残骸   作:kanpan

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2016/8/6
FGOで聖杯転臨ができるようになりました。
その日の出来事。


聖杯転臨★

 2016年8月6日。

 

 私はダ・ヴィンチちゃんからの呼び出しでカルデアの会議室に来ていた。そこには私の他に全てのサーヴァント達が集まっていた。何が起こるのかと全員がダ・ヴィンチちゃんに注目している。そのさなか、ダ・ヴィンチちゃんは一同の前に進み出た。

 

「さあ、お集まりのみなさん、大発表があるよー!」

 

 それまで雑談でざわざわしていた会議室が静まる。

 皆がダ・ヴィンチちゃんの言葉の続きに注目していた。彼女はふふん、と自慢げに微笑んで言った。

 

「聖杯が使えるようになったんだよ!」

 

 ざわっ……と、一気に会議室の静けさが壊れる。

 

 聖杯。

 それは特異点を修復するたびに、そして時々現れる臨時の特異点(イベント)を修復するたびに手に入れてきた特別なアイテムだ。

 聖杯はありとあらゆる願いを叶える魔法の願望機だと聞いている。

 

「レオナルド、今、何と言いました?」

 

 丁寧で落ち着いているが鋭い口調。部屋のざわつきがぴたりと静まった。声の主は騎士王アルトリアだった。アルトリアの回りは円卓の騎士たちが取り囲んでいる。彼らはダ・ヴィンチちゃんと彼らの王のやりとりをかたずをのんで見つめていた。彼らの目には緊張感が漂い始めていた。

 

「言ったとおりさ。これからは今まで集めた聖杯を使うことができる」

 

「本当に聖杯の力が使えるとは……」

 

 ダ・ヴィンチちゃんの答えに、アルトリアは驚いて口ごもっていた。

 『アーサー王物語』に関連するサーヴァントたちはもともと聖杯にゆかりが深い。彼らの物語は聖杯を探索する物語でもあるからだ。

 加えてアルトリアは聖杯の力でブリテン滅亡の歴史を修正しようと、サーヴァントとして聖杯戦争に参加したこともあった。

 今カルデアにある聖杯は円卓の騎士達が探索した聖杯とは違うし、アルトリアがかつての聖杯戦争で求めたものとも違う。それでもいまだにアルトリアは聖杯の力が気になっているのかもしれない。

 

 黙ってその場にたたずむアルトリア。私は彼女に近づいて聞いた。

 

「アルトリアは聖杯をどうしたいの?」

 

「いえ、マスター。私にはもう聖杯にかける願いはありません。ですが、こうして使えます、と言われると複雑な気持ちになりますね」

 

 そのアルトリアの言葉を聞いて、周囲の円卓の騎士達は一様にホッとように表情を緩めた。彼らはアルトリアが再び聖杯にブリテン再興の願いをかけるのでは、と心配していたのかもしれない。はりつめた空気がもとに戻っていく。

 

 ダ・ヴィンチちゃんとアルトリアの会話が一段落したのをきっかけに、他のサーヴァントたちも思い思いに聖杯について話を始めた。

 

 英霊らしく人々を救うことに使いたいと言う者たち。

 

「子供たちを救いたいな。全ての子供に祝福を」

 

 というのが子供好きなアタランテの願い。そして俵藤太は

 

「この世界全てに、食を。人間動物植物、機械に至るまで、分け隔てなくだ!」

 

 と世界中に食べ物が行き渡ることを願っていた。

 

 自ら、そして仲間の願いを叶えたいという者たちもいる。

 

 風魔小太郎に聖杯の使い道を聞いてみると、

 

「聖杯……武士ではなく、忍びが支配した世界を見てみたい……かな。冗談、冗談ですよ」

 

 こんなことを言って肩をすくめた。

 

 ジェロニモは少し考え込んから、こう答えた。

 

「聖杯、か。我が大地を取り戻すことも考えたが、犠牲は相当量になるな。これ以上奪われないよう、程度の願いにしておくか」

 

 その願いはなんとなく騎士王と似ているかもしれない。

 

 その一方で、英霊にしては意外に思えるような願いを持つものたちもいた。

 聖杯でなんでも叶うのだと聞いて、メドゥーサは

 

「聖杯……、背丈を小さくするとか、叶えてもらえるのでしょうか?」

 

 と、ずいぶんと素朴な願いを、ちょっと恥ずかしそうに、ぼそりと呟いた。

 メドゥーサは今のままで十分に美人なのに、と言っても彼女は

 

「そうでしょうか」

 

 と背を丸めている。彼女がちらりと横に視線をやったのに気がついてそちらを見ると、小柄な女神達、上姉様(ステンノ)下姉様(エウリュアレ)がこちらをみてくすくすと微笑んでいた。

 

「こちらにいらっしゃいメドゥーサ。聖杯なんてわたしたちにはどうでもいいものでしょう?」

 

 エウリュアレに呼びつけられて、メドゥーサは小さな声で「はい……」と答えつつおずおずと姉たちのもとに向かった。メドゥーサが背丈を小さくしたい、と望むのは姉たちとおそろいの姿だった昔を懐かしんでいるのだろうか。

 

 控えめなメドゥーサとはこれまた対照的に、自信満々な者もいた。

 フィン・マックールに聖杯の使いみちについて尋ねてみた。

 

「万能の願望器たるものが存在するとして、私はそうだな……」

 

 彼は静かに目を閉じて少し思案したのち、

 

「女難の運命を変えたい、かな。見ての通り、私は美しいからねぇ。多くの悲劇を生み出してしまったんだ……」

 

 そう言いながら本気で少し困ったような顔をしていた。そして傍らに控えていたサーヴァントの肩をぽんと叩く。

 

「なあ、ディルムッド。お前もその右目の下の黒子(ほくろ)をどうにかしたいだろう?」

 

「いえ、私は聖杯にかける望みなどございません」

 

「おや、それは本心かな?」

 

「私はあなたと一緒に戦えるだけで満足です、我が王……」

 

 フィンに絡まれ続けるディルムッドに、じゃあと目配せして、そっとその場を離れた。

 

 別な集まりに目をやると、そこでは科学者サーヴァントたちが輪を作っていた。ニコラ・テスラ、チャールズ・バベッジ、トーマス・エジソン、エレナ・ブラヴァツキーたちが聖杯の使い道について議論をしていた。

 

「聖杯、万能の願望機。実に興味深い研究対象だ」

 

 と、ニコラ・テスラ。それに答えてバベッジが、

 

「聖杯、それは極めて強力な、新型機関の動力となるだろう」

 

 ぶしゅーーー、と頭から蒸気を吹き出していた。聖杯の力に期待してヒートアップしたらしい。

 彼らは聖杯をどうやったら科学に有効活用できるか考えていた。

 

 そこへ「ふむ」とエジソンが割って入る。分厚い胸板のまえで腕組みをし、テスラとバベッジの顔を見渡して一言。

 

「最強の聖杯は、最強の国家にふさわしいと思わんかね?」

 

 ぱちん! 

 

「最強の国家だと? すでに世界の電気は私の考案したシステムで動いているのだ」

 

 語気するどく突っかかるテスラにエジソンも即反能し、たちまち火花、いや電気が飛び散る。

 

「だまれ交流!」

 

「やるか直流!」

 

 会議室に突如出現した発電所。テスラとエジソンの周りを青いイナズマが取り巻く。あまりにもキケンなので皆いそいで二人の近くから逃げ出した。

 

「やめなさい、あなたたち。こんなところで迷惑よ!」

 

 誰もが電気ほとばしる二人から離れていくなか、ただ一人、エレナ・ブラヴァツキーが仲裁に入ろうとしていた。

 エレナも近づくと危ないよ、と彼女を止めようとしたその時、ばしゅん、という音と共に頭上から眩しい光が降りてテスラとエジソンを包んだ。

 

 いつの間にか天井にUFOが浮かんでいた。UFOの光はしゅるしゅるとテスラとエジソンを吸い上げて機体に格納した。

 エレナは二人をUFOに詰め込んでそのまま宇宙のどこかに飛ばしてくれた。

 

 会議室の隅では、荊軻と小次郎がアサシン同士で語り合っていた。聖杯について聞いてみたが、特別な使い道を考えてはいないようだ。

 荊軻は、杯といえば、酒盛りであろう、と前置きして、

 

「聖杯に酒をつぎ、月を見ながら一杯。そういうわけにもいくまいか」

 

 といい、それに小次郎がうなずいて答えた。

 

「聖杯……。月見には大仰すぎる杯よなぁ。しゃれこうべのほうがまだ気が利いている」

 

 荊軻と小次郎は顔を見わわせて、ははは、と気持ちよく笑っていた。

 

「マスター、そなたが成人したら聖杯で酒盛りといこうか?」

 

 彼らにとっては聖杯は願望器というよりも、宴の杯に向いているかどうかが大事らしかった。

 

 みんなの周りを一巡りしたのでダ・ヴィンチちゃんのところに戻る。みんなの様子はどうだったか、と訪ねてくるダ・ヴィンチちゃんに今までのことを話した。

 

「ふうむ。みんな、案外願い事があるもんだねえ」

 

 ダ・ヴィンチちゃんの表情はいつもどおりのアルカイック・スマイルのまま、でも口調にはちょっぴり意地悪さを感じた。

 ダ・ヴィンチは再びみんなの前に進み出て、全員に聞こえるように言った。

 

「ざんねーん。実は、いままで集めた聖杯は決まった願い事にだけ使えるんだ」

 

 えっ?、と会場にいるサーヴァント全員の目が点になる。自分もびっくりだ。だっていままでずっと聖杯は万能なのだと聞いてきたのだから。思わずダ・ヴィンチちゃんに尋ねてしまう。

 

「なんでも叶うんじゃなかったの?」

 

「そうなんだよね。カルデアでの調査の結果、ここでの聖杯の使い道は今のところ一つだけとわかった」

 

「なにができるの?」

 

「サーヴァントのレベル上限を上げることができるんだ」

 

 ダ・ヴィンチちゃんによると、聖杯を使えばレアリティごとに決まっているレベル上限を超えて、サーヴァントのレベルを上げることができるらしい。聖杯を使えばレアリティは関係なくすべてのサーヴァントが最大レベル100まで到達可能となる。

 ただし低いレアリティのサーヴァントはその分多くの聖杯を使用する。レベル100になるには星5なら5個、星4なら7個、星3なら9個、星1と星2は10個の聖杯が必要になる。

 

「聖杯だというのにかなう願いがたったのそれだけとは」

 

「これは拍子抜け」

 

「いやいや侮れませんぞ」

 

 聖杯の使い道が判明した後、会議室に集まったサーヴァントたちはやれやれ、といった調子で、ざわざわと世間話をしながらそれぞれの部屋に帰っていった。

 

 ビリー・ザ・キッドはすれちがいざまにニコッと笑ってこう言った。

 

「誰に使うかはマスターに任せるよ」

 

 

 

 深夜、召喚サークルの前に立つ。

 あの後ずっと考えているけども、聖杯を誰に使うかはまだ決められない。そうしているうちに零時になった。

 

 深夜零時は特別な時間だ。この時間になると魔力が少しだけ集まり、フレンド召喚を1回行うことができる。

 考えてばかりいるよりも、毎日の日課である零時のフレンド召喚を済ませてしまうことにした。

 

 フレンド召喚からは星1〜3の概念礼装かサーヴァントが出現する。どれもすでに入手済みだけれども、それでも礼装やサーヴァントを強化するのに役に立つので、毎日のフレンド召喚を欠かすことはない。

 

 召喚サークルの縁に沿って光の玉が現れて、青白い光を放って回転する。その光は繋がって輪になって浮かび上がり、さらに目の前にいっそう太く輝く三本の輪を作り出して回った。これはサーヴァントが出現する前触れだ。

 

 召喚サークルが眩しく輝く。一瞬視界が白く塗りつぶされる。けれどもそのまま召喚サークルの中心を見つめ続ける。

 光が収まるにしたがってサークルの中心からサーヴァントカードが姿を現した。

 

 

 それは真っ黒なカードだった。

 

 その絵柄は両手両足を拘束され、体に鎖を巻き付けられた姿。

 

 

 カードが裏返り、サーヴァントの外見が明らかになる……、

 はずだった。

 

 出現したサーヴァントの姿は全身真っ黒の影。レアリティを示す星すらも見当たらない。

 影の中に2つの目だけが見えている。その影が喋った。

 

「あいよー! 最弱英霊アヴェンジャー、お呼びと聞いて即参上!」




このタイミングでアンリマユを召喚したのです!
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