令呪が発現しちゃった!どうしよう!?(Fate/Zero編)
作品を知っていること前提で書いています
説明がほとんど無いようなものですがご了承ください
吾輩は転生者である、名乗るほどの者ではない。
久しぶりに中学の友達と再会し、河原でサッカーをしていたらオーバーヘッドキックに失敗して頭を打つと前世の記憶と共に右手に令呪が発現した。
ザッケンナコラー。
サッカーは中止し、俺は逃げるように自宅のアパートへと逃げ帰った。
令呪とはFateの世界に登場する厄介なアイテムで、これが現れたら聖杯戦争に強制的に参加しなくてはならない。
「ふざけるなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うるさい」
「アッハイ、スミマセン」
今の気持ちを言葉にしたら隣の人から壁ドンされた。
壁ドンに適当な返事をしたあと、俺は机の上に広げられた新聞へ視線を落とす。これはアパートへ帰る途中のコンビニで入手したものだ。
その新聞からは《冬木市》《殺人事件》の単語が確認できた。そして、窓から見える景色の街並みは俺が生きていた時代より古く見える。
言うまでもなくこの世界はFateの世界だろう。しかも《Zero》の世界だ。
《Fate/Zero》とは《Fate/Stay Night》の10年前の出来事を描いた作品である。
未来の世界線である《Fate/Stay Night》が詰んでる状況から始まっていることから《Fate/Zero》の世界はハッピーエンドで終わることはなく、詰んでる状況へ移行するための物語だと最初から決まっている。
水銀先生は参加したがために昼ドラを繰り広げて最後に死に、蟲おじさんはなんかもう説明するのもアレなくらい凄く報われなくて死に、優雅は愉悦に目覚めた麻婆神父に後ろからアゾットされて死に、爺さんは妻を失い望みが叶わず娘とも会えず不治の病を抱えて死に、麻婆神父はギルえもんのせいで愉悦に目覚めて生き残り、龍之介はいつの間にか死ぬ、というかむしろ死んでいい。
まさに
ウェイバーくらいだよ、悲惨な目に遭わなかったの。
「クソッ!」
俺は憎々し気に右手の令呪を睨む。
サーヴァントを召喚し、使役するための証。
この令呪が誰に該当するものかを考える必要は無い。
俺に令呪が宿る機会は一つしかない。
これは間違いなく、本来は龍之介に宿る筈だった令呪だろう。
龍之介は原作でも数合わせのマスターだった。マスターとしての資質を聖杯が求めたのならば俺に令呪が宿る可能性は0ではない。
「ふざけるなよ……!」
だからと言って選ばれたことに納得する訳ではない。
聖杯戦争の景品である聖杯は前の戦争の第3次で汚染されている。更に参加メンバーはどいつもこいつも面倒な奴等ばかり。参加するだけメリットは無い。
未来を知っているからこそ、この戦いに参加する気にはなれない。
「……まずは現状を把握するか」
一旦深呼吸し、頭を冷静にする。
大丈夫だ、まだなんとかなる。焦って行動しちゃダメだ。
まずは現在地。
ここは新都の外れにある俺のアパートで大学のために借りた物だ。
外れとはいえ周りには一般人が住む家がある、直ぐにはバレないし手も出しにくいはず。
考える時間はたっぷりある。
次に右手の令呪を見る。
聖杯戦争への参加権にしてサーヴァントの使役に必要なもの。
ぶっちゃけ令呪が無ければ参加しなくてもいい。そして令呪は誰かに譲渡することが可能だ。
更に聖杯戦争には参加の意思の無い者を保護する《聖堂教会》という場所がある。
まず大前提として俺は聖杯戦争に参加しない。
だが、逃げてはダメだ。サーヴァントが揃わなければ聖杯戦争は始まらない。令呪を持ったまま逃げても他の参加者や戦争の運営に追われるだろう。
では聖堂教会に行くか?
いい案に見えるがこれは無理だ。
第5次と違い、麻婆神父の父親が運営しているので愉悦オブジェにされることは無いだろうがあの場所にはギルえもんやアサシンが普通に入り込んでくる。全然安全ではない。
というか教会には既に脱落したように見せかけた麻婆が居るから俺を保護する可能性は薄いだろう。アサシンに殺される可能性の方が高いし、愉悦に目覚めた麻婆に殺される可能性もある。
でもまぁぶっちゃけ「令呪渡します。あ、私は今から海外行くんで保護はいいです」って言えばどうにかならないこともない。
アサシンと麻婆を見られたくないだけだから向こうも「あ、マジすか?じゃあ令呪受け取りますね。それじゃ気を付けて下さいね神の加護のあらんことを」みたいな感じになるはず。
さすがに自主退場する人間を殺すことはしないはずだ。アサシンをけしかけても疑われるのは教会だから。
でもまぁ、これ、実行したら高確率で切嗣に狙われますよね。
教会は中立地帯故に様々な陣営が見張っている。間違いなくアインツベルン……切嗣には見つかる。
教会への牽制、不穏分子の処理、素晴らしいくらい切嗣には利がある。
船に乗っても飛行機に乗ってもテロ☆フィナーレ!される未来が見える。
世界平和願うんならさ、殺す必要のない自主退場する一般人くらい見逃してよ。それに俺以外の人が可哀相だよ。
化けて出て枕元で嫁さんの声で「呪ってやる」って連呼してやろうか。
「待てよ?教会が機能してるんなら聖杯の汚染を伝えればよくね?」
教会と繋がっている優雅の願いは根源への到達。その願いを叶える聖杯が使い物にならないと知ればどうだ?
間違いなく優雅は調査を申し出る。そのため聖杯戦争は中止……にはならないが停戦くらいにはなるはず。
麻婆は覚醒してないから従う、ケイネスとウェイバーは聖杯自体に興味ないから従う、切嗣は分からないが聖杯担当のアインツベルン所属だから従うだろう多分。おじさんは知らない。サーヴァントも分からん。
……まぁ、高確率でイタズラとして処理される可能性が高い。が、選択肢には入れてもいいだろう。
だが確実なのは令呪の譲渡だ。では、この令呪を誰に渡すか?
必然と他の参加者になるだろう。
ケイネス→令呪渡したら殺される可能性が高い
アイリスフィール→彼女とセイバーは問題無いのだが確実に切嗣に殺される
雁夜おじさん→たぶん令呪の譲渡方法を知らない、蟲爺に令呪ごと喰われて死ぬ
時臣→話が通じる部類ではありそうだが教会と繋がっていることと麻婆神父とギルえもんの存在が不穏過ぎる
「消去法でウェイバーしか居ないじゃん」
ウェイバー・ベルベット
ケイネスの聖遺物を盗んで聖杯戦争に参加したライダーのマスターである時計塔の魔術師。参加者の中では一番人間らしく、常識的。サーヴァントのライダーも一応は話の分かる人間ではあるし悪い存在ではなかった。
令呪を渡した後に俺を殺す理由も無い……というかヘタレだから大丈夫だろう。
「決まりだな」
ライダー陣営と接触し、令呪を渡す。
その後に海外へ撤退する。
完璧だ。
問題はライダー陣営との接触だが、原作でウェイバーは外国人の老夫婦の家に居座っていた。役所にでも行ってその家を調べればいい。
外国人の老夫婦が住む家だ、直ぐに見つかる筈だ。
ちらりと窓の外を見れば暗闇が広がっていた。
戦いは夜に行なわれる。今外を出歩くのは自殺行為と等しい。外出は明日に回そう。
テレビを点け、カップラーメンにお湯を注ぐ。
テレビはバラエティ番組を写し、様々な人の声を発する。
カップラーメンが出来上がるのを待つ間に、令呪が目に入った。
そしてふと、召喚されるはずのサーヴァントを考える。
今、俺がサーヴァントを召喚すれば現れるのは魔術師のサーヴァントであるキャスターだろう。
この戦争に本来召喚されるのはジャンヌダルクと共にフランスを救った英雄ジル・ド・レェだが、その姿は青髭のモデルとなった晩年の殺人鬼の状態。
快楽殺人鬼の雨生龍之介に召喚され、冬木市の子供を犠牲に魔術を行使する外道だ。
「あー……龍之介は警察に連絡入れとくか」
龍之介はマスターだろうとマスターじゃ無かろうと市民の暮らしを脅かす殺人鬼だ。
明日、警察に通報しよう。
下水道に怪しい男が入ったと言えばいいだろう。龍之介本人は見つからなくてもあいつの作品や生活していた痕跡が発見されればいい。
「そろそろいいか」
頃合いかと思い、蓋を開けてカップラーメンを食べる準備に入る。ちなみにカレー味。
箸とお茶を用意し、両手を合わせ
「いただきます」
宣言の後に麺を箸で掬い取り息を吹きかけて温度を下げ、一気に啜る。
麺を平らげた後は残り汁に白飯を投入し、カレー味の染みた飯をスプーンで頬張る。
「ごちそうさまでした」
貧乏飯を堪能した後は事前に沸かしてあった風呂に入り、その後歯磨きをし寝るために部屋の電気を消しベッドへ入る。
……緊張のためか、眠れない。
あまりにも眠気が来ないので、何か考え事をしよう。
もし戦争に参加してしまったら、というテーマでいこう。考えたくないから直ぐに寝ること間違いなしだ。
参加というからにはサーヴァントを召喚したに違いない。さすがに旦那ではないだろうが……誰が召喚されるだろうか。
ハズレと言われるキャスタークラスで勝ち抜くならば相当優秀なサーヴァントを引く必要がある。
優勝後のことを考えればメディアとセミラミスがいい。
この二人は神代の魔術師であり、聖杯を正しく使えるように戻せる可能性があるサーヴァントだ。
……メディアはともかく、セミラミスは裏切られる未来しか見えない。
他のサーヴァントは……キャス狐は裏切ることは無いだろうが聖杯をどうにかすることは出来ない。
ナーサリー・ライムは特殊過ぎる。
パラケルススとアヴィケブロンは絶対裏切る。
作家サーヴァントなど論外だ。
もし召喚するならメディアだな。うん、メディアだ。
悲しいことに触媒が無いから召喚なんて叶わないんだけどな……。
色々と悲しくなってきたので俺は考えるのを止めた。
ウェイバーと一緒に行動してれば安心ってそれ一番言われてるから
原作主人公が一番危険という事実
おじさんを助ける余裕は無い
の三本でお送りしました