ダンジョンに召喚された者が潜るのは間違っているだろうか?   作:猫の手

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八話:やさぐれ少女のリビルドにまつわるサットル

 

バベル近くの広場。コジローは見事なお胸様を持つロリ巨乳の神様の店でじゃが丸君を購入するために少し早めに広場に来ていた。

戦利品であるじゃが丸君で小腹を満たしながらアリエルの到着を待つ。

週に一回は拝みたいと考えているが関係各所にばれると面倒だ。だから、不定期になる――思春期の少年的にはちょっと不満だ。

煩悩をじゃが丸君を食べながら洗い流す。今日はダンジョンを潜るわけではない。武器と防具の修理のためにアトラに店に行く予定である。

投擲武器があればそれを購入し、ダンジョンの2階あたりでゴブリン相手に試してみる予定である。アリエルとゴブ吉も草臥れ始めた装備の修理を依頼する予定であった。

体格に合わない大きなバックパックを持った、フードを被った少女がコジローに声をかける。

 

「冒険者様、サポーターを雇いませんか?」

 

背が低い、小人族だろうか?澱んだ目で少女はコジローを見上げていた。神にも人にも己にも絶望したその瞳、人生経験が足りないコジローはその瞳に気が付かず、だが、すでにサポーターはいるため断ろうと考え、口を開く。

ちょうど、タイミング良く/悪くアリエルとゴブ吉がやってきた。フードを被った少女を見て驚いた眼差しを向ける

 

「アーデのお嬢やないか。どないしたんや?」

「え?アリエルとゴブ吉?」

「アリエルとゴブ吉はこの子の知り合いか?」

「せやで、同じファミリアで……まぁ、同じ悩みを持つ仲間やな」

 

同じ悩みということは――ソーマ・ファミリアを脱退したいということで、コジローは天を見上げる。

 

「とりあえず、朝飯でも食いながら色々と聞かせてくれ。」

 

 

 

 

ダンジョンに召還された者が潜るのは間違っているだろうか?

 第八話:やさぐれ少女にまつわるサットル

 

 

 

 

近場の喫茶店に場所を移し個室を借りて、ブレックファースト――磨り潰したジャガイモにビネガーをかけるだけ――に殺意を覚えつつコジローはサポーターとしてアリエルを雇っていることを説明する。

 

「アリエルと契約をしているのですか……」

 

嘆息するこれでは食い物にできないとリリルカは考えた。友人であるアリエルに詐欺はしたくなかったこととやれば確実にばれて捕まるからである。

行動範囲を知られているだけに逃げることはできないだろう。これは縁がなかったと考えるべきだとリリルカは考えた。

アリエルが心配そうな目でリリルカを見る。木版を取り出し文字を書く

 

【コジローさん何かいい手段はないでしょうか?】

「別な冒険者のサポーターというのが一番だろうけど……」

「いえ、リリは大丈夫です。お気になさらないでください」

【NO】

 

コジローが仲介する冒険者を紹介されれば悪さができない。リリルカにとってそれは避けたいこと、アリエルの申し出はありがたくあるが余計なお世話である。

アリエルが【NO】と書かれたネックストラップを見せる。気にするなというのが無理なのだ。アリエルとリリルカは搾取される側、どんな目にあっているのか分かったものではない。

 

「リリは大丈夫です。」

【NO】

 

苛立ったようなリリルカの声に涙目になりながらもアリエルは【NO】と書かれたネックストラップをかざす。

アリエルにもリリルカの悪い噂は聞こえているこれ以上深みにはまれば、助けることもできなくなる。アリエルはリリルカの現状を何とかしたかった。

だんだんと言い争いに近くなっていく二人を見てどうしようかと考える。ゴブ吉がコジローにハンドサインでちょっと場所を変えようと合図。二人の争いを尻目にコジローは移動した。個室の外でゴブ吉はコジローに説明を始める

 

「すまんな。巻き込んでしもうて」

「いや、まぁ、構わんよ。個室借りといてよかった。」

「せやな……お嬢とリリルカはんはまあ同じファミリアの友人なんや。苦渋も同じように味わっとる。」

 

ゴブ吉はここで言葉を切り、少し迷い言葉をつづける

 

「リリルカはんはどうも悪事に手を染め始めたらしいんやわ。お嬢の知り合いから色々と噂を聞いていてな……心配しとったんや。逃げだすんに必死になって自分で自分の居場所を潰してしもうとるんやないかと、誰かが助けへんと死んでしまいそうやと」

「なるほどな……」

 

コジローはゴブ吉の話を聞いて悩む。サポータを二人という構成は正直言うと無いと考えている。ならばどういう構成がと考えると、せめてアタッカーが欲しい。

未熟であってもアタッカーなら自分がカバーできるから、リリルカもアリエルも前線で戦う能力が低い故にサポーターをしている。少し考えたがよいアイデアが浮かばず、ゴブ吉に質問をする

 

「リリルカって子はどんなことができるんだ?」

「ん~あまり言うのはあかんのやけど、あんさんに無理を言っているのは分かるから教えるで……重いものを持ち上げるスキルを持っとる。魔法は持っているかどうかは分からん。」

「重いものを持ち上げる?」

「ああ、サポーターとしては便利なスキルやで、たくさん魔石を持って帰れるさかいな」

 

重いものを持ち上げる。その一言にコジローは反応した。自分の推測が正しいかどうか。さらなる情報をゴブ吉にも留める。

 

「重いものを持ち上げるってのは何か条件はあるのか?」

「いや、特にはなかったと思うで、昔、神酒の樽を運ぶ際もえろう使われとったし」

 

ゴブ吉の言葉を聞いたコジローはいくつかシュミレートを行い可能性を演算する。体重がないから近接武器はやめた方が良いだろう。弓は恐らく引き絞る力が足りない。投擲武器は可能性あり。想定が正しいかどうかを検討するためには実証実験が必要だ。コジローは勢いよく元居た部屋のドアを勢いよく開けた。

けん制しあっていたアリエルとリリルカが驚いて振り向く

 

「リリルカさん、着いて来てくれ。マナー違反だが、ゴブ吉から君のスキルを教えてもらった。君のスキルがオレの想定と合っているかどうか実験をしたい。想定が正しければ、君は前線で戦えるはずだ」

「え!?」

 

リリルカはコジローの言葉に驚く、ゴブ吉からスキルを聞いたという言葉は不愉快であったが別段隠すようなことではない。それよりもコジローは前線で戦える可能性があるといった。嘘かどうかは分からないがそれが本当ならば……

 

「本当ですか?コジロー様」

「想定があっていればだ。実験がいる。着いて来てくれ」

 

その言葉はとても真摯だった。可能性があるのであれば挑戦したい。リリルカはコジローの言葉に頷いた。アリエルも嬉しそうに尻尾をパタパタ振っている。コジローはリリルカに手を差し伸べる。リリルカは迷い、アリエルを見る。その信頼しきった姿を見て、コジローの手を取った。

 

「実験はどこで行うのですか?」

「とりあえずは工房オーリに行く。お前さんのスキルを生かし切る武器が必要だ。それを持ったらダンジョンで実験だな」

「スキルを活かしきるですか?」

「オマエさんのスキルは重いものを持つって奴だろ。それを生かす武器を見つけりゃいいのさ」

 

リリルカの手を引っ張り、行くぞと声をかけて、個室を出る。アリエルとゴブ吉が慌てて二人の後を追いかけて行った。

 

 

 

 

 喧しい足音と共に工房オーリの扉が音を立てて開かれる。乱暴にドアを扱われたアトラはちょっと不機嫌だ。女連れのコジローを見て嫌味一つ言ってやった。

 

「メアリはどうしたんじゃ?新しい女を作りって」

「新しい女ってなんだ!!メアリはそもそも恋人じゃねぇぇ!!」

「やかましいわ。それで何の用じゃ?」

 

アトラの言葉に少し慌てていた自分を自覚したのか。深呼吸をして落ち着ける。ちなみにリリルカは目を回している。慌てて、リリルカを揺さぶるコジロー、リリルカも目を覚まし、きょろきょろと周囲を見回し目的地に着いたことを理解した。

 

「この子の武器を探していてね。可能な限り重さのある武器が良いんだけど、どんなのがある?」

「ふむ?ほぅ、何やら面白いことを考えているようじゃな。よかろう少し待っておけ。」

 

そういうとアトラは倉庫へ向かう。少しして台車に乗せられて、人の上半身を隠すことができるサイズの鎖付き鉄球(フレイル)、刀身が5mある刀剣が運ばれてきた。

明らかに超重量武器まぁ普通の人間は使わないだろう。刀剣なんぞはアマゾンが使うウルガよりでかいし

 

「まぁ、こんなところじゃの。極端な武器を作るという実験で作ってみた武器じゃ。当たり前じゃが売り物としては考えておらんかったの」

「ありがと、助かるよ。リリルカさん、持てるかどうか試してみてくれ」

「は、はい」

 

リリルカはまず刀剣を手に取った。【縁下力持】 ( アーテル・アシスト ) のスキルによる補正が行われる。軽々と刀剣を持ち上げる。

その様子にアトラは興味を持ち、コジローは頷く。

 

「軽く上から下に振り下ろしてみてくれ。ゆっくりでいい」

 

リリルカは言われたとおりにゆっくりと振り下ろした。刀剣の重さに振られることのない動作。その様子にコジローは満足し、アトラも楽しそうに見ている。

数度それを繰り返すと、コジローがストップといい、今度は超巨大モーニングスターを持たせる。リリルカはそれをぐるぐると振り回す。重量で体が動かされていないことを理解すると満足気にコジローが頷いた

 

「使ってみた感想はどうだ?」

「――…はい、普通に振り回せますね」

「グッド、今度はその破壊力がどの程度かのテストだな。アトラ、レンタルをしたいんだけど大丈夫かな?」

「……まぁ良いじゃろう。ただし、条件がある。わしもつれて行け。どの程度か実際に見れぬのは武器屋の名折れよ。」

 

そう話しているとドアが開かれる。ぜーぜーと肩で息をするアリエルとゴブ吉、恨めしそうにコジローを見る。そして、木版に荒々しく文字を書く。

 

【置いていかないでください】

「まったくや」

「ごめん。早く実証実験したくて―――」

 

コジローの謝罪に仕方ないなぁという表情を浮かべるアリエルとゴブ吉。巨大な鉄球が付いたフレイルを持つリリルカをみたアリエルは目を丸くする。ゴブ吉も驚いた表情を浮かべた。普段とは違いリリルカの瞳には希望の色が宿っていた。それを見たアリエルは嬉しくなる。

 

「まぁ、想定通りでよかったよ。最後に破壊力の実験が残っているけど多分問題ないだろうし」

「そうじゃの。で、両方持っていくつもりかの?」

「ん~、一応実験は両方でやろうと思う。ただ、問題なければフレイルが良いと思うよ。」

「フレイルの方が良いとは何故ですか?」

「武器はあんまし振るったことないだろ?鈍器の方が扱いやすいんだよ。後長さの問題かな。フレイルの方が遠くの敵を殴れるし」

 

その言葉を聞いたリリルカは頷く。コジローの言う通り、リリルカは武器を振った経験があまりない。剣をうまく振り回せるかは不安である。故に扱いやすいと言われる鈍器を使うのは合理的だと考えた。

 

「さてと、行くかの。」

 

そう、アトラが声をかける。適当に武器をかたし、鍵を取り出す。武器やとして新たな武器の可能性を見たいようだ。リリルカは頷くと超巨大な剣と超巨大フレイルを背負う。はたから見ると異常な光景、だが、リリルカ・アーデにとって最適解となるであろう武装。

 

 

 

 

 結論から言うと、破壊力の実験も成功であった。剣で叩かれたゴブリンが真っ二つにちぎれ、フレイルで殴られたゴブリンがミンチになる。人間がやった所業とは思えない結果となった。その破壊力に大喜びをしたリリルカは手あたり次第、ゴブリンを叩き潰し嬉しそうにはしゃいでいた。

 

「うむ、実験成功だな。」

「面白いのぅ、アレを使えるやつが現れるとはの、ふふふ、次はどんなのを使わせてやろうか。」

「ひぇぇ、アレ凄まじいやないか。どないなっとるん?」

 

リリルカの様子を見ながら、楽しげに笑うコジローとアトラ、腑に落ちないアリエルとゴブ吉は疑問を二人にぶつける

苦笑しながら、コジローとアトラが二人に回答をする。

 

「単純な話なんだけど100kgを超える鉄球を受けて五体満足なやつは上層に存在しねぇんだよなぁ……しかもえらい勢いで振り回しているし」

「さよう。火力だけならばLv3にも匹敵しよう。凄まじいもんじゃ」

「うへぇぇ――強力なスキルやなぁ」

「まぁ、メンターがまともじゃなけりゃぁこうなるっていういい証拠だな。」

 

リリルカは嬉しそうに洞窟に凸凹を作りながらゴブリンを潰していく。ミンチになって死ぬゴブリンを見て、コジローは苦笑を浮かべる。そろそろいいかと考え、リリルカに声をかけた。

 

「おーい、そろそろ帰るぞ。武器として使いやすいように調整してもらわないかんしな」

「はい、コジロー様」

 

元気よく答え、コジローの傍によるリリルカ。上級冒険者級の攻撃力を得たリリルカは本日生まれ変わったのだ。ファミリアの仲間におびえずに済むそんな小人にだ。

アリエルもゴブ吉もその様子を嬉しそうに見ている。友人が道を踏み外さずに済んだ。それだけでアリエルは満足だった。アリエルは木版に感謝の言葉を書く。

 

【ありがとうございます。コジロー】

「大したことはしてないよ。まぁ、この火力ならパーティを組んでも大丈夫そうだね。リリルカさんどーする?」

「ぜひ組ませてください!!」

 

 嬉しそうに【YES】と書かれたネックストラップを振り回す。3人+1匹での探索、それはとても幸せで楽しい時間だろう。一歩一歩夢へと近づいている。それがアリエルにとって何よりもうれしかった。リリルカも大慌てで答える。みじめなサポーターであった自分が冒険者になれた。それはリリルカにとって思いもよらないことであり、コジローへの信頼や信用が恐ろしい勢いで高まっていく。自分にとっての人生の恩人。コジローへの信頼はこの上なく高まっていた。

 

 遠くから、大きな足音が響く。足音は一つ、帰りを急ぐ冒険者がいるのだろうか?コジローはアリエルにダンジョンの壁際に移動することを指示、そうこうしているうちに足音は近づいてきた。よそ見をしていたのか。真っすぐコジローに向かって突っ込んできた。コジローは咄嗟に足を踏ん張り、体当たりのやり方でぶつかってきた人物を吹き飛ばす。天井にぶつかり、ベタンと地面に落ちた。白い髪の少年がぐるぐると目を回していた。

 

「ししょ―ベル?なんでまた。」

「きゅ~~」

「大丈夫ですか?コジロー様」

「まぁ、大丈夫じゃろうな。しっかし、どうしたんじゃろうなこやつは」

「あわただしいやっちゃなぁ」

 

 全身返り血で真っ赤に染まったベル・クラネルがそこにいた。外傷がないことから返り血と予想される。ぐるぐると目を回したベル・クラネルをお米様抱っこをする。

その様子からきっと厄介ごとに巻き込まれたのだろうなと推測、嘆息と共に3人+1匹にダンジョンの外に出ることを告げる。とはいえ、あの見事なお胸様を持つ女神を悲しませるのは良くないだろう。4人と1匹はのんびりとダンジョンの外へと向かっていった。

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