艦隊これくしょんZERO 〜Flying death flag〜   作:Mobius-390

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PJのエーススタイルはナイト以外考えられない。

逆にマーセナリーやソルジャーの方が想像しづらい。



クロウ3が来た!

どこかの砂浜に1人の青年が倒れていた。

 

対Gスーツの上にフライトジャケットを着込んだその青年の名は「パトリック・ジェームス・ベケット」、略してPJ(ポロが趣味)。

 

別名「空飛ぶ死亡フラグ」

 

「……ん?ここは…」

 

目が焼けるような太陽の光で、彼は目を覚ました。

 

「一体…何がどうなったんだ。」

 

******

 

何がどうなってこうなったのか、簡潔に説明しよう。

 

1995年12月31日。彼はウスティオ空軍 第6航空師団 第66飛行隊「ガルム隊」の3番機としてアヴァロンダム攻略作戦に参加していた。

 

そして作戦終了直後に敵機からのレーザー攻撃を受けて撃墜。

 

被弾の衝撃で方向感覚も麻痺し、意識もついでに吹っ飛んだPJ。

 

そして意識が戻ったときには、既にこの砂浜に倒れていた。

 

それだけ。

 

 

因みに元居た世界では、彼は撃墜後長らく「作戦中行方不明」の扱いになっていた。

 

そしてベルカ戦争終結から数年後。彼の機体と思わしき残骸が発見されたことで正式に「戦死」とされてしまった。

 

もちろん本人はそんな事知る由も無いが、一応ここに書いておく。

 

******

 

話は戻って砂浜の上。

 

こっちが説明しているうちに、PJはいつの間にか所持品を確かめていた。

 

が、中身は特に変わり映えしなかった。

 

空の予備マガジン×2

 

誰かに食われた携帯食の容器

 

以上の心許ない所持品。見覚えの無い現在位置、などの要素が集まった現状に直面したPJは近くに転がっていた石を拾った。

 

「サイファー、助けに来てくださいよぉ〜」

 

そして会えるはずのない戦友のTACネームを情けない声で呼びながら、彼は目の前に広がる青い海に向かって石を投げた。

 

放物線を描いて飛んでいった石は、小さな音を立てて波の間に消えていった。

 

それを見ていたPJは、急に砂の上に仰向けになって呟いた。

 

「ヴァレーに帰りたい…」

 

彼の目からはいつの間にか涙が溢れていた。

 

「イーグルアイ…ピクシー…サイファー…」

 

溢れる涙を拭いながらPJは弱音を吐いた。

 

「誰でもいいから…迎えに来てくれよ…」

 

 

その時、PJは海の上を何かが進む音を聞いた。

 

「この音は…船か?助かった!」

 

やっと人に会えると思ったPJは慌てて起き上がった。

 

そしてまた、固まった。

 

確かに海上には何かいた…

 

しかし船であって、船ではない者だった。

 

「人が…水の上を歩いてる…だって?」

 

起き上がったPJの目の前では15歳前後の少女3人が楽しそうに話しながら水上を滑っていた。

 

「なんだありゃ…」

 

PJはただ呆然としながら右から左へ進んでいく彼女達を見送ったかと思ったら、急に立ち上がった。

 

「とりあえず…人を探そう。ここはどこなのか聞いてみないと。」

 

砂を払い、ジャケットを片手に防波堤へ向かって足を進めるPJ。

 

彼は、目の前の出来事については深く考えないことに決めた。

 

続けて起こる不可思議な現象や光景に対し、普通にツッコミを入れていたらキリがない。そう判断したのだ。

 

「よう相棒…まだ生きてるか…」

 

戦友の口癖を呟きながら、PJは防波堤に備え付けられた階段をゆっくりと上った。

 

1段1段上がっていくうちに、舗装された道路と速度制限と思わしき標識が少しずつ目に入ってきた。

 

そして、階段を上りきると内陸の風景がはっきりと視界に入った。

 

が、その光景に対してPJは自分の目を疑った。

 

「なん…だって…?」

 

防波堤の内側には民家があるにはあったのだが…。

 

「古い家ばっかりだ…」

 

サイファーの持っていた故郷の写真にこんな感じの民家が写っていたのを覚えていたPJの頭には1つの考えが浮かんでいた。

 

「それじゃあ、もしかしてここはノースポイント…いやいやいや!そんなわけないだろ!」

 

ベルカとノースポイントはとてつもない距離がある以前に大陸が違う。

 

一瞬で海とユージア大陸を飛び越えたとも考えづらい。

 

唯一の希望を自ら撃墜したPJは、ひとまず歩くことにした。

 

「暑い…体が焼けそうだ。」

 

炎天下の下、PJは少女達が歩いて(?)来た方角へ歩き出した。

 

******

 

30分後。

 

PJは相変わらず道に沿って歩いていた。

 

少しずつ建物は見えてきたが、距離的には大分先だった。

 

「暑い…」

 

炎天下の下で熱されたアスファルトの上を歩いてたせいか、寒い所出身のPJは早くも体力の限界を迎えていた。

 

目のハイライトは無くなり、歩く足どりもフラフラしていた。

 

が、彼は決して病んでるわけでも、熱中症になってる訳でもなかった。

 

彼はただ…

 

「喉が…渇いた…」

 

喉が渇いてるだけだった。

 

 

そんな彼の目の前に、1つの希望が現れた。

 

道沿いに建っていた1軒のレンガ造りの建物。

 

戦闘機乗りであるPJの目は300m先の店先に掛けられた看板を確かに捉えていた。

 

髭を生やしてフードを被った魔術師の看板。

 

何となく見覚えのあるそのデザインに、PJは引き寄せられた。

 

そして店の前にたどり着くと、入口には「営業中」の札が掛けられていた。

 

「やった!!」

 

PJはそのままのドアの取っ手を掴み、勢いよくドアを開けた。

 

開けると同時に、ドアに取り付けられたベルが鳴った。

 

店内に足を踏み入れると、そこは冷房の効いた別世界だった。

 

PJは1時間ぶりに生きた心地がした。

 

店内に人の姿は無く、静かに音楽が流れていた。

 

「誰もいないのか…?すいませーん!」

 

軽く枯れたPJの声に答えたのは、カウンターの下からの声だった。

 

「そんなでかい声出さなくても聞こえてるぜ。座って待っててくれ。」

 

カウンターの下の声に促されるままにPJはカウンター席に腰を下ろした。

 

店の隅のジュークボックスからジャズが流れ、振り子時計が静かに時を刻んでいた。

 

「待たせたな。お客さん、何にす…」

 

カウンターの下から顔を出したのはPJの予想外の予想の遥か上を行く、思いもよらない人物だった。

 

「やっぱりお前か、そろそろ来る頃だと思ってたぜ。」

 

「お前は…」

 

喫茶店のマスターの男の顔にPJは見覚えがあった。

 

 

ジョシュア・ブリストー

 

オーシア国防空軍「ウィザード隊」の隊長であると同時に、クーデター組織「国境なき世界」のリーダーであった男。

 

PJとは敵味方の関係であるため、ここでPJは彼に掴みかかって問題ない。

 

ていうか、むしろそれがお約束の流れだ。

 

が、当の本人は立て続けに起こる予想外の事態に疲れきってしまっていて、目の前で喫茶店のマスターをしている敵の親玉に掴みかかる気なんてこれっぽっちも起こらなかった。

 

それどころか、知り合いに会えたので内心ホッとしていた。

 

「まぁいいや。自家製アイスコーヒー。」

 

「………おぅ。」

 

お約束の流れで、てっきり掴みかかってくるものだと思って少し身構えてたジョシュアだったが、PJがさらっと注文をしてきたために拍子抜けした声でそれに答える羽目になってしまった。

 

「アイスクリームは上に載せるか?それとも別にするか?」

 

気を取り直してジョシュアはPJに話しかけたが、PJの返答はまた意外だった。

 

「コーヒーに沈めといてくださいっす…」

 

「お前…面白いくらいに疲れきった顔してるが、何かあったのか?」

 

PJの顔には確かに疲れが出ていた。当然である。

 

撃墜されてからずっと訳の分からない事態と光景が連発している。炎天下を30分歩き、やっと辿り着いた喫茶店では墜としたはずの敵がマスターをしている始末。

 

「何かあったとかの話じゃないっす。指輪は無くすし、女子中学生は水上を歩いてるし、飛んでる航空機は時代錯誤もいいところの旧型ばっかり!ここはどこっすか!?オーシアっすか!?ノースポイントっすか!?」

 

1日のキャパシティを超えた情報量にPJの脳で遂に何かが壊れた。

 

「おい落ち着け。まずは飲め、話はそれからだ。」

 

ジョシュアが作ったアイスコーヒーは、コーヒーの入ったグラスにアイスクリームが程よく溶けて沈んでいた。

 

「サンキューっす。」

 

チュー

 

「はぁ…生き返るっす~。」

 

アイスコーヒーを一口飲んだ途端、PJの中にあった緊張の糸はぷっつりと切れた。

 

「お前、ここは何処かって言ったよな?」

 

「いったっふひょ?」

 

 

「ここは俺たちが居た世界と異なる別世界だ。」

 

「ひょうっふか、んめぇ~。」

 

5時間ぶりのアイスコーヒーを味わっていたPJは、ジョシュアの衝撃発表に驚きはしなかった。

 

「もうちょい驚けよ!てか、ちゃんと聞け!!」

 

今度こそは流石に驚いてコーヒーを鼻から噴き出すだろうと思っていたジョシュアは、PJの2度目のそっけない反応に対して遂にキレた。

 

そしてPJの手元から自家製アイスコーヒーを引ったくった。

 

「ああ!俺のアイスコーヒー!!」

 

「ちゃんと聞くか?聞くか!?」

 

「聞くっす!聞くからアイスコーヒーを下さいっす!」

 

お前らは子供か。

 

ジョシュアからアイスコーヒーを取り戻したPJはさっきと同じようにコーヒーを飲みつつ、目の前の元クーデター軍リーダーの店主の話に耳を傾けた。

 

「いいか、落ち着いてよく聞け。」

 

ジョシュアは耳を真っ赤にして小声でPJに話しかける。

 

「アンタがまず落ち着くべきっす。」

 

「さっきも言った通り、この世界は俺たちの世界とは異なる世界だ。」

 

「はぁ…」

 

「…ここは日本の高知県に属する宿毛って町で、ここから少し行った所には宿毛湾泊地という海軍の基地がある。」

 

「泊地…」

 

昔、何かの歴史書にそれらしい言葉が載ってたのをPJは見た覚えがあった。

 

それで思い出してみたが、結局思い出せなかった。

 

「ここからが大事だ、ちゃんと聞け。」

 

ジョシュアの眼が鋭くなり、それを悟ったPJもストローから口を離した。

 

「聞いてるっす…」

 

 

 

「いいか?俺の記憶が確かなら…」

 

「………」

 

異様な緊張感にPJは息を飲んだ。

 

「お前は今日付けで…」

 

「今日付けで…」

 

「宿毛湾泊地に提督として配属されることになっている!」

 

「宿毛湾泊地に提督として配属…」

 

突然口を開けたまま黙りこむPJと、腕を組んで彼の様子を黙って窺うジョシュア。

 

2人が黙ったことで、店内が静寂に包み込まれた。

 

店内に置かれた振り子時計は時を刻み、外では蝉が鳴いている。

 

そして、1時の針を打った時計からオルゴールが鳴った。

 

まさにその瞬間。突然PJは椅子から立ち上がり、それと同時にジョシュアは両手で耳を塞いだ。

 

「な…なんだってぇぇぇ!?」

 




鎮守府のデザインは「エースコンバット3 エレクトロスフィア」ゼネラルリソース編の最終ミッションで離着陸するゼネラルリソースの基地を下敷きにする予定です。

PJが搭乗予定の機体は分かりきってますが、あの機体です。
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