今日もマシュと一緒にクエストを終え、レイシフト先からカルデアに帰還した。カルデアについた瞬間に聞こえたのはのんきな鼻歌だった。
「ふんふんふん~♪」
鼻歌の主はDr.ロマン。機嫌良さそうにレイシフトの操作をしているらしい。
マシュと一瞬顔を見合わせた後、
「先輩とマシュ・キリエライト、帰還しました!」「ただいまドクター!」
いい気分でいるロマンに不意打ちの帰還の挨拶をくらわせてやった。
「……おおっと、おかえりなさいっ!」
あわてふためくロマン。してやったり。調子ハズレの鼻歌をこちらに聴かれたせいか想像以上にあたふたしている。
「あー、びっくりした……」
「ところでDr.ロマン。私たちはダ・ヴィンチちゃんに用事があるのですが」
背を丸めて胸をなで下ろしているロマンにマシュがダ・ヴィンチちゃんの居場所を尋ねた。
今日はカルデアに戻り次第、ダ・ヴィンチちゃんを尋ねる予定なのだ。
ロマンは別の部屋の方を指差した。
「彼女ならあっちの部屋にいるよー」
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
「ふんふんふん~♪」
マシュと一緒にダ・ヴィンチちゃんのところを訪れたら、彼女もDr.ロマンと同じく機嫌良く鼻歌を歌っていた。
「こんにちは、ダ・ヴィンチちゃん」
「やあ、お二人さん。今日は何の用かな?」
ダ・ヴィンチちゃんはすぐにこっちを振り向いた。ロマンと違って彼女には鼻歌を聞かれた気恥ずかしさ、とかそういうのは特になさそうだ。芸術家だから音楽にも自信があるのかもしれない。なんとなくロマンよりも上手だったし。
「霊基変還をしにきたんです」
「なるほど、ちょっと待ってね」
そう言うとダ・ヴィンチちゃんは霊基変還のための聖杯を出してきてくれた。
霊基召喚で同じサーヴァントがかぶって召喚された場合は合成して宝具レベルをあげることができる。しかし、それもレベル5が限度だ。それ以上同じサーヴァントが来てしまった場合は、心苦しいが、聖杯にサーヴァントをくべてマナプリズムやQP(Quantum Piece)に変還するのだ。
そういうわけで、余ったサーヴァントのセイントグラフをダ・ヴィンチちゃんに手渡した。彼女は受け取ったセイントグラフをトランプみたいにパラリと広げた。
「今日もアマデウスかい?」
ダ・ヴィンチちゃんに渡した余りものセイントグラフの中には何枚ものアマデウスカードが入っていたのだ。
「アマデウスさんがフレンドガチャからたくさん出るんです。とっくに宝具レベル5になってしまったので……」
マシュが申し訳なさそうに答えた。
「ははは、しかたないね」
そういうとダ・ヴィンチちゃんはまた「ふんふん~ふふん~♪」と鼻歌を歌いながら、聖杯ににアマデウスカードをくべていった。
マシュが聞いてくる。
「先輩、Dr.ロマンもダヴィンチちゃんも急に音楽好きになったのでしょうか?」
「うーん、どうなんだろう? それにしてもこれ、どこかで聞いたメロディだね」
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翌日、いつもどおりレイシフトをして日々の日課のクエストをこなしていた。
今日のパーティーメンバーはアマデウス。
「クレッシェンド!」「デクレッシェンド!」
気分良さそうに指揮棒を振るう彼。音楽を操り衝撃波にして敵めがけて飛ばしていく。まるで何かのメロディのように聞こえた。
それにつられて、つい。
「ふんふんふん~♪」
「先輩……そのメロディは……」
マシュに言われて気がついた。カルデアでDr.ロマンやダ・ヴィンチちゃんがやっていたのと同じ鼻歌を歌っていたのだ。
「そうか、アマデウスの曲だったのか……」
「そこは強くゥ…」「そこは…弱く」
繰り返す奏でられるフォルテッシモ、クレッシェンド、デクレッシェンド。
アマデウスが指揮棒を振り回せば、戦闘中だというのにまるで交響曲のような調べがあたりに響く。
「楽しみたまえ、公演の時間だよ!」
Noble Phantasmを100%溜めたアマデウスは高々と指揮棒を振り上げた。演奏のクライマックスだ。
「聴くがいい、魔の響きを!
アマデウス渾身の演奏をくらった敵たちは力が抜けたように動きを止めた。
彼の宝具演奏には強力なデバフ効果があるのだ。
「今です! いきます先輩!」
すかさずマシュが突撃し、盾で敵を粉砕した。
BATTLE FINISH。
敵がドロップしたアイテムを拾いながらふと考える。
Dr.ロマンとダ・ヴィンチちゃんの歌の謎は解けたか……ん、しかし。
ふとマシュにひそひそと聞いてみた。
「Dr.ロマンやダ・ヴィンチちゃんはアマデウスの曲を聴いた事はあるのかなあ」
「有名な曲ですから知っているのかもしれません。でもカルデアで聞く事はあまりなさそうです。アマデウスさん、オフのときはいつも町の居酒屋に入り浸っては出入り禁止になってますから」
本人に聞いてみようとアマデウスの方を振り向けば、
「じゃあ、僕は今日も飲みに行くから、またねーマスター、マシュ♪」
アマデウスはとっくにどこかへ去ろうとしていた。
「あーーー……」
「思った通りですね。先輩」
呆然と去って行くアマデウスの背中を見送る。なにはともあれAPを使い切ったし今日のクエストは終了だ。
「マシュ、最後にフレンド召喚をして帰ろう」
召喚サークルでフレンドポイントをつかって10連召喚をする。
光の輪の中から現れたのは、
アマデウス、アマデウス、アマデウス、アマデウス、アマデウス……
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
「ダ・ヴィンチちゃーん、また霊基変還しにきたよ」
「はーい、ふんふんふん~♪」
またダ・ヴィンチちゃんは霊基変還用の聖杯を準備しながらアマデウスの曲を歌っている。
「その歌お気に入りなの?」
「なぜか最近、聖杯からこのメロディが聴こえてくるようになったんだ。ほら」
ダ・ヴィンチちゃんが差し出す聖杯に耳を近づけると、そこからメロディが流れてきている。
「あ、ホントだ」
「しかも日に日に曲らしくなってきているんだ。君たちがサーヴァントをくべに来るたびにね」
まさか。
マシュと一瞬顔を見合わせた。
「実は今日もアマデウスをくべに来たんです」
霊基変還の聖杯の中にアマデウスのサーヴァントカードを入れる。
流れるメロディがいっそう賑やかで壮大なオーケストラになって、部屋中に響き渡った。
♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪
そう、
聖杯から
アマデウスが出過ぎ。