵抗があったが、
意外と楽しかった上に、休日も自腹を切って業務改善に励んでおりますと大本営にアピールして
滅私奉公を装えるので、嫌にならない程度に活動を続けようと考えを改め、現在にいたるのだ。
さて、そうなると料理会も提督と鳳翔さんだけで回すというのも無理があったため、
何人かの艦娘を選任して調理と試食と金勘定を分担することにした。
赤城「だって提督!ここは予算増額を求めたこともないですし、消化率も良好じゃないですか!」
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最初に所属したのは赤城。
なぜこの大食漢を研究会に最初に招いたかと言えば、味覚が超一流だったからだ。
非番の提督が滅多にしない外出をした際、同じく非番だった赤城に街で出会い昼食をご馳走した。
その時に食べたサーロインステーキにかかっていたソースが非常に美味しく、
提督は作り方を考えていた。それを見た赤城は何を考えているか問い、提督は答えた。
料理を趣味にしていると美味しい料理の作り方が気になってしまう、と。
それを聞いた赤城は、何食わぬ表情でこう言った。
「調理法はわかりませんが、食材はわかりますよ?」
赤城はさらさらとメモ帳に書き出し、店員に
「店長さんに答え合わせお願いします」
と伝えてメモ帳を渡した。
2分もすると店長がやってきて驚きと喜びが混ざった表情で言ったのだ。
「お嬢ちゃんすごいね!正解だよ!」
それを見た提督は、すぐに会員にしようと決めた。
赤城に説明すると、説明が終わる前に入会を了承した。
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霧島「赤城さんの意見は最もですね。私もこの通達はちょっと理解できません。」
提督「あ、この通達ね、全基地に出てるの。」
霧島「…あー、もしかして、前に司令がおっしゃっていた…」
提督「そ、大湊のおじさんの箔付け」
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事情を察したのは二番目に所属した霧島。
川内基地で最初に着任した戦艦であり、提督補佐官も務めている。
霧島が所属した経緯は、提督は執務が暇な時に食材のリストアップと勘定をしていた。
その帳簿をたまたま見た霧島は、ざっと目を通して一言。
「ダメな帳簿ですね。帳尻合わないんじゃないですか?」
提督は勢いをつけて霧島を見た。
その時本当に計算が合わなくて提督は困っていたのだ。
鳳翔さんに任せようかと思ったが、給養主任は基本激務なため仕事を増やしたくない。
ただ、理系ではあるが大雑把な提督は、どんぶり勘定で済ませることが多く、
今回もその性格でドツボにはまっていた。
「直しましょうか?30分ください。」
さっと帳簿を借りると、鮮やかな手さばきで訂正を始めた。
左手で電卓を叩き、右手で帳簿を書き換える。
霧島は基地の予算管理もやっていた。それなりに業務抱えていたが、
事務仕事は確実に処理していた。その理由を理解した提督は決心した。
25分後、霧島は提督に帳簿を返し、
「小銭の管理を疎かにすると、すぐに合わなくなりますよ?」
問題点を簡潔に指摘しながら終了を報告した。
そして、提督はすぐさま入会を懇願。
真面目な霧島といえども最高の料理は魅力的であり、断る理由はなかった。
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雷「ちょっと待って?大湊のおじさんって木林少将でしょ?関係あるの?」
提督「おじさんね、早期退職して政界に出たいんだって」
雷「‥関係あるの?」
提督「組織の予算削減して効率化。成功したら手腕があるってことになるじゃん?」
雷「その箔付けのために私達の食事が減らされるの?ひどーい!」
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最後の会員は、大人の都合に憤りを隠せない雷。
何を隠そう、”料理会”が研究会へと変わるきっかけはこの雷だった。
人数が非常に多い駆逐艦は、艦種管理担当の主任を補佐する副主任を他よりも多く設けている。
雷はその一人だ。性格も十人十色な駆逐艦で、その管理と調整は主任だけでは回らない。
副主任がそれを手伝うが、処理が一番うまいのが雷だ。
世話焼きな性格ゆえ、駆逐艦たちの生活指導にメンタルケアまでそつなくこなす。
その忙しさを見た提督と鳳翔さんが、感謝も込めて雷に招待状を送った。
出したのはハンバーグ。国産牛肉100%で、味付けは塩コショウのみ。
良質な牛肉だからこそできるシンプルな味付け。
雷はそれを大層気に入り、お腹いっぱい食べた後にぼそっとつぶやいた。
「暁たちにも食べさせたいなぁ‥」
それを聞いた提督は、どうしたら食堂に出せるか考え、それに鳳翔さんも乗った。
悩み始めた二人をみて、雷は慌ててとりなした。
「ごめんなさい!無理しなくても大丈夫だから!」
この気遣いが鳳翔さんに火をつけたのだ。
その熱意に押された提督が考え、赤城と霧島を新たに迎え入れ、
料理会という範疇から超え始める時に雷に声をかけた。
最初、雷は固辞した。最高の料理は他の人に食べさせてほしいとのことだった。
これには流石に提督にも火が付いた。
なので、好き嫌いが多い駆逐艦向けのアドバイザーとして入って欲しいと理由をつけた。
役割を最初に与えることで断りづらくなり、
「そうね!みんなの役に立てるなら、引き受けるわ!」
と、入会を了承した。
こうして、料理会は給養研究会となったのだ。
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赤城「全くです!転職前の箔付けに食を利用するなんて!」
霧島「しかし、司令がこういう事柄にまともに取り合おうとするのはちょっと意外ですね…」
提督「俺も意外だよ。ま、少将はほら、六目派だからさ。」
霧島「ということは、六目中将から…」
提督「そ、協力してねって連絡来た。めんどいけどもね。」
赤城「だからといって、食事を減ら痛い!」
提督「だから、最後まで話し聞きなさいって」
赤城が提督に二度目の小突きを受けて落ち着きを取り戻した直後、
いつの間にか中座していた鳳翔さんは2種類のチキンソテーを配膳台に載せて戻ってきた。
鳳翔「私も食事を減らすのは論外だと思います。」
鳳翔「なので、提督と霧島さんと私で策を練りました。」
霧島「最近3ヶ月のメニューを調査したところ、鶏肉が多めであることがわかりました」
提督「肉類の中ではかさ増しもし易いし、値段も手頃だからね」
霧島「はい。しかし、ちりも積もればなんとやらで、仕入れ予算で結構な割合を占めていました」
鳳翔「私と提督のこだわりで、品質と価格を両立できるお肉を仕入れていましたから。だからこそ味も良くて人気も高かったんですが…」
霧島「比率もあがってしまったんですね。」
提督「最近飼料価格が上がり気味で、仕入れ値上がっちゃてたのも痛かったね。」
霧島「そうです。なので、私が提案したのは、鶏肉のランクを落とすことです」
赤城「ん〜、大丈夫ですか?」
雷「そうね。ちょっと不安ね」
赤城と雷が不安がるのも無理は無い。鶏肉は、良し悪しが如実に解る肉だからだ。
質の悪い肉は基本的に臭い。鶏肉はそれが顕著に出る。
鶏肉嫌いの原因はその匂いにあるとも言われる。
駆逐艦の一部に鶏肉嫌いがいたため、鳳翔さんと提督は丁度いい鶏肉を探し続けた。
鳳翔「現在使用している鶏肉を採用する際、実は1ランク下の物と最後まで悩んでいました。」
提督「その時はちょとした理由から品質を取ったね」
鳳翔「そうですね。調理の手間をすこし省きたかったんです。」
赤城「手間を省く?」
鳳翔「そうです。臭みを抜く工程を極力省いて、調理手順を簡素化したかったんです。」
雷「それって結構な手間なの?」
鳳翔「手間といえば手間ですが、労力はそこまでいらないんです。」
提督「そうだねぇ。労力はいらないんだけどねぇ。」
赤城「それってどういう工程なんです?」
提督「塩を降って、15分ほど置いて、水でさっと洗うんだ。」
赤城「なるほど。それで?」
提督「…それで?」
赤城「いや、その工程の続きをですね…」
提督「続き?…ないよ?」
赤城「えっ」
提督「えっ」
赤城は怪訝な顔をした。雷は考え込んでいる。
提督も素っ頓狂な顔をしている。
十数秒ほどしてから、赤城が口を開いた。
赤城「全然手間じゃないじゃないですか…」
提督「まあ、一手間程度だね」
赤城「でも、提督も鳳翔さんも手間を極力省きたいって…」
鳳翔「赤城さん、仰りたいことはわかりますが、大事な要素が抜けてますよ。」
赤城「え?どういうことです?」
雷「…量ね」
ぼそっと呟いた雷をはっとした顔で赤城が見た。
確かに数人前程度だとなんてことはない一手間だ。
しかし、食堂で出すとなると所属艦娘100人以上の仕込みをしないといけない。
そこで15分の手間が増えると、業務上とてつもない負担となる。
提督「例えば、夕食でみんな大好きな唐揚げ定食を出すとしよう。」
鳳翔「駆逐盛りで150g、軽巡盛りで200g、重巡軽空盛りで300g、正空戦艦盛りで500gの鶏肉を使います。」
提督「さらに、おかわりを考えてそれぞれ×3は余分に材料をとっている。」
赤城「えーと、待ってください、うちに今いる駆逐が50隻で…」
赤城が計算を始めた。
ブツブツと独り言を言いながら、計算式をメモ帳に書き出す。
出た数字を合わせていき、その作業がどいうものか把握して赤城は顔を上げた。
赤城「全部で60kg前後ですか…それは…」
提督「まとめてやるにしても限度があるしね」
鳳翔「それに、朝と昼の準備もありますし、日常的な貯蔵管理もありますし…」
提督「そこで、15分の工程が増えると…」
赤城「致命的ですね…」
全員が唸ってしまった。
給養は大変だと思っていたが、数字で表されるとそれが顕著に現れる。
赤城は給養主任の鳳翔さんに改めて畏敬の念を抱かざる負えなかった。
そこで、雷が口を開く。
雷「それで、今工程が増えることになっても大丈夫なの?」
最もだ。工程が増えることを避けて選んだ鶏肉を、
工程が増える鶏肉に変えるというんだから真っ当な疑問である。
提督「それは厳密には研究会で話し合うもんじゃないけどね、案はあるよ」
雷「本当に?どうするの?」
提督「簡単だよ。給養当番を増員すりゃいいの。」
雷「えっ?まあ、そうだけど…」
提督「えっ?何か問題?」
雷「いや、あまりにも単純すぎて拍子抜けしちゃって…」
提督「まあ、鶏肉の決定当時はちょっと人が足りなくてね。でもこういう時は人海戦術がなんかだんだ王道だよ。」
この提督は、変人揃いの海軍でも1,2を争う曲者と言われている。
提督から出てくる発想は、基本的に奇想天外なものが多い。
雷はその奇想天外さを楽しんでいる。
その提督から王道な発想を聞くと、逆に驚く。
でも、この状況ではそれが一番だと納得した。
奇抜さを出すところでは無いんだなと。
鳳翔「では、研究会の本題に戻りましょう」
提督「あ、そうだね、もう見えてると思うけど、今日は新旧の鶏肉を使ったチキンソテーだ。」
鳳翔「みなさんには、どちらがどちらとは言いません。違いがあるか、どちらが美味しいかを食べて決めてください。」
そう言いながら、鳳翔はそれぞれに配膳した。
どちらも何の変哲もないチキンソテーだ。
皮にはしっかりとした焼き目が付き、端々から肉汁が溢れている。
チキンソテーが運ばれてからそれなりの時間話していたが、
鉄板の上に置かれていたからまだ熱さを保っている。
今回は鶏肉の選定が目的なので、味付けは塩コショウのみだ。
赤城「やっと食べられるんですね!もうお腹ペコペコですよ!」
雷「そうね!早く食べましょう!」
赤城が一つのチキンソテーにナイフを入れる。
肉汁が溢れだし、鉄板に滴って、音がなる。
焼く音っていうのはなぜこうも食欲をそそるんだろう?
お腹が空いていたので、ちょっと大きめに切って口に運ぶ。
赤城「…しっかりと皮が焼かれて、香ばしさと肉汁が絶妙ですね。」
雷「本当ね…塩コショウのみで、肉の甘味がしっかりと感じられる。」
提督と鳳翔さん、霧島もチキンソテーを食べ始めた。
提督と鳳翔さんの場合は、料理の出来を確認しながら食べている。
霧島は食材選定は手伝ったが、料理を食べるのは初めてだ。
提督「鳳翔さん、味付けと焼きは大成功だね。」
鳳翔「そうですね。これは他にも活かせそうです。」
霧島「これだけシンプルな料理なのに、その技術が端々に感じられます。さすが司令と鳳翔さんですねぇ!」
そんな中、赤城は早くも2つめのチキンソテーに手を付けた。
見た目は全く同じ。なにか違いはあるようには見えない。
赤城「…! こっちのチキンソテーは味が濃いですね!」
赤城が驚きながら感想を述べたのを聞いて、雷も2つめに手を伸ばした。
雷「本当だ…1つめよりも味が強い…でも全然くどくない!」
全員が食べ終わり、鳳翔さんが言った。
鳳翔「さて、今食べた2枚のチキンソテー。どちらが今までの鶏肉でしょうか?」
赤城、雷、霧島は考えた。
しかしどちらにも違いはない。強いて言うなら、2つめのほうが味が濃かった。
雷「…わからないわ。というか、どちらもおいしいもの。」
霧島「そうね。2つめの味が濃いのは気になったけど…」
赤城「あ、そうか。2つめが候補の1ランク下の鶏肉ですね?」
提督と鳳翔さんはニコりと笑った。
赤城の味覚なら今回のクイズはなんてことないだろうという表情だ。
霧島「赤城さん、なぜ2つめだとわかったんですか?」
赤城「だって、提督が臭み抜きは”塩を降って15分置く”っておっしゃてたじゃないですか」
「あー、なるほど…」
霧島と雷は同時に納得した。
提督「そういうこと。肉も野菜も塩を振ると水分が抜ける。そこに塩が入って味が濃くなる」
鳳翔「いわゆる”水抜き”というものです。今までの鶏肉もしてないわけではではないんですが、圧倒的に時間が短いです。」
提督「それに塩の量も1ランク下の鶏肉に比べて少ない。だから味が違うのさ。」
赤城「なるほど…私はどちらも鶏肉臭さと言うのは感じませんでした。」
雷「私もよ。つまり、この味の変化を許容できるかを提督たちは判断してほしいのね?」
提督「そゆこと。」
赤城と雷、霧島はまた思考を巡らせる。
鶏肉の臭さという点では、どちらも気にならないレベルだ。
ただ、味が濃くなるということは、料理によっては使い分けの選択肢が狭まる。
それを天秤にかけ、どちらの鶏肉が良いか決定しなければならない。
コストか、味か…
これは大量の食事を用意しないといけない組織にとっては悩ましい問題だ。
そのコストを下げろと言われているんだから、なおさらだ。
赤城「問題ないと思います。」
霧島と雷が赤城を見た。
そんなに簡単に結論を出していいのだろうか?という疑問混じりの表情だ。
提督「理由は?」
赤城「うちの基地で出される鶏肉料理を考えたんですが、味が濃くなっても許容できる料理がほとんどなんです。」
提督「ん〜…」
赤城は説明を続ける。
基地で出される鶏肉料理、筆頭は一番人気の唐揚げ定食だ。
そこにチキンカツ、チキンソテー、水炊きと並ぶ。
揚げ物は油気が強いので、塩味はあまり気にならない。
チキンソテーや水炊きは、逆に下味を付ける工程を簡素化できる。
確かにどれも下味が強くても許容できる理由があった。
しかし、提督は指を2つ立て、赤城に聞いた。
提督「2つほど、メニュー忘れてるよ。」
赤城「えっ?なんですか?」
提督「がめ煮と、照り焼き」
赤城「…あぁっ!!私ともあろうものが…」
赤城が忘れていたことを悔やむのも無理は無い。
がめ煮と照り焼きは、唐揚げ定食に次ぐ人気メニューだ。
がめ煮は主に福岡の料理だが、なんだかんだで九州全土で食べられている。
恐らく、九州の代表郷土料理といっても過言ではないだろう。
その九州にある基地なのだから、メニューから外せるわけはない。
ここにいる研究会のメンバーも全員が好物だ。
特に九州生まれの提督と霧島は、ソウルフードの一つに数えている。
照り焼きは、日本が世界に誇る味付けだ。
甘辛い照りの付いた照り焼きは、白米の最高の相棒である。
特にこの基地の照り焼きは、提督と鳳翔さんが研究を重ねて作り出した
特性ソースを使用している。このソースは、制作者の提督と鳳翔さんも
自賛するほどの出来であり、ソースをスプーン一杯ご飯にかければ、
それで丼飯が食えると言われている。
照り焼きが出される際は炊く白米を2倍にする。全員が怒涛の勢いでおかわりをするのだ。
それでも綺麗になくなるのだから恐ろしい。
さらに、照り焼きには准将伝説と言われる逸話がある。
遊び‥もとい、視察に来た同期で天草艦隊指令基地の提督である新城准将に振る舞った際、
照り焼きを怒涛の勢いで食べきり開口一番、
「このソースのレシピを教えてくれ!頼む!!同期の好だろう!!!」
と、大声で懇願した。迫力に苦笑しながら小瓶に入れたサンプルと
レシピを書いたメモを渡すと最大限の感謝を伝えられた。
その後、天草艦隊指令基地提督及び艦娘の連名でレシピ教示への
感謝状と粗品が送られてきた。その様相に流石に恐れを抱いた提督と
鳳翔さんが新城准将に連絡を取り、ソースは川内艦隊指令基地及び
天草艦隊指令基地内でのみ提供され、原則として門外不出とするという
二基地間の秘密情報協定、通称”照焼協定”を結んだというオチが付く。
さて、鶏肉の臭み抜きで味が強く付くということは、この2つの料理に影響が大きい。
なぜなら、この2つの味のベースは、元々味が濃い醤油だからだ。
提督「そ、そこが問題なのよ。その2つをメニューから外すなんて言った日には…」
赤城「士気ガタ落ちですね。私ももれなくやる気を失います。」
提督「ちょっとはがんばってよ。気持ちは痛い程わかるけどさぁ」
赤城「しかし、これを外すなんて許容できませんよ。」
霧島「最もですね。しかし、司令や鳳翔さんが料理で悩んでるとなると、かなりの難題ですよ…」
全員がまた唸ってしまった。
料理に関しては基地内で1,2を争うほど造詣が深い提督と鳳翔さんが悩んでいるのだ。
そう簡単に結論が出るわけがない。
と、言う空気が場を支配し始めたかに思えた。
雷「ちょっといいかしら?」
提督「はい、なんでしょ?」
雷「臭み抜きで付く味を抑えられればいいんじゃない?」
提督「そうだね。ただその方法がね…」
雷「塩をちょっと減らして、お酒に漬けてみたら?」
提督と鳳翔さんがしまったという顔をした。
臭み抜きの王道中の王道をなぜか二人そろって失念していたのだ。
提督「…鳳翔さん…」
鳳翔「はい…なぜ忘れていたんでしょうね…」
これは一石二鳥の方法だ。
なぜなら、お酒は臭み抜き以外にも味の調節もできるからだ。
煮物などで味が濃いと感じた時は、大抵水を入れる。
しかし、水だとコクまで薄まり、味付けのやり直しをしなければならないこともある。
そこでお酒を入れると、味は薄まるがコクは保たれるのだ。
提督「えーと、鶏肉余ってたっけ?」
鳳翔「はい、ちょっと余分に購入したので」
提督「よし、なら塩を減らしてお酒に漬けよう。」
鳳翔「そうですね。では試してみましょうか。」
提督「よし、もう一回チキンソテー焼いてみよう。」
赤城「はい!私はまだ食べられます!」
提督「君はちょっと自重しような?」
赤城「一航戦の誇りがあるので!」
提督「いや意味通じてないよ?」
午後十三時十分。
研究会の会合はまだ続く。
妄想が溢れだして初めて書いてみましたが、物語をまとめるっていうのはとてつもなく大変ですね。
ネタを思いつたら書いていきます。