【2015/09/25(金)18:00 ~ 2015/10/2(金)13:59】 に開催のイベント「月の女神はお団子の夢を見るか?」の記念。
オリオンに盗まれた月見団子の奪還は無事成功した。カルデアにはダヴィンチちゃんの手により芸術的に美しい満月の映像が投影され、サーヴァントたちはお団子を食べながらお月見を楽しんでいた。
「やれやれ、一時はどうなることかと思ったけど、一件落着! よかったよかった」
ダヴィンチちゃんは自分の仕事をやり終えたので、どうどうと月見酒を飲んでいる。そもそも月見開始前からロマンの目を盗んではちびちびとお酒の味見をしていたくらいなのだ。
すっかり上機嫌になっている。
そこへブーディカがやってきた。手に持っているのは特選団子の山だった。老舗和菓子屋「七や橋」特製の月見団子だ。
「やあ、ブーディカ。お月見楽しんでる?」
「もちろんだよー、ダヴィンチちゃん。ねえ、この月見団子っていうのはおもしろいね」
ブーディカは特選団子の山の一番上の一個をつまんでみせた。
「ほら、一番上の団子は黄色くて、クマの顔になってるんだよ」
「黄色いのはかぼちゃ団子だ。南瓜という野菜をつかって満月を模した黄色をつけているのさ」
「ねえ、ダヴィンチちゃん、熊の顔になってるのは何で?」
「うーん……。日本のお月見の風習に熊が関係するという話は知らないのだけれど、日本人は料理にこういう細かい細工をするのが好きなんだよ」
実のところ、ダヴィンチちゃんにも何で熊なのかはよくわからず、むしろお団子泥棒だったオリオンの仕業ではないのか、と勘ぐったのだが、とりあえず適当に答えた。
「へえ。私、日本人の料理には興味があるんだ。この前、マスターとマシュに「おにぎり」というジャパニーズ・ライスボールを作ってあげたんだよ」
ダヴィンチちゃんは適当にはぐらかしたつもりだったのだが、意外にブーディカはこっちの話題に載ってきてくれた。
「そうかー。じゃあ、ブーディカにもっと面白いものを見せてあげちゃおう」
「えっ、なになに?」
ダヴィンチちゃんが傍らに置いた杖を持ち上げ空間を照らす。ブーディカは興味津々で身を乗り出してきた。杖が照らした先にはお弁当箱が投影されていた。
「これは……お弁当なの?」
お弁当箱の真ん中にはご飯が盛りつけてあるが、それは何かのキャラクターの顔のような形になっていた。
「キャラ弁と呼ばれている。2015年の日本では広く流行しているんだよ」
「ふーん。顔の部分は基本的にはおにぎりと似ているね。ご飯と海苔で絵を描くのかあ」
「絵になっているのはご飯と海苔だけじゃないよー。その横も注目だ」
ダヴィンチちゃんに言われてブーディカは顔型おにぎりのおかずを見てみた。緑や赤の色とりどりの野菜が草花を、一口サイズの肉や揚げ物が森の木を表現している。
「すごいなあ」
「どうだい、ブーディカ。君の時代よりも、そして私の時代よりも、ずうっと後の時代の人間たちはこんなふうにして日々を楽しんでいるのさ」
「こういうの、私も作ってみたいなー。よし、ダヴィンチちゃん、モデルになって!」
「は?」
驚いたダヴィンチちゃんが振り向くが早いか、ブーディカはダヴィンチちゃんの手をとってカルデアの台所にダッシュした。
「ちょ、ちょっと何するのさ、ブーディカってばーーー!」
なす術もなくダヴィンチちゃんは台所に引っ張られて行った。
ブーディカは台所に入ると、ダヴィンチちゃんを調理台からよく見える場所の椅子に座らせた。そして食料庫から素材を取り出してきて、だだだだっと料理を始める。
「ねー、ブーディカ……」
「あ、ダヴィンチちゃん、そのポーズのまま! 動かないで!」
「………」
ブーディカの指示を受けて、ダヴィンチちゃんが呆然とその場で座ったまま待つ事しばし。
黙々と料理していたブーディカの手が止まる。
「よしできたっ。マスターとマシュを呼んでくるね!」
ブーディカはそう言って台所を出て行き、すぐにマスターとマシュを連れて戻ってきた。
「急に何ですかブーディカさん」
「いったい何を作ったの?」
「マスターの国の名物、キャラ弁だよ。ほらほら、ダヴィンチちゃんも見て見て!」
ブーディカは作り立てのお弁当を三人の目の前に差し出した。
そこには、
「わあ……」
「これはかの有名な」
「っていうか、これアタシかな?」
そこには「世界でもっとも知られ、もっとも見られた」と言われる美術作品、イタリアの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチの名作として知られる女性の肖像画、そっくりのキャラ弁があった。
「モナリザだ……」
「さあ、次は明日のお弁当をつくるよっ。マスター、マシュ、そこに並んで座って!」
ええー、と悲鳴を上げる二人を半ば強引に椅子に座らせ、ブーディカが再び嬉々として台所に立つ。明日のお弁当は更に力作になりそうだ。
「食欲と芸術かあ。うん、秋だねえ」
その後、ダヴィンチちゃんは、自分の顔そっくりのキャラ弁を箸でつまみながら、再びカルデアに投影した満月を眺めて晩酌の続きをしたのでした。