「ちょっと‼ちょっと待ちなさいってば‼」
後ろから付いてくるセリーヌの声を無視してリィンは、山を下っていく。そしてちょこちょこと現れる生物、リィンいわく魔獣と言うらしいのだがそれを見るたびにリィンは少し考え事をしては魔獣を斬っていく。
もちろん傭兵で力量を見て気に入ったら雇えと言ったから俺達も魔獣と戦っている。風はISの双剣を俺は大剣を拡張領域から取り出して戦っている。元々俺達は専用機が出来る前から訓練していたから生身での戦闘も特訓している。
「さすが...傭兵だな...動きに隙がない...俺もそのぐらいの力があれば...」
俺と風が剣で魔獣を叩き斬る姿を見ながらリィンが呟く。
「少なくとも今のお前には無理だろうな」
「雷...そんなこと言って聞こえたらどうするの?事実だけど」
何が起きるか分からない山の中。しかも魔獣がちょくちょく襲ってくるのに考え事をしたりするリィンを見て俺はつい言ってしまった。
「くっ‼お前に...って後ろだ‼」
どうやら聞こえていたらしいリィンがは何かを言い返そうとしていたリィンが声をあげる。もちろんISのハイパーセンサーで何が起きようとしているのかは分かっている。後ろから岩みたいな魔獣が俺に向かって転がって来ている。分かっていて何で対応しないのかと言うとリィンに言って置くべき事があるからだ。
「よっと!」
風が剣で転がって来ていた魔物を両断し魔獣は消えていった。
「お前はこんな風に背中を預けて戦ってきた仲間がいたんだろう?お前の動きを見ていたらわかる。ついでに何に悩んでいるかもな...」
リィンは反論しようとするが言葉を発する前に俺は続ける。
「お前に何があったかは知らないし興味もない...。だがお前とセリーヌの様子を見て何と無く予想すると...お前仲間を自分が見捨てたとか思っているのか?大方何かと戦って負けかけてセリーヌとヴァリマールだったか?あのロボは?まぁ名前はいいか...あいつにここに連れてこられた訳だろ?」
「そうだ...」
リィンは何が言いたいという表情で俺を睨んでくる。
「お前の仲間は早々死ぬ様な奴なのか?」
「違う‼アイツらは、そんな奴等じゃない‼」
リィンは激昂して叫ぶが俺はあくまで冷静に冷徹に次の言葉を紡ぐ。
「なら、何故信じない?お前自身死なないと言っているのに?それにお前が頼んでいようが無かろうがお前は命を助けて貰ったんだろ?どうして感謝しない?周りに当たり散らさない分ましだがあくまでそれだけだ...。怒っているならまだしも幾分が歩いて心が落ち着いただろう?それでもなお余裕がない奴が戦えば死ぬだけだ」
リィンは、顔をうつむかせていた。俺が死ぬだけだと言ったのもあるんだろうがどれだけ自分に余裕がなかったか気づいたり仲間の顔でも思い浮かべているんだろう。
暫く動かなかったリィンが顔をあげると少しだけすっきりしていた。
「セリーヌ..」
「何よ?」
「すまなかった...」
リィンは小さな声でセリーヌにそう言った。
「いいわ。私も人間の感情は良く分からないからあんたの言われたくないことを知らないうちに言ってたかもしれないからね」
その言葉に風が猫だからね~などと茶々を入れていたが全員で無視した。
それからも暫く道なりに山を降りていくと道が広くなって広場の様になっている所に着いた。
「ここは...師匠に昔、修行しに連れてきてもらった場所だ」
どうやらリィンが知っている場所に出てこられたようだ。
「よかった、よかった私達ここら辺の地理がさっぱりだからリィンが知っている場所に来れてよかったよ~」
「ほんとだな」
まぁ、風のISを使えば死ぬ前に町とか見つけられるだろうけどな。ただ、風のISは欠陥機だからな...本気を出すとISのシールドエネルギーを消耗しちゃうから使わせたくない。
そんな考えていると、
ガシャン ガシャン
という音と共に地面が揺れだした。
「何の音だろうね~?」
「知らねえけど少なくとも良いことでは無い気がするな」
「上からよ‼」
セリーヌがそう叫ぶから上を見てみると...
片手に巨大な剣も持ち人間三人か四人分の高さを持ち間接部分にある紫色に妖しく輝く球体を持つ巨大な人形が崖の上から歩いてきていた。
「あれは何だ?」
「太古の遺産の魔煌兵よ...。近くにヴァリマールが来たからつられて眼を覚ましたんだわ‼」
そんな話をしている間にも魔煌兵は崖を飛び降りこちらの方へどんどん近づいてくる。
「逃げるわよ。今の状態じゃあ勝ち目はないわ‼」
セリーヌがそう叫ぶ中リィンは腰の太刀をゆっくりと抜いて構える。
「ヴァリマールに反応して起きたんだったら恐らくアイツの目的は俺なんだよな?」
「そうよ‼リィン‼逃げないと殺されるわよ‼」
セリーヌがリィンに逃げるように言うがリィンは逃げようとしない。むしろ魔煌兵に敵意を剥き出しにしている。恐らく魔煌兵とか言うのを壊すつもりだろう。
「そうか、ならなおさら引けない‼この程度でつまづいていたらみんなに会えないしな‼」
ほら、やっぱりな。死にたくないし一つだけ確認するか...。
「セリーヌ、魔煌兵って生身で破壊できるような物なのか?」
俺がそう聞くとセリーヌは、少し考えて
「不可能じゃないと思うわ。崖と高い場所から落としたりすれば損傷とかするでしょうし中身を壊せれば多分破壊可能よ。そうそう出来ることでは無いでしょうけどね...」
「あっそう」
それが聞けて安心した...。
「風」
「何?」
「俺達のクライアントになる予定のリィンがあの無駄にデカイ人形と一戦交えるらしい。やるぞ」
「めんどくさいけど仕方ないね。...使っていいの?」
風がISを使っていいかと聞いてくるが俺は首を横に振る。
「それは最終手段だ」
「了解~。なら殺ろうか」
俺達の会話を聞いていたセリーヌは、唖然としていたがすぐに気を取り直し、
「分かったわよ。覚悟を決めるわよ‼」
ヤケクソぎみにそう叫んだ。それが合図だったかの様に魔煌兵は、剣を振り上げリィンを狙い降り下ろす。
「ふっ‼」
それを、リィンは紙一重で避けそのまま相手の股の下足をくぐり抜けながら足を太刀で斬りつける。斬りつけられた魔煌兵はよろめき手を地面についた。
「よいしょっと‼」
その隙を逃さずに風が双剣をその手を切り払い魔煌兵は今度は剣を地面に刺すことで体勢を整えようとするが、
「よっ‼」
今度は俺が顔面を大剣で思いっきり横に斬りつけ、よろめかせて膝をつかせる。
「リィン‼奴の首を斬れ‼」
俺がそう叫ぶが返事はない。不審に思い魔煌兵の後ろに居るはずのリィンの様子を見るとリィンが魔煌兵と同じように膝をついていた。そう言えばセリーヌがこっちに来たのが一ヶ月前だとか言ってたな...。仮にずっと気を失っていたとしたら一ヶ月何も食べたりしてないことになるな...。その状態でここまで動いていたならスゴいな。ここで死なれるわけにもいかないしな..仕方ない。
「風‼ISを使うぞ‼」
「了解~‼」
「「来い‼阿修羅‼」(来て、ハイリヒ‼)」
お互いに夏休み前の臨海学校で新しくなったISを呼ぶ。俺のはISは阿修羅。風の支援機として俺の元専用機の暴風と陽炎の後継機で武装は陽炎の武装を流用しているが銃の種類が増えている。ベースは陽炎で暴風は、背中にバックパックとして付いている。エネルギーは二機分あり一部を風の機体に渡せるようになっている。
風のISはハイリヒ。元専用機の流星の性能をさらにピーキーにした機体。武器は流星と同じだが、装甲は極限まで薄くし重さを軽くしている。どれぐらい薄くなったかと言うとスラスターを全部使って加速するとISが壊れないように自主的にシールドエネルギーを使う程に薄くなっている。が、速度自体は流星の三倍になっている。だが稼働時間が短くなるため俺のISからエネルギーを渡すことでその欠点を解消している。
「さて、やるぞ。突っ込め相手の動きは止めてやる‼」
俺は、そう言うと両手にアサルトライフルとショットガンを持って起き上がりかけている魔煌兵に全弾叩き込む。叩き込まれた魔煌兵はふたたび地面に膝をつく。俺がリロードを始めると今度は、
「行くよ‼」
風が突っ込み双剣で魔煌兵の装甲を刻みながら周りを飛び回り後ろに回り込むと双剣を拡張領域に直し今度は大鎌を取りだし首に引っ掻けて後ろに倒す。
「雷、決めてよ‼」
「当たり前だ。
俺は機体の唯一仕様、永遠舞踏を起動させるのと同時に背中にあるバックパックが開き四本の腕が出てくる。実は背中に背負っているバックパックは元々は暴風でその脚部を腕に取り換えた物だ。何故そんな改造をしたかと言うとそれは、この機体の唯一仕様に関係している。その効果は銃やミサイルを撃ったらすぐに弾が補充されさらに弾切れにもなら無いと言う効果を持っている。つまり...
「さぁ、踊ろうぜ」
俺はこの唯一仕様を使っている間は弾幕を張り放題ということだ、俺はすでに右手にショットガン、左手にアサルトライフル背中から出てきた四つの手には、ミサイルポットを2つにスナイパーライフル、マシンガンを構えすべて魔煌兵に標準を合わされていてさらには脚部と肩に内蔵しているミサイルポットをすべて開いている。
「ファイア」
風が下がったのを確認すると同時にすべての銃の引き金をひいて機体に内蔵されていたミサイルも全弾連射していく。そして内装されているミサイルや銃の弾は撃ったらすぐに補充されるからまた直ぐに次弾が発射されて魔煌兵に雨あられの様に降り注ぐ。
「さて、これでどうなったかな?」
10秒ほど連射し続けた後撃つのを止めて魔煌兵が居たところを見てみると..
「壊れきってはいなかったか...かなり丈夫だな」
魔煌兵は結果だけ言うと壊れきってはいなかった。それでも体のあちこちにがたは来ているようで立ち上がろうとするが立ち上がれずに何度も立ち上がろうとしては倒れることを繰り返している。止めを刺そうとすると、
ビキビキビキ!!
魔煌兵の転がっていた地面にヒビが入っていきそこら一帯が崩れ魔煌兵は、山の谷に向けてまっ逆さまに落ちていった。
「止めを刺そうとしたのに落ちていったか...これで壊れているといいんだがな」
「まぁその時は改めて壊そうよ?まだ、雷には使ってない切り札の銃があるんだからね」
あれの事か確かに使ってない銃がまだ2つあるが両方とも...
「エネルギー使うから嫌なんだよな...あれ...」
「二機分あるんだからいいじゃん♪」
「お前の機体がエネルギーをかなり使うからだろうが‼」
俺がそう言うと、てへっと言いながら頭に手を当ててゴマかそうてしてくるが俺からするとウザイだけである。
「お前な...」
「お兄様‼」
「リィンさん‼」
俺が風に暫く説教してやろうとすると女の子達が叫びながらこっちに向かって走ってきて勢いそのままリィンに抱きついた。
「エリゼ、殿下...」
「おいおい...これは...何だよ...」
俺がリィンの方を見ていると今度は魔煌兵が落ちた方からは男の声が聞こえてきた。振り向くと腰に警棒型のスタンガンを下げた男がいた。
「すごい爆音が聞こえたが、これはあんた達がやったのかい?」
「いや~、雷がやったんだよ~」
「いや、俺とお前の連携なんだし二人でやったって言うのが妥当だろう」
「へ~、そうなのか...あっ自己紹介が遅くなったな俺はトヴァルだ。よろしくな」
そう言いながらトヴァルが手を差し出してくる。
「そうか、俺達は傭兵の雨宮 雷だ。こいつは妹の風だ。よろしく」
そう言いながら相手の手を握りつぶしたりしたら困るのでISを解除してから握手に応じる。
ただこいつの眼は俺を品定めするような眼をしている。油断なら無いな。そんなことを考えていると風もISを解除して隣に並んでくる。
「その腕にある腕輪はなんだい?その子の首にかかっているネックレスもここら辺じゃあ見ないような物だけど?」
大方こいつはISの在処でも探りたいんだろうな...でも、
「ただのお守りですよ」
教えるわけには行かないから誤魔化しておくか...。
「束ねぇから貰ったんだよ~。私達に暴力を振ったりネックレスとか腕輪を盗もうとしたら電撃がでる様にしているらしいよ?」
「試してみますか?」
俺はそう言いながら腕を前に差し出す。
「それじゃあ失礼して...」
トヴァルが腕輪に触れた瞬間かなりの電撃が出たらしくトヴァルは痺れて少しふらついた。
「少し触れただけでこれなら奪おうとしたら死ぬかもな...」
「ははは...」
その通りだがな。
「まぁ俺達はリィンを偶然見つけて雇ってもらおうとしてる傭兵のだからな。ちなみに報酬は衣食住だから、そこまでの高額な報酬はいらない。.....まぁ使えないってのもあるけどな」
「最後、何か言ったか?」
「いや、腹へったし疲れたなってな」
最後のは、ボソッて呟いただけだから聞こえなかったみたいだな。
「お兄様‼大丈夫ですか‼」
「リィンさん‼しっかりしてください‼」
今度は何事かと振り向いて見るとリィンがぶっ倒れていた。多分知り合いにあって気が抜けたのだろう。見事に気絶していた。
「死にはしないけど速く町にでも連れていった方が言いと思うぞ?」
「そうですね‼急ぎましょう‼トヴァルさん」
「了解だ‼嬢ちゃんやさっきまで戦っていた奴に運ばせる訳には行かないからな」
そう言うと、トヴァルはリィンを背中に背負い山を下っていく。
「貴方も来てください‼兄様を見つけてくれた方々を置いていくわけにはいきません」
リィンをお兄様と呼ぶ少女名前は確かにエリゼだったかな?その子に薦められるまま俺達は山を下り、リィンの故郷のユミルに向かって歩きだした。