ダンジョンに召喚された者が潜るのは間違っているだろうか? 作:猫の手
お暇つぶしにどうぞ
オラリオの繁華街は常に活気に満ち溢れている。
店を構える商人達の威勢の良い掛け声に、屋台を構える香具師の怒声が入り混じる。
魔石やドロップアイテムをの値段交渉をしていれば、遠く海洋国(ディザーラ)から運ばれてきた真珠や珊瑚など女性冒険者に売りつける行商人もいる。各々の物欲がぶつかり合うこの地域はいつも賑やかである。
しかしながら、人が集まれば不貞を働く輩も現れる。そうした連中による治安の悪化を抑えるために、自分達の傘下の店舗を守るために商業ファミリアが其々警備をする冒険者を出してパトロールを行っているのだ。其々がギルドのエンブレムが刻まれたペンダントを身に着けていた。
そんな繁華街を一組の男女が歩いていた。コジローとアリエルである。
コジローもアリエルも繁華街に来たことは無く。その活気に押され気味であった。特にアリエルは喋ることができないため、逸れると見つけることが難しい。故に二人は手を繋いで歩いていた。
コジローもアリエルも気恥ずかしさに頬を染めながら初々しい青酸っぱい空気を漂わせていた。
特にアリエルの尻尾は素早く振り、耳をぴんと直立させていた。
繁華街が珍しいのだろう。楽し気にとても興奮した様子で回りを見ていた。
あちこちをキョロキョロと見て回る様子はとても微笑ましい。そんな様子を見たコジローは一緒に来てよかったと思った。
ただ、繁華街を見て回るだけでも十分楽しめるが、しかしながら、それが許されるのはデメテルのような優しい神様を主神に持つ眷属だけである。駄女神などが見たり、若しくは聞いたりしたらこういうだろう。『お子様ね~』と、それをリアルにイメージしてしまい、コジローは青筋を立てかけた。
女の子と否、アリエルと初めて二人だけで繁華街に来ているのだ。所謂デートと言うやつなのだ。モニュメントは必須である。
モニュメントは服か何かしらのアクセサリーが良いだろう。
しかしながら、コジローにとって初の繁華街探索なのだ。そんな気の利いた店など知るわけがない。
ちなみにアリエルに聞くのはコジローにとって負けである。
(参ったね。どうしたもんか……)
興奮気味に色んなところを見ているアリエルをみながら、コジローは今後のプランを練っていた。
やはり、人に聞くしかないだろう。そう決意すると、コジローは周囲を見回す。道のちょっと先にジャガ丸君を売っている屋台を見つけた。屋台のおばちゃんだったらきっとこのあたりにも詳しいはずだ。そう考えたコジローは目印となる街路樹の傍に行くと、アリエルに少しここで待っていてほしいという。
「アリエル、ちょっと、ジャガ丸君を買ってくるからここで待っていてくれないか?」
その言葉を聞いたアリエルは満面の笑みを浮かべながら、木板を取り出すと胸ぐらいの高さの位置に読みやすいように持ち上げる。
【分かりました。お待ちしてますね。】
アリエルは滅多に味わうことのできないシュチュに興奮気味だ。尻尾が降りちぎれない限りに振り回しながら嬉しそうに頷く。すべてが新鮮で楽しいのだろう。連れてきたかいがあったなと思う。
あまり待たせるわけにもいかない。コジローは小走りでジャガ丸君の屋台へと向かう。
街路樹側からは見えなかったが、屋台ではインバネス・コートと鹿撃ち帽を着た店員がジャガ丸君を調理していた。
オラリオ広しとはいえこのような格好をしている冒険者は一人しかいない。そいつはデメテル・ファミリアの上級冒険者―専門はサポーターではあるが―デメテル・ファミリアでも最上位の冒険者の一人である。間違ってもこんなところでジャガ丸君を売っていて良い人材ではない。
コジローは呆れたようにジャガ丸君を調理している探偵気取り、メアリ・マコットに話しかけた。
「何やっているんだよ。メアリ……」
コジローの呆れた様子を気にかけず、いつも通り飄々とした態度で言葉を返した。
ダンジョンに召還された者が潜るのは間違っているだろうか?
六話:昼下がりのショッピングに纏わるサットル
「やぁ、コジロー。今日はボクが繁華街警備の責任者を担当する日なのさ。ジャガ丸君を調理しているのは魔石コンロを爆発させた女神の代わりだよ。手の空いていたボクが治療している間の代役をすることになってね……そういう、君こそどうしたんだい?」
「買い物だ。アリエル……最近パーティを組んだ冒険者が冬の柘榴亭の手伝いをしてくれてね。そのお礼を兼ねてだよ。」
メアリは底意地悪げに笑う。揶揄う獲物ができたそう思わせるような表情を浮かべる。退屈な仕事の時に来たのだ、揶揄わないというのはあり得ないだろう。コジローでちょっと退屈しのぎをさせてもらおうとメアリは考えた。
「ふふふっ、なかなかいい口実じゃないか。恥かしがり屋の君がデートをするにはね。新しい女の子か……ボクのことは遊びだったのかい?」
「遊んでいたのはメアリだろ!!アレ以降色々と恥かしい思いしていたんだぞ!!」
直情に返事を返すコジローを見てメアリは愉しげに笑う。あまりやり過ぎるとフォローが大変だがこのぐらいならば問題はあるまい。
年下の弟分を弄るのは姉貴分としての特権である。
「苦情の9割はキルケ様に行ってほしいな。あの神があることないこと面白げに言いふらしているのが原因だしね。」
「……今度小遣いを1/4にしてやろうかね。」
それでもゼロと言わないのがコジローの甘い部分である。いや、優しいと言うべきだろうか。他人が見るとはっきりとわかるのだが、コジローは駄女神に甘い。デメテルですら匙を投げた女神に根気良く付き合っているのだ。優しいと言わず、甘いと言うべきだろう。
正確にいうと女性全般に甘いとメアリは見ていた。まぁ、メアリには都合がいいので指摘などはしないのだが……
「で、コジローは女の子が好みそうな服とか雑貨とか扱っている店を知っていたかな?」
「……シラナイデス。」
ふと、思い出したかのように問い掛けるメアリに素直に答えるコジロー。こういう駆け引きが苦手なところがメアリ達の玩具になる要因の一つなのだが本人はわかっていないようだ。メアリは新しく揶揄うネタが増えたと歓喜する。どういう条件で教えてやろうかと考え、閃いた。きっと、デメテル様も喜ぶだろう。あの女神様はこの手の甘酸っぱいお話は好きなのだから
「ふ~ん、お姉さんが教えてあげようか?ただし、条件はあるよ。」
チェシャ猫の様に様な笑みを浮かべるメアリを見て、早まったことを理解した。だが、背に腹は代えられない。アリエルに繁華街のショッピングを楽しんでもらうためにも目の前の悪魔と契約を結ぶ必要があった。
「……お願いします。」
無条件降伏といった体で頭を下げる。そんなコジローの様子にメアリは愉し気に笑う。姉貴分としては実直で素直な子であるコジローは最高の玩具であった。他の面々は色々と意見はあるだろうけど、そんな楽しい玩具故に構いたくなるのだ。
そのうちアトラともこの愉悦を共有しよう。メアリは心の底からそう誓った。
「くっくっく、契約成立だね。条件はデートの内容をまとめて文章で報告することさ。」
「……悪魔め」
コジローはメアリの言葉に呻いた。まさに悪魔の所業。自分の手でゴシップのネタを提供する羽目になるとは思わなかった。
そのコジローの呻き声を見ながらいい仕事をしたとメアリは内心ほくそ笑む。アトラにも見せてやろう。きっと、色々と面白いことになる。
「さぁ、どうする?後、報告書は明日の朝一提出だよ。長引くと忘れてしまうからね。」
「鬼め……受ける。だから教えてくれ。」
背に腹を変えられないコジローは目の前の悪魔と契約を結ぶことにした。これでどのぐらい揶揄われ続けるのだろうか。今から頭が痛い。そんなコジローの様子にメアリは愉悦を感じていた。あまり揶揄い過ぎて断れると元も子もない。故にさらりとコジローの欲しい情報を与えてやることにした。
「取引成立。そうだね……ここからなら、極東のモノを扱っているオオヒルメ・ファミリア傘下のタツマドウが良いだろうね。」
メアリは覗きに行けるように自分の警備範囲にある店を紹介し、場所を教える。コジローにとっても良く、自分にとっても良く、そして、ファミリアとしても良い3社に良い取引をしたと自画自賛していた。
「タツマドウね……ありがとう。助かったよメアリ。」
その場所を聞くとコジローはなるほどと頷く。
故郷と極東が似たような文化圏のため紹介がしやすく、オラリオでは珍しい衣装のため恐らくアリエルも興味を持ってくれるだろうと考えた。
それらを加味して流石はメアリかと自分を玩具にする姉貴分を見直すことにした。
そして、アリエルの元に戻ろうとするとメアリから呼び止められた。
「待ちたまえ」
「どうしたんだ?用は終わったと思うんだが……」
コジローがそう答えるとメアリは袋に入れたジャガ丸君を取り出し、コジローの前に置く。コジローがジャガ丸君を訝しげに見ていると相変わらずの飄々とした態度で告げた。
「屋台に来て話だけして帰られたら、ボクはサボっていたことになってしまうよ。だから売り上げに貢献してほしい。」
「……プレーンを2個」
「まいど」
愉悦と売り上げを両立したメアリはこれ以上のない満足そうな笑みを浮かべた。愉悦とは自分のやるべき仕事をきちんとこなさなければ楽しめない。メアリ・マコットはなかなか厄介な性格をしていた。
オラリオの街並みに突如現れた深緑に包まれた空間。
極東のテイストをこれでもかと言うほどに強調した極東風庭園。
外から見れば違和感しか与えないそこも一歩庭園へと踏み入れば、別世界へ来たかのような錯覚を与える。
騒がしいオラリオから切り離されたその静かな空間はタマツドウの入り口。極東の商人がオラリオに穿った橋頭保。
その麗しさゆえに美の女神達の憩いの場ともなっていた。極東の衣装を纏いタマツドウで社交の花を開かせるのが最新の流行の一つとされていた。
とは言え、タマツドウは女神達だけに開かれた空間ではない。
冒険者達や庶民も異国の風俗を身に纏う。極東文化の発信源としてオラリオに食い込む一大商業施設である。
静かで安らぐ空間にコジローは懐かしさを覚えていた。静かなその空間で騒ぐ者はいない。来客は其々にその静謐な空間を楽しんでいる。
アリエルは犬人特有の耳をピンと立てて周囲をキョロキョロと見まわしていた。珍しいのだろうか。極東風の建物や着物を着た店子、麗しい着物を着た女冒険者達を見ては耳をぴくぴくと動かしている。
「まず、服を見てみよっか。極東風の衣装着た方がいいみたいだしな。」
巫女服とかはロマンだよなぁと続けるコジローにアリエルが良い笑顔を浮かべて木板に文字を書く。
【その浪漫は変態的だと思います。】
「そーかなぁ。アリエルは可愛いから似合うと思うよ。」
人畜無害な笑顔を浮かべて独特の趣味を押し付けようとするコジロー。その真剣な表情に慌てふためくアリエル。実際のところ、女衒や体目当ての男などに迫られたこともありそれなりの防衛策を身に付けてはいたが、コジローは悪意無く、アリエルに有害にならないようなレベルで浪漫を押し付けてくるため割と手古摺っている。
このままだと押し切られかねないのでアリエルは強引に断ることにした。木板に力強く大書する。
【い・や・で・す。】
半分涙目になって抗議するのがポイントである。女の子に慣れていないコジローはそれだけで巫女服案を引っ込めてしまう。
残念そうにチェルシーにも断られたし、メアリに言ったらしこたま殴られたし……とコジローは愚痴るようにつぶやいた。
「――…普通の和装を探そうか。」
巫女服に心残りを感じつつもアリエルへ提案を行う。漸く諦めてくれたかとアリエルほっとする。流石にそのような理解できない浪漫を押し付けられるのは困りものである。タマツドウの中は極東の情緒漂っていた。どうも中心部に庭園を設けられているようだ。外と中の庭園風景がオラリオと完全に切り離し極東に来たと錯覚してしまう。それらも目を奪うが、鮮やかな色彩の極東の着物やアンティークがさらに目を奪う。
庭園とアンティークが旅行に来た気分にさせて、冒険者たちの財布のひもを緩ませる。
「こりゃぁ凄い。」
コジローの言葉にアリエルは一も二もなく頷く。極東をテーマにしたテーマパークといったところだろう。メアリがおすすめとして紹介するのもわかる気がした。取り扱っている商品もリーズナブルなものから天井知らずまで数々揃っており其々レベル毎に冒険者達が区分けして存在しているのも面白い。
ダンジョンという名のゴールドラッシュに引き寄せられた山師達の強欲を満たす場所の一つなのだろう。調度品や実用品も取り扱っている。一角にはヘファイストス・ファミリアのブースがあり魔剣やドロップアイテムで作った衣服を取り扱っていた。
コジローは良く考えられているものだと苦笑してしまう。そして、ヘファイストス・ファミリアの商売上手さも……
アリエルは犬人特有の耳をピンと立てて尻尾を振りながら周囲をキョロキョロと見ていた。落ち着いた雰囲気故に気圧されることはなかったが。コジローはそんなアリエルの様子を知ってか知らずかいつも通り声をかける。
「それじゃ、行こうか。アリエルは青色の着物なんか似合うと思うんだけどね。その前にアイスでも食べる?抹茶アイスって言ってこの店限定のアイスがあるらしいよ。」
アリエルはそんなコジローの様子に目を見張り本当に緊張しておらずいつも通りだということに気が付くと、緊張している自分がばからしく感じられてしまった。この残念な少年は気後れとか緊張感とかそんな単語は辞書にないらしい。図体はデカいのに心は子供のようだ。アリエルは木板を取り出すと返事をする。
【アイスは後でにしましょう。服を見終わってからでも良いですし】
「了解。今日のお手伝いのお礼だから俺が持つよ。金は気にしないで、いや、ある程度加減してくれるとうれしいけど……」
コジローの返事にアリエルは慌てる。バイト代を貰えると聞いてはいたがここの店はグレードが高すぎる。木板に大慌てで書き殴る。
【無理はしなくて大丈夫ですよ。ここは高すぎますし】
「大丈夫。男が約束をしたことを破る方が問題だからね。それに女の子には贈り物をするもんだろ」
律儀で難儀な性格をしているようだ。件の浪漫を求める性格といい馬鹿丸出しであるだが……嘘はない様だ。きっと騙されやすいんだろう。損をするのはコジローだがそれを見ているアリエルは面白くない。そんな話をしていると店子が一人コジロー達へと向かってきた。極東風の着流しを着た男前のエルフ。かの種族に有りがちな高慢な態度が無い柔らかい印象を覚えるエルフだった。
「いらっしゃいませ、お客様方。本日はどのようなものをお探しでしょう。」
「彼女に似合う。服を探しに来たんだ。この店は初めてなんだ。案内して貰えると助かるんだけど……」
エルフの男性はコジローの言葉に頷くと
「では、ご案内いたします。こちらへどうぞ。」
そう言ってコジロー達を先導し女性ものの服売り場へと案内を始めた。案内をしながらも最近の流行や品揃えについて説明をしてゆく。彼の知識は豊富で話術も心得ており非常にわかりやすかった。モテるんだろうなぁとコジローは邪推してしまう。
「――…最近ですと―――女神様方は紫などの鮮やかな色合いの着物を好まれる方が多いですね。ですが、冒険者の方々ですと大人しめの色の服を好まれる女神様方とは別
の意味で派手な服装を好まれる方両極端ですね。。後、冒険にも着て行ける服と言うことで袴などを購入される方は多数いらっしゃいます。そちらのお嬢様ですと、淡い水色の着物などお似合いだと思われますよ。」
「へ~、そうなんだ。アリエル着てみない?」
コジローは青系統の色は彼女の碧い瞳にも映えて良く似合っているように思えた。涼しげな淡い水色の着物は確かに彼女に良く似合っているだろう。コジローは気が付いていないがお値段は4ケタ万ヴァリスである。それに気が付いたアリエルは内心コジローを罵る。
そして木板に乱暴に文字を書き自分の意見を書きだした。
【冒険者なので動きやすい服がいいです。】
なるほどとエルフの店子が頷くと冒険者が良く使うリーズナブルな価格帯の袴の場所へと連れて行ってくれる。そこでアリエルは値段を確認しほっとした表情を浮かべる。それを知ってか知らずかエルフの青年はアリエルに似合うであろう服装をチョイスしてくれた。
「こちらの袴は如何でしょう。動きやすく、冒険者の方々も好んで着られている方が多いですよ。スパイダー系モンスタのドロップアイテムを基本に幾つかのモンスターのドロップアイテムをかけわせて作った複合素材なので防御力もそれなりにありますよ。」
お値段ン万ヴァリス。アリエルはさっきよりははるかにマシだと考えた。相変わらずコジローはニコニコと能天気な表情を浮かべている。一度痛い目を見せてやろうと袴を購入することを決意した。それでもお値段の安いものを検討するのはアリエルの良心か貧乏性か。あれこれと手に取り悩み始めた。
お勧めは、袴とブーツを掛け合わせた大正時代の女学生風の衣装らしい。極東贔屓の女性冒険者に流行っており人気を集めている。タマツドウの団長が考案したデザインらしい。また、女神自身が身に纏うことはないがその小間使いに着せることが多い。
真剣な表情で服装を選ぶ姿を見てコジローは連れてきてよかったななどと感慨深く考えていた。
そんなコジローにエルフの店子が声をかける。
「可愛らしい恋人さんですね。」
「――恋人ではないですよ。冒険者の仲間です。ちょっと、私用を手伝ってもらったのでそれのお礼ですよ。」
恋人と言われて、浮かべた内心の動揺を鎮めながらコジローは努めて冷静に言葉を返した。そんな少年の心の動きなど手に取るようにわかるのだろう。微笑まし気な笑みを浮かべると、一つだけ忠告を残した。
「女性との買い物は初めてですか?」
「ええ、このような店に来るのは初めてですよ。」
コジローの言葉になぜか納得したように頷くと椅子を近くに運ばせた。お茶を用意するように近場のスタッフに依頼する。
その様子をコジローは訝しげに見ると、エルフの店子は苦笑しながら答えた。
「――…一つ、これは世の中の真理なのですが、女性の服選びは男性が予想するよりもはるかに時間をかけるものです。一生懸命着飾ろうとしているのですから。彼女をがっかりさせないように頑張ってくださいね。」
そう笑いかけると、エルフの店子は席を外していった。
そしてコジローは、そのエルフの店子の言葉が真理であったことをこの買い物を通じて思い知らされることとなる。
ただ、アリエルの嬉しそうな表情が報酬と言ったところだろうか。日が暮れるまで色々なファッションを見て回ることとなった。
タマツドウの帰り道。夕焼けに染まる繁華街を淡い青色の袴に身を纏ったアリエルとコジローが帰路に就いた。アリエルは喋れないながらも嬉しそうに尻尾を振りながらコジローの言葉に相槌を打つ。コジローは出来る限りYesかNoで答えられる話題を選びながら会話をしていた。それは仲睦まじい恋人のようで、コジローは懐が寒い以外は非常に満足していた。懐を温かくするためにも明日からのダンジョン探索はハードなものになるだろう。
そんな二人の様子を繁華街の裏路地より憎々しげに見る影がいた。
「ったく、どこほっつき歩いてるんだと思ったらこんなところで男を加えていやがったか。」
「『集金』しに行かなくていいんで?」
「馬鹿野郎、ここでそんな真似してみろ。デメテル・ファミリアに竜を嗾けられるぞ。若しくは、ガネーシャ・ファミリアの炎使いに焼き殺されるかだ。」
「うへぇ……」
この繁華街はデメテル・ファミリアとガネーシャ・ファミリアが共同で統括するシマである。双方のファミリアに警備料を支払うことによって繁華街での商売をする権利を得るのだ。故にここで不埒な真似をするということは二つのファミリアを敵に回すことと同類項である。ロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアですら、そのようなバカな真似をすることは出来ない。ましてや、弱小に分類される彼らのファミリアでは一瞬で捻り潰される。ギルドすらその行為を黙認するだろう。
故に男達は遠くから憎々しげに見ていることしかできなかった。
「まぁ、良い。男を咥えて羽振りよさそうじゃねぇか。あの貧弱な体で良く繋いでいるもんだ。まぁ、少し張ることにするかね。今度の『集金』は期待できそうだからなぁ。」
他のファミリアの冒険者から覚えの良いあのサポータを絶望に落とせたらどんなに心地が良いだろうか。隣の少年に昔の話を知られて侮蔑の視線を向けられればどんなに心地が良いだろうか。
三日月と杯のエンブレムを持つ男達はその時の情景を妄想しながら舌なめずりをしていた。
男は今からもそれが楽しみで仕方なかった。
とりあえず、デート回。アリエルが可愛くかけると良いのだけど……
ベル君はそのうち出しますが出るのは結構先かなぁ。一章の終盤にならないと出ないかも
後、デメテル・ファミリアは上位のファミリアとして設定しております。
規模的にはガネーシャ・ファミリアと同格です。
また、商業系ファミリアの警備員はオリジナルの設定です。
警察的な組織がないオラリオでどうやって治安を維持しているのかを考えた時にみかじめ料を取って治安維持をするヤクザが脳裏をよぎったのでこのようにしました。